創作昔話 善鬼坊(6)
だが善鬼も歳には勝てなかった いくら鬼であっても年老いてゆき 床に臥すことが多くなっていった 善鬼も最期を悟ったのか村人を呼ぶように言いつけた 何十年も村にいたのだから代替わりもあったが善鬼のことを知らないものは誰一人としていなかった 村人は衰弱しきった善鬼の言葉を聞いた
「拙僧は元々村はずれの山に住まう
悪鬼であった 旅人を襲い その死骸を食らって
生きていた どうしようもない奴であった
だが我が師が村の不動尊に祈願し 拙僧は
不動尊の慈悲の叱咤により改心し 僧を目指すことになったのだ 我が師のお陰で悪鬼であった我が身が仏道を目指し 人のように生きることが出来た お主らのお陰で拙僧は本当の僧侶として
生きることが出来た だが拙僧に怒りを覚えたものがあるなら 遠慮なく切るが良い」