違いをつくる

 「違いをつくれる選手」というのは、サッカー界でしか聞かない言葉かもしれない。局面で優位をもたらせる。ボールを持てば何かを起こす。そんな選手がいれば、11人と11人がしのぎを削る試合の膠着は破れる。

 「上位対決」と銘打たれた名古屋ー神戸。前半は神戸が、後半は名古屋が、野球の表と裏のようにそれぞれ攻めながら、相手が最後のところで踏ん張った。3万9000人近く入ったスタジアムが沸く瞬間は数えるほどでも、選手たちは体力と神経を大きくすり減らしただろう熱戦だった。

 その結果は、神戸の2-0。山口と大迫、長い日本代表経験を持つ両選手が、チャンスとも呼べぬような状況からぶち込んだ。難しい浮き玉を完璧にコントロールした山口、数少ない速攻機でゴール右上を的確に射抜いた大迫。どちらも、リーグを見回してもほかに打てる選手がいない、見事な一発だった。決め手に欠けた流れの中で、二つの個が違いをつくってみせた。

 名古屋には山口も大迫もいない。それは問題でない。永井を永井らしく走らせるパスを出せず、倍井に倍井らしく仕掛けさせるスペースもなく、黙ったまま試合を終えたことが物足りない。そうさせてもらえなかった、と言えばそれまで。違いはひとりでつくらなくていい。個の力が足りなければ、束になればいい。

 相手が強ければ負ける。相手が弱ければ勝つ。順位は、強い相手と弱い相手の数による。そういう中庸の域に、名古屋はいる。そこでもがく姿も美しくはあるが、つまらないのは、主語が相手であることだ。名古屋の試みが、名古屋の魅力が、見ようとしなくても見えてくるなら、結果に関わらずもっと試合を楽しめるのだが。

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