創作小説 影女刀(6)

山端はこれしか言わなかったが 山端の奥方が帰り際に近田に書簡を握らせた 近田はその書簡を

役宅に持ち帰り開いてみた


「惣太郎は 二年前に上総にて消息を絶ちましたが

一年程前 ふらりと現れ 夫に内緒で仕事を

世話してくれと懇願され松房藩の下働きとして

雇わせることと致しました これは内儀である

私の一存ですので 夫久造は存じません

どうか内密に…」※現代語訳


と書かれていた 相当に内儀は頭を悩ませたのだろう 文面からでも嫌と言うほどに解り得てしまうものだ 

 松房藩の内情を聞くために再び下屋敷を

尋ねた時 家老代理として 石川という高禄の武士が面会に応じた それによれば一人 下屋敷で行方の解らない下働きがおり それは城代家老が急死した日かららしく 名を惣太郎と言った

歳は19で 右の頬に青痣がある その特徴を聞き取り 退散した ここまで詳細な情報を聞き取った後は刀剣商の帳簿を借りて 最後に刀を持った人が判明したのだ その人物は 分限者の米原紋十郎と言い 元は川越の人であり現在は松房藩の武道指南役として携わりまた刀剣に非常に凝る人物である とのこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?