St.V

「メリーさんってさ、オマンコあるの?」
何回も家電にメリーさんからの電話がくるから、ゆかは、メリーさんがほとんどともだちなんじゃないかって気持ちになってた。

でも、ともだちには「あなたにオマンコが付いているか?」なんて質問はしないし、ともだちとは思ってなかったかもしれない。

ゆかは本当は、絵画教室に通いたかった。ゆかが週に3回しぶしぶ通ってる個人学習塾のおじいさん先生は、オマンコが好きそうな顔をしている。ゆかが知る中で最もサイアクの顔だ。

ゆかがオマンコを知ったのは、なにも最近のことじゃない。産まれたときからずっと、オマンコはゆかの身体にあり続けたし、ママやおばあちゃんとお風呂に入るときにだって、オマンコを見てきた。
ただそれらは景色としてゆかの日常に存在していただけのもので、けして明確なランドマークではなかった。

ならば、なぜ。
保健体育の授業のせいではない。もちろん、パパの不倫ビデオのせいでもない。
ゆかのママの下半身には、ほくろはない。なのにパパがパソコンに持っていたビデオには、オマンコのすぐ横に、ほくろが存在した。

パパと、ママではない女の人と、そのオマンコ。不倫ビデオである。
この出来事は、少なからずゆかに衝撃を与えた。そしてなんのためにビデオショップののれんが存在するのかを、うっすら理解した。

オマンコ?あたしメリーさんよ。

開いた先には、あのおじいさん先生がいつものオマンコ顔でゆかとか、スカートの子を見つめている。

きっとゆかの家の庭の木は、そばにほくろが付いたゴマ・オマンコを内包している。マトリョーシカのように、出てくるオマンコとそのホクロはどんどん小さくなっていくかもしれない。

オマンコのなかで内臓の宇宙は、有限に広がっている。

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