キューブリックに「洗脳」を問う、蟻亜三久。

マインドコントロールだらけの世界。

教祖の「ポアしかないな」という指示でサリンを作る東大生たち。

洗脳で日本人から金を搾取して、巨大な御殿を建てる韓国の宗教団体。
日本の元首や、国会議員が、教会主催の壇上で、声高く教祖マザーを敬う。
叩かれた国会議員は首にもならず、まだ町に笑顔のポスター貼っている。

金持ちになれると謳う説明会で、「ネズミ講っぽいな」と思いながらサラ金で金を借りる大学生たち。

「いただき少女リリちゃん」は言葉巧みに、おじさんから1億円を搾取、ホストに貢ぐために、おじさんの騙し方教本まで売る。
貢がれたホストはYouTubeで、その札束を積み上げながら「お金っていくら有っても虚しい」と、三文芝居のセリフを流す。

あちこちで、洗脳が人々を狂わせる。


オリンピック開会式、フランス革命を揶揄する演出が面白かった。
ベルサイユの窓で自らの首を抱えたアントワネットが笑ってた。

テーマは美しき革命。
有名な、はだけた胸の自由の女神が、三色旗を掲げて民衆を導くあの絵画。

民衆は彼女の指差す方に銃口を向けている。
ルイ16世が「暴動か?」と問うと「いえ、革命のようです」と答えた側近。

あの革命が、見直される。

革命家ロベスピエールが、倒すべきは特権階級だと繰り返し、民衆は暴徒と化しバスチューユ監獄に向かう。武器を奪う為だった。

負けた大統領が、「闇の政府」に選挙が盗まれたと、嘘の演説をする。
支持者は、怒り、窓を壊して新大統領を決める議会に乱入した。
同じ事が、21世紀に起きる。

コントロールされる群衆心理。

指導者ロベスピエールは革命後、自分の政敵をギロチンにかけて粛清する。
自らが専制君主となってテロル(恐怖政治)を始める。
民衆もさすがに気付く。
ロベスピエールもギロチンで死ぬ。
しかし、次のナポレオン・ボナパルトに熱狂する民衆。
彼も革命前のような皇帝となり、さらに世界の王を目指す。
人の欲望に限りは無い。
あの負けた大統領は、何を目指しているのだろう。

美しいフランス革命などあり得ない。
だから、笑える開会式だった。


そしてキューブリック。

ずっと彼の映画を見て来て、誰も指摘しないから、敢えて言うのだが。

キューブリックは「洗脳の映画」しか作っていない。

だから私は『ピノキオは鏡の国へ』で、それを書いた。

小説で、何故「洗脳」なのかを、キューブリックに問う事にした。

だから、時間を遡る「タイムマシン」を用意した。

映画オタク美少女、蟻亜三久が1978年のキューブリック邸に行く。

説明するより小説の一部を抜粋する。
その方が早い。
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蟻亜三久が、キューブリックに問う。
「あなたの映画に、なぜマインドコントロールの描写が多いのでしょうか。それがずっと不思議でした。デビュー作品『現金に体を張れ』の鉄格子の暗示。あの『2001年宇宙の旅』の石板モノリスは猿人たちに知能を与えます。スターゲートで人類をどこか別世界に導きます。次の『時計じかけのオレンジ』ではマルコム・マクダウェルが演じる暴力男アレックスの眼を機械で固定し、ベートーヴェンを聴かせながら洗脳し、凶暴性を虚勢します。あなたの作品は、洗脳やマインドコントロールを、いつも中心に置いている。『ロリータ』でもブロンドの小娘が中年男を惑わせる。『博士の異常な愛情』は水爆という厄介なパワーに、アメリカとソビエトの指導者たちが踊らされ、地球を破滅させる映画です。ピーター・セラーズの演じるストレンジラブ博士はナチズムに洗脳された人でした。あなたは、ほとんどの作品に洗脳という要素を含ませている。何故ですか? あなたにとって洗脳とは何ですか?」
三久は、新兵たちが洗脳によって完全な兵士に作り上げられる『フルメタル・ジャケット』をギリギリ我慢する。
この映画は、今から10年後の1987年に作られるからだ。

スタンリー・キューブリックは、蟻亜三久の突然の言葉に呆気にとられる。
しばらく天井を見つめて、そして…大きくため息をした。
彼は意外な言葉を話し始る。
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このあと、キューブリックが語る事に心を動かされる蟻亜三久。
キューブリックが話し始める旧友カーク・ダグラスの事。

この章「アイズ・ワイド・シャット」から、ストーリーが暴走し始める。

プロパガンダは、もともと「種を撒く」という宗教的な意味を持つ言葉らしい。悪意だけでは無く、広告としての情報操作、心理操作にも使う。
だが、為政者が人心を都合よく誘導する手段になる事の方が多い。

アドルフ・ヒトラーは「私はドイツ人の事しか考えない。ドイツを守るために戦う」と繰り返す。

トランプは「私はアメリカを偉大な国にする。ナンバーワンはアメリカだ」と繰り返す。

同じ論調だ。
マインドコントロール。
分かりやすい単純な言葉で繰り返せば効果は大きいと心理学者ギュスターブ・ル・ボンは明言する。
彼らは、それを実践する。

ただの自己陶酔だけの言葉では済まない。


全ての映像は情報操作の手段になっている。
映画やテレビニュース、ネットニュースにも、確実に意図が存在している。
別のコンテンツ「CMを疑え!」にも書いたが、映像や広告には、必ず意図がある。
今を生きる私たちには、冷静に留まり、「まず疑え」が一番必要な事かもしれない。


キューブリックの映画。
ユダヤ人監督のキューブリックは、彼が一番恐れた「洗脳」を自らの映画に内在させた。
遺作『アイズ・ワイド・シャット』の次に作ろうとしていた映画。


それは、ナチの宣伝大臣『ゲッベルス』の映画だった。










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