下界Part8

下界Part8

毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離した描写がめちゃくちゃ多数ありますことをお断りしておきます

可奈野椎(かなの つち) 10才、小学5年生だった頃のあたしは少なくとも今よりは大人だったかもしれない。
そろそろアニメや携帯ゲーム機にも飽き始めていたあたしは目的も、あてもなく本屋めぐりをしていた。
子供向け絵本から大人向けのファッション誌、科学や歴史の本。
適当に手に取っては元の位置に戻していた。
しかしある時手にした本を開いた時、あたしの頭は拒絶したのかそのページに載っていた白黒写真から目を背けてしまっていた。
それはヘルメットをかぶった兵隊さんが隣のお姉さんくらいの女性に対して言葉では表現できないほど酷いことをしている写真だった。
おへその下あたりに長い棒状のものを突き刺され黒い液体をそこから流していた女の人はとても痛そうな表情をしていると思いきやもう何も感じていない死んだ人のような目をしていた。
『早く本を閉じて元の場所に戻したい』
そんな気持ちだけがあたしを急がせたが自分の指はあろうことか次のページを開いていた。
見なければ良いものをついうっかりと目にしたあたしは吐き気をもよおしていた。
もう恐怖と嫌悪感でその本を投げ出したいのに投げ出せず目を逸らしたあたしの目にはしっかりとその光景が焼き付けられていた。
別居中のお父さんの股の間にある太くて固そうなものをお隣のお姉さんに似た女の人の股の間に差し込んでいるようにしか見えないその写真には近所のアパートに住む同じくらいの歳のお兄さんも一緒に写ってピースサインのようなポーズを取っていた。
「さすがにお嬢ちゃんには刺激が強すぎますね」
少し大人びた、その写真に写っているくらいの大きなお姉さんがあたしの手からその本を奪い取って素早く棚に戻すと大きめのフェイスタオルをあたしの口に当ててきた。
そして素早く店員を見つけたのか大きく手を振りながら言った。
「すみません、連れの子が体調が悪くて気分を悪くしたようなので御不浄の場所を教えていただけたらありがたいのですが」
そういうと店員に教えられたようにあたしの背中をゆっくりと後押ししながら小さなな声で囁いた。
「もう少しだけど我慢できる?」
あたしは小さく首を横に振った。
「そっか、無理なら出してもいいけど止まらんなるからなるべくガマンしてね」
彼女は片手でドアの引っ掛けに指を差し込むと一気に引き開けてそこから歩く速度を一気に上げるとあたしのお腹に冷たく硬い感触が当たった。
「我慢させてごめんね、もう好きなだけ出していいよ」
そう言われて、背中をゆっくりと撫でられた途端にあたしの口から大量に熱くて、酸っぱくて苦いものが溢れ出すように勢いよく流れ出していた。
目の前がすっかり真っ青になりあたしの耳には水槽の蛇口から流れる音だけが聞こえた。
「もう大丈夫?がまんは禁物よ」
彼女はそういうともう一度あたしの背中を摩り始めてくれた。
もうあたしの口からは酸っぱい汁しか出てこなかった。
「もう大丈夫みたいね、悪いとは思うけどしばらくはそこの壁にもたれてしゃがんでいてくれないかしら?」
彼女に導かれるままにあたしはトイレの壁にもたれかかるようにして腰を落としてひざを抱えるようにしてしゃがみ込んでいた。
水が流れる音と何かをすくいあげる音がしたと思ったら彼女は何かの入ったビニール袋を自分の黒い大きなカバンに入れていた。
そこから小さな水筒とコップを出すと中の液体をコップに注いであたしに手渡してくれた。
「お口直しにどうぞ、ってただの砂糖入りの紅茶だけどね」
あたしは思わず言われた通りに飲んでしまったが本当に甘い紅茶だった。
「さてと、あなたは都合よく私に利用されちゃったわけだけどお詫びにココアと塩クッキーをご馳走しちゃうけど」
彼女はそう言いかけて少し恥ずかしそうな顔をしてから続けて言った。
「歩いて少しの所だけどうちに来る?」
あたしは少しだけ考えたが彼女に提言に従う事にした。

あたしはその頃はまだ最初のアレが来てから2、3回目がもうすぐというのもあって自分が他人からどう見られているのかなんて気がついていなかった。
「今日はまだ小学3年生に位にしか見えないけど本当は何才なの?」
本屋を出てから唐突に聞かれてしまった。
「あら、こわい、お姉さん、まだ椎ちゃんに呪い殺されたくないなぁ」
なぜ、この人はその事を知っているのだろうか?
改めて彼女を見ると彼女は中学生くらいの少女、いや、もうすでに高校を卒業してから数年経った大人の女性にしか見えなかった。
白い半袖のワンピースがところどころ茶色いシミになって汚れている。
多分トイレに行く途中であたしが堪えきれずにフェイスタオルに吐いてしまっていたそれだ。
それが漏れてかかってしまって汚してしまったのかもしれない。
「あ、これですか?気にしなくていいですよ?洗えば落ちますし
、些細なことですよ」
笑っていっていたその人はその当時、あたしの家族が住んでいた
アパートの隣のお姉さんによく似ていた。
その隣のお姉さんは腰まである濃い栗色の髪の毛、長い上むきのまつ毛の生えた大きな緑色がかった瞳。
形の整った胸にくびれた腰と少し突き上がったお尻。
でもこの人の髪の色は青みがかっていたし髪の毛は胸までしかなかった。
「椎ちゃんの家の人まだ誰も帰ってきていないみたいね」
驚いた事にそのきれいな女性は本当にお隣の女の人だった。
しかし容姿が少し違うような気がする。
もしかして髪を切ってヘアカラーを変えたのかも、なんてませた事を考えていた。
でもお隣の部屋からは時々男の人の怒鳴り声が聞こえている気がする。
それどころか殴ったり蹴ったりする音が聞こえてくる日もあるくらいだ。
「お姉さん、あの悪い男の人と二人暮らしなの?」
思わず訊いてしまった。
あたしは隣の彼女の部屋からはその2人の声しか聞いたことがない。
「あ、そうなんだ、あの写真の女の人と私を重ねて見ちゃったんだね」
彼女はそう言ってあたしの肩を抱き寄せると小さな声で囁いた。
そして彼女は自分の黒い大きなカバンから鍵を取り出すとドアの鍵穴に差し込んで左に回した。
「安心して、今日は父は来ないから、ゆっくりしていっていいよ」
まさかあんな酷いことをする人が彼女の父親だとは思いもしなかった。
彼女がドアを開けて招き入れてくれた部屋はあたしの家族が住んでいる部屋とはほぼ同じだったが置いてある家具などの量が極端に違っていて本当に必要なものしか置いてないといった感じだった。
入って左側手前には開戸が四つあるキッチン台の上に開戸が冷蔵庫とシンク、水切りカゴの隣には小さなガスコンロが乗っているだけだった。
その奥、右側は六畳の畳、と上下二段のクローゼット、多分上に服をかけて下は布団入れにしているのだろう。
その向こう右側奥にはトイレの扉、その左隣の曇りガラス引き戸の向こうには右側に洗面台と洗濯機、その反対側右側トイレの隣には風呂場とがあった。
そしてその間の向こうには押して開くアルミの扉を開けると幅が1メートル半ほどのベランダがあってそこに洗濯物を干す洗濯竿がかかった枠とお風呂と給湯器を兼ねた湯沸かし器が設置してあるはずだった。
あたしの家族が住んでいる部屋と向きが逆だったらたぶんだけど・・・

何もないから適当に座って。
彼女がいうように本当に何も無かった。
テーブル兼こたつもテレビも服を入れるタンスも何も無かった。
あるのは3段重ねの白いモスボックス、服を入れるのに使っているのかな?
あたしは母と二人暮らしだったから家財は少ない方だったけどそれでもこれじゃ足りないと思った。
そのモスボックスの上には5、6冊の難しそうな本、お医者さんが読んでいそうな本が積み上げられていた。
彼女は自分の黒い大きなカバンから本を2冊取り出すとその上に置いた。
あれ?確かあの本を彼女がレジを通すところをあたしはみていない。
という事は万引き⁈
その程度の知識はあたしにもあった。
どさくさに紛れて利用されちゃったって事らしい。
彼女はそうしている間にもヤカンでお湯を沸かしてキッチン台の引き出しから粉末のミルクコーヒーを出して冷蔵庫から塩クッキーを乗せた皿を取り出した。
彼女はミルクココアはあたしの分一杯しか出さなかった。
「ごめんなさい、父が次々と割ってしまうから・・・」
そういうと急に彼女は黙り込んでキッチン越しに窓の外を見ていた。
「でもなんであんなことをするですか?」
別に彼女を責める気はなかったけれど万引きの件について尋ねた。
しばらく沈黙を置いてから彼女は「なんでかなぁ」とだけ呟いた。
ミルクココアも塩クッキーも最初は美味しく感じていたけどだんだん本当にしょっぱく感じるようになってきた。
彼女は急にあたしに強く抱きついてくると耳元で「椎ちゃんって本当にやさしいんだね」
と囁いた。
彼女の体温はとても暖かくてずっとこのままでいたいと思い始めていた。
突然、彼女は「間に合わない」と言ってあたしの体を突き放した。
「椎ちゃん、今から自分の靴持ってトイレの中にこもっていて」
彼女はそう言うと玄関に飛びつき中から鍵をかけるとあたしに靴を投げ飛ばした。
「急いで」
何が何だかわからないうちにあたしはトイレに入れられてしまった。
ほんの僅かな時間を置いて激しくドアを叩く音がした。
ガチャガチャとドアノブをゆする音がすると聴き慣れた声が聞こえた。
「中にいるんだろがバケモノのクソガキが、カギはあるんだぜ」
そう言うとその男がドアを開けて入ってくる音がした。
「今日は生活保護費が入る日だろ、さっさと降ろした金をよこしな」
『バシン!』と彼女が殴られる音がした。
『ドス!』っと今度はお腹あたりを殴られる音が「やめて!」と泣き叫ぶ声。
「チッ、財布の中はたったの2万円かよ」
男は吐き捨てるように言った。
「じゃあせめて体で楽しませてくれよな」
そう言うと同時に『バシン!バシン!』とたぶん平手で顔を強く叩かれた音。
「恐怖に怯えた目をしやがって、スカートを必死になって押さえているってことは俺がこれから何をしようとしているのか心を読んでいるんだろうな、この化け物が」
「や、やめてください」
彼女が弱々しく言うと『ドス!』と言うにぶい音がした。
『ビリッ』っと服を引き裂く音。
「おっとまさか誰か来るなんて思っちゃいないよなここの住人は深夜まで誰も帰ってこないさ、そんなアパートを選んだ自分を恨みな」
「や、やめてください」
だんだん弱々しくなる彼女の声
突然、今日見た本の写真がフラッシュバックしたと思った途端にあたしの目の前が白黒の世界になった。
ドアを開けたあたしの目に入ったのはワンピースががスカート部分の裾から引き裂かれてそこから丸見えになった彼女の白いパンツの股の部分をずらして自分の大きなものを捻り込もうとしていた男の姿。
「やめなさい、下界の愚民が」
あたしは確かにそう言った。
自分とは異なるやや低めのハスキーな声で喋っていた。
「天井に叩きつけられなさい」
そう言った途端に男の身体は上に吹っ飛び言われた通りに天井に叩きつけられて落ちてきた。
「こ、この化け物どもめが」
男はそう言って逃げようとしたがつまずいて転んだ。
「今日のところは逃してあげるけど観萌から奪った金は置いていきなさい、さもなければ」
あたしの目の前が今度は真っ赤になってきた。
ゲームで言うリミッター解除か?
「もういいの、ありがとう」
気がついたら彼女があたしのすぐ前、足元にしがみついて泣いていた。
顔の両頬が真っ赤に腫れていた。
男はあたし達に向かって1万円札を2枚投げつけると後ろも振り返らずにドアを開けて走り去っていった。
あたしはゆっくりと彼女を抱き上げると泣いている顔の涙を自分のハンカチで拭き取ってあげた。
『あれ?彼女の背が縮んだ?』
あたしは少しパニックになりながら自分の手のひらを自分の頭のてっぺんに置いて横にずらして彼女のどの辺に来るのか試してみていた。
「えーと口のあたり?」
思わず呟いてしまった。
それを見て今まで泣いていた彼女が急にクスクスと笑い出した。
「そうね、さっきまでのあなたは私の胸あたりまでしかなかったから、きっともうすぐおんなのこのひがやってくるんじゃないかしら?」
彼女は楽しそうに笑っていたがあたしはその期間中ちっとも楽しくない頭痛はするは、吐き気はするは、下腹部は痛いは、貧血で目眩はするわでろくなことがない。
「あら、それはほとんどの女の子は一緒よ?」
彼女は笑いながら言っていたが急に真顔になった。
それどころか青ざめた顔をしている。
「ここの鍵は新調したばかりで父は持っていないはず、それを持っているって事は」
可能性は一つしかなかった、彼女の母親の家があの男に襲撃されて乱暴を働いて奪い取った、それしか考えようがなかった。
彼女は男に引き裂かれた服を着替えようとモスボックスを開きかけたが動きを止めた。
引き裂かれたはずのワンピースが元に戻っていて、
あたしの嘔吐物で汚したはずのシミも消えていた。
「椎ちゃん、これもあなたの能力なの?」
彼女はそんなことを言ったけどあたしの耳には入ってこなかった。
「ごめん、椎ちゃん、あなたのお母さんが帰ってくるまでここで待っていて」

彼女はそう言うと自分の黒いカバンをぶら下げて鍵もかけずにアパートの部屋を飛び出していった。
「なんでついてくるの?」
彼女は走りながら振り返って叫んだがあたしも負けずに大声で叫ぶ。
「だってあたしも観萌さんのことが心配だから」

しばらく走ったところに彼女の母親が住んでいるアパートがあった。
「鍵が壊されている」
彼女が小さく呟くとあたしに「しゃがんで壁の影に潜んでいて」とささやいた。
彼女はドアを勢いよく開けるとしばらく中の反応がないことを確かめてから用心深く中に入ると血まみれになって倒れている女の人がいた。
そのそばには全弾を撃ち尽くしたサイレンサー付きの拳銃が落ちていた。
「救急車を早く呼ぼうよ」
あたしは叫んだが彼女は首を横に振った。
「いまから呼んだんじゃ間に合わない、それに出血が多くてショック状態になっている」
彼女が無言で黒い大きなカバンを広げるとどこぞの闇医者が持っていそうな医療器具一式が出てきた。
「運がよかったね、かあさん、堕天使様の立ち会いのもとで私の手術が受けられる」
彼女はそう言って両端に太い針のついた太いチューブを取り出すと両方の針に消毒液を吹き付けた。
それの片方を自分の左肩に突き刺すとみるみるチューブを真っ赤な血液が流れ出してもう一つの針から脈打つように吹き出していた。
彼女はその針を自分の母親の肘の内側の太い静脈に差し込んだ。
足の太ももの穴が開いたところを消毒したメスで切り開いて弾丸を摘出して破れた静脈血管を消毒済みの針と糸で縫合して切り開いた切り口も同様に縫合した。
お腹の傷も同様に処置すると自分の右手の人差し指の先に別のメスで切り付けると溢れ出した赤い血を弾丸が掠った胃などにそれを塗り始めた。
「救急車を呼んでいいよ」
彼女がそう言った時全ての処置は終わり、彼女は洗面所で血のついた用具を洗っていた」
(作者注:良い子、いや普通の人間は絶対に真似をしてはいけません!真面目に救急車を呼びましょう。)
「あなたは今までであいつが引っ掛けてきた女の人の中で1番まともだったね、でも今日でお別れだね、私といるとあなたはどんどん不幸になってゆくから」
彼女はそう言って自分の母親の頬にキスをするとカバンの中身を片付けて立ち上がった。

帰り道にあたしは彼女に訊いた。
「あたし達指紋とか頭髪をバッチリ残してきたよね、ケージドラマみたいに逮捕されるんじゃ?」
すると彼女はこう答えた。
「あなたも私も指紋なんてあってないようなものだし、DNA判定も当てにならない、なぜなら私達とってそれらは毎日大きく変動するものだから」

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それから数日後、彼女の部屋はもぬけのからになっていた。
いや、正しくは彼女の部屋で若い身元不明の女性が発見された。
白昼堂々とサイレンサーなしの大型拳銃で何十発も撃ち抜かれて蜂の巣、どころかひき肉のように粉砕された彼女の亡骸は身元不明のまま無縁仏として見送られることとなった。
犯人は結局見つからずじまいで事故物件となったアパートは当然なことに閉鎖して解体となった。

あたし達母娘も別のアパートに引っ越すことになった。
しかしどこで嗅ぎつけたのか父親は今も時々あたしの母親を抱きにくる時にだけ訪れ金を奪い取って行った。
たまには実の娘であるあたしもつまみ食いにしようとするゲスな男なんだけど。

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霧島市の喫茶店でモーニングを食べているとき奇妙なニュースが流れている時にあたしはその時のことを思い出していた。
その奇妙なニュースとは、市内のとある外科系の診療医院に何者かが不法侵入したらしい。
侵入の警報器がなって目を覚ました住み込みの医師がそれに気づいた。
派手に割られた窓ガラス以外には何かが盗まれたとか荒らされた形跡は全くなく、その代わりそこの手術代には身体中が包帯で巻かれた13〜15才くらいの少女が寝かされていたと言う。

そしてそのアナウンサーによると救急病院はその日に限って市内で強盗に乗じた婦女暴行事件が多発して119番がつながりにくくなっていたと聞く。

「少女に残されていたと思われる体液の入った容器も残されておりその中の体液は他の婦女暴行事件の被害者の残されていたそれとDNA判定は一致していることから犯人の割り出しは時間の問題だと警察発表がありました」
テレビ局のアナウンサーが淡々と原稿を読んでいるのを店にいた全員が釘付けになっているのを観ているかと思いきや1人だけ全く別方向を見ている仲間がいることにあたしは気がついていた。
観萌ちゃんは黒い大きなカバンをテーブルの下に置いた。
そういえば彼女はいつも肌身離さず持っている。
そして席を立ち、新聞を読むふりをしながら時折テレビ画面をチラ見している男が座っている席にまっすぐに歩いていった。
「先ほどは私の中にもたっぷりと出してくれた上にご丁寧に心臓にまで包丁を突き刺してくれてありがとうございました」
観萌ちゃんは確かにそう言った。
言葉は丁寧だけど冷ややかな声色。
「な、なんのことかなボクにはさっぱり」
男はそう言うと席を立とうとした。
観萌ちゃんは男の前のテーブルを前にずらして隙間を作ると男の膝の上に横向きになって座った。
とても中学1年生の女子がやるような行為には見えない。
実際、身長が173cm以上あって胸とかの発育もいい彼女は中学生の見た目じゃないんだけど。
「まさかこんな美人の顔を忘れたなんて言わないですよね」
彼女がそう言った時香織さんの目が鋭く光った。
「あ、だから彼女は時間操作の能力を貸してくださいって」
そう言ってから少し不満そうな顔をした。
「そんな面白いことをしていたんなら誘ってほしかったな」
そんな香織さんを見て観萌ちゃんは複雑な笑みを浮かべた。
「時間操作をしてあなたが手をつけた女の子をケアして回るのは大変でしたよ?合計30人は超えていましたからね」
そう言った途端、観萌ちゃんは男の膝から飛び退き2人とも姿を消した。
そしてフルボッコにされて床に倒れている男と離れた場所でハイタッチをしている香織と観萌ちゃんの姿が現れた。
「能力を与えたのは間違いなくあいつだよね」
とあたし。
「加世以外には考えられないよ」
と月輪
「時間操作のコアは破壊した?」
と亜希。
「今度同じことをこの男にしたらもう身体が耐えられないだろうな」
と月海さん。
110番はしておいた。あとは警察が来るのを待つだけだろう。
数十分ほどでサイレンを鳴らしたパトカーに乗って3人の警官が来た。
警察手帳を見せて
「犯人逮捕ご協力ありがとうございます」
そう言って2人の警官が男の両肩を抱えて立ち去ろうとした時
「横取りは感心しないよ?」
と亜希は言った。
もう既にあたしたち7人が彼らを取り囲んでいる。
「犯人逮捕じゃなくて容疑者の身柄確保でしょ?」
「すみません、言い間違えました、しかし警察手帳は本物でしょう?」
リーダー格と思わしき警官が言った。
「甘いなぁ、私がどれくらい偽造警察手帳を持っていると思うの?バレバレなのよ」
「いや、亜希さん、そこ自慢することじゃないから」
一瞬にして男の両肩を支えていたふたりのがうずくまり出して、形勢不利と見た加世は自ら正体を晒して消え去った。
そしてやっとホンモノのパトカーがやってきて男を確保していった。
「今度はホンモノだったの?」
と花奈ちゃんが亜希に訊いた。
「そりゃあどうしたらバレずに済むか毎晩研究していたからね!」
「だから、亜希さん、そこは自慢するとこじゃないし」
笑いながら言う亜希にあたしは思わずまた突っ込んでしまっていた。
「でも時間アリバイとか成立するんじゃ?」
不安げに銀ちゃんが言った。
「それもそうだ一晩で30人とかあり得ないし」
月海さんが言った。
「それがあり得ないことにあの男ったら物色中は時間停めていなかったのよ、二階の窓から覗き見しているとかね、だから不審者情報もあると思う」
観萌ちゃんはそう言うと呆れたようなポーズをした。
「じゃああの男は放っておいても捕まっていたってこと?」
月海さんが言うと観萌ちゃんはそれに答えずにいった。
「まあそれとは別に他の方達は私とは違ってとても簡単にあの世にいっちゃうし、私だって心臓に穴あけられて結構ヤバかったんだから」
そこでひと呼吸置く
「だから小さい時からお医者さんのお勉強してたの」
「隣に住んでいた万引きお姉さん!」
あたしは思わず叫んでしまい観萌ちゃんに強烈な平手チョップを頭上にくらい言われてしまった。
「言い方!」
そして恥ずかしげに言う
「あれはちょっと借りていただけって言うか、あとでわからないようにちゃんと返していたしぃ」
モジモジしながら言う観萌ちゃんはまさしく観る萌だった。

しかしそれよりも今回は加世が時間を遮断する範囲を少なくとも3メートル以上に広げていた可能性を亜希が指摘した事が気になった。

下界Part8 終わり

Part9に続く

今回はパクリ要素満載です、いくつ当てられるかな?

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