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服を染め直したお話

アニエス・ベーの丸襟ブラウスは、何年前に買ったかも覚えていないけど、着心地がとっても良くて、あの当時パフスリーブのタックが入った袖が本当に可愛らしくて、何年もわたしのイチのお気に入りブラウスだった。

クタッとしてきた頃になっても、着心地の良さ、丸襟の具合、身幅のぴったりした感じか本当に好きで、こればかり着ていたいくらいに好きなのだった。

でも、どうしても傷んでくる。脇のところも悲しいかな、黄ばんでくる。同じものをアニエスで探してもなかなか出会えない。
似たようなものを買ってみたこともあったが、あのブラウスとは違っていた。

1番残念なのが、どことなく色褪せてきたことだった。仕方がないが白いブラウスが薄ぼんやりしてくるのは悲しかった。いくらアイロンをかけても、経年劣化はわかる。自分としては気に入っているものであっても、くたびれているのは自分が1番よくわかっている。ひとのために洋服を着ているのではないが、そして洋服はある種の自己満足だと思っていても、なんだか哀しみを自覚している自分もいた。

そして、そんなふうに思ってしまうジャケットがあと2着あった。

一つは「イリエ・ウォッシュ」のグレイのジャケット。これは、フリルが施されていて、ウエストのところが細くなってくるデザインのもの。でも、なぜか日焼けをしてしまって、肩のところが少し色褪せていた。
そしてもう1着が「ブルックス・ブラザーズ」のデニムジャケット。身体にぴったりと沿う、コンパクトなデザインで、ライトデニム色が春らしいと思って買ったものだった。でも、ライトデニムのジャケットというのはなんだか気分ではなくなった。

そこで考えたのが「染め直し」だった。しかし、その考えたのは実はもう数年前のことだった。ここが本当にわたしらしいのだが、なにかをやろう、と思い立ってもなかなか行動しないのである。

染め直したら、本当に綺麗になるか?
失敗するくらいなら、今のまま、置いておけば良いのでは?
どこの染め粉をつかうのか?
簡単にできるのか?
道具はなにがいるのか?
などなど、いろいろ思うとそれだけで億劫になってしまうのだ。

Amazonで、まず調べてみた。いろんな種類がある。また、面倒になってくる。高温で染めるものや低音でも良いものもある。また、道具は染まってしまうらしい。そういえば、中学の時に大きなホーローの丸い桶が被服室に置いてあったのを思い出した。あれは、絞り染めハンカチの時に使ったような。てことは、あんなに大きな桶がいるってこと?いやいや、そんな素敵なものは我が家には存在しない。
うーん、また挫折した感じ。

そんなことを繰り返して何年経つだろう。あの服たちは今年も5軍くらいになっちやうんだろうか?

そうして数年が経っていたが、なにを思ったかこの4月に、染め粉を買ってみた。
でも、ここからも遠かった。時間がない(ような気がした)。仕事のないお休みの日にしてみたい。ホーローの桶はうちにはないから、代理のものを見繕わなくてはいけない。説明書を読まねばならない。また、億劫癖が出る。

昨日、イリエのジャケットを着てみた。染めなくても大丈夫なんじゃ?って思うくらい。

でも、今朝起きた時、なんかよくわかんないけど、スイッチが入った。
NICOの散歩に行ったあと、キッチンに入ったら、「やろう」って思ったのだ。

NICO
つけ込まれたブラウスとジャケット

箱を開けた。説明書を読んだ。
なになに、お湯がいるのか。
熱湯が合計で10ℓいる。
ホーローの桶は、アルミの桶でなんとかなる。
熱湯は、ケトルと炊飯鍋でなんとかなる。
お酢が130cc。

なんだ、大したことないじゃん。できるよ、できる。
 
お湯を沸かして、染め液を作って、それにブラウスとイリエのジャケットを投入。菜箸で混ぜて、30分。
台所洗剤で洗って。
染め液はまだ使えそうだったから、もう1着のデニムジャケットも染めることにした。桶ごと火にかけて、弱火で煮る。ついでに長めに浸すことにもしてみた。

イリエ・ウォッシュ
ブルックス・ブラザーズのジャケット


やってみたら案外、できてしまった。当たり前のことだけど、染め粉はとてもよくできている。
終わってから母が言った。
「色止めもしないとね」

確かに。

次に、もう一度染めて、色止めをしよう。次はきっともっと楽にできるはず。

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