映画「アシスタント」


原題:The Assistant
directeed by  Kitty Green
starring : Julia Garner, Matthew Macfadyen, Makenzie Leigh, Kristine Froseth, Jon Orsini, Noah Robbins

映画プロデューサーを夢見るジェーン(ジュリア・ガーナー)は、名門大学を卒業して、有名なエンターティメント企業に就職し、業界の大物として知られる会長のもと、ジュニアアシスタントとして働き始める。毎日、夜が明ける前に出社し、夜遅くまで、掃除、コピー取り、コーヒーの準備、細々したメール処理などをこなし、社員が出社すると、各自のテーブルに資料を置き、急な出張が発生すれば、飛行機の手配からホテルの予約まで・・・そして会長の私的な用事や奥さんからの苦情を聞いて処理するなど、本業務以外の雑用もこなす。しかし、ジェーンは会長の部屋で信じられない事がほぼ毎晩?行われていることに気づく。また、そのことを裏付けるような遺失物を見つけたり、最近、コネで入ったみたいな若い女性が高いホテルの部屋をあてがわれたり、ある時間、会長もその女性も社内からいなくなっていたり・・・ジェーンは思い余って、会社の人事担当に相談にいくが、ていよくあしらわれてしまう。しかし、ジェーンの疑っていたことは、会社の誰もが知ってる公然の秘密だった・・・

2017年にハリウッドで、そして全米に広がった地位のある者がそれを利用して半ば公然と行われていた性犯罪を告発する「#Me Too」運動前夜を描いている。
  ジェーンの1日をず〜っと追いかけ、早朝から深夜までのオーバーワーク・・・そのほとんどが「雑用」なのだ。でも、彼女の事務処理能力、気の利く働きぶりは、黙々とカメラが追っていく中で「彼女はとても優秀で、きちんと仕事をこなしている」ことが強く印象づけられる。
でも、彼女が人事担当者に相談に行った時、「君は、会長のタイプではないから、大丈夫」という一言は、どうかすると会長の行っている行為よりも酷い一言だったと思う。会長もジェーンの仕事ぶりは評価するものの、女性としてはかなり見下していて、何かにつけ「謝罪文を書け」と言ってくる。その会長の性癖とパワハラを全員が知っていて、でも、見てみぬふりをし、彼女が謝罪文を書いていると、男性のアシスタントは同僚として文章を作るのは手伝ってくれるけど、彼女の悩み・不満には寄り添うつもりはない。また、女性の同僚たちも、給湯室でジェーンがお皿を洗っている横に自分の食べ散らかした皿を置いて、平気で一言もなく立ち去っていく・・・まぁこの辺、すごくえげつない・・・よね。
それを我慢して、我慢して耐えて、社会ってそういうもんだ、会社勤めってそういうことなんだ・・・と無理矢理に納得させて、日々を送る・・・でも・・・彼女の顔をだれもまともに見てはくれていないのだ・・・

日本でもジャニーズの前会長のやってきたことについて、今、大問題になっているが、本来なら、当人が存命の間に問題に挙げるべきだったのではないのか・・・それだけ「力が強大だった」ということだが、「みんな知っていて、でも、みんな声をあげずに黙って見ている」状態って・・・どこの世界でもあるんだけど、ほんとにそこで所属しながら声を挙げるってのは、「辞める」ことと引き換えになってしまってるのだ・・・その仕事は辞めたくない・・・から、呑み込んで、表情を殺して、疲れた足を引きずって、また明日も仕事・・・
なかなか重い重い、でも、見てよかったと思える映画でした。

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