カレンダーガール6 亜希の拾い癖

カレンダーガール6 亜希の拾い癖

一応今で通りに
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    寒いのに親娘でヒトダマ釣り?

「つれるかー?」
河原で体育座りしている風間先輩が訊いてきた。
「見てわからないの?」
すぐ左隣で同様体育座りしている私は間髪入れず返した。
10分経ったからそろそろ餌を替えなきゃ。
釣り竿を弾き、糸についた浮きをつかむ。
その先の針には餌が・・・・・なかった。
「暇だなぁ」
風間先輩。火のついた煙草を咥えながらさっきから川の流れに流される浮きをただぼんやりとみつめている。
「亜希よぉ」
「何ですかぁ、風間先輩」
「こんな水深浅そな場所に魚いると思うか」
私に釣りのことなんてわかるはずないでしょ、でも大体ここ私が水の中に入ってもくるぶしくらいまでしかいかないと思うんですけど。
「何でこんなところで私達釣りしてるんですかね?」
とうとう本音できいしまった。
さっきから川沿いの道を歩いて行く通行人や通過するトラックの人達が怪訝な顔をして私達を見て行く。
そりゃあそうだ、私達が釣りをしているのは堤防ではなく川ん中のドマンん中、100メートル以上ありそうな川幅の中、たった2、3メートル幅しかない水の流れの横の小石の丘の上に、折り畳み椅子を置いて座り、釣りのような仕草をしている、親娘程歳の離れた男女二人組を見つけたら、十人中九人がそいつらの頭を疑うだろう。
「絶対釣れないよね、何でこんなことしているの?」
案の定、この付近の住民と思われるご高齢の男性に声をかけられた。
「此処っていつもこんなに水が少ないですかね?」
風間先輩は男性に訊いた。
「そりゃあこの季節はこんなもんだよ」
当たり前のように男性は答える。
「でも先々日は結構まとまった雨が上流の方、で降ってたよね」
先輩は確認するように言った。
「んー、そうだったかなあ、おぼえとらん」
男性はそう言い残すと立ち去っていった。
「先輩は何が聞きたかったんですか?」
私は一旦引き上げた釣り竿を再リリースすると立ち去ってゆく男性を見ながらきいた。
「ん、俺らがここでスケべするところを見てもらおうかな、って思ってな」
「しませんよ」
すかさず私。
「いいじゃねぇかよ、肉体的には血のつながりないし、前はあんなにもヤリまくっていたじゃねえか?」
「ありますよ、私には先輩の娘としての記憶がちゃんとあるんですから」
私はスカートの中に潜り込んでくる左手をつねりながら言った。
「だってよぉ、亜希は俺のことパパとかお父さんなんていまだに言わねえじゃねぇかよ、ほら亜希の肉体は俺のマグナムを求めてるんだろ」
と言いながら右太腿をツーと撫でながらスカートをめくり上げた。
「なにする、ボケ!」
私は思わず叫び先輩を両手で突き飛ばすと仁王立ちして彼を見下した。
「あー思い出したわい、確かあの辺でドデかいトンネル工事を始めるようになってから水が流れて来んようになったって噂だね」
立ち去ったはずの男性が背後からスカートを両手でめくり上げて言った。
「逝ったんじゃないんですか?」
と私、流石に見ず知らずの人間をいきなり突き飛ばせない。
「逝ったさ、ついさっき名古屋行きの始発『タキオン』の車輌の中で席と席の間に挟まれて、押し潰されたね」
唐突に訳のわからないことを言い出したな、と思った。
『タキオン』って確か中央新幹線の東京名古屋間をノンストップ50分で結ぶ夢の超高速列車のことじゃ。
しかし私はそれを含めた車輌事故の話は聞いたことがなかった。
「最初のうちはメッチャ痛くて、メッサ苦しかったんじゃが椎奈とかいう名前のべっぴんさんに助けられてその豊満な胸の中で抱かれているうちに気持ようなって気がついたらここを歩いとったというわけじゃ」
そう言うと男性の体は消え私と同化していた。いや、私の中に取り込まれたと言った方が正しいか?
「今のは一体誰だったんだろうか?」
疑問に感じたが今回は深く考えないことにした。
今回は警部直々にこの一級河川である『おおい川』の水量がやたらと減っている理由を探れと言う意味不明な命令だった。

私にはちょっと変わった特技がある、死んだ人間の魂を自分の中に取り込んでしまうと言った類のものらしい。
『そんなのどっかで聞いた事がある、小説か漫画のパクリじゃねえか?』と思われるかもしれない。
だが事実そうなんだから仕方がない。
最初のオリジナルは誰だったかもはや覚えていないくらい私の中にはたくさんの人格と記憶があるのだがその中の1人が今私のすぐ横で白目を剥いて気絶している、風間先輩、こと風間先輩の一人娘である風間志乃だった。

彼女は胸を背中から拳銃で撃ち抜かれて死亡したのだがたまたま?その場に居合わせた私と合体して復讐して今に至る。
最初のうちは志乃の記憶が封印されていたためもあり親娘の境界を超えた付き合いをしてしまっていたがその辺は追及しないで欲しい(^◇^;)
「本能寺の変」
ブツクサ言いながら風間先輩は起き上がった。
どうやら私が履いているイチゴパンツをみたと言いたいらしい。
「ところで先輩はどこまで見えていたんですか?」
一応聞いてみた。
「さあな、ところで先日お前らが騒いでいたカレンダーガールの件はどうなったのか?」
唐突に先輩が訊いてきた。
「えーとなんだっけ?すごい非現実的な話になるんだけど超リアリストの彼に言ってみたところで信用してもらえるだろうか?
「先輩さ、例えばの話だよ、先輩の部屋に飾ってあったポスターなりカレンダーに写っている女の子が突然そのポスターやカレンダーから飛び出して喋り始めたり部屋の中を動き回ったらどうする?」
先輩は私の話をしばらくは真面目に訊いていたようだったけど突然心配げな表情になり私の額に両手を当てて言った。
「お前デルタミクロンに頭でもやられたか?」
余計なお世話じゃ、と言い返したかったが彼は彼なりに父親として自分の娘に対する責任を感じているのだろうか?
「いや、そんなんじゃないし、マヂだし」
その後を続けて言おうとして私は諦めた。
ここまでの展開がまだマシな方でその後起きた出来事といえばさらに出鱈目な案件ばかりなのでどう話せば理解してもらえるのか皆目見当もつかなかった。
「大型トレーラーの前に飛び出した女子中学生がいてさ、お腹を前輪で轢かれて内臓がことごとく破裂して体外に飛び出してその直後にダブルの後輪で頭蓋骨を粉砕させられて脳細胞を路上にぶちまかされたかわいそな娘さん覚えている?」
「ああ、その子なら覚えている、遺体処理が大変だったと聞いた」
先輩は悲しげに言ったが彼は真実を全く知っていない。
「その子の霊、と言っていいのか魂みたいなものがふわふわと漂ってたまたま私のアパートの前を通りすがったんだけどさ」
先輩はさほど驚いた様子も見せずに私に言った。
「それでいつものあんたらの悪い癖で取り込んでしまったと言うわけか?」
「うん、まあ」
私は短く答えた。
そう、あの非番でアパートの前でタバコを1本咥えている最中に彼女達と遭遇した。
通り過ぎてゆく彼女、いや、2人分の感触があったのにも関わらず妙な気がしたせいか私は思わず彼女達を呼び止めてしまった。
「どちらに行く気ですか?」
返事はなかった。ただ2人からはどうしようもない絶望感だけがわたしに伝わってきた。
「その精神的ボディから想像するによほど大きくて重たいものに轢かれたのかな?」
返事はなかった。
どうやらどうしてそうなったのかさえ覚えがないようにも感じられた。
私は大きく息を吸い込むようにして彼女達を自分の胎内に吸い込んだ。
目の前に展開されたDNAマップを元に彼女の体の復元を試みた。
なかなか上手くいったとは思ったがその風貌は楓凛が持っていた写真の子に少し似ていた気がした。
身長が20センチ足らずにまですくすくと2人の少女は私の胎内で育ったが記憶の回復にまでは至っていなかった。
私はスマホで楓凛を呼び出すとアパートにまでむかえに来てもらえるようにお願いをしてみた。
返事は二つ返事でアパートまでにきてもらえる約束はできたけど彼女を待っている間に風間先輩からあまり感じの良くないニュースが飛び込んできた。
名古屋市内の国道23号バイパスで女子中学生と思しき少女が大型トレーラーに轢かれて無惨な姿を晒していると言うものだった。
「お前には少々えげつない光景だから無理してこなくても良い」
そう風間先輩は言ってくれたが私は別の理由でその現場に向かうことを拒んだ。遺体の状況などから判断するとどう考えてもその事故現場は彼女らが命を落とした場所そのものだったから。
どうやら現場のガードレール付近に飛び込んだ彼女自身が書き留めたと思われる遺書が落ちていたらしいけど妙な話だとは思っていた。

   取り敢えず育ててみた

「おい、おい、遺書まで疑っていたらキリがないぞ」
なんて親父もとい、風間先輩は言っていたが筆跡鑑定をするまでもなくそれが偽物だっつうのは断言できた。
そもそも彼女が弾かれた場所は国道23号線のバイパス部分、自動車専用道路であり高架になっている。
築地口インターチェンジと竜宮インターチェンジのど真ん中、どっちから侵入したとしてもそんな場所を人が歩いていたら目立つ事この上ない。
しかもそこは彼女が住んでいる場所から13km以上は離れている。
普通免許はおろか原付免許さえ取得が不可能な中学生である彼女が利用可能な移動交通手段といえば公共交通機関のみ、上小田井駅から地下鉄鶴舞線を利用したとして上前津駅で名港線に乗り換えても築地口駅からかなり歩かなければならず、また上小田井駅から犬山線を利用して金山駅で常滑線に乗り換えて大江駅で降りたとしてもかなり歩かねばならずこれも除外。
ましてや金山駅からJR東海道本線に乗り換えて笠寺駅で降りたとしたらさらに歩かねばならない。
そしてさらに決定的な否定的事実は自己の推定時間が深夜の2時から3時の間だと言う事。
「電車もバスも動いているわけないじゃん」
私は電話口で風間先輩に怒鳴った。
もちろんタクシーという可能性もあったがそんな深夜に女子中学生を特に理由もなく乗せるわけがなかろう、というわけでこの説もボツ!
「まあ普通に考えたら自宅付近で何者かに拉致されて事故現場で車外に放り投げられて、運悪く隣の車線を後ろから走って来た大型トレーラーに轢かれたというのが正しいかも」
私は少しずつ大きくなる自分のお腹をさすりながらスマホ電話口の向こうの風間先輩に話していた。
まあ実際には私自身は自分の子は出産した経験はないのだけどこんなものかなとか思いながら中の様子は常に感じ取ることができていた。
身長は2人とも今の所30センチを超えたくらい、当然のことながら本物の胎児に比べたらやたらと成長は早いかもしれない。

「本当にそれは運が悪かったのか?」
電話の向こうで今度は風間先輩が疑問を口にしていた。
「それってどういうこと?」
私は訊き返した。
「普通はあの道を走る車の平均速度は70〜90km/h以上、轢かれたとしてもほんの一瞬であそこまでひどくなる事は考えづらい」
「要するに運が悪くたまたま轢かれたのではなくて止まっていた大型トレーラーの前に拉致するのに使っていた車から彼女を止まっていたトレーラーの前に放り出してゆっくりと動き出したトレーラーにわざと轢かせたと」
トレーラーもまたグルで何か証拠隠滅のための轢き潰し犯行だった可能性が出て来たわけか?

私のお胎の中で1人の方がピクッと動いた。何か辛いことでも思い出したのだろうか?
私はもう一度自分のお腹をさすってみた。
荒れた部屋の中で膝を抱えて泣いている彼女の姿が見えた。
ショートカットの幼い雰囲気を残した少女だったが彼女の表情にはとてもそれくらいの年齢特有の活発さは感じられなかった。
数十年分の辛い人生を送って来て疲れ果てた中高年女性のような眼をしている。
何が彼女をそうさせたのかわからないけれど私のお胎の中で成長するにつれてその表情が濃くなってくるという事は彼女は生前に、いや死去する前によほど辛いことがあったと予想できた。
どう慰めて良いかわからなかった私は彼女が膝を抱えている部屋に私の中にいる1人の少年を送り込んでみた。
もはや記憶は定かではなくなって来ているけどその少年のあだ名は確か『ユーキ』と呼ばれていたような気がする。
急に部屋の中に出現した彼をみて彼女は一瞬驚いた、いや、実は彼女よりももっと驚いたのは彼、『ユーキ』の方かもしれない。
「由紀?」
彼は尋ねた。
「うん、ユーキだよ」
「寂しかったよ、どこに消えていたの?」
由紀がユーキに問いかけた。
「でも1人じゃなかっただろう?」
『ユーキ』は由紀の耳元で囁いた。
「うん、有希がいた、でも寂しかった」
「由紀、あたしはどうなるの?」
部屋の隅に置かれた机の上で立ち尽くす有希が呟いた。
「じゃああなたには私がつくわ」
そう言って私の中から勝手に『G』が飛び出して行って有希の体の中に入り込んだ。
元といえば『ユーキ(由紀)』も『由紀(有希)』も私たちの実験団体の中の1人、『G』が夢の中で見た登場人物だ。
それが何故ここにいるのかわからない、でもただ一つわかっているのは由紀も有希もただ生き返るだけでなく、私と同様に異能の力を発揮できそうなことだった。
そして2人の身長が80センチに達した頃由紀はもう一度あの部屋に戻りたいと決心をした。

胎内の仮想世界

再生と言ってもビデオの高速再生みたいにあっという間に完了するわけではない。それなりの時間と労力を必要とする。
ある程度タイミングも合わなければいかないことだってある。
その日、私のアパートをたまたま通りがかった彼女たちの想いは
たまたまアパート2階の外に設置された手すりで火のついていないタバコを口に咥えていた目の前を通り過ぎようとしていた。
普段の私ならさして興味を示さず、その想いも私の存在に気がつくこともなく、ただ通り過ぎていっただけだろう。
そうして行き場のないその思いは再び己の身体を失った場所に帰り、もう2度とその中に入れないことを知る。
グシャグシャに潰された自分の身体を目の当たりにして彼女達はどうするのだろうか?
しかし彼女たちの思いは私の胎内、いや、正確には卵巣付近に吸い込まれていった。
たまたまそこに排卵寸前にまで育っていた遺伝子情報がまっさらな卵子が2つ待機していたのはすごく幸運だったのかもしれないね。
通常の女性の卵子というのはその女性のパーソナルデーター、つまりDNAを中に内包して排出、排卵すると言われている。
言われているというのは私自信が専門家ではなく、しかも自分自身がその一般的な女性の常識が全く適用されないことを知っているから。
あくまでも他人から聞いた話なのでその辺は間違いだらけだという可能性が高いことも承知の上で聞いてほしい。
通常、その卵子が卵管を通って子宮に下ってゆきその子宮内面に着床するまでの間に受精が終わっていれば妊娠することとなる。
そうだ。
要はその間にその女性が男性と性交渉をしていて受精する必要がある、らしいのだがそれでめでたく妊娠へと舵を切ることになるらしい。
もちろんらしいと言ったのは私にはその経験はないから。
男との性交渉、早い話しがセックスをした事がないなんてカマトトぶる気は全くないよ。
実は今の記憶の主、風間志乃として父である風間先輩の前に出現してから自分が彼の娘であった頃の記憶を取り戻すまでの間、そんなことも知らないバカだった私は何度も、いや、両手どころかムカデの足でも足りないくらい何度も何度もやっちゃっている。
この国の法律だか常識的には『近親相姦』と言ってとても忌むべき行為らしい。
もちろん私が風間志乃としての記憶を取り戻して自分が実の父親と数えきれないほどの性交渉をしていまっていた時がつい当初は自ら死を選ぶことさえ考えていた。
それを思いとどませてくれたのはその当時私たちが関わっていたとある事件で知り合った私の親友であり、それ以上の存在でもある倶名尚愛、彼女のことだった。
「遺伝子的には親子の縁はないからかまへんで」
ということらしい。
まずは最初に私が彼と何回性交渉しても妊娠しなかったのか、それはもうクソ真面目に、笑っちゃうほど真面目に考察してくれた。
なんとなく言いくるめられた気がしないでもないが要は私の卵巣自体が普通ではないということらしい。
もっとも親友の愛自身も仲間でありブレーン的な存在である、リナとの検討の末に達した結論なのだろうが私が何回しても妊娠しないのはその特殊な卵巣が排出する卵子もまた普通ではないということらしい。
まあほとんどがそのリナという名前の天才幼女の考えだとは思うのだけれど。
そもそも私の卵細胞の中のDNAにはほとんどまっさらな白紙情報しか記録されていないのではないのか?という疑惑があるということらしい。
mRNAは今ののところ私の中に存在してはいるらしいがDNAそのものが不特定に多数存在するためにそこからコピーされるmRNAも刻一刻と変化をし続けているんじゃなか?という説も立ててくれていた。
上司であり、私が志乃としての生前実母親である葉類知恵に言わせると『まるでオカルトだな』という結論に達するらしいんだけれど。
「それで私の卵細胞は一体どこがおかしいのですか?」
と真顔で2人に訊いたことがあるんだけれど。
「いくら健全な男性の強い運動能力が高い精子が寄ってたかって押し寄せても受精することはない」
私の母親であり、かつ上司でもある葉類知恵に言わせると元々私の卵巣が排出する卵子は異常なまでに強固な膜で覆われていて並の精子じゃ突き破れないそうだ。
「一言で言えばもう最初から受精した状態で排出される感じかな?」
歯切れの悪い言い方をするなとは思っていたが警部はすぐに訂正をした。
「ただ誰とやっても妊娠しないというわけではなさそうだ」
「な、なんだってー!」
私と愛は同時に叫んでしまった。
「仮定の話なんだけどもしも地球人類のそれとは比較にならないほど強力な運動能力を持ち強固な皮を被った精子を放出する異種属の、それはおそらくはこの地球上の人類とは全く異なる種族なんだろうけどそいつと性交渉をすれば妊娠する可能性がある」
警部はそういうと深いため息をついた。
「まあこれは一般的な事象なんだけど」
そう前置きをして警部は続けた。
「普通の卵子は最初の1匹の精子の侵入を受け入れると自分を包んでいる膜を分厚く固く丈夫にして他の精子がもし侵入してこれないように防御してそのまま子宮の内膜に着床して妊娠が成立するわけなんだけどもそのそのやたらと強い精子を持つ男性と性交渉した場合はどうなるのか考えたことがあるか?」
警部はいきなり言い出したがそんなことは普通は考えないだろうと思う。
「昔とあるSF作家がな、宇宙からやってきた機関車よりも強く弾よりも早く飛べるあのスーパーヒーローが地球の女性と性交渉したらどうなるのかをクソ真面目に考察したエッセイがあってな、きみたちならどうなるとおもう?」
あまりにも真面目に訊いてきたので私と愛は思わず吹き出してしまっていたのを覚えている。
「何馬鹿なことを言っているんですか?そんなの彼が絶頂に達しった時に地球の女性は彼の腕力で破壊されて射精した時に打ち出された精液で上半身が吹っ飛んでしまうじゃないですか?立派な殺人ですよ」
愛は笑い飛ばしながら言ったが。だがシャレでもなんでもなくほぼ確実にそうなるであろうことは予想出来た。
「でも確かあの漫画作品には一時的に力を弱めるアイテムがありましたよね?アレを使えば?」
私はそのエッセイを知っていたわけではないが何と無く勘で答えてみた。

[ここ前後からラリーニーヴァンさんの短編集『無常の月』に掲載されたエッセイの盛大なパクリ、じゃない引用を含みます。]

「まあ確かにアレを使えば地球の女性がそのスーパーヒーローと愛の営みをしている最中に肉体を破壊されて命を落とすような悲惨な事故は防げるかもしれない、でもあれは一時的な効用しかないし彼の体から解き放たれた大量のオタマジャクシ、精子はどうなるのかな?」
「その精子は当然長生きするだろうからやがて排出される卵子と出会い普通にその卵子の膜を突き破って侵入して受精が成立するんじゃないの?しらんけど」
かなりアバウトな気もするけど私も同じ見解だった。
「じゃあ聞くけど取り残された無数の精子たちはどうなると思う?

まあ先を越されたんだからそのまま野垂れ死してもらうしか・・・『あ“』
私は心の中で叫んだ、地球人の卵子如きが多少分厚くして強化した程度の膜であの地球外生物の元気すぎて硬い精子の頭の突入を防げるわけがない。
「次々と無数の精子が突入してきて受精卵は跡形もなく破壊され尽くされるでしょうね」
なるほど地球の女性との子作りは無理ということか、私は妙に納得した。
「悲劇はそこでは終わらないね、その後行き場を無くした無数の精子たちが次はどんな行動に出ると思う?」
まあ他の卵子を求めて子宮の壁を次々と突き破って。
「その女性は子宮をはじめとする内臓破裂で命を落とすでしょうね」
少し想像するにはスーパーヒーローらしからぬエグい光景だ。
あっさりと警部は言うが問題はそれでは終わらないそうだ。
「たまたま近くにいた女性たちが次々と謎の妊娠をするだろうと続けているけど今回は関係ないからその件は打ち切りね」
警部はそういうと私を見た。
え?私が何かした?
「誰かさんの卵子がも強固な分厚い膜でもそのスーパーヒーローの持つ精子なら楽々破られる、そしてその後さらに強化された膜ならばその元気いっぱいな精子の乱入も防げる」
「しかも肉体的にも強固な方だから他の残ったオタマジャクシ達が胎を突き破って他の女性に迷惑をかける心配もない」
警部に続いて愛が納得したかのように言った。
「あんたの母親って妙な実験室で色々な種付けをされていたとか以前言っていたよね」
愛は私の目をまっすぐに見て言っていた気がする。
「その実験はあんた自身にも引き続き行われていたよね?それは成功したの?」
確かにその実験はある程度は成功したかもしれない。
しかし私の胎内からその受精卵はすぐに摘出されたのでその後どうなったかは私も知らない。
いやただ単に忘れ去ってしまっていただけかもしれないけれど。
「既に子孫を残すための目的を終えた後の実験でさらに続けた理由は?その実験の目的を少しでも覚えてはいないか?」
警部は真顔で問い詰めてきたが連中とのエッチはあまり思い出したくもないのが正直なところだ。
それでも「あらゆる能力と形態を求めていたって言っていた」
私は確かにその時になって思い出して言った。
「なるほどね、精子側に作成したいそいつらにとっての理想な生物のDNAを封じ込めてその設計図通りの生物を産んでもらうためには卵子の遺伝子情報はまっさらで真っ白である必要があったと。

今更ながらに私は当時の三人での会話を思い出していた。
確かその時にとんでもない情報を吹き込まれていた気がする。
「亜希、お前さんの卵子の中には精子に相当す機能が組み込まれていて自己妊娠さえも可能だったのではないのかと思う」
警部はサラリと言ったがその後急に口を濁し始めた印象があった。
「じゃあ何?私排卵があるたびに妊娠しちゃうマリア様体質なアレなの?」
そう問いかけたが返事っはなかった。
つまりは白紙に白紙を重ね合わせたところで何の絵も出てこないと言うことなのか?
当時の私はそう解釈をしていた。
しかし今その答えは私の胎の中で実際に行われつつあった。
私の胎の中に迷い込んできた二つの想い、私はそれらを観察している間に微妙な違いに気がついた。
一つは解析を進めている間に10代前半の少女の肉体を持っていたことに気がついた。
どうした?『G』といきなり『B』が問いかけてきた。
2人とも私の中の無数にある人格の一つであの忌まわしい実験の中で身につけたものだ。
「ちょっとあの少年に似ていた気がする」
『G』はそう言うと深層意識の中に消えて行ってしまった。
確かに見覚えがある、感じたことがあるイメージの少女と少年だった。
「ほらユーキ自分の目で確認してみなよ」
『G』が連れてきた少年「ユーキ」はかつて由紀という名の少女の中に住んでいた別人格だった。
「確かに彼女は由紀そのもんだよ、でもなぜこんなところにいるのか」
そう言ったかと思うと彼は口をつぐんだ、彼女が別世界、別の時間線の自分だということに気がついたのか?
しかしさっきからこんなセリフをブツブツと呟いている私を見た通行人はきっと頭がおかしい奴だと思うことだろう。
「でももう1人がわからない」
『ユーキ』がつぶいた。

「何者かに孕まされて出来た胎芽かもしれないね」
と口を挟んだ『B』、しばらく考え込んでいる。
「取り敢えず記憶を基に復元してもいいいいけれど胎芽の方はどうする?」
突然『L』が割り込んできて言う。
確かに1人は小田井に住んでいる女子中学生、楓山有希で間違い無いだろう。自分のことをなぜか由紀と思い込んでいる理由は謎だったけれど。
「あーわかった、彼女は有希さんがアイドルを希望した時にできたもう一つの意識体だね、すごい願望が入り込んでいて身体つきも風貌髪型も全然違うけどそれでも由紀だよ」
『ユーキ』はそこにたまたま二つあったまだ未成熟な卵子の白紙状態だったDNAに情報を書き込み始めた。
卵巣の中にあった二つの卵子は熟成するに連れて内部で精子に該当する、本来なら卵子のDNAから取り出されたRNAと精子側のDNAから取り出されたRNAが結合して新しい設計図(DNA)が作成されるんだけれど私の場合は一つの卵子の中に精子としても機能する部分があるらしくて無精でも受精卵に発達してそのまま着床し、妊娠することが可能らしい。
「この設定あったら男が数人しかいない世界でも男いらなくね?」
なんて『L』が冗談めかして言っていた気がするけどまさにそうかもしれない。
とにかく私の胎の中で着床して育ち始めた2つの受精卵、いや、無精卵というべきか、はすくすと育ち次の日の朝を迎える頃には胎芽かもと言える程度には育っていた。気がする。
そんな頃だ、私のスマホに彼、風間先輩から電話がかかって来たのは。
国道23号線バイパスでのひき逃げ案件だったが持ち物など少なく遺体の損傷が激しすぎる事などから被害者の特定には多くの時間を必要とした。
2、3時間経過した頃行方不明の届出が出されていた女子中学生の頭髪DNAと事故被害者の頭髪DNAとの比較で同一人物だと判明した後風間先輩は私に写メで被害者女子中学生の写真を送って来たのだけれどそれは私の中にいる『ユーキ』とほぼ同じ人物と言って良いくらい似ていた。

それから私は楓凛を呼び出そうと電話をして少々の立ちくらみを覚えた、今回に限り子宮内の2人の発育が異常に良いようだ。
僅か5〜6時間でまさか5〜6ヶ月のお腹になってしまうとは、何かちゃんとした栄養になるものを食べなければマヂで貧血栄養失調で倒れてしまう。
「大丈夫か?」
電話の向こうの楓凛にマヂで心配されてしまった。
「あんまり大丈夫じゃ無いから電話している、早く迎えに来て」
すんなりと「ok」の返事がもらえたので私は安心し脱力して自分の部屋のドアにもたれかかるようにしてしゃがみ込んでしまった。

それから何時間経っただろうか?私は気がつくと楓凛が運転する車の後部席で横になっていた。
意識を失っていたから抱き抱えて車の後部席に運び込んだらしい。
「夢をみていた気がする」
と私。
そこで風間先輩から電話がかかって来て例の「自殺か他殺か?単なる事故死かの押し問答」になってしまったわけだが風間先輩の本音としては一刻も早く現場に来てほしいと思っていたのだろう。
もう夢で見た彼女達、いや、正確には楓山有希とその周りの少女達の実体験をどう彼女、楓山有希に伝えようか迷っていた。
「お腹の中で語りかけるようにして教え込むしか無いんじゃ?」
ハンドルを握っている楓凛の声。
『そうだったんだ』
全ての謎が解けたような気がした、彼女、楓山有希が由紀と有希として覚えていた記憶は全て私のお腹の中で何度も語りかけて来た夢の断片だった。
カレンダーガールに関する記憶は彼女達が私のお腹の中で何度も体験して来た仮想現実の一部だった。
「でも私は栄養失調なのに持って来てくれた食事がジャンクフードの代表ハンバーガーって酷くないか?」
私は抗議するように言ったがそれをもう5個は平らげていた。
それにしてもカメラマンの仕事は儲からないのだろうか?
今の時代にサニークーペ1200GX5って狭苦しいんですけど?

有希と由紀、そして、由紀とユーキ

「風間さんからはあれから何か連絡あった?」
不意に楓凛が訊いて来た。
「さあ、取り敢えずは(ご遺体の)後片付けは終わったらしいんでおおい川に上流に捜査に行くらしい、私にとっては釣りなんて興味もないんだけれど」
私はボソリと言いながら夜の一国(国道1号線)から見える景色をぼんやりと眺めていた。
「今は亜希の胎の中には何人いるんだい」
忙しくシフトチェンジを繰り返しながら楓凛が訊いて来た。
そう、私は彼、いや、彼女に一つ隠し事をしている。
私の胎の中には由紀と
の2人よりも以前にもう一体、胎芽から成長しない将来的にには女の子になる存在がいた。
取り込んでからもうどれほどの年月が過ぎているかはわからなかったけれど彼女は今私たちが生きている時間軸にいた存在ではない。
正確には彼女とは別個体の同一人格がこの世界には存在するのだけれどその実際にこの世界で生きているその別個体の人格と私の胎の中にいて育たない胎芽は互いに意思疎通をしているような気がした。
最初は私の胎の中で奇妙な育ち方をしている2人の少女、由紀と有希は私の胎の中で夢を見始めていた。
大きさこそ一旦は2人とも身長が一旦は2人とも身長が80センチくらいの胎児に育ったが彼女達は出産することもなく胎の中に留まったまま出産後の赤ちゃんと同様に育ち続けていた。
しかし彼女達の体長は成長とともに縮んででゆき今では女子中学生の体型のまま身長は25mmのサイズに収まっている。
一旦は臨月みたいに膨らんでいた私のお腹もちょっとダイエットに失敗した女の子程度の膨らみに収まってきているのは有り難かった。

「2人はどんな関係になっているのかな?」
楓凛は訊いてきたが私にも簡単には答えられない。
私自身どこまでが彼女達の現実でどこからが彼女達が共有している夢なのか区別がつかなくなっていたからだ。
ただ一つ言えるのは私の胎の中身長がわずか25mmの女子中学生が裸体のままだきあっている事くらいか?
そんな状態になってからもうすでに2〜3日は経過しようとしていた。
それ以外の変化と言えば私の中で胎芽のままとどまっていた存在が成長を始めてその小さな大きさのまま4〜5歳くらいの幼女の姿に変わってきたことくらいか。
もちろん裸体のままだ。
その子が急に由紀と有紀に興味を示したのか2人に接近して有希の背中にピッタリと張り付いた。
そしてその子は由紀と有希、2人がみている夢を私の中に送り込んできた。
その時になって私はようやくその胎芽が何物か、いや誰だったかを思い出すことになった。
「うん、今のところ3人かな?」
私は楓凛に答えた。
「どんだけ考え込んでいたんだよ?」
と楓凛は言ったけれど。
最近自分の思考をまとめるのが遅くなってきている。
バカになりつつあるわけではないのだが。
「見せられるものなら楓凛にも見せてあげたいよ」
そう言った途端楓凛は急に強くブレーキペダルを踏み込み、

わたしたちが乗っているサニークーペ1200GX5はブレーキが軋む音を鳴らしながら軽く尻を左右に降りつつ止まった。
「ちょっと急に何をする気なの?後ろに大型トレーラーとかでもいたら大惨事よ」
私は強めに抗議したがそれほど怒っているわけではない。
この車の後ろ数百メートルはついてきている車が存在していないのは感知していた。
ましてしてや楓凛が追突されるようなヘマはしないと思っていた。
ただ彼女らしくない行動に少し腹を立ててしまっただけだ。
「おい、何であいつが・・・」
急に私の方を振り返り楓凛は言いかけて少し間を置いて続けた。
「何故あいつ、リナが亜希の胎ん中にいるんだよ」
何でそれに気がついたのか?その理由ははっきりしている。
彼女が、平行時間世界のリナが私たちの脳に直接イメージを送り込んできたせいだった。
説明すべきか非常に迷ってしまった。
彼女は私自身が殺したのも同然だったからだ。

奴らが私たちの母親である『児童A』を実験体にして強制的に孕ませた受精卵を子宮内膜から無理やり引き剥がして単細胞クローンとして12体の新たなる実験体として増やされた私たちは一人一人その当時の児童自立支援施設に収容されていた12人の少女犯罪者の身体を仮胎として育てられた。
私たちの母親も、私たちの仮胎として無理やり出産させられた少女も用済みとなった途端に身体中の細胞が溶解される薬物を投与されて肉の塊になってしまうような惨殺のされ方をした事を私たちは自分達姉妹の中の1人の行動によって知ることになった。
そして出産してから奴等の手により育てられた私たちに与えられた任務はかつてこの国を支配していた腐敗した政権を倒すために立ち上げられた少年少女による若い党内政治家達と彼らと共闘して政権を奪取した新党の議員らを一人一人暗殺する事だった。
もちろん奴らの目的はもう一度政権を奪回して再び自分達がやりたい放題の政治をする事だったのだが長くなるのでここでは割愛させていただく。

私たちは特別な施設の中で戦闘員として養成されつつあった。
コードネーム『A』から『L』まで続く姉妹の中で『G』だけはひどい落ちこぼれだった。
戦闘能力が低く、頭の回転も良くない、それでも彼女だけは人一倍明るい性格で優しかった。
ある日この島国を未曾有の巨大地震が襲う、それまでいつかは高い確率で来ることが予想されていた関東大地震だった。
もちろんそれは最初から仕組まれていたことだった。
クーデターを起こすための人工地震、平和憲法に固執する新政権を潰すためだけに起こされたテロ行為でもあった。
そんな中、必死で逃亡をし続けていた前田愛理一家を私たち12人のうちの3人が取り囲んでいた。
一家3人が追われている間に3人は散り散りとなってしまう。
姉妹の1人『D』が撃った大型拳銃の弾丸が前田愛理の頭蓋骨を砕き、続く『F』が振った釜が夫でありマネージャーでもある前田新作の首をはねて彼の頭部は大量のの出血に吹き上げられるように飛び上がってから大地に落ちて転がっていった。
リナ1人が残され最後の刺客『G』を睨みつけていたが、涙を流しながら激しく震えていた『G』を憐れむような目で見ると何かを彼女に語りかけた。それを聞いてもなおも『G』はうつむいていたがやがて全身の震えが止まると大きく振りかぶり左手に握った拳大の鉄球をリナの胸に目掛けて全力で投げつけた。
鉄球は高速でスピンしながらリナの小さな胸に突き刺さると背中から潰れた心臓などと一緒に飛び出して一帯に大量の血が噴き出していた。
しばらくは『G』はうごけないままだったけれどそのごちいさなこえで『これからは一緒よ』と呟いたように聞こえたのは気のせいだったのかもしれない。『やっと思い出した?あの時から私は『G』の胎の中に住んでいたの』
目の前運転席路助手席のヘッドレストの間にミニサイズのリナが前方を見ながら呟いた。
私、亜希の中の原型は『G』だったということなのだろうか?

その小さなリナは身振り手振りで私たち2人位なんとか説明しようと努力していた様子だったけれど私の頭には何にも入って来なかった。
『要は彼女がいなかったらあなた達も更なる次世代の礎にされた挙句処分されていたんだから私に感謝しなさいよ』
そう言ったリナに対して私は思わず
「意味が、わからない」
とつぶやいていた。
「それで2人と何か話していて何かわかったの?」
私はさっそく要点を訊いてみた。
「まずは貴方達を実験台にクローンもどきを作り回ったあいつらと今回の生殖器に寄生するあれは全くの別種族のようね」
リナに言われて私はついさっきまで見ていた夢の内容を一部思い出していた。
確かにあれは気持ちが悪い、女性の胎内に寄生するあれは私の胎の中にいる3人と大して変わりがないが、男のシンボルの中に寄生するアレは・・・・・
「楓凛、車の中で吐いて良い?」
もちろん答えは『No!』だった。
だよねぇ。

「あんたがハンバーガー俺の分まで食い尽くすからだよ」
しばらくして楓凛は言ったが私の口はそれには答えずに関係のないセリフを口にしていた。
「綺麗な景色だねえ、あたしロケとかでいろんな場所に連れていってもらえたけれどこんな場所は初めてだよ」
口調からしておそらくは有希だろう。
他人の口を勝手に使わないでほしい。
「もうそろそろ、おおい川の待合場所だからね」
由紀がやはり勝手に他人の口を使って喋る。
しばらく走っているとほとんど水が干上がった川辺で釣りをしている親父、いや風間先輩の姿が目に入った。
「私たちはここに残って釣りをするけど、楓凛はどうする?」
念のために訊いて見た。
「ちょー長距離運転してちょー疲れたからちょー車の中でちょー寝ている」
ちょーだらけの強調をつけた返事が返ってきた。
「わかったよ親父と釣りに行ってくるからそこで待っていて」
私はそういうと水の流れがほとんどない川辺で魚を釣るフリをすることになった。

カレンダーガール6 亜希の拾い癖  終わり


おまけ

愛「ところで亜希って風間志乃さんが銃殺された時にどういった状態で胎の中にいたかわかっていたの?」

亜希「あ、それはレントゲンとかエコーにも写っていなかったからなんともな状態だったんだよね」

智恵「それに普通はそんな考えには至らないだろうさ」

確かに言われてみればそれもそうだって話だ。

智恵「そう言われたら、お前さんが入院中に奇妙なことがあってね」

そうあれは6月の長雨が続いてじめじめとした朝だった。

ひとりの小学6年生の男子が救急で運ばれた来た。

一見胸の発育の良くない美少女に見えたが前方股間についている性器ですぐに男子だとは理解できた。

そして彼はすぐに息を引き取り検死に回された。

かなり猟奇的な事件で、その子の下腹部には電気ドリルの40ミリ近くある太いキリで大きな穴が開けられていた。

もちろん膀胱や腸などの臓器はもちろんのこと欠陥なども巻き込まれて寸断されており出血量も多くて搬入された時は既にほぼ心肺停止状態に近い状態にあった。

それよりも猟奇的だったのはその大きな穴から注入されたとしか思えないほどの大量の他の人間の体液、はやい話が臓器と臓器の間に少年自体の出血と共に他の男性の精液が混入されていたことだった。

その日は慰安室がいっぱいだったこともあり空きの部屋の亜希と風間達也の隣の個室に彼の遺体は回された。

もちろんその病室は一般向けということもあって監視カメラがついていたわけじゃなかった。

だからその一晩の間に何があったかは定かではない、だが確かだったのは次の朝には完全に止まっていたはずの少年の心拍が動いていたことだった。

もちろん彼の身体からは一切の電子医療計測器機器が取り外してあったのでその夜間から朝にかけてまでどのタイミングで心臓や肺などが、再稼働を始めたのかは定かではなかった。

ただ、脳以外には壊死した様子は見当たらず脳死扱いとなってこの病室にもう一晩置き様子を見ることに決められた。

理由はすぐ隣の彼女、すなわち亜希が深夜にこっそり自分と風間刑事の病室を抜け出している場面をその部屋の監視カメラが捉えていたからだ。

消灯時間が過ぎて3時間ほど過ぎた頃、亜希が病室を抜け出している姿が映されていた。

そしたわずかな時間を置いて少年の病室の監視カメラに彼女の姿が映し出されていた。

亜希は少年のベッドの横に膝まづき、彼の唇に自分のそれをそっと重ねていた。カメラからはそこまでしか判断はできなかったが少年の唇の端から透明な液体が溢れ出していたところから想像すると亜希は自分の舌と一緒に彼の口の中に大量の唾液をながしこんでいるようにもみえた。

少年の喉の動きから彼は少なからぬ量の亜希の唾液を飲み込んだようにも見えた。

そして亜希は少年に掛けられたシーツをはぎとると形式上着せられていた前びらきの手術着を開いてしばらくその下腹部に貼られたやたらと大きな、傷口というか開けられた穴を隠すためにのみ貼られたやたらと大きなガーゼを見つめているように見えた。

そのガーゼに大きな滴が数滴落ちた。

亜希は自分の左手で少年のしぼんだそれを手のひらで包み込むと何か小さな声で呟き始めた。

気のせいか少年のそれは少しずつ大きく膨らんでゆくようにも見えた。

そしてそれが大人のそれにひけを取らないほどの大きさに達すると今度はその頭を包んでいた手にひらをゆっくりと軽くつかむようにして根元の方におろして、軽く握る力を緩める、またそれの頭に移動させてさっきよりも強めにつかむと股下の根元の方にゆっくりと移動させた。

それを何回繰り返していたらどうか?少年のそれを包み隠していたそれは先頭の二つに割れた頭を剥き出しにしていた。

亜希はそれとそれが覆い隠していた斜めに膨らみ、先頭で左右対象に割れているその割れ目を下の先で軽く何度か舐めた。

それに飽きたのか、亜紀は剥けた本体の先を包んでいた部分を下の先でけずるようにして舐め始めた。

それからそれが包んでいた大きく膨らんでいる物の根元も根気よく舌の先で削るように舐める。

その時の亜希の顔はよく確認できなかったが『甘くて美味しいアイスを舐め回しているようだった』と後にモニターを見ていた看護師に聞いた。

「ほら、君はもう怖くて逃げ回っていただけの子供じゃないよ」

囁くような亜希の声をかすかにマイクが拾った。

亜希は少年の立派に成長したそれを最初は先の方だけ軽く咥えて次に少しだけ咥えながら引っ張ると再び口のあごの奥まで突っ込んだ。

少年の体が一瞬、ピクッと跳ねて息が少し荒くなった。

それを約15分ほど、5〜6回は繰り返しただろうか少年のそれはだんだん大きく、固くなってゆき緩やかに脈打ちながら亜希の口の中に少量の液体を放出した。

「昨日よりは少し多く勢いも強くなったね」

亜希はそう呟くとゆっくりと少年のベッドの上に乗り少年の上に馬乗りになると腰を少し浮かせて自分の女の子にそれを軽く当てていた。

少年の目が一瞬開いたような気がしたが多分気のせいだろう。

亜希は自分の女の子に少年の先を軽く当てて上下に軽く擦りながらその感触を楽しんでいるかのように見えた。

少年も少し頬を高揚させて息を荒げ始めていた。

「ありえない!」

その様子を見ていた脳神経外科の医師が叫んだ。

「彼の脳細胞は大脳はもちろんのこと下垂体までほぼ壊死したと言って良いような状態だった、あんな反応をするはずが」

亜希の女の子からやがてサラサラとした透明な液体が湧き出てきて少年自体の固く太くて長く成長したそれを頭の先から濡らしていた。

「まさかこうなることも想定して横からアングルの監視カメラも設定したのですか?」

看護師のひとりが息を荒げながら葉類智恵院長を問い詰めたが返事はなかった。

もっともその看護師に院長を責める資格などないはずなのだが。

少年自体の全体がサラサラな液体に浸されていた頃亜希はもう一度腰を上げて自分の2本の指で自分の女の子の扉を開きながら少年自身がその頭からぬるっとした液体が湧き出ているのを見届けた。

亜希はかるく少年自身の根元を掴むと開いた自分の女の子にその先端を誘導してかるく、少しだけ腰を降ろした。

亜希の口から熱い吐息が漏れると同時に少年も少年自身も軽く反応をして口からかすかに母音の声が漏れた。

亜希は少し腰を上げると今度はさっきよりも深く腰を降ろした。

カメラ映像を確認するまでもなくさっきよりは深く入っているはず。

動くはずがない少年の両腕が動いてその両掌が亜希の小ぶりな両乳房にあてられていた。なぜか彼の表情が母親に甘えているかのような柔らかな表情を浮かべていた。

亜希は再び腰を少し持ち上げてさらに深く堕とす、少年の表情とは反対にさらに熱り勃った少年自身は亜希の女の子に急に深く入り込んでしまった。亜希は思わず顔を歪めて激しく喘ぎ声を漏らしながら全身を痙攣させてしまった。

少年はそんな亜希を見て戸惑いの表情を浮かべた。

少年自身はそんな彼の意志に反抗するようにさらに大きく、固くなりその先頭は亜希の女の子の奥深くにあるあかちゃんの為の部屋に通じる入り口の扉を叩いていた。

亜希は両手で少年の両頬を包み込むようにして優しくさすりながらつぶやいた。

「これはあなたが大人になるための儀式だから、遠慮なく私の中に思いっきり強く私の中に出して」

そういうと亜希はゆっくりと腰を上下に振り、少年自身は強く脈を打ち始めめた。それでも亜希は腰を振るのをやめなかった。

それは少年の情報をもっと沢山欲しかったからだがモニターを通じて観ていた葉類智恵院長達はそれに気がつくはずがなかった。

そしてそれを何度目か繰り返し、やがて少年自身は満足したのか急速に萎み始めた。

亜希はゆっくりと自分の女の子から少年自身を丁寧に引き抜くと彼の上に横たわった。

「こんなに小さなおっぱいでごめんね」

亜希は自分の両乳房に置かれた少年の両掌をどうしようか考えあぐねているように見えた。


しかし亜希のおっぱい、つまり乳房は以前よりも少し大きくなったように見える。

亜希は自分の左乳房に当てられていた少年の右手のひらを少し外側にずらして顕になった乳首をかるく自分で摘むと滴り落ちるように母乳らしきものが溢れ出した。

「さっき君がくれたものお礼に今から君に君が失った物、奪われたものを少しずつ返すからね」

亜希はそう呟くと自分の体をずらして乳首が少年のくちびるに当たるように移動した。

少年は最初はただ単に胸のはざまに自分の左頬を埋めていただけだったがやがて亜希の乳首の存在に気がつくと遠い過去を思い出したかのように乳首を舌と上唇で強く挟み込んで吹き出した母乳(と言ってよいものかどうかは不明だが)を喉に流し込んだ。

亜季と少年はそれを何回も繰り返してやがて少年は満足したのか安らかな表情で眠りについた。

亜希は起き上がってベッドから降りると少年の手術着を元のように重ね合わせると少年のくちびるに「おやすみ」と言って軽いキスをした。

そしてあと3日ほど監視カメラの動画には少年に対して同じような行為をする亜希の姿が記録されていた。

そして少年は意識を取り戻した頃、自分の身にここ数日の間に起きた全てのことを忘れていた。もちろん自分が最後の晩に亜希の上に乗って腰を激しく振って中に出していたことなども。

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「それでだがな、ここに搬送されてから、ろくな処置も受けないまま、一度は完全に死んだはずの少年はたったの一週間で完治して、両親に抱きしめながら退院していったわけだが、まあ事件のことは当人もすっかり忘れている様子だったから、まあご両親には亜希の言うように黙っておくように念を押しておいたが」

葉類智恵院は苦虫を潰した表情で私に言った。

「へー、それは院長大先生の処置が良かったんじゃないですか?」

ムダとはわかっていても言い逃れをしちゃう馬鹿な私。

「貴様の右肩といい、風間刑事の両肩と言い貴様の周りにはさっぱりわからないことばかりなんだが今回特にわからないのは」

「わからないのなら気にしなければ良いんじゃないですか?」

と私、ついうっかり口を擦らせてしまった。

「だがこれを気にするなと言われても気にしないわけにはいかないんだ」

「そうですか?院長先生、きっと甘いものが足りてないんですよ、昨夜徹夜で私が作ったバケツマンゴープリン食べますか?」

言ってから『しまった』と思ったが時既に遅かった、だって院長先生は・・・
「あたいがマンゴーが大嫌いなのが判って言っているのかい?それにバケツを器にしたような不衛生なもの食えるか」

「ですよね〜」と私は愛想笑いをしてうまく切り抜けらたと思ったが甘かった。

「一旦壊死した脳細胞はたとえそれからクローン培養しても記憶までは戻らないんだよ」

「いやぁ、そんなこと言われてもねぇ」

「お前さんにショタ癖があったとはさすがに見抜けなかった、だが白状してもらおうか?どこに少年の記憶とDNAマップデーターをバックアップいていたんだい?」

そう問い詰められたがまさかその時は自分自身思いもよらなかったのだ、まさかそれが私自身の胎の中にあったなんて。

「しかも自分が被害にあった事件の事だけスッポリと忘れてやがる」

「まあその件に関する記憶も引き抜いて置いたし、身体も傷口一つ残ってないからね」

言ってから慌てて自分の口を塞いだが遅かった。

「ほー、貴様、事件の犯人を知っている、なんて言わないよなぁ?」

院長の目はすっかり警部のそれに変わっていた。もう言い逃れは不可能みたい。

「はいはい、わかりましたよ、でも絶対に少年の耳に入らないようにしてくださいね、それから今すぐにでも彼の周辺護衛には腕っ節の立つ男性刑事を3人ほど気づかれないように」

警部は驚いた顔をして私を見た。

「まさか父親が犯人だとでもいうのか?しかし少年の身体の残された精液から採取した精子のDNA検査では一致していなかったはずだが」

まああれだけ大量出血してそれと混じり合った精液からどれ程の精度で父親の精子を検出できたかは不明だったし、もしかしたら複数の男性による犯行かもしれない。

私は少年の記憶に残っていた視覚記憶を元に3〜4人の似顔絵を描いた。

普段は落書きレベルの絵しか描けなかったはずの私がこの時だけ似顔絵描き師並みの上手な絵を書き切った時は我ながら驚いた。

そしてその中にやはり少年の父親はいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから犯人らはこっそりと公安警察らに引き渡されて、さらに数ヶ月後、少年の父親と母親は(名目上)協定離婚することになった。

「お前、その記憶を自分の中に閉じ込めておくのは辛くないか?」

ある日、楓凛に尋ねられたが私はそれを手放す気はさらさらない。

今はまだ到底無理だが少しずつ彼が成長していって辛い現実を受け入れられるようになった頃少しずつ返してゆく気だ。

まあ自分の正体もはっきりとわからないのにこんなこと考えるのはちゃんちゃらおかしいけどね。

私たちが渡っている大きな橋の左側には浜名湖が、右側には太平洋が広がっていた。

「あーうなぎ食べたい、餃子喰いたい」

そう言った私を楓凛の言葉が冷たく突き放した。

「そんな金、どこにある」


終わり

ここから先は

2字
有料部分を時々追加、更新します、円盤特典みたいなものと思ってください。

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