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キラークライアント12 「エタノール」

その日は意外に早くやってきた



案の定 彼女の仕掛けた地雷を踏んだらしい



もう これ以上 続けられない 会えない



シナリオ通りだろう



その後も 誕生日メッセージだの バレンタインデー&ホワイトデーのやり取りくらいはあったらしい



別れたんだか? 長い活動休止なんだか?



もう この時点で 意味不明状態


そして 例の 新型コロナウィルス禍の蔓延



あの当時



自分は独自のエタノール購入ルートを持っていた



商売上 当たり前なんだが



勿論 どっかの「転売ヤー」なんぞからは購入しない



通常通りの仕入れ値で 1t仕入れた



自分には 障がいを持った弟子が数多くいる



その弟子たちが卒業した 盲学校 養護学校がある



とにかく 送料含め全て無償で ばら撒いた


ただでさえ 障がいがあるのに その上 コロナなんぞ 想像もしたくない


この狭いオフィスに 純度70%のエタノール20kgの段ボールを50箱収納した


これ 危険物取扱法? とやらに抵触するらしいが そんなことは 構っちゃいられねぇ


宅配便の配達員さんとも 散々揉めた


「規則違反なので集荷できません」


「あのよぉ 配達先読めよ 救援物資なんだよ 持って行けよ」


「いや、会社に叱られるので 無理です」

「全部で15,000円の送料か? 今手持ちに小銭がねーから 釣はいらねぇ それでも集荷しねぇってかぁ?」


といって 1万円札を2枚差し出す


結果 全て集荷に応じて頂いた


多少の罪悪感はあったが そんなこと 言っちゃいられねぇ


有難いことに すべての学校 施設 友人 台風の被災地に 受け取って頂いた


その真っ最中だった



絶滅危惧種から突然電話をもらった


先生、エタノールありますよね?



「何・に・使・う・ん・だ?」

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