下界Part5

下界Part5

毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離した描写がめちゃくちゃ多数ありますことをお断りしておきます

あたし、水無月海(みずな つきみ)と彼女、佐原観萌(さわら みもえ)が付き合い始めたのはあたしが中学2位年に進級してしばらく経った5月の暑い日だった
彼女は新入生として入ってきたわけじゃなくて途中転校だったためにあたしはてっきり違うクラスに転向して来た同学年だとばかり思っていた。
あたしが身長168cmなのに対して彼女は173cmもあった。
最初はもしかしたら3年生ではないのかと疑ったくらいだったが実際には彼女の方が1学年下の1年生だった。
その頃のあたしは色々なものに対してイラついていた。
特に思想とか信念みたいなものがあったわけでもなくただただ子供だったにすぎない。

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あたし達はコンビニを見つけてそこで適当に食料を調達して用をたした。まあトイレタイムだ。
今は夏乃花奈(なつの かな)が運転をしている。
そしてコンビニ店員から情報収集をしている。
一応は車載ナビに従って走ってはいるのだけど、現場での交通情報などなるべく早く知りたいこともある、だからあたしみたいな口下手よりも他のコミュ力が高いやつが羨ましい。
「やっぱり、火山性の有毒ガスが少し発生していて、今日は火口の南西方向がまずいみたいですね」
椎、可奈野椎(かなの つち)が今後の方針について文月輪(ふみ つきわ)と春香織(はる かおり)、そして佐原観萌(さわら みもえ)と話し合っている。
今は良くてもそこに着いてみなければ火口付近に登るロープウェイ乗り場にさえ近づけない事もたまにはあるらしい。
火口付近の状況はまだ遠くて細かいことまでは分からないがとりあえず引き返すことはなさそうな感じだ。
もっともそれは秋種加世(あきくさ かよ)に直接コントロールされている春香織が引き返す事など許してはくれないだろうけれど。

あたしは観萌に頼まれていたミックスサンドとクリームパン、そしてとっても甘そうなフルーツミックスミルクのペットボトルを渡した。
あたしはカツサンドと肉弁当、そしてエナジードリンクを買ってこれから食べようとしている。
「そんな甘そうなものばかりよく食べるな」
とあたしがいうと観萌は不思議そうな顔をして聞き返してくる。
「あら、月海こそ野菜も取らなきゃダメよ」
って、野菜なんてミックスサンドの中のレタスくらいしかないんじゃないのかって思う。
「それ以外にも野菜なら食べているわよ、さっきみんながコンビニに入っている間にそこに生えていた山菜を結構食べましたし」
と言って観萌が指差したのは明らかに他人の農家んちの山菜畑だった。
「それお前、泥棒っじゃ」
と言ったあたしに彼女はまだ摘みたての若い生のつくしをあたしの口の中に突っ込んできた。
なんであたしはこんな女と付き合っているのだろうか?

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毎日登校して気になることといえばまずは男子の視線だ。
大抵まずはあたしの胸周りを舐め尽くすようにみてくることが多い。確かにわたしの胸は大きい方だとは思う。

でも問題はそこから先だ、制服の上から見透かすかのようにあたしの窪んだお腹のへそ、そして妄想上の股間の割れ目から太いツヤツヤした太もも。相手がそこまで妄想していると思うとあたしは殴り飛ばしている。今日もエロい目であたしを舐め尽くすように見てきた男子生徒を23人ほど数発ずつボコってしまった。

そんなわけであたしは今日もまた全国で言う放課後、名古屋ではなんと言うかは忘れたけど全授業が終わった後に生活指導室にお呼ばれされていた。
「ちわーす」
あたしはドアをノックすることもなく扉を開くと先客がいて先生に大目玉を食らっていた。
女子でも比較的背が高い部類な入るあたしよりもさらに高そうな身長から3年生だとばかり思った。
生活指導の先生はその娘に対する説教、じゃない指導に夢中であたしには全く気がついていない様子だった。
「センセー、あたしここで待ってていいですか?」
はっきりと聞こえるよう、大きな声で言ってみたが生活指導の先生は気づきもしないようだった。
一見おとなしそうな後ろ姿をしていてそんな教育指導を受けなければならないほどはみ出した生徒には最初は見えなかった。
強いて言えば腰まで伸ばしたストレートの茶髪だろうか?
確かにうちの学校の校則では髪の長さは肩までと言うことになってはいるが、胸までなら割と多めに見てくれるはずだ。
しかし腰まで伸ばしていてあからさまに明るい茶髪となるとさすがに目をつけられても仕方がない、が校則がおかしいのだ。
それにしても170cm以上はありそうな身長の割には細い肩幅そのくせ、斜め後ろから見ただけでもはっきりとわかる形の整った巨乳
、そしほどよくしまったヒップライン。
うちの学校がポニーテールやツインテールを禁止する言い訳にしている『男子生徒の劣情を煽る』とか言う理由でいうなら彼女は間違いなくアウトでしょ。
よく観察してみて気がついたんだけど彼女は身長は高い、がすらりと伸びた形のいい脚はすごく長くて座高は普通の女子生徒よりもむしろ低いんじゃないかと言う気がしてきた。
これではスカートの裾が膝よりもかなり上となってスカートそのものが必要以上に短く見えるかもしれない。
上から見下ろされている感じに嫌気を感じたのか生活指導の先生はは彼女に対して「椅子に腰掛けろ」と命じた。
あれ?普通の女子とあまり変わらなくね?むしろ座高だけ見たら身長が140台くらいだと勘違いしても不思議じゃない。
あたしはふと面白くなって吹き出してしまった。
それに驚いたのか彼女はあたしを振り返った。
緑色がかった瞳はハーフなのかもしれない。
そんな彼女はあたしに興味を示すことなく再び正面を向くとマジでこう言った。
「それで結局私のどこが校則違反なのですか?」
うーん、さすがに今日の生活指導の先生には同情するわ、と思った。
「まずその瞳、カラーコンタクト入れているだろ」
先生はあろうことか彼女の目を指差して言った。
「あのーぅ、先生、わたしハーフなんで元々この色なんですが、むしろこれでもブラックのコンタクト入れて目立たないようにしているんですけど」
彼女の言葉に流石のあたしもマジか?と思った。
先生に至っては頭から湯気が湧き出している。
「ウソをつけ、ウソを、ではそのクソ長い上向きにはねた付けまつ毛はどう説明する気だ、どうだこれは言い逃れはできまい」
そう言われた彼女がどう言い訳をするか興味があった。
すると彼女は自分のカバンから小さな、本当に小さな、まゆげとか鼻毛を切る小さなハサミと手鏡を取り出すとそれで確認しながら数秒で全部1/3くらいの長さに切って落としてしまった。
そこからものの12分で生活指導の先生は真っ青な顔になっていた。
「もう1度やって見せましょうか?」
彼女はそう言ったが生活指導の先生は首をよこに振るだけだった。
彼女は手鏡で自分のまつ毛を見ると「また伸びるのが早くなっちゃた」
と呟いた。
「それはそうとしてだなヘアカラーとか脱色は禁止と生徒手帳に書いてあるだろう」
今度こそは勝ったなと言いたげに先生は腕組みをして言った。
「それに関してはすみません、これでも黒のヘアカラーで」
「まあ貴様はハーフだから色だけは仕方がないとしよう、だがな」
先生は『ニヤリ』と笑うと自分の机の引き出しから大きな散髪用のハサミを取り出すと身を乗り出して彼女の長い髪をザクザクと肩よりも上あたりでカットしてしまった。
もちろんど素人の仕事なので見た目は良くない。
「今回はこれで勘弁してやる、今度伸ばしたら丸刈りだからな」
先生は勝ち誇ったようにそう言ってハサミを自分の机の引き出しにしまってからこちらを見た途端に固まってしまった。
彼女の髪は胸の少し上まで伸びていた。
しかも毛根あたりの20センチくらいは鮮やかで明るい水色に変わっている。
「あのぉ、この部屋のおそうじ先生がやってくれますよね?」
彼女そう言って立ち上があたしに会釈して立ち去ろうとしたところ生活指導の先生は思いもかけない凶行に走っていた。
彼女をいきなり後ろから羽交締めにすると手にした電気バリカンでほぼ丸刈りに近い状態にしてしまった。
さすがに他人事とはいえ泣き出した彼女をあたしは先生から引き剥がすと刃の設定が深刈りすぎたのか所々頭皮が破れて血を噴き出していたのが見えた。
あたしは迷わず先生のみぞおちに渾身の左ストレートを打ち込んだ。
先生の体は5メートルほどふっとんでガラス窓を突き破り中庭の芝生の上に落ちた。
この時にあたしは退学を覚悟した。

あたしは取り敢えず彼女を医務室に連れて行き頭の傷の手当てをしなければと考えていた。
「私なら大丈夫だから」と泣いている彼女を見ていると自然とあたしも涙が出て来る。
取り敢えず出血と消毒だけでもなんとかしないと、と思いあたしはスカートのポケットからハンカチを出して拭いてやろうとして固まっていた。傷口が塞がっているばかりかもう既に1cm近くの髪の毛が伸びていた。
バリカンで刈られてからまだ5分と経ってはいない。
しかも今度は赤い色の毛が生えてきていた。
取り敢えず保健室に行き、保険医の先生に説明をして病院に行くように先生と一緒に説得を試みたが彼女は頑なに拒んだ。
仕方がないのであたしはっ時彼女を家に送ることにした。
なるべく人目に触れない道を通ることにした。
彼女の家は意外と学校のすぐ近く、100メートル足らず西に行ったところにあった。
平屋のアパートの一室、端っこが彼女の家だったようだ。
彼女が自分でカバンから鍵を出してドアを開けた時点で私はすぐに退散することにしていた。
なによりもあたしは他人と関わることが苦手だった。
彼女のそれとよく似たアパートに住んでいるあたしでもその建物の小ささに驚いている。
少なくともあたしの住むアパートはふた部屋あって、六畳と四畳の和室、それとキッチンとバスとトイレは一応別々にあった。
もちろん勉強机なんてものはなく、それに男兄弟4人の間に挟まって育ったあたしは自分の部屋を与えられることもなくイカ臭い兄と弟たちの間に川の字で寝させられていた。
当然恥ずかしいのもあるし落ち着かないので学校の同級生を家に招き入れようなんて考えたこともなかった。
あたしは彼女の家族構成も何も知らない。
でも彼女だって知られたくはないことのひとつやふたつあるだろう。
「じゃあ、あたしはここで」
そう言って立ち去ろうとしたあたしの手を彼女は強く引っ張った。
「待ってください、先輩」
あたしは、きっと驚いた表情で彼女を見つめていただろう。
てっきりあたしの方が下級生だとばかり思っていたから。
ドアの隣にある表札には『佐原』とだけ書いてあった。
「佐原さん、あたしは、多分あたしの方が下級生だよ」
そう言うと彼女は急に悲しげな顔をして呟いた。
「私、この背の高さのせいでよく誤解されるのですが転校してきたばかりの1年生なんです」
その時急に空が暗くなって雨が降り出していた。
あたしは雨具を持ってきてはいなかったし、自分の家までは軽く1Kmはあった。
雨の降りは激しくなる一方だったし、佐原さんは手を離してくれそうもなかった。
それもあるしそれを無理に振り払えば泣き出すんじゃないかと思えるほど彼女は悲しい瞳をしてあたしを見つめていた。
「わかった、じゃあ少しだけ雨宿りをさせて」
あたしがそう言うと急に彼女の表情が明るくなってあたしをアパートに招き入れるとすぐにドアに施錠をした。
「どうして?」
あたしがそう言うと彼女は小さな声で言った。
「実はこの辺り不審者が多くて・・・・・」
そこまで言うと言葉を詰まらせた。
要するに家族が帰って来るまでは一緒にいてほしいと言うことだろうか?
取り敢えずあたしは自己紹介だけでもしておこうと思った。
「あたしはの名前は」
「水無月海さんでしょ、2年生でひとつ上の先輩」
「どうしてそれを」
言いかけたあたしの唇を彼女の人差し指が制した。
「有名ですもの、とてもお強いことで」
雨の音がトタンの屋根を激しく打ち付ける音がした。
確かにあたしはケンカには強かった。
しかしそれには理由がある。

あたしは兄弟の中ではたった1人だけ血のつながりがなかった。
あたしの父は女癖が悪く何度も離婚と結婚を繰り返していた。
あたしの兄弟は全員母親が違っていた。
そしてあたしだけは父親でさえ違っていた。
数年前に死去した母の連れ子だった。
あたしの兄弟は上から高校3年生、高校2年生中学3年生であたしの下には中学1年生の男の兄弟しかいない。
そして彼らにも母親はいない、多分父の女癖の悪さに愛想をつかして別れて出ていったんだろう。
毎晩父は取っ替え引っ替え若い女を連れ込んではあたしたちの隣の部屋で夜の行為に励んでいた。
もちろんあたしたちはその間、千円札を3枚円札を持たされれて近くのファミレスかコンビニで時間を潰していろと言うことらしい。
もちろん、あたしに兄たちは1円もくれなかった。
そのおかげで空腹になったあたしは万引きのテクニックだけは向上したと思う。
それよりも問題なのは兄弟たちが最近になってあたしと自分達との間に血のつながりがないことに気がついた時の頃だろうか?
あたしは突然、上の兄たち3人に寝込みを襲われた。
手足を縛られて口に布を詰め込まれてあたしは彼らの、いや奴らのイキリ勃ったモノを捻り込まれて何度も中に出された。
止めようとした弟は奴らにボコボコに殴られて身体中あざだらけになった、それでも父はあたしに対しても弟に対しても何もしてくれなかった。
次の日、弟はいなくなった。
別れた母親が引き取りに来たのだろうか。
その後も何度かあたしは奴らに寝込みを襲われた。
正直言って妊娠していないのが不思議なくらいだ。
あたしは自分の身を守るために独学でケンカ法を身につけていた。
最初のうちはそれでもやられっぱなしだったが、寝込みを襲われるようなことはなくなってきた。
ものの数十秒で彼らをダウンさせられるようになったからかもしれない。

「ねえ、急に黙り込んでどうしたの?」
彼女に言われてふと我にかえるとあたしはぬるくなった茶の入った湯呑みを両手で持ったまま固まっていたようだ。
彼女に失礼なことをしてしまったかもしれない。
見回すと彼女の部屋は実にシンプルだった。
6畳ほどの1室にシンクとコンロ、冷蔵庫。
そして、おそらくだけどスリガラス扉の向こうにの向こうには洗面台と洗濯機、その左にはバストイレだろうか?

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「着きましたよ?」
あたしは観萌に体を揺さぶられて目を覚ましていた。
どうやら第一火口に登るロープウェイの駐車場に着いたようだ。
あれから火口の状態は良くなり有毒ガスの心配もなく火口まで行けるとのことらしい。
8人全員いるよね」
まるで遠足の引率する先生のように亜希は言った。
「はぐれたら置いてきますからねー」
8人の中で今のところ1番背が低い文月輪が偉そうに言った。
「そんでもって、なんであたしたち、山頂というか火口付近まで歩いて登らなきゃなんないわけ?」
可奈野椎がいきなり不満を言いだした。
まあロープウェイがあるから椎の願望達成なんとやらで紙切れを札に思い込ませてそれで乗ればいいじゃんということなんだろうけど椎の願望達成なんとやら能力にはムラがありすぎるのが難点だ。
望んだことと真逆の事象が起きてしまうことも多々あるらしい。
今回ならロープウェイで登っている最中に機械トラブルで止まってしまうとか他の人の迷惑になるようなことはなるべく避けたかった。
「まだ眠そうですが、大丈夫ですか?」
観萌があたしに気をつかってくれた。それだけで嬉しい。
「睡眠もちゃんと取れたから大丈夫」
というと私は彼女の肩に手を回して抱き寄せた。

どれほど時間がかかったかは覚えてはいないが山頂にまでは思ったほどには時間がかからず、気がつくと少ない白い水蒸気状の噴煙を出している火口を見下ろしていた。
周りには他の観光客が15人ほどいて風景を楽しみながら散策をしているようだ。
「見える?」
亜希が月輪に訊いた。
「確かに水蒸気は多くて泡も少し出ているようだけどただ単に温められて気化してそれがすぐに冷やされて水蒸気になっているっていうか、だけど」
月輪は眠たそうに言っていたが急に緊張した表情に変わって観萌と顔を見合わせて言った。
「観萌ちゃん、急いでっ、下のロープウェイ基地に連絡、『YRJ7235、有毒ガス発生の恐れありっ、火口より北西に避難を』と伝えて!」
観萌はそれを聞くとすぐに何箇所に立て続けにスマホで電話をかけると同時に「月海、これから私と一緒に私の指定する場所に2人ずつ30人を15分以内に飛んで運べる?」なんていきなり無茶を言ってきた。
それともうひとつもっと無茶なお願いをされた。
だけど彼女の頼みとあれば受けざるを得ない。
あたしは2人ずつ観萌と輪になって彼らを抱き抱えながら極力丁寧に空を飛んだ。最後の1人を運び終えた時、既に春香織は博物館の駐車場にシビリアンを運転して来ていてあたしたちを待っていた。
火山警報レベルは3に引き上げられて風向きが変わることも考慮して『第一火口から半径2Kmは立ち入り禁止にするだろう』と月輪のスマホにメールが入った。
私たちはろくに阿蘇山を観光することなく別ルートを通り、再び鹿児島に向かうこととなった。
さっきから亜希と月輪が向かい合わせになって話している声が聞こえてきた。
「マグマ溜まりの状態はどうだった?」
と亜希。
「結構ヤバい状態」
と月輪。
「どれくらい」
亜希に訊かれた月輪はしばらく考え込んだ後に観萌と見つめあってから観萌が続けて言った。
「今すぐというわけじゃないけれど早ければ半年後、遅くても1年未満、しかもカルデラ噴火の可能性もあり、かな?」
あたしは心臓を握りつぶされそうな恐怖を感じた。
身贔屓するわけじゃないけど観萌の演算能力と推論力は誰にも、いや最新のスパコンにも負けないと思う。

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「何もないところでごめんなさい」
観萌はあたしに頭を下げて申し訳なさそうに言った。
「ご家族は?」
悪気もなくそう訊いてしまった。
啜り泣くような観萌の声。
「家族にとって私はいらない子なんです」
驚いて見た彼女の髪はもう胸のあたりまで伸びていて毛根の紫色から毛先の赤色までレインボー色に輝いていた。
「どうして?」
あたしは思わず言ってしまった。
「気持ち悪いですよね、こんなの毎日見させられたら、でも放置しておいたら際限なく伸びてしまうんです、髪も眉毛もまつ毛も、だから1日に何度もトイレの個室で手入れしているんです、今日みたいに大きく切ってしまうと色まで暴走しちゃうから・・・」
観萌はうつむいて大粒の涙を流しながら言う。
「綺麗だよ、気持ち悪くなんかない」
あたしは思わず彼女を後ろから抱きしめてしまっていた。
「でもこれだけじゃない、身体についた傷もそうだけど私はせっかちだから嫌われるの」
あたしはその言葉が意味することはを全く理解できないでいた。
でも華奢で細身なのに出ているところはしっかり出ていてややもっちりとした肌は制服の上から触れていても感触は心地よかった。
「トイレならそこのスリガラス扉を開けてすぐ向こうよ」
あたしが『トイレに行きたい』と言う前に先に言われてしまった。
一瞬、他人の心を読む能力でのあるのか?と疑ったがそうではないようだった。
スリガラス扉を開けるとすぐ左に確かにトイレの扉はあった。
しかしあたしの予想に反してスリガラスのすぐ向こうには奥行きはなく右側に洗面台があるだけだった。お風呂は近所の銭湯に行っているのかもしれない。あたしはトイレで用を済ませると急にトイレと洗面台の奥にある白いカーテンとその向こう側にある扉が気になっていた。
「あまり広くはないけど、洗濯物を干せる物干し台と物干し竿が一本、そして4Kgの自動洗濯機があるの」
気がつくとあたしのすぐ後ろに観萌がトイレの扉にもたれかかるようにして立っていた。
「どうして考えていることがわかる?って言いたそう」
やはり観萌は悲しげな目をして言った。
でもそうじゃないことくらいはすぐにわかった。
それで彼女は家族から誤解されて、気味悪がられて、化物を見るような扱いを受けているのかもしれない。
カーテンを開けてガラス戸を開けると外は既に暗くなっていて雨はすでに止んでいた。
「観萌さん」
私はそのまま後ろを振り返らずに言った。
そして続ける。
「あなたの家族は多分大きな勘違いをしている、あなたは本当は他人の心を読めるわけじゃない」
そして言った。
「こんな時間になっちゃったから、あたし、もう家に帰らなくちゃね」
本当はあんな家にはもう絶対に帰りたくなかった。
最近は兄たちも姑息になってきて薬物や奇襲などの卑怯な手を使い再び3日に1回はやられるようになっていた。
「月海さん、辛そう、無理して家に帰らないで」
そう言って観萌が抱きついて来るとあたしの涙腺は決壊していた。
「月海、でいいよそのかわりあたしにも観萌と呼ばせて」
あたしの身体に小刻みに慄える観萌の恐怖が伝わってきた。
やはりこのボロアパートでの12才のひとり暮らしは恐怖でしかない。
「もしも、もしもだけど、よければあたしを用心棒としてここに住ませてくれないかな?」
あたしは観萌の肩に両手のひらを乗せながら少し離れて言った。
もしもあたしの予想が外れていて本当に観萌が他人の心を読めてしまっていた場合、彼女の心に大きなダメージを与えかねず非常に申し訳ないと思いながらもあたしは『兄たちに輪姦されている様子を克明に思い出していた。
殴られて、縛られて、ねじ込まれて、何度も中に出されて絶望にうちひしがれた、あの記憶を。
「なんだか月海、とっても辛そう」
予感は的中した。
あたしはベランダの扉を閉めてカーテンを閉じると観萌の手を引き部屋に戻ると彼女告げた。
「あたしはあなたとここで棲みたい」と。
間を置かずに彼女は返してきた。
「私が怖くないの?」
と。
「だからさっき言ったでしょ?あなたは人心が読めるわけじゃないって」
観萌は驚いた表情であたしを見つめていた。
「あなたは人の目の動きや口の動きなどの表情筋、その前後のセリフや口調、その流れから演算をしてどんなことを考えているのか推測しているに過ぎない、ただその処理速度と精度があまりにも高すぎるからあたかも心を読まれているように相手が感じているだけのことだよ」
それだけ言っても観萌はにわかには信じられないって顔をしていた。
あたしは少しわざと意地悪そうな表情浮かべていった。
「だって、さっきあたしはお子ちゃまなあなたがとても想像がつかないようなエッチエッチな回想をしていたからね、心が読めていたらきっと、あなたは卒倒しているよ」
クスッとと笑ったあたしを見た観萌は思わずあたしを巻き添いにして畳の上に横倒しになってお互いに「スキ」を繰り返して言い合った。

そしてその夜あたし、月海と観萌は生まれて、それぞれにとっても、初めて女の子同士で一つになった。

土日を挟んだ次の登校日、退学を覚悟して中学校に行くとホームルームの前に理事長室に呼び出された。
向かって葉類智恵学園理事長、机の上にはこちら向きに理事長机の上にクソ生意気そうなメスガキが座っていた。
身長に至っては140cmあるかないかくらいだろう。
「こいつのことは気にするな」
いやいや、そんなこと言われたら余計気になるです。
「こいつはあたいの娘で葉類亜希、刑事みならいだ」
刑事みならい?なにそれ?と思ったけれど一応突っ込んでみる。
「そのクソガキ、いえ、亜希さんですが、12才以下にしか見えないんですが、本当は何才ですか?」
すると学園理事長はドヤ顔で言った。
「本当は12才以下かもしれないが書類上は19才だ、安心しな!」
全然安心できないわー!、あたしは強く確信した。
しかも右肩に包帯ってなめてるの?
と言いたかった。
「で、まだ入院中のところ悪いが昨日の水無月海くんの教師に対する暴行事件と佐原観萌くんの校則違反に関しての調査の件はどうだった」
「あ、むしろ生活指導に先生の方に問題があり、彼こそ処分すべきじゃないかと」
「それで佐原観萌くんはどうかね?」
「ま、普通じゃないですか?それよりも両者の家族に問題がありとみましたので2C組の水無月海さんと1B組の佐原観萌さんの同棲もうちの署員の家族として認めるべきでは」
そういったいきさつで2人は無事にこのまま通学を許され生活費の問題も無くなったのだが問題はこの時の状況が校内全体に実況中継されていたらしくてあたしと観萌の仲が同棲していることまで全校に暴露されてしまったことだ。
「おのれぇ!刑事みならい葉類亜希めぇ!」
私は校舎の中心で思わず叫ばざるを得なかった。

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「しかしこのバカップル、人前でも容赦ないな」
突然、冬河銀の声があたしたちの目を覚ました。
どうやらうたた寝をしている間にいつもの癖で無意識に抱き合ってディープなキスを交わしていたらしい。
「え、ここどこ?」
慌てふためく観萌、そしてみんなの視線に気がついて赤面するあたし。
「ここは熊本市内のどっか」
可奈野椎がナビを指差していったがナビゲーションシステムは絶賛大不調らしくてさっきからフリーズしているらしい。
観萌は立ち上がりスライドドアを開いて星空を見上げるとスマホのマップアプリを立ち位上げて経度と緯度の数値を打ち込んだ。
そのマップを見る限りこのシビリアンの位置は熊本市からかなり南に外れた位置にあるようだ。
突然、ナビゲーションシステムが再起動して再び見たくもない女の顔が映し出された。
「あーらまあ、みなさん全員火山性毒ガスにやられて死んだんじゃなかったの、残念だわぁ、香典がわりに5万円程、月輪のキャッシュカード口座に振り込んじゃって損したわぁ」
不快そうに加世は言うと一方的に地図画面に切り替えた。

しばらく車内は沈黙が続いていた。
「もしもよ、もしもあたしたちが加世に指示されなくて阿蘇山の第一火口にむかっていなかったらどうなっていたとおもう?」
あたしは誰ともなく訊いてみた。
「わからない、でも私が全員の避難後に火口内のマグマ溜まりに溜まっていた有毒ガスの大半を成層圏に飛ばすように月海に言ってなかったら・・・」
観萌は相変わらず妙な日本語で言うと絶句した。
おそらく犠牲者は広範囲に渡り二桁程度じゃなくてもっと・・・

下界Part5 終わり

Part6に続くと

今回は那州雪絵さんの「ここはグリーン・ウッド」からネタを(無断)拝借しています

さてどのキャラからのネタでしょうか?

当てても何も出せませんσ(^_^;)

ここから先は

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