アダルト版JC淫魔刑事獣鬼編25.1『ふたりの花奈』4

アダルト版JC淫魔刑事獣鬼編25.1『ふたりの花奈』4
2024/05/16校正更新
2025/05/04校正更新
今回は都合によりカレンダーガール、下界、JC淫魔刑事からの引用が多すぎます。m(._.)m
Byte数がやたら多いのはそのせいです。

#20才未満閲覧注意
#SFっぽく
#ハタチ未満はご遠慮ください
#ハルサメとナッツシリーズ
#過激な描写あります
#エログロ注意
#波瑠沙芽とナッツ
#小説

この話はストーリーの都合上過激な性描写や暴力描写、及びグロテスク、パクリな表現を多く含みます。
20才未満の方の閲覧はご遠慮ください。

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@みんなでバミッテ

『いつまでもウジウジしていたって仕方がないし、今もなお日本はほぼ全国的に放射線汚染、というよりもあたしたちから見たら秒速1万キロメートルの高速中性子で植物や人間を含む動物たちがつらぬかれて体内の水分が一瞬にして沸騰して波長が0.000000000001ミリメートル以下電磁波であるガンマ線に焼き尽くされて燃えてゆき次か次へと亜希か『G』か『B』の胎の中に収まっていく様な状態だった。

『あ〜!私の中の可愛い人たちが【日本人に生まれなきゃよかった】と言っている』
突然【G】が騒ぎ出した。
なんか政治的に【反日】のレッテルを押されそうな発言だが要するに腹が減って【G】自体が栄養失調に陥り(おちいり)胎(はら、異次元の子宮)に住んでいる被災者たちが何か食べさせろと喚いているらしい)。
『仕方がないですね北海道には安全に降りられそうな場所はないのかしら?』
【B】は運転席から外を眺めて周囲を見回した。
植物などが燃えている様子はないが問題は泊発電所(とまりはつでんしょ)や東通原子力発電所(ひがしどおりげんしりょくはつでんしょ)、そして六ヶ所再処理工場(ろっかしょさいしょりこうじょう)なのだがあたしの【鷹の目】を飛ばした限りではどちらも重大な事故を起こしている様子はなかった。
なので休息のためにとりあえず安心して降りられる場所を探すことにした。
しかしあたしはこの時にもっと広範囲に周囲を見渡せばよかったのかもしれない。
少なくとも刈羽柏崎原子力発電所くらいは見ておけばよかったとのちに後悔することになるのだが。

南西側からの放射線エネルギーをほとんど感じていなかった。
「じゃあ稚内なんかいいんじゃないか?」
楓凛の一言であたしたち一行を乗せたサニークーペとロングパジェロは北海道の最北端を目指した。
もちろんまだ2月のど真ん中だ。
暖かいはずなどある訳がない。
降りた場所はいわゆるホワイトアウト、雪が横殴りに吹雪いていた。
「パンケーキ食べれそうな店ないかなって?」
リナはそう言って近くにコンビニがないかダッシュボードからかなり分厚くて大きい全国ロードマップを取り出して探し出そうとしていた。
「何故にネットでマップ検索をしようとしない」
不審に思ったのか【L】が訊いた。
「だって、電波おかしいし、理由はわからないけど」
とリナ。
「そんな馬鹿な」
と言いながら科学者、自分のスマホを使おうとしたが繋がらない。
「やけだ!」と言いながらリナはグローブボックスからなんか使い古された携帯電話を取り出した。
いわゆる3Gと呼ばれるガラケーと言われる世代の機種らしい。
「バッテリーとかはあるの?」
と懐疑的に【B】は聞いた。
「趣味で予備のバッテリーはG4世代のもG3世代のも買ってあるから充電しながらなら、でも無理だよね、3年以上前にサポート切れだし」
とかぶつぶつ言いながらシガレットコンセントにアダプターを差し込んで操作してみたが意外とあっさりとつながってしまった様に感じられた。
「どこにかけているんですか?」
と椎奈が訊いたがリナはガラケーの画面を見つめたまま固まっている。
あたしもかよねえも性奴隷扱いなのでネットとか言われてもちんぷんかんだ。
「え〜と、今年ってXってまだツイッターだったっけ?」
いや、それどこの怪奇現象ドラマ?と言いそうになった。
「まさかぁ」
と【B】も言って固まっている。
自分の左腕にはめた電波時計もほぼ同じ時間を指していたから。
ただし年数などは明らかにバグっていたらしい。
と同時にリナはガラケーをかけた。
「これどういうこと?訳がわからないんだど?」
明らかにパニくっているリナの声、どうやら楓凛が出たところを見るにサニークーペとやらのどこかにガラケーと新品のバッテリーを隠し持っていた様だ。
うん、取り敢えず移動しながらファミレスとか休める場所を探そうか?と楓凛は提案してきた。
車を走らせる事50分くらいたっただろうか、見覚えのあるファミレスの看板が目に入ってきた。
バミッテ知床店、どうりで寒いはずだ。
ってか稚内と全然方向違うし!

とりあえず大人10人子供3人で席を確保してもらい取り敢えず店内は空いている様なので三つのテーブルに分かれた。

お腹の大きな黒髪ロングヘアの亜希はあたしと同じくらいの小学6年生に見える冴子ちゃんとあたしたちを買った科学者と風間達也とかいうおっさんの4人で1テーブル。

愛人1号は取り敢えず席の拘束を解除して手錠をかけて凶悪犯の護送中ということにしてもらい楓凛と椎奈と『B』と同席の4人で1テーブル。

椎奈と楓凛はスーツを着てもらい凄腕女刑事を演じてもらうことにした。

風間達也にしてみれば『逮捕されちゃうぞ』と言いたくなるくらいの美女に見える。

そして最後の席はリニア車内で拾った小学生男児と謎の科学者の孫と思われているらしいあたしと加世ねえと『G』と『J』の合わせて5人で少し狭いけど1テーブル。

いつ愛人1号が暴れ出しても『B』『G』『J』『楓凛』『椎奈』が5人がかりで押さえつけられる様にするための配置らしい。

まあ最悪、美人で華奢で可愛いウエイトレスを人質に取ることも考えられなくもないから風間達也刑事に食事を運ばせる様に提案をしたが頑なに拒否されたようだ。

その美人なウエイトレスは直径が50センチはありそうな大きな丸いトレーに12人分の水の入ったコップとおしぼりを載せて来て各自に配り始めた。(椎奈はアンドロイドなので水を飲むと中が錆びるらしいが)

もう性欲丸出しで愛人1号がウエイトレスを睨みつけているのはわかるとして、さっきから『G』もウエイトレスと互いを睨みつけあっている様に見えるのは何故だろうか?
とても気になった。

空になったトレーをそのまま左手に持ったまま不用心にテーブルの近くを通ったウエイトレスの細くて華奢な右手首を愛人1号の左手が鷲掴みにすると、彼女の体を引き寄せていつの間にか、どこから出したのか太く大きな刃渡りのサバイバルナイフを彼女のふくよかな胸の谷間に深々と突き刺していた。
あ〜!、も、いやぁ〜!、もない。
もしかしなくても心臓は破裂していてもおかしくない。

「オレを解放しろ、さもないと今すぐにでもこいつの心臓やら内臓をえぐりだしてもいいんだぜ」
愛人1号は叫ぶとウエイトレスの胸の谷間からサバイバルナイフを引き抜いた。
真っ赤な鮮血が勢いよくテーブルに降り注ぐのが見えた。

そしてウエイトレスの右手首は完全にひしゃげているのがわかった。

『あの筋肉バカ爆ぜさせられない?』

あたしはかよねえに聞いたが答えは『No!』だった。

『どうして?』とあたし。

【厚顔の美少年に【痴神】様が戻っている】

と最重要機密テレパシーで加世ねえが返してきた。

加世ねえ!お願いだから【地神】様を激昂させるような脳内誤変換しないで!

どうやら愛人1号の暴走を仕掛けたのは【地神】様のようだった。

『このメンバーで勝てると思う?』
とかよねえ。
そんなの無理に決まっている。
今、間近で見て気がついたがあの愛人1号はどう考えても【人神】クラス以上だ。

【願望達成能力】を持っていたらその時点で終わりだ。

その上に【L】の中に封印された愛人2号と愛人3号が解放されて暴れ出されたら瞬殺だ。

席のソファには真っ赤な血が流れ落ちている。
そして最も恐怖だったのはここにいるみんなが身動きひとつできなかった事だ。

これもわかりきったことだが多分きっと【地神】様が念動力でこの店いっぱいにあのありがたくもないお札を貼りまくったせいだろう。

ウエイトレスの右手首がぼとりと床に落ちた。

愛人1号はウエイトレスのちぎれた手首を離すと手錠の鎖をいともあっさりと引きちぎっていた。
そしてズボンのチャックを下ろすととてつもなくデカいものを引き出しウエイトレスのスカートを一瞬のうちに捲り上げて中のパンティを引き裂きあらわになった、はだ色のわれめさんにねじ込んだ。
そして愛人1号が烈しく腰を振るとすぐにそのでかいものは激しく脈打ち始めると同時にウエイトレスの腹はみるみる膨らみ続けてついには内臓をぶちまけながら破裂した。
【異次元からの精液転送?】

そしてウエイトレスは口や鼻、耳などからドロドロとしたピンク色の液体を吹き出しながら崩れる様にへたり込んだ。

「さあ、これからは散々俺様を痛ぶってくれた貴様らへの仕返しだ、誰から復讐してやろうか」

愛人1号はそう言うなり楓凛の脇腹に別のジャックナイフを深く突き刺していた。

「そう言うのやめた方が良いと思いますよ」
誰かが喋った。

聞き覚えのある声、パジェロの中であたしたちの前の席に座っていた【G】の声だ。

「もぉ、さとみったらいつまで死んだふりしているんですか?私はあなたのそう言う悪ノリしちゃうとこ大っ嫌いなんですよ」

ただの窓際族ではなかったようだ。

「てへ、バレてたか?コイツが性的サディズム?そんな感じで1人で興奮しているのを見るのが楽しくてつい」
さとみと呼ばれたウエイトレスは言った。

どうやら【地神】様に封じられていたわけではなさそうだ。
破裂した胎も右手首も噴き出した液体のシミも服に残さずに完全に戻っていた。

なんという肉体再生能力だろうか?彼女は一体何者なんだろうか?

【地神】がいてこれだからもしさっきまでのようにこの紅顔の美少年がもぬけのからだったら愛人1号の手首をひねることさえなんともないだろう。
何か考えがあってのことかもしれない。

そしてさとみなる女は愛人1号の顔にお盆を投げつけると言った。

「なるほどねコレが秋子さんに対して行っていた実験の一つだったと言うわけね」
さとみと呼ばれたウエイトレスは「パッパ」とスカートについた埃を両手で払うと『リカバリー』と宣言をした。

やはり魔族なのかもしれない、用心せねば。

いつのまにか愛人1号の手錠の鎖は元に戻ってつながってナイフも2本とも消えていた。
そして楓凛の脇腹に開けられたジャックナイフによる深い傷も。

「でも『G』だって相変わらず意地悪、自分でも対処できたはずなのに動いてくれないなんて」
口を尖らせて言うさとみに対して『G』はあからさまに不機嫌な顔をした。

「でも少なくとも秋子さんが暴走したのは『G』のせいじゃないというのだけはハッキリとしたわね、『G』、あなたが推理した通りアイツの精液の中には特殊な寄生体が数体混じっていた、それらをシミュレーションする事でどうなるかおおよその見当はついた」

「その件に関してだけは感謝している、だけどいきなり他人の身体をしばく事ないじゃないか?」

「まあともかくアイツらが秋子さんの胎内に、いえ彼女の受精体に寄生体を使って新規格の秋子さんを産み落とさせたのは間違いないわ、ところで『G』はどこで気がついていたの?」

「いや、だから、その、彼女の記憶を辿っている間に」

「それで自分のせいだってことにしておきたかったんだよね、えらいえらい」

そう言ってさとみは『G』の頭を優しく撫でた。
それなのに『G』はますます不快そうな顔をしだした。

「それでこのレトロな空間を用意したのは何かの演出?」
『G』は相変わらず不機嫌そうに言った。

「全員の記憶を無かった事、っていうか夢の中の出来事だと認識させやすいしね、それに誰にも知られちゃうとまずい事だってあるでしょ?秋子さんってああ見えて意外と責任感強そうだし、今も内心は怯えているはずよ、あの巨体が暴れ出して世界中の都市を破壊しまくるんじゃないのか?ってね、だからこの件は当然オフレコ、わかるわよね?」

その時、さとみの視線は亜希のお腹あたりを見つめていた。
しかしその実は彼女は別のものも見ていた。
あたしと加世ねえも背後から見つめていた。

『その心配はないわね、もちろんあなたたちもオフレコよ、その理由も今は言えないけどね』

そう言った瞬間店内の内装が現代風に一新した。
亜希が手にしていたスマホが一瞬にして店内のWi-Fiにつながりネットニュースを流し出した。

そのほとんどが人工衛星からの配信だったようだったが。
さとみ、じゃない、ウエイトレスは亜希と由紀、そしてかよねえとあたし、かなに向かって微笑みながら言った。

「バミッテ知床店にようこそ、当店では諸事情でパンケーキしか提供できませんが私が丹念に何百枚でもお焼きいたしますのでどんどんお食べくださいね」

そうして彼女は亜希に、いや正しくは厚顔の美少年、に宿っている地神に対してだろうか?ウインクを送ってきた。

その時モンスター秋子は・・・・・

全世界の弾道ミサイルを食い尽くしたモンスター秋子は地球の自転よりも少し早い速度で衛星軌道付近を周り続けていた。

『直接、愛人1号たちや、さとみに確認をとったわけではないが数十ギガトンの水爆や素粒子砲、神経ガスをはじめとする毒類などが全く通用しないあの大きさの怪人に攻め込まれて地上で暴れ出したらもう、その国は全滅するしかないだろう』
と亜希の仮想子宮の中の由紀。
さらに続けて考えていた。

「そのために何回も秋子に人格をコントロールする為の種を愛人1号や2号に射精させて、そしてその総仕上げ兼監視役として愛人3号をつけたことは疑いようがない』

あの由紀というミクロサイズのショートカットの女の子はなかなか出来るようだ。

しかし見た目は貧相であたしと同じくらいにしか見えないがまさか生後2年も経っていないなんて事はあるまいに。

結局はバミッテ知床店であたしたち、というか宿主である亜希たちは全員でかなり大きめのパンケーキを103枚も平らげていた。
あたしとかよねえのふたりと謎の科学者とリニア車両内で拾ったという【地神様】が宿った小学生男児それぞれ2枚ずつで計8枚、冴子ちゃとリアル・リナが4枚ずつで計8枚、愛人1号、楓凛、風間刑事の人間が1人5枚ずつでけい15枚。

103-8-8-15=72で残るは72枚はあるはずなのだが?
残る『B』『G』『L』そして亜希4人は・・・
「言っておくがオレッチは12枚しか食っていないぞ」
と『L』が抗議した。

72-12=60で当然60枚を『B』と『G』と亜希の3人で食べたことになる。
「つまり1人当たり20枚かぁ、納得」
と言いかけた亜希は『G』の襟首を掴んでいた。
「ちょっと待て、ゴキちゃん、あなたがまさか20枚で満足するはずないよね?」
一応疑問形にはなっていたが確信しているようだった。
「はい、自分、30枚たべました」
と『G』は素直に白状した。
「それにしても妊婦さんが15まいずつとか有り得んだろ」
やっぱり風間達也なる男は墓穴を自ら掘らずにはいられないタチのようだ。
亜希と『B』の鉄拳が風間刑事の身体を吹っ飛ばしていた。

その頃、椎奈は優雅にカストロールオイルとハイオクガソリンをがぶ飲みしていた。

昔のアニメ『鉄腕アトム』のように核エネルギーで動いているわけじゃなさそうだ。
ただしあのアニメの世界の主人公らがいう核エネルギーが核分裂などの核反応ではないのは確かなようだ。

とはいえ作者の手塚治虫氏が故人となった今では確かめようもないのだが『10万馬力』という超ハイスペックが核反応原子炉を想起させたのかもしれない。

ちなみになぜ『キロワット』ではなくて『馬力』なのか?というと原作発表当時はレシプロエンジンやジェットタービンエンジンなどの出力表示がまだ『馬力』で表示するのが基準であったため理解しにくい『キロワット表記』を避けたのではないのかな?と推測している。

そこからさらに推測するにアトムの『10万馬力』は電気出力ではなくて熱出力もしくは軸出力であると考えられる。
しかしながら彼が空を飛ぶ時はジェット推進力で飛んでいるので熱出力である可能性が高い。

口から取り込んだ空気を熱膨張させてそれでジェット噴射や人工筋肉の伸縮に使用しているのかもしれない。
そうなると熱出力しか考えられなくなってしまうわけだけど胸のボンネットを開いた時に核反応路にありがちな巨大な冷却装置らしきものが見当たらないので核反応炉の考察は当たらないと考える。
それで肝心の人工知能(AI)コンピューターなのだが量子演算と従来からのノイマン式のハイブリッドコンピューターじゃないのかな?

それで電源は原子力電池を採用して発電しているのではないのだろうか?

もしもアトムの原動力が核反応炉ならベータ線やガンマ線の漏れなどでコンピューターが誤動作する可能性が高い。(注:ベータ線は中性子のみならず電子や陽電子も発生させるのでコンピューターなど微弱な電流を扱う機器を狂わせやすい、さらにガンマ線は波長波長10ピコメートル以下の超高周波電磁波なのでより厄介だ)

しかも普通の人間であるはずのお茶の水博士らが稼働中のアトムの胸のボンネットを開いても被曝しないというのは通常のウランやプルトニウムなどの核分裂の連鎖反応によるエネルギーで動いているわけじゃないからだと考えるのが妥当だと思う。

(注:同じ手塚治虫氏の火の鳥では人間の脳の記憶を移植したロボットのロビタの量産版の1体が殺虫剤がわりにアイソトープを使用した農場に幼い子供を抱っこしながら迷い込むというエピソードがあってその子が被爆[うろ覚えな記憶ではその子は死亡して、それが原因で人間たちに強く糾弾されてロビタの集団自殺につながる、古い作品にも関わらず何故か今の一部の日本人にも通じるエピソードではある]しているので彼が放射線に対して鈍感というわけではない)

だとするとアトムの核エネルギーと言うのは濃縮ウランやプルトニウム配合のMOX燃料を核分裂ではないと思う。

天然ウランが自然核崩壊する際に放出するアルファ線、ヘリウム核のエネルギーを食料とする微生物を触媒としてその放射性崩壊エネルギーを効率良く熱エネルギーに変換している可能性が高いんじゃないのだろうか?

となると体のどこかに熱エネルギータンクがあることになる。
その熱エネルギーの1部分を利用して発電する事も可能かもしれない。

【ふ〜ん、あなたたち本当は生後2年半なんて嘘よね?何者かに記憶を操られているみたいだけど興味深いわ】
さとみという女は興味深げにあたしたちを見ながら最重要機密レベルのテレパシーで伝えてきた。

この女やはり【地神】様最大の敵【サタン】のスパイかも知れない。

そして支払いの段になってまた一悶着起きることになった。

103枚×400円=41,200円のはずだったが消費税が20%だったのを忘れていた。
前回8%から10%に切り替わった時に内税表記が義務づけられたはずなのだが今回20%に引き上げられた時にまた本体価格しか表示してはならないと義務付けられていたのだ。
その結果
41,200円×120%=49,440円というとんでもない額になっていた。
つまり8,240円も税金で持ってかれたということだ。
そしてよもや全員で叫ぶ羽目になるとは思いもよらなかった。
「おのれぇ〜!憎っくき消費税20%めぇ〜!」
さとみはその様子をにこやかに見守っていたが『G』の耳元でボソリと囁いた。
「お支払いできないならお身体で支払ってもらいますよ」
と・・・。
やはりさとみは悪魔の外道だ、少女たちに春を売って食った分を儲けろと言う気だ。

『バカじゃないの?こんなど田舎(いなか)にお尻の蒙古斑(もうこはん)も取れていない売春少女目当てに来る殿方が居るわけないじゃない』

というわけであたしと加世ねえと亜希は『B』共に食器洗いをしていた。
「妊婦に食器洗いなんてやらせるウエイトレスなんて、南斗鬼畜なんだろうか?北斗、神拳に嫌な奴!」
さっきから亜希はカビの生えた危ないパクリネタの愚痴(ぐち)ばかりをこぼしていた。
「昔からさとみはああいう娘ですからね」
と言ったのは【B】だった。
亜希はその言葉が気になったのか訊き返した。
「おふたりは、『G』とさとみさんはどんな関係ですか?」l
しばらく『B』は考え込んだ後にあっさりと答えた。
「う〜ん強いて言えば母娘ですね」
亜希は洗っていた大皿を思わず滑り落としそうになった。
「全然似ていないじゃないですか?、それに年齢だって」
亜希の言う事はもっともだと思う、しかしあたし、花奈と加世ねえの例もあるから否定は出来なかった。

「亜希さんは『さぬきがわ学園』で悪魔のような姿をした彼らと対峙した時のことを覚えていますか?」
それはあたしも加世ねえも全く知らない出来事だった。
その理由はまだあたしと加世ねえはもちろんのこと有希や由紀たちとは出会う前の出来事だったから。

「そう言えば『G』さんはあの時12体の悪魔と顔見知りなことを言っていたような気がする」
亜希は答えたが随分と曖昧な記憶から引っ張り出してきたと言う様子だった。

「細かい事は覚えていなくていいの、要はあそこに12体の悪魔、と言っても彼らは一度も自分達のことを悪魔だなんて名乗った事はないんだけどね」

「今思い出しただけでも寒気がする、アレはまともな生き物なんかじゃ無かった」
亜希が恐怖で震えているのが表情を見ただけでわかった。
「私たちがアイツら時対峙したのはアレが初めてじゃなくってね、あっちの世界で私たちに政府要人などの暗殺計画が伝えられた時に同じ会議室に彼らと言うべきかしら?彼女達と言ってもいい存在が12体いたの」
イヤイヤ、同種の悪魔同士で怖がってどうする?
「今思えばあの時私たちは彼たちの種子の植え付けを受け入れるか、それを拒んだものは惨殺されるかの2択でした」
「種子ってあの気持ち悪い寄生体みたいなやつのこと?」
亜希の中の由紀が思わず口を挟んでしまったようだ。
しかし実際に喋っている肉声は同じ亜希の口から発せられているからまるで二重人格者みたいで気味が悪い。
あたし、かなとかよねえにとってその手の種子を植え付ける生物といえば【獣鬼】や【獣神】を指すのだが彼女たちはその存在さえ知らない様子だった。

「由紀?そう有希もいるのね、ついでだからあなたたちにも聞いてほしい話なの」
「アレを12体相手に交尾を受け入れた、と言うイメージなら残っている、でもあなたたちの体には生殖機能はなかったんじゃ無かったっけ?私も似たようなものだけど」
亜希は疑問を挟んだ。
「今からイメージを送るからそれを受け取って」
『B』が言うとボクたちの中にもいくつかのイメージが浮かび上がってきた。

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人類なら・・・
女性→卵子→受精→懐妊→胎児→出産
______↑__________
男性_精子→射精___以降用無し?

となるべきところが

  
 卵素↓←変更点
娘達→受卵→付精→送卵→母性化?
___↑_____↓_____
悪魔_卵素→準備→受胎→胎児→出産(どこから?)

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少し変更点がるけど細かい事は気にしないでね。
卵素と言うのが烈しく謎だったけれど要するに一般女子が体内で作り出す卵子とは全く別物だと言うことらしい。
まあ人類の方は今更説明する事はほとんどないけど。
後から調べてわかった事だけど。

【どうやらあたしたちの考える『獣鬼』や『獣神』とは少し違うようなんだぉ〜、それらをアダムに種子や人造精子を打ち込んだ結果とするなら、イブに種子や人造精子を撃ち込んでできた生命体だとすると・・・】
うざたてーやつは少し考え込み始めたようだった。

悪魔から卵素を送るってところに注目してほしいの。
娘たちというのはあなた、亜希の場合はまだ謎が多いんだけどその受卵の仕組みがよく判らなかった、だけど原始卵胞に近いものがここでいう卵素じゃないかと思っているの。
ただ違うのはどちらの方の卵素にも遺伝子情報が入っていなくて、悪魔と交わった時にふたつの卵素がくっついておおきくなり、)その瞬間から娘達の胎内で娘達自身、もしくは別の遺伝子情報が書き込まれるてことかしら。
それから娘達は悪魔にその付精卵を送り込み。
悪魔の胎内でそれに更に悪魔側の遺伝子情報を上書きをしてそのまま胎児として成長、生み出される。
それが流れ
「まあ亜希さんは自己完結で中に他人のコピーを作れるようだけど」
『B』さんは意味深なことを言って微笑んだ。

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「その時の『G』は12体を相手にやってのけちゃったわけ、要はその時に相手の悪魔に産みつけた卵が育ったひとつがあのさとみさんではないかと疑っているわけなんですけど」
ここで『B』さんは一区切りをした。
「もしかして『B』さんは秋子はもちろんのこと、愛や冴子、そして楓凛も『G』さんの娘じゃないのか?って疑っているわけですね?」
もちろん喋っているのは亜希の中にいる存在だ。
あたしは迂闊(うかつ)な事を言って【地神】様に睨まれ(にらまれ)たくない。
「有希ちゃんね、その通りよ、悪魔のような姿をした彼らとある意味で天使のような姿をした寄生体では全く別の種族だけれど人間という媒体を介して触れ合う道を模索していると言えるわね」

そう言った『B』さんの背後にはいつのまにかさとみさんが立っていてふたりの頬に軽いキスをすると自分の唇に人差し指を縦に軽く当てて囁いた。
「他言は無用ですよぉ〜」
その時、彼女はあたしとかよねえにはキスをしなかったのはその後に続く悪夢の伏線だったかもしれない。

その頃には店は閉店時間がすぐそこまで迫ってきていて『L』と『G』そして冴子ちゃんが後片付けを始めていた。

その時、店の店内にある衛星テレビの画面には隣国の国際ニュースが映されていて『墜落の危機にあった旅客機を丁寧に救い上げ無事に着地させて乗客全員が救出される』といった内容のニュースが報道されていた。
もちろん、やたらと巨大な秋子の全裸がほとんど無修正で地上から映された動画のおまけ付きだったが。
『G』の中で秋子は絶叫していた。
『もういい加減に私の秘事と尊厳(そんげん)を返して!』
と。

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@悪夢の始まり

店じまいが済んだ頃にはもう既に午前3時を過ぎていた。

あたし、かなとかよねえ、そして紅顔の美少年は大人たち、に『早く寝なさい』と言われて地下の霊安室、じゃない従業員たちの仮眠室で先に寝させられていた。

他の9人もさとみの用意した地下室の16床もあるベッドで眠っていた。
もちろん愛人1号に関しては二重、三重の拘束付きだったけれど。
こんなのファミレスの地下にこんなにも多くの人数分必要なの?
と思ったが深く考えないことにした。
しかしどうも寝付けないのだ。
まるで室内の雰囲気が野戦場病院の治療室みたいで血まみれの負傷者が運ばれてきそうな気がした。

【これからとんでもないことが起きるから気おつけるんだぉ】
例のうざたてー声が【最重要機密鍵付きテレパシー】で伝えてきた。
ここにいる連中が【地神】様の怒りに触れて皆殺しにされるのは別に構わなかった。
しかし気にはなったので一応は眠ったふりをしながら【鷹の目】を飛ばして周囲を見廻してみることにした。

どうもここはファミレスバミッテを名乗ってはいるものの本店とはフライチャイズ契約にしてもメニューが他のバミッテとは大きく異なっていた。
まずはほとんどのバミッテでは24時間経営を基本としているのだけど、ここの店はAM6:00〜AM2:00までとなっている。
地下室に降りる階段近くのベッドで
「何でここは肉を使ったメニューがないの?」
ベッドの横側に並んで腰掛けた葉類亜希が『さとみ』に尋ねた。
「私は生肉の扱いが苦手なの、生魚の扱いも苦手、野菜を切ったりしたくない、そもそも私はここの店主じゃない」
『さとみ』はそういうと「ニヤリ」と笑った。

「あなた達のおめでたさには反吐(へど、吐き気とそれに伴い出た汚物)が出るんですけど」
いきなり失礼なことを『さとみ』は言ってきた。
だが不思議なことにそれを亜希は微笑みながら受け止めている。
むしろハラハラしているのは【鷹の目】で観察している由紀や有希を含むあたしたちだった。
「あなたと『G』と『B』は頼まれもしないのに死人の魂を胎の中に収めている、救ってやったという善人気取りかしら?」
亜希は微笑みながら黙っていた。

あたし、かななら頼まれてもしたくない、それが純日本人の偽(いつわ)ざる心情だろう。
日本人というものは本来は冷酷で残虐な人種だ。
ただほとんどの日本人がそれを自覚しているのでそうならないように必死になって抑えているに過ぎない。
しかし亜希は反論する気はないようにも感じられる。

『困っている人を見たら助ける、そこに国境も人種も関係ないでしょ』
いつの間にかかよねえも目を覚まして【鷹の目】を使いふたりの様子を見ているようだった。

その瞬間、かよねえの全身が激しく痙攣(けいれん)を始めた。
実体のない次世代獣鬼【獣神】に犯され始めていた。
かよねえは横になったまま、慌てて右手で近くにあったティッシュの箱を掴む(つかむ)と同時にそれを壊してた。
ティッシュペーパーを掴めるだけ掴むと、パジャマズボンとパンツを同時に脱ぎ下ろして実体のない次世代獣鬼【獣神】の太い陰茎によって押し拡げられた膣の見えるわれめさんにあてがった。
「ぃゃ、ぃぃ、ぃゃぁ〜」
左手のひらで口を抑えているもののどうしても声が漏れて(もれて)しまう。
『ふんその程度で【獣神】の射精する大量の精液を吸い取れるとでも思ったか愚か者めが』
【地神】様が嘲笑う(あざわらう)ような声が聞こえた気がした。
「ぁ、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜」
みんなはぐっすりと眠っているが近くで話しをている『さとみ』と亜希に勘付かれ(かんづかれ)ないかと不安だった。
実際には『気づいてもらえれば助けてもらえるかも?』と言う甘い気持ちがなかったかといえば嘘になる、しかし助けに入ってもらったところで『地神の豪雨』で店ごと粉砕されるもがオチだq

実はあたしも実体のない次世代獣鬼【獣神】に犯されていた。
もうあたしは自分をコントロール出来なくなっていたかもしれない。
意識が朦朧(もうろう)としてきて自分が今どんな状況かさえ分からなくなっていた。

「現実ではない異次元の子宮という名の仮想空間、あの人たちはそこで終わらない夢を続けるのよ、昨日と同じ、一昨日と同じ、そして、明日も、明後日も、明明後日も終わらない夢を見続ける、正直言ってそのまま成仏させた方が良かったんじゃない?」

その時の『さとみ』は明らかに【地神】様そのものとしか思えなかった。
しかし、後にそれは大きな間違いだったと気がつく。

「そんないい人ぶって何千万人を救った気でいるかもしれないけどこれから先、ヒトはどんどん死んでゆくんだよ?何億人?何十億人?あんた達の胎の中に収まりきると思っているの?とんだお笑いだわ、滑稽すぎて涙が出ちゃうわよ」
そこまで言われてもなお亜希は微笑んでいた。

「中の16人フルに使ってもせいぜいが数億人が限度、そうなったらもうあんたは戦闘力ゼロ、この地球を彼奴らからどう守る気?既に放射性物質まみれのこの国でさえどうにもならないのに」

『それなら私がなんとかするから!亜希さんは自分の考えを押し通して!』
かよねえは愚か(おろか)にも【地神】様にもダダ漏れな防護レベルの低いテレパシーで亜希に向かって叫んだのは悪手でしかなかった。

それでも亜希は微笑むのをやめなかった。
亜希にはちゃんとその心の叫びは届いていのだろうか?

「彼奴らの最終目的は人類の癌(がん)化計画!、狂った人類はいずれは自分達で勝手に殺し合う、モンスター秋子が世界中の核兵器を喰いまくったところで何の解決にもならないわよ?なぜなら第2、第3の秋子が次々と誕生するから、今度こそ奴らは人類を絶滅させる」
やはり愛人1号、愛人2号、愛人3号は地神が送った手先だった。

『ぃ、ぃ、ぃゃぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜、ぁ〜』
かよねえに対する終わらない射精攻撃は続いていた。
【獣神】がかよねえの膣(ちつ)の奥深くに大量に勢いよく解き放った精液が股間をおさえたもうティッシュでは吸収しきれなくなってティッシュから噴き出すように落ちあふれ出してベッドのシーツをベトベトに濡らし(ぬらし)ていた。
あたしもパジャマズボンを貫通して大量の精液を股間を抑えた指の間から大量に噴出させていた。
ただしあたしは何者かに神経の感覚を奪われているかのように何も感じなかった。
ただ自分のお腹が膨らんで行く感覚だけを感じていた。

【ほら、こうしている間にも第二の秋子が産声を上げようとしているから】
『さとみ』の声はあたしと亜希にしか届かないように【最重要機密鍵付きテレパシー】で送られてきた。

そこまで言われて亜希は少し悲しげな表情になった。
かよねえとあたしが【獣神】から受けている性的暴行に気がついたのか?
それとも次のターゲットがかよねえかあたしなのか?
あたしの頭の中に現実に秋子の肉体に起きた
過去夢がよぎった。

        ーーーーーーー

「まさかあの娘も忌まわしき実験の1人なのか?」
「そうだがアレはただの餌だ、本当のターゲットはそこにいる彼女、君たちは山﨑秋子と呼んでいるらしいな」
まさかこいつにまで身割れしているとは思わなかった。
しかしどこまで知っているのだろうか?
「特殊な能力で取り込んだ男の精液を相当なエネルギーに変換して身体の中に蓄積できる、そのエネルギーは通常の男性の一回分の精液なら500KWに相当する」(750馬力相当)
ふーん、と愛は鼻の先で笑った。
「それで、3号さんと2号さん、そして1号さんかな?3人は一回で何リットル放出するのかな?」
とんでもないことを愛がいい出したと思った。
その量をまともな人間の女性の胎内に放出しようものなら子宮破裂どころの騒ぎじゃない。
「10リットルは下らないいはずだ」
もう人外の話をしているとしか思えない。
「その量はどこから?」
「多次元、ここよりも複雑な多次元から流れ込んでくるエネルギーをここで言う精液に変換している、だがボク達はどう制御しても一回の射出と勢いを10リットル/毎秒より抑えることができない」
うわ、私ってとんでもない殺人兵器とえっちしていたんだ。
「それは君たちには大したメリットがあるとは思えないね、本当の目的はなんなの?」
「君は秋子とやらの友人だそうだが君は彼女がここ一年の間に何回生まれ変わったか、いや胎に子を宿して何回その子供に胎の中から喰い尽くされて来たか知っているか?」
君は、いやそいつは薄笑いを浮かべながら言った。
そいつはもう私が知っている君ではなかった。
「さっき倉庫で何回もやっただろう、その最後の時にボクはしっかり手応えを感じたんだ、やっと種づけに成功したってね」
もう何を言っているのか訳がわからなかった。
たださっきから自分の腹が異常に重くて苦しい。

「みんな、あきこからはなれて!ぜんいんくわれるわ」

突然パジェロのドアが開きリナが叫ぶ声が聞こえた。
私の口から、鼻から、耳から、そして下の穴から、至る私の穴から『ピュッ、ピュッ、』とどろどろとした赤い液体が噴き出して私の身体はその都度、激しく痙攣を起こした。
「一体何が起こったの?助けてよ」
一生懸命私は愛や奴に助けを求めたが2人とも身動きが取れずに怯えた目をして私を見つめているだけだった。
「えっ?うそ」
そういっている間に私の腹を食い破って出てきたそいつは愛の右足をいきなり喰いちぎって倒れた彼女の腸を喰らい始めた。
そいつは愛の身体を喰らいながらみるみる大きくなりあっという間に愛を骨ごと食い尽くしていた。

「だからにげてって」

リナが叫ぶと同時にパジェロはすごい勢いで後退を始めるとスピンターンをして全力で逃げ去っていった。
目の前がだんだん暗くなり奴が私の腹から飛び出した化け物、いや私によく似た、私に奴(愛人3号)の肉体が食い尽くされるのを黙って見ていることしか出来なかった。

        ーーーーーーーーー

【ここにいる全員が『おめでたい頭』の『あなた』の『妹』に食い尽くされるのよ!『あなた』も含めて全員ね】
いよいよかよねえの全身の痙攣(けいれん)が止まらなくなっていた。
股間をおさえていたベトベトになったティッシュがベッドシーツの上にポトリと落ちた。
勢い良くおさえて隠そうとしている手のひらの指の隙間から濃いドロドロとした白濁色の液体が吹き出し続けている、それでもかよねえのお腹は膨らみ続けていた。
もちろんあたしも同じだ。
【ほらもうかよとやらの胎の中にモンスターかよとなる受精卵が6個も出来たわよ、みんなを喰らう悪魔のかよが2匹もね】
その時まで、自分の口を塞いでいた左手を自分の下腹にかざして心の中で叫んだ。
『イブを舐め(なめ)ないでください、今その受精卵は全てあなたが私に打ち込んだ精子と共にエネルギーに還し(かえし)ました』

その声が聞こえたのか亜希は続けた。

「あのミミズメカの考察に大きな間違いがあったんだね」
そう返された途端『さとみ』は急に黙り込んだ。
「あのミミズメカの中には原子炉なんてなかった、ましてやポンポン核エンジンも、すべての原動力はあのひと組みの男女ペアの中に男の子が女の子の胎(子宮)の中に大量に撃ち込まれた放射性生物とミミズメカの口から取り込んだ物質だったと、それでその子達は今どうしている?」
亜希は急に真剣な表情になり逆に『さとみ』を問い詰めた。
「眠らせてある、ほかっておくと地上の人間を大量殺戮(たいりょうさつりく)し始めそうなカップルが多かったから」
重苦しい空気が立ち込め始めていた。
「そっかぁ、あのモンスター秋子を見て気がついちゃったわけだ、もう彼等彼女達は放射性物質なしでは生きていけない体になってしまっていることに」
亜希はベッドから立ち上がると『さとみ』のベッドに歩み寄り彼女の頭を軽く撫でた。
「それで見ちゃったんだ、数年後の、地球を」
そして亜希は『さとみ』の身体を強く抱きしめた。
「祖母なのに何もしてやれなくてごめんね」
そういうと亜希は『さとみ』の唇に自分の唇を重ねた。
そして狼狽えた彼女の身体をベッドの上に押し倒してひとつになっていた。
「亜希ママ、いえ、『G』はどこまで気がついていたの」
喘ぎ声の合間にさとみは亜希、いや『G』に対してだったかもしれなかったが問いかけていた。
「まずひとつ、あの12体の先住民達、悪魔と言って良いかどうか微妙なんだけどそいつらが『G』と配合して産み落とした12人のうちの1人、秋子にあの愛人トリオが手を出して、その秋子を暴走させることにやっと成功した、つまりその実験は数年前から実行されていたって気づくよね?」
亜希と『さとみ』は互いの太ももと股間の割れ目を強く押し当てて擦りあい、刺激しあっていた。
亜希の吐息も少々荒くなり始めててはいたが『さとみ』ほどではなかった。
その時ふたりの割れ目さんの中からそれぞれ細くて柔らかそうなアスパラガスちゃんが顔を出して、お互いに絡み合い、サラサラな透明の液体を吹き出しながら相手の膣の中に潜り込んでゆくのが【鷹の目】で確認出来た。
「そして冴子ちゃんに対しても同様なことを繰り返していた、だけど実験はことごとく失敗していた」
再び亜希は自分の唇を『さとみ』の唇に強く押しつけると柔らかな舌を彼女の中に押し込んだ。
【そうなんだぉ〜、冴子ちゃん、ことsae-Coは自然に発生した生命体でさえなかったんだぉ、ただ冴子ちゃんは旧世代の・・・ぉ〜】
舌を通して亜希の甘い香りがする唾液が『さとみ』の口の中に流れ込む。
「実は秋子とほぼ同じ時期に愛も、楓凛も実験対象となり彼女達寄生体のコントロールを受けた少年と性関係を結んでいた、そして最近になってまた少女達の不審死が目立つようになった」
少し荒々しくなった息遣いをしながら亜希は『さとみ』の髪を優しく撫で(なで)ながら言った。
「以前の時は単に同一人物が老化して死んでいた遺体が発見された、でも今度は違う、彼女達は下腹部の特に子宮を破裂させて、そこから有機溶剤のような何かで胎内の組織をほとんど溶かされていた」
亜希は『さとみ』の首筋に熱い息を吹きかけるようにして言った。

『花世ねえ、あたしも興奮してきた花奈もあれやりたい』
あたしは意味不明なことを言っていたことに気が付かなかった。
もしかしたらその行為が【獣神】に激しく痛いつけられた自分たちの女性生殖器を癒してくれると思ったのかもしれない。

「12人から愛、秋子、楓凛、敦子の4人を引くと『さとみ』ちゃんを入れて残りは8人、だけどその4人には微妙な違いはあるものの共通点はある」
ふたりのワレメさんから大量のサラサラな透明の液体があふれ出していた。
亜希は『さとみ』の首筋からゆっくり緩徐の胸の谷間にかけて左手の人差し指でなぞるとさとみは首を激しく左右に振って大きな叫び声を出した。
『やっぱり夕べのあれは現実に起こったことだったのね」
亜希はそういうと胸からさらに人差し指を下に這わせて股間の割れ目のそっと潜らせた
「やめてぇー!」
顔を激痛に耐えかねて歪ませた『さとみ』が叫んだ大きな声が地下室全体に響き渡る。
しかし誰も起きる様子もなかった。
実際にはあたし達が目を覚ましていたが。

あたしとかよねえは全身をべっとりと汗と精液で濡らして肩で息をしていた。
『さとみ』と亜希がやっているあれをやる体力はもう残っていないと感じていた。
特にターゲットにされたかよねえには。

【もう遅いわ!貴様を【獣姫】化させるに十二分な量の精液を既に打ち込んだ】
嘲笑うかのような【地神】様の声が聞こえた気がした。
しかしその意味は全くわからなかった。

【その時にあたしは気が付かなかたんだぉ、本当に狙われていたのが自分の分身、娘のひとりだったという事に】
うざたてー奴が歯ぎしりをしているように感じた。

亜希はそこで指を止めて自分の唇を『さとみ』の割れ目にそうように平行に当てると舌を忍ばせて穴の中に自分の唾液を大量に流し込んだ。
そして唇をそこから離すと何か呪文のような言葉を呟きながらその割れ目の両側の柔らかな肉の膨らみを撫で続けた。

『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、あなたはもしかして・・・』
『さとみ』がささやいた。

しばらくその行為を続けただろうか、『さとみ』が疲れ果てて眠りについたのを確認するとベッドから離れてそばにあったウエットティッシュを3、4枚引き抜くと戻ってきてそれで軽く割れ目付近とその中の穴を拭いた。
自分の荷物から天花粉、ベビーパウダーを取り出すとコレでもかと言わんばかりにぽんぽんとつけまくった。
「全く頑張りすぎる孫を持つと気苦労が絶えないわ」
彼女はそう言うと『G』や『B』にもちらりと視線を向けた。
「〇〇に関しても同じなんだけどね」
そこで何故か彼女はあたしとかよねえにちらりと視線を向けた。

亜希の中の由紀はその言葉を聞いた時に「あなたは誰ですか?」
と彼女、亜希に向かって問いかけていていた。

【擬似サイコメトリーは完了したんだぉ、ふたりともこれから忙しくなるんだぉ】
またうざたてー声が頭に響いた。    

「私は私よ、亜希、忘れちゃった?」
亜希はすかさずこう返したがさっきまでの彼女他はまるで別人格のようにしか見えなかった。

由紀と有希は今までさとみと亜希の間に交わされた会話を包み隠さず話していた。
もちろん亜希がさとみに対して行ったエッチな行為に関してだけは伏せて喋っていたけれど、まあ顔を赤らめて喋る態度でバレバレでしょう。
「今のくだり、あんた達顔を真っ赤にして喋っていたでしょ?」
速攻で見抜いていた。

【まあアレがなければ別時間線のあたしも他の月輪、銀、香織、シルバー、月海、つち、そして観萌、加世ねえは全滅させられていたはずなんだぉ】

「まあいいけど、私がそこまでしたってことはかなり彼女はヤバい状態だったと思うよ」
亜希はそう言うとさとみと『G』の顔を見比べて続けた。

「私たちは休息するためにこの近くに降りてこのバミッテでパンケーキをたらふく食べた、そして支払いに困り、私達は食器洗いからホールの仕事まで手伝わされた、それ、もちろん違うよね?」
確信はなさげだったが彼女はあきらかに自分の記憶を疑っているように感じた。
「まあ私よりも2世代も後の子だから出来て当然か?」
と言って深いため息をついた。

「どうせ彼女に『オフレコですよ』とか言って口止めされているだろうけど多分あなた達の見ていた出来事は今回起きた事の全てじゃないから、あなた達が見ていたのは最後の方のかなり逆転したのみだね」
亜希は自分のバッグからB5サイズくらいのメモ帳と鉛筆を問い出すと何やら書き込み出した。
「私は『B』さんとか楓凛みたいに図に書いた説明は上手くないからがまんしてね」
そうして書いた図は以下の通りだった。

      ーーーーーーーーー

 みんなの記憶にあるイメージ
         着地した
          ↓
         2005年
          ↓
       バミッテに入店
          ↓
        1号暴れ出す
          ↓
       さとみ強姦される
          ↓
       破裂して死亡に見えた
          ↓
         生き返る
          ↓
      現代(2025年2月)に戻る

       ーーーーーーーー

「まあこんな感じかな?」
亜希はそう言うと別のメモ帳ページにも書き出した。

       ーーーーーーーーーーー

でも現実はこっちだった。

     ⓪① ②③④⑤ーーーーーーーn回目
        着地した      着地した
         ↓ ↓
        現時間       2005年
         ↓ ↓
      バミッテに入店   バミッテに入店
         ↓ ↓
       1号暴れ出す    1号暴れ出す
         ↓ ↓
     全員強姦される  『さとみ』強姦される
         ↓ ↓
怪物化←ー全員破裂して死亡    破裂して死亡
 ↓ ↓ ↓
世界中で  自分自身に仕込んで   生き返る
暴れ回り  おいたタイマーが起動   ↓
人類滅亡     ↓ ↓
    ↓    (2025年2月)に戻る
         ↓
タイマーで①②③④⑤、、n回目に飛ぶ

      ーーーーーーーーーー

「まあ私の中の始祖がそこまでしたってことは『さとみ』はタイマーを使ってもなお命を落とす寸前まで身体と能力を駆使したってことだし・・・」
亜希はそこでしゃべるのをやめてしばらく考え込んだ。
「もしかして悪魔もどきと天使もどきが結託したのかも?」
由紀や有希だけでなくあたしも加世ねえもそこは嫌な予感を感じていた。
夕べの『B』さんと食器を洗っている間に出てきた話題だったけれどその二大勢力が手を結んだら人類の生き残る確率はほぼゼロに近いかもしれない。

【ここでいう悪魔とは『獣鬼』や『獣神』などのことではなくて『地人』や『人神』を含む『地神』から派生する種族を指すんだぉ、本人たちは神を名乗ってはいるけど不老不死である『地神』が創造した外来種なんだぉ、主に人間の男、男性を基本に『地神』が『イブ』と共に創造した『アダム』が原種なんだお】

【当初は『アダム』も『イブ』も『地神』の為の労働者だったんだぉ、共に寿命があり生殖機能は持たなかったんだ、だけど『イブ』は自己進化をして雌雄同体(しゆうどうたい)としての生殖機能を持ちイブ同士が交配をして『アダム』はもちろんの事、『地神』でさえ持たなかった子孫を残すことを可能にしてしまったんだぉ】

【嫉妬した『地神』は怒りで我を忘れて自己進化をしたイブをサンプルにして『アダム』を改造したんだぉ】

【『アダム』に進化系『イブ』の雄(オス)としてとしての機能を組み込み進化系『イブ』の子宮につながる膣にねじり込む太くて長い陰茎と進化系『イブ』の雄としての機能を破壊する種子と人造精子を生産できる陰嚢(陰嚢、いわゆるキンタマまたは睾丸、こうがん)を与えてイブが逆らえないほどの圧倒的筋肉を与えて『イブ』を犯させて『イブ』達から雄としての機能を奪いメスとしての機能を残したんだぉ】

【『イブ』にはメスとしての機能が残されて筋力も奪われて男たち『アダム改』に犯されて種子と人造精子を撃ち込まれて孕まされて、胎が膨らむほど中の子が育ち、産んだらうんだでその子がある程度成長するまで面倒を見させらせる『エバ(エヴァ)』という運命を背負わされることになったんだぉ】

【その『アダム改』が進化したのが『地人』であり、それが野生化した種族が『獣鬼』なんだぉ】

【それを政治利用目的に『地神』が改造したのが『人神』であり『獣神』だったんだぉ、だからこれらは太陽系における生態系とは関係ないし、あったとしてもまだそれを断言することができないんだぉ】

【それに対して『寄生体』は女性の子宮や男性のおちんちんの中に寄生する体長が150ミリメートルから250ミリメートルの全裸の美少女なんだぉそこから寄生した人間の精神を操り男女をまじ合い合わせる事によって種子を産みつけ女性の子宮内に種子を植え付けてそこに寄生体持ちの男性がその何度も何度も種子と人造精子を含む精液を射精して人造精子と種子を吸収させてある程度まで育つと交配したまだ寄生していない男性のおちんちん、つまり陰茎の中に潜り込んでその男性を支配する生き物なんだぉ】

【彼女達の先祖は元々『フェアリー(妖精)と呼ばれていた種族で、この太陽系において地球などの生物が発生した惑星のどんな生物にも一つは生息する微細でとても温厚な種族だったんだぉ】

【しかしこの地球において元からの先住民である人間の女性を『地人』や『獣鬼』が犯して彼女たちの胎内に大量の種子と人造精子を撃ち込んでから『フェアリー』たちに異変が起きて今の姿の『寄生体』に変化してしまったんだぉ】

寄生体なるものの姿は北海道北部に【鷹の目】を飛ばして住んでいる人たちの陰茎や子宮を透視しただけでその姿を確認することが出来た。
女性はともかく男性はあんなところにあんなデカいものが挿入されて違和感を感じないのだろうか?
もうその大きさと太さは尿管カテーテルのレベルじゃない。
『吐くならトイレで頼むよ』
【L】に忠告されてしまっていた。
確かに単体で存在するところだけを見れば天使と呼んでもさしつかえは無いかもしれない。
最も男性のアレに寄生しているところを見てしまうと堕天使と言ってもまだ許せない感が強すぎた。

しかし『獣神』らはどう考えても『悪魔』というよりは『鬼』に近い気がする。

【だったらそのうちに奴らが来るからその姿を見れば納得するかもにゃ】
なにやら意味ありげなうざたてーのひと言だった。

「それにしても、さとみの能力は『G』の娘達の中でも突出して時間操作が得意だったと聞いた事がある、それがことごとく先回りされたとなると・・・」
普段はのんびりしているようにしか見えない亜希の表情が焦りで覆い隠されていた。
「ここにモンスター化する対象はさとみと楓凛と冴子しかいないはず、そうなると一番先に刺され破裂させらたのはさとみ、そして次に楓凛、この予想、当たっている?」
亜希は胎の中の由紀たちに直接問いかけてきた。
もちろんその予想はドンピシャだった、と彼女たちは思っていたはずだった。
冴子ちゃんは凶暴化したとしても大した実害はないかもしれない。
楓凛さんはその腕力、瞬発力はちょっとしたアクション映画のヒーローくらいには脅威かもしれない。
問題はさとみだ。
彼女の能力が卓越した時間操作能力だと言うことを考えると彼女が暴走してモンスター化した場合、ありとあらゆるタイムパラドックスが次々と発生しまくって第二次世界大戦でICBMが飛び交ったり戦国時代にサブマシンガンが侍の体を甲冑(かっちゅう)ごと粉砕したり、数十年は来るはずがなかった巨大小惑星が地球に今すぐ、もしくは過去に衝突していたりするかもしれない。
もしも時間の巻き戻しが『さとみ』自身が危機管理のために自身に課したものではなく愛人1号改がさとみのモンスター化を隠蔽(いんぺい)するためのものだったとしたら?
由紀たちの背筋に冷たい汗がつたった。
しかしモンスター化する可能性があった人物が他にもいたことを彼女たちは見落としていた。
あたし、かなとかよねえ、そしてあたしの胎の中にいた、いずれも女児から可愛い美少女に育つ48人分の胎芽だった。
そう、もちろんすぐに会いに行けるアイドルユニットとして育て上げて秋葉原で一儲けする気だった。

もちろんウソだ、安心してほしい。

 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

@新たな逆トレース

由紀が気がつくと彼女と有希たちがいる羊水の中にそいつはいた。
由紀たちが共にミミズメカに侵入したさとみともバミッテでパンケーキを焼いてくれたさとみとも違う、恐ろしい形相のその女は何やら巨大な魚雷に似た何かの上に乗って浮いていた。
『ヤバい!』
胎の宿主である亜希が叫んだ時は既に時遅しだった。

由紀と有希は宇宙空間を漂っていた。

亜希が最後の力を振り絞って月の周回軌道に乗せてくれたのか日本はおろか地球自体が火の塊になっていた。

亜希はもちろんのこと風間刑事、リナ、楓凛、『A』〜『L』、誰に対する呼びかけにも返事はなかった。
幸いなことに由紀たちは宇宙空間でも呼吸ができるようだった。
一体何が起こったのか彼女たちじゃわからない。
本来なら2041年以降の時代にしかあるはずのない最終兵器を遥か先の未来から持ち込んだわけじゃなかった。
リミッター解除すれば木星ですらほとんどエネルギーに還すことができる機械仕掛けの化物、フルサイボーグ夏乃花奈。
今の彼女は自覚こそはないが外にいくつもの人造生命体を形成させて操ることができる。
椎奈の中にあるミニチュアなCoreが冴子、つまりはsae-Coを好きな年齢設定で好きな女性や少女の胎の中にも形成させて生むことが出来るのと同じだった。
あたしはそこで気づくべきだったかもしれない。

『アレは何をしているのか?』
目の前の冷徹な目をした少女は自問していた。
さとみの姿をした禍々しい形相をしたその少女こそ人造生命体としてのあたしの姿だった。
しかしこんなことをして何の意味があるのだろうか?
しかし確かだったのは本当に暴走化を狙われていたのはかよねえじゃなくて人造生命体としてのあたし、かなだった。
亜希の羊水の中であたしがまたがっていた魚雷のようなものはダミーだ。
そんなものがなくともあたしは地球以上のものを爆ぜさせることが出来る。

「由紀!後ろ!」
叫んだ有希の声で振り返るとさっきの恐ろしい形相の女が由紀と有希を睨みつけて浮いていた。

全身を義体(サイボーグ)化された私、その中に存在する小さなコア、それが外部に好きな年齢設定や大きさで製造出来る有機体で構成された人造生命体のあたしたち。
その全身を義体化、つまりフルサイボーグ化された私こそが波瑠沙芽が夏野明美と結ばれて沙芽(つまり、さとみは観萌ではなかった)の子宮の中ですくすくと花世ねえと共に育ち途中から加世ねえは明美の子宮に移り、産まれた時にすぐに奴ら(地神の部下である崖信介と堀恵萌)によって拐われて(さらわれて)全身フルサイボーグに改造されていた私の出生後の姿だった。
人造生物としてのあたしは以後紛らわしいから今後は「カナ」と呼ぶことにする。
そして今、由紀と有希に対峙している『さとみ』によく似た少女こそが亜希たちが牧之原市付近の高齢科学者と共に燃え始めた豪邸から救助された小学生の姿をした女児ふたりこそ外部に造られたイミテーションの有機人造生命体だったのだ。
しかもあたしの場合はそれを何体でも造れるらしい。
かよねえも同じだとしたら本体の彼女はどこにいるのだろうか?
結局は見た目が12才のあたしも見た目が10才のかよねえも同じ義体化されたフルサイボーグ夏乃花奈の分身だったわけだ。

『みーつけた』

カナはそう言うとロケットランチャーのようなものを肩に乗せて矢継ぎ早に9発のロケット弾をすべて撃ち放っていた。
視界が真っ白になるほどの強い光に後ろから吹っ飛ばされ、その光が消えた後に由紀が振り返ると彼女たちの後ろにあったはずの大きな月が完全に消失していた。
由紀と有希は気がつくべきだった。
いや、あたしこそが気がつくべきだった。
フルサイボーグ夏乃花奈は時間の流れの速度を変える能力でさえ持っていた。
そしてその人造生命体であるカナがそれを出来てもなんの不思議もなかった。

だがさとみは巻き戻す能力は少なくとも由紀たちの前では使ったことはなかった。
あのファミレスで彼女が逆回転したかのように再生した時、気がつくべきだった。
「もう逃しませんよ」
さとみによく似た禍々しいカナの目はそう言っていた。
とはいえ暴走を始めたカナはもうフルサイボーグ夏乃花奈の支配下にはなかった。
では今、フルサイボーグの夏乃花奈が創造した人造生命体である『さとみ』はどこにいるのだろうか?

普通ならロケットランチャーの弾はもう全弾打ち尽くしたはず。
しかしフルサイボーグ夏乃花奈の能力は局部的に時間の巻き戻しができるためにカナにも同様な能力が与えられていると見て良いだろう。
今のもうひとりの私であるべき人造生物の偽さとみ、カナが抱えているロケットランチャーのロケット弾はまだ全弾残っていると見るべきだ。
「さっきの超未来兵器はどこで入手したのかな?」
由紀はひとつカマをかけてきた。
それはそれで正しい判断だ。
もしもそんなすごい兵器が存在するとしたら、遠い未来には地球人類は存在していないはず、いや、それどころか目の前にある火球になって人類が滅びてしまっているはずだ。
それではそんな兵器は造り得ない。
それとは全く別の人類が滅亡しない歴史を持つ未来が存在することになる。
『そんなこと知ってどうする気かしら?もうこの星には互いに憎しみあって殺し合う、そんな未来しか残ってないの、素晴らしいじゃない?もうお腹に大勢の魂を抱えてそんな彼らに虚しい夢を与える偽善者もいない、私が木っ端微塵に吹っ飛ばしたたから』
そう、カナが彼女、亜希の仮想胎盤を起点に地球の地表ごとエネルギーに還したはずだった。
そしてそんな残酷なカナの本質こそがフルサイボーグ夏乃花奈の本質でもあった。

まるで『地神教会』の教典にある『残虐であれ、残虐であることは決して悪いことではない』と言うのと同じだ。

そして「自分達の民族のみが『光の子供』であり他の民族はすべて『暗黒の子供』だ」と言う教典をそれぞれの国の別々の宗教で教えれば互いに憎しみ合い皆殺しとなる世界大戦に発展するのは目に見えていた。

その結果、誰1人として生き残っていない世界になるのは当然だろう。

由紀は有希を背中に感じながらさとみ、つまり私の人造生命体、カナの動きを警戒していた。

「今度のはさっきのようには行かないよ、1発ずつあなたたちの体のどこかに突き刺さるように自動追尾をかけておいた」

カナは残虐な笑みを浮かべ、そう言いながらランチャーのトリガーを引いた。

撃ち出されたロケット弾は由紀の方には真っ直ぐ飛んでは行かず、回り込むようにして有希の背中を狙っていた。

まるで獲物を狙う蛇のように。

あきらかにさっきとは別の兵器だ。

その瞬間、有希の感触が由紀の背中から消えた。

「生意気な、時間の巻き戻しをして逃げられるとでも思ったのか?そいつは空間座標だけじゃなくって時間座標でさえ追尾出来る優れものだよ、今頃は今頃彼女は未来か過去のどこかで背中にドリルのように身体をえぐられながら血と肉を撒き散らしながら木っ端微塵に吹っ飛ばされているさね」

やはりそれはあきらかにさとみの口調とは違う喋り方をしている、もちろん彼女はさとみではなく似た形態に、本来のかなとは性格も能力も異なる種子と人造精子によって造り替えられたカナだったからだ。

「次はあんたの番だよ、情けだ、正面から心臓を抉り(えぐり)取ってやるよ」

カナがそう言った時、由紀は何か呪文のような言葉を言わされていたのかもしれない。

目の前のカナの顔が青ざめていくと同時に何かを叫んでいるのが感じ取れた。

そしてカナはトリガーを引いた。
そのランチャーから打ち出されたロケット弾はドリルの刃のように回転しながら由紀の心臓をめがけて真っ直ぐに飛んでくるのが見えた。

ーおしまいだー

そう覚悟を決めた時由紀の左手は何かに強く引かれた。

周りの星が流れ星のように勢いよく流れ出す。

光の速さを超えた動き、テレポーテーションともまったく異なる動きだった。

「逃げても無駄さね」
どこからともなく奴のそんな声が聞こえた。

『リバース!』
誰かの叫び声。

気がつくと由紀は有希の背中に密着するようにして奴の、カナのすぐ背後に浮いていた。

由紀はきっと背中からさっきのドリルの刃のようなロケット弾が迫ってきて来ているのを感じながら「もうだめだ」と言う諦めの心境になっていた。

同時に由紀は信じられないものを見ていた。

カナの背中に深々とサバイバルナイフを両手で突き刺している有希、驚愕の表情で振り返ったカナの背中をそのサバイバルナイフごとドリル状のロケット弾が回転しながら切り彫り進むようにして血と肉を宇宙空間にばら撒き爆発するとそれは瞬間的に蒸発した。

有希は振り返ると由紀に抱きついて来て囁いた。

『ただいま、ゆきりん』と。

しかし有希はどうやってあの自動追尾ロケットドリル弾をかわしたのだろうか?

確かに由紀の胎内には『ユーキ』と『あつこ』が胎内に潜んでいたのかもしれない、しかし有希の中には『かなえ』しかいなかったはずだった。

とてもじゃないが・・・『あ“!』
由紀は思わず叫んでしまう。

あたしの中にはもうひとり、『G』がいた、いやこれはもう『敬意を表して『ゴキ様』と言うべきか?

『全然敬っていないじゃん』

有希の中で『G』が手足をジタバタさせて猛烈に抗議していた。

こんな絶望的な状態にも関わらずボクとあたしは星ひとつ存在しない異空間で大笑いをしていた。

やっぱりボクもあたしも『ゴキちゃん』を嫌いにはなれないようだ。

原因は私だった。

冷徹で非情だと自己評価をしていたフルサイボーグ夏乃花奈はもう2体の人造生命体を造っていた。

ひとりは由紀だった。
もうひとりは有希だった。
しかし謎がまだ残っていた。

ふたりの人造生命体は私で無い何者かの意識が強く支配をしていた。

由紀は有希のお腹に手を当てて「いつから有希の中に入っていたの?」と訊いてみた。
すると速攻で「亜希とさとみが話をしてからヒーリングをして寝かしつけるまで」と返して来た。
「それはなぜ?」
「あの店のさとみの周りに妙な気配がまとわりついていたのを感じたの、その時は違和感しか感じていなかったけれどさとみと亜希の会話でさらにその不安が増してこっそり実体化を解除して有希の胎内に潜り込んでそのあとあなたたちふたりと亜希の会話を聞いていて合点がいったわ」
「じゃあボクたちを月の周回軌道まで飛ばしたのは?」
「それはわからない」
「亜希も楓凛たちも死んだのかな?」
「さあ、私もあの場所から逃げるのが精一杯だったから、ただ」
由紀の問いに『G』は少し言葉を濁らせた」
「時間が巻き戻された時には微妙な歪みが生じるの、それを逆に追っていけば改竄される前の本当の時間線を探り当てられる、それをこれから見せるね」

しかしそこに実際に存在していたのは実体化を解いた『G』ではなかった。
加世ねえもまた既に義体化されて別の場所にいて私、花奈と同様に外部に複数の人造生命体を外部に造れるようだ。

しかしもうひとりそれが可能な奴を私は見落としていた。

アンドロイド椎奈だ、彼女も自分の胎内にsae-Co用のコアとは別に自分自身のコアを持っていたはずだった。

それがもし人造生命体を造れるとしたら?
そしてそんなことが出来る人間はただひとりしか考えられなかった。
志乃、彼女は一体どこから来たのだろうか?

【その口調が『G』のものではないことに由紀たちは気がつくべきだったかもしれない、しかしそれは無理なことだろう、彼女たちはまだ志乃とは未対面だったし本当の加世ねえとも初対面だったのだから】

「時間が巻き戻された時には微妙な歪みが生じるの、それを逆に追っていけば改竄(かいざん)される前の本当の時間線を探り当てられる、それをこれから見せるね」

『G』がそう言ったとたん、由紀たちは『G』の視線でサバイバルナイフを胸の狭間に深々と突き刺されて愛人1号が股間に突き刺した太いものから大量に注入された液体で下腹部を破裂させられているさとみを見ていた。
逆回転でさとみの破裂して飛び散った内臓が身体の中に収まり、お腹お腹がスリムに戻ってゆくと股間からその太いものが抜かれてサバイバルナイフも抜かれ、彼女の華奢な手首も解放された。
彼女はテーブルに置かれた水の入ったコップをひとつひとつトレーに回収していくと途中でこっちを睨みつけて来た。
そこからも現実に起きて来たことの逆再生と言えた。

そして2台の車に戻りバックで走り横殴りの吹雪の中で亜希が地図を広げているところまで戻ると一瞬真っ暗なイメージになった。

そして風景は再びバミッテの店内に戻っていた。
さとみがサバイバルナイフで胸を突き刺されて、手首を握りつぶされているところまでは同じだったが彼女の下腹部は破裂させられていない状態でその場でうずくまっていただけという所が違うといえば違っていた。
それよりも圧倒的な違いは自分の視界が赤く染まりそこに居た全員が愛人1号による惨殺されていたところか。
視界がクリアーになったかと思うと大量に血を流していた仲間に次々とジャックナイフが突き刺されて、それが回復術か何かのように生き返らせていく様をみるのは滑稽でもあった。
そして最後にさとみの胸からサバイバルナイフが抜かれるとあとはさっきと同じであるように見えた。
しかし今回は由紀たち13人がバミッテに入店するところで逆再生は終わっていた。

由紀たちは再び店内のテーブルに席を着いてるところから始まるとばかり思っていたが今回は違った。

店内の入り口で由紀たちは立ち尽くしていた。
店内のテーブルとテーブルの間が不自然に広くなっていて上に乗っていたであろうコップや皿が床に落ちていて砕け散っていた。
そしてそのすぐそばには下腹部どころか体全体を破裂させられていたさとみの亡骸があった。
そんな彼女を見下して笑っている愛人1号はその亡骸に覆いかぶさると激しく腰を振り出して、彼女の飛び散った血と内臓が膨らみ尽くしたお腹に戻っていくのが見えた。
そしてそのお腹の膨らみが収まっていくと愛人1号はさとみから離れて彼女の胸に突き刺さっていたフォークとナイフを引き抜くとかき消すようにして消えた。
それから由紀たちは逆再生でそれぞれの車に戻りその途中で愛人1号が助手席に拘束されているのを確認していた。

そこから再びさっきの店内でさとみが身体を破裂させられて死んでいるのを目撃するところから始まるかと思ったら意外にも彼女の体は膨らんでいたものの破裂はさせられてはいなかった。
ただ額からおびただしい出血がありそれが額に開いた大きな穴に吸い込まれていくのを見るのはシュールとしか言いようがなかった。
彼女はことが終わったあとなのかジャックナイフで頭蓋骨を深々と刺されれて抜き取られるとさっきと同様に愛人1号に覆い被されていた。
彼女はやはり愛人1号に犯されていてその時の彼女の表情はあの宇宙空間や最初に亜希の胎の中でみた奴そのものだった。
そこから由紀たちは車に戻るのだがその時も由紀たちは愛人1号が拘束されているのを確認していた。

そして再び由紀たちはバミッテ店内でさっきのさとみが死んでいるところから始まるとおもっていた。
しかし今度は床に大量の血がひろがってうつ伏せに倒れて顔を上げてたださとみが愛人1号に、いや、4人以上はいる愛人1号に輪姦されているところから始まっていた亜希たちは店に入るなり10人を超える愛人1号に惨殺されたのだ。
しかしその中に愛人1号とは異なる別の存在に由紀は気がついた。

「さすがゆきりんだね、いいところに気がついたよ」
【G】の賛辞が入ったがそれよりも由紀は解説を欲していた。

「正確に言うとこの時の愛人1号は今、さとみの上に乗っかっているただひとりだね」
「他は・・・・」
有希の胎の中で『G』は唇をかみしめて恨みを込めて言った。

「アレは私の、いいえ、私たちの乳親たちだよ」
由紀に送られてきたメッセージは【G】の誤変換だと思った。
しかし有希はそうではないことにすぐに気がついたようだった。
【B】から解説された彼女たちの12人の父親たちの話を思い出していた。

彼女たちにその悪魔のような化け物の種子と精液を受け入れて孕まされるか?それともその場で全員虐殺されるかの2択しか与えられなかったというあの話だ。
しかしながら【G】は第3番目の選択肢を取った。
その【悪魔のような化け物を逆に孕ませてしまう】といった言った大胆な選択肢だった。

実は【悪魔のような化け物】の正体は【イブ】又は【エヴァ】からの派生進化系種族だった。

【それを『地神』たちは『獣姫』と呼んでいたんだぉ】
またあのうざたてー声が(最重要機密鍵付きテレパシー】で送られてきた。

【ある『イブ』が『獣神』に犯されて大量の種子と人造精子を含む精液を子宮内に射精させられたんだぉ、その時の精液をそのイブは『獣神』の都合の良いようにbot化されるはずだった】

【しかし彼女たちはよほど意志が強かったのかそうはならずに『雌雄同体』のまま『獣鬼』の勢力と運動能力を入手した】

【ただしほとんどのイブが理性を失い凶暴化していた】

だからこそ【悪魔のような化け物】には子宮も産道(ちつ)とそれにつながる子宮口も存在していた。

【その『G』の正体は義体化された加世ねえの分身、人造人間だったが送られてきたメッセージは2025年2月のバミッテ知床店にいる『G』からのものだったんだぉ〜】

      

「最初から説明するね」
彼女『G』、実は加世ねえの分身は実体化を解いて有希とボク、由紀の頭に直接語りかけて来た。要約するとこうだ。

『G』の父親たちは私たちがバミッテ知床店に入店する前に12体全てで待ち伏せをして全員を惨殺させた。
サニークーペ助手席に拘束されていた愛人1号を解放した。
もうすでに全員で陵辱を始めていたさとみの子宮内に寄生体の種付けを愛人1号にさせた。
寄生体に支配される意識の中、抵抗するも彼らの意図通り時間を戻させられる(『G』たちの父親ら悪魔のような姿をした連中が元々持っていた能力らしい)
そして2回目の交配で最終的な寄生体が完了さとみを完全に乗っ取る。

【悪魔のような姿をした連中、その正体こそが『獣神』の派生だったんだぉ、その時には奴らは元々地球に生息していた『フェアリー』と結託して、いや正しくは人間の体内に生息していた、その宿主である女性や少女を奴等が犯すことによって、奴らが彼女たちの中に解き放った精液に含まれている種子と人造精子が微細だった『フェアリー』を男女の生殖器に寄生する寄生体に変えて狂わせてしまっていたんだぉ】

三回目の交配で愛人1号は暴走したさとみ、カナを寄生体として自身にとりこむ。
用無しとなったカナの母体は愛人1号に破裂させて終わりにしようと思っていた。
しかしわずかに残っていたカナの意識が瞬間的に自分の能力を意識的に暴走させて時間を2005年まで巻き戻しみんなに異常を知らせようとした。
だけど寄生体となったモンスターさとみ、カナはカナの胎の中に転移して彼女を操りわざと愛人1号に襲わせて、時間の巻き戻しをつかいボクたちに自分がいつも通りだとアピールした。
(それが逆に怪しまれる結果になったがそこはうまく誤魔化せた)

「それでもさとみ(カナ)は何度か私、『G』に対して思わせぶりなメッセージを送って来たと言うわけね」
由紀が有希のお腹に触れている手を通して『G』、モンスターカナが伝えて来た。

『そう?そこまでバレてたんじゃここでふたりとも死んでもらうしかないわね』
由紀は自分の胎の中で奴の声を聞いたような気がした。
死ぬ直前に自分の意識とかを過去に飛ばしたのかも。
またあの超未来兵器を持っているのだろうか?
ボクは自分のお腹を見ながらそこをさすり、それは少し厄介だと思った。
「どこみているのよ、私はここよ」
由紀たちの目の前には身長が50メートル程もある巨大なモンスターカナがさらに大きな全長が300メートルはありそうな爆弾の上に乗っていた。
「これなら全時空において過去から未来まで太陽系ごと吹っ飛ばせるわよ」
もう正気とは思えなくなったモンスターさとみ(カナ)がそう言って高々に勝利宣言をした。
その瞬間に巨大な手が伸びて来てモンスターさとみ(カナ)を爆弾と一緒に挟み込むようにして2本の指でひょい、とつまみ上げると『パクッ』と口のなかに放り込んでしまった奴がいた。
『あ“!』
と由紀たちは思わず叫んでしまった。
それはすっかり存在を忘れられていた『モンスター秋子』だった。
断末魔の叫びと共にモンスター秋子のお腹が強く光ると彼女は何事も無かったかのように燃え盛る地球目指して飛んでいった。
そして静寂が訪れた。
「多分モンスターさとみ(カナ)の戦略ミスだよね」
と由紀は言った。
「うん、あたし達のお腹の中とかせめて等身大だったらね、目をつけられることもなかったのに」
と有希。
「あんなにデカくなったら『食べてください』って言っているようなものだよね」
2人同時に言って深いため息をついた。

「終わった?」
呑気な声が由紀たちの頭の中に響いた。
「さとみ(カナ)ちゃんにパンケーキ200枚ほど焼いてもらうつもりだから帰っておいで」
どう聞いても、どう考えてもあの葉類亜希の声だ。
「まさか今回も仮想世界の出来事だってオチじゃないでしょうね?」
由紀は完全に落胆を隠せないまま確認した。
これではこんな話を長々と読まされている読者があまりにも申し訳なさすぎるじゃないか?
「何のこと言っているかイミフでみんなとバカ受けしているんだけど、そこちゃんとした現実世界だよ?ただし西暦2832年だけど」
聞いているこっちの方がイミフだと言いたくなった。
「あの時『ヤバい!』と言ったのはアレをもっと未来に飛ばすつもりだったのが意外と人類がまだ生き残っていそうな年代に飛ばしちゃったのと」

飛ばしちゃったのと、他に何?
「メンゴメンゴ、まさかあんた達まで月の周回軌道に飛ばしちゃったのは正直ミスったわ、空気のない宇宙空間でも死ななくってよかったね」
「よかったじゃないよ、こっちはあいつに何度も何度も殺されかけたんだから、『G』さんがいなかったらマジで死んでいたよ」

【そう、それこそがつまりあそこにいたのは『G』ではなくて加世ねえの分身、カヨだった、それが何よりの証拠だったんだぉ〜、つまり燃え盛る地球や太陽のエネルギーを酸素を含む空気に替えて気圧をかけて呼吸できるようにしてくれたんだぉ〜】

由紀は亜希にもう一言付け加えるのを忘れなかった。
「いや、マジであのモンスター秋子があいつを喰ってくれなかったらどうなっていたやら」
「聞いた?あのモンスター秋子、2832年もまだ元気にとびまわっていたってさ」
亜希がそう言った途端爆笑の渦が伝わって来た時にマジで秋子さんが気の毒に思えて来た。

【2041年の壁は存在しなかった】

フルサイボーグ夏乃花奈がつぶやいていた。

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@本当の悪魔とは?

    

由紀と有希が西暦2832年の月の周回軌道上(とはいえ月自体がカナによって消滅させられたが)にとばされているあいだ、亜希と椎名を除くほぼ全員が惰眠を貪っていた、もとい、熟睡をしていた、なんてことは無かったらしい。
と言ってもこれは亜希の中にいる異世界リナから後で聞いた話なので信憑性はかなり疑わしいと思っている。

ボクたちは『ゴキちゃん』の導きにより元いた現代に無事戻って来たが正確には亜希によって未来の宇宙空間に飛ばされた時点から8時間は経過した時間帯だったらしい。
楓山由紀と楓山有希と異世界リナの3人は肉料理と魚料理が出来るということで調理に回されていた。
ちなみに異世界リナは実体化した際に20歳前後のあまり美人ではない女性に化けている。
さすがに4才の女児に働かせたらヤバいだろう、と言うことだと由紀たちは思っていた。
すぐ後ろでは実寸大化した『かなえ』と『あつこ』はホールに回されててんてこ舞いのようだった。
経験値がゼロの上に無資格な由紀や有希たちにこんな仕事をやらせるここのオーナーはどんな顔をしているのか見たくなった。
そこで機械化された花奈と同じく機械化された加世ねえに似せて新規にあたしが成形した、人造生命体のあたし、かなとかよねえは性懲り(しょうこり)もなく【鷹の目】を飛ばして上の店の様子を覗きに、じゃない探りに行っていた。

「あたいがオーナーなのだが何か?」
後ろを振り返るとどこかで見覚えのある制服を着たババァ、もとい熟女が立っていた。
やたらと高飛車で高慢ちきなのだけはわかった。
「あの、こちらのファミレスのオーナーさんは某少年探偵アニメの警察幹部コスプレでもするんですか?」
恐る恐る訊ねてみた。

「君の目はブラックホールかね」
とんでもない返しがきた。

絶対関わっちゃダメな奴だと思いすぐ後ろでハンバーグランチを作っている有希に由紀は耳打ちをした。
「絶対に法律とか守らないタイプだから無闇に刺激しちゃダメ」
すると即答で「あの人、愛知県警小田井署の警部さんですよ」と帰って来た。
「何でこんなところにいるのか知らないけど有名ですよ、悪い意味でですけど」
有希が小声でボクに伝えて来た時にそれが聞こえたのかいきなりボクの襟首を掴んで言った。
「なぜここにいるのかって?たまたまこっちの経営状態を見に来ていた最中に大地震が起きたり浜岡原発が事故ったり、北陸の原発が次々とテロに遭って(あって)帰るに帰れなくなったからだよ」
いや、こんな奴が法律を守るとは思えないし、どこぞの憲法を守る気がなかった元総理と同じだと思った。
いやいや、今大事なのはそこじゃない。

このおばさんが何者で何で愛知県の警察警部が北海道のファミレスを経営しているのか?って話なんだけど。

「彼女は病院とかコンビニとか銀行も経営しているわよ」
突然、後ろから異世界リナの声がした。
「ちなみに亜希の母親の葉類智恵警部で風間達也刑事の元嫁ですよ」
それでやっと事態が理解できた。
亜希や風間達也さんたちが地下の部屋にこもって寝ているのは単にこのババァに会いたくなかっただけのことだった。
「この店はパンケーキしか出さないと言うクレームが来たのでな、見に来たのだが、どうやらデマだったようだな」
彼女はそう言うとはやばやとホールの方に去って行った。
『ところで異世界リナさん、この店がボクたちが飛ばされていた間に獣の襲撃を受けたっていうさっきの話は本当ですか?』
キッチンのどこかに盗聴器が仕掛けられている可能性も考慮してボク達は亜希の胎の中にいる本体同士で会話する事にした。
『ああ、あの悪魔、と言っては悪魔に対して失礼だろうけど自分が産み落とした娘たちを殺しに来たと言うのならいざ知らず抱きに来たのよ』
『それって普通じゃないですか?』
と由紀。
『アンポンタンポン、抱くと言っても性行為の方の抱くよ』
不快そうな顔をして異世界リナは大雑把に汚れた食器を手早く手洗いをして次々と食器洗浄機の中に並べていった』
ボクは絶句して思わず手を止めてしまい危うく丸焦げの炒飯を作ってしまうところだった。
「ゆきりん、手を止めない!」
有希が大声で警告してくれなかったら助かったようなものだ。
『それで彼女達バッコンバッコンされちゃったんですか?』
思わず言ってしまったボクは冷ややかな目でそこにいた全員ににらまれた。
『それなら亜希が対処したから問題ないわ』
と異世界リナ。
『つまり代わりに亜希が彼ら全員とバッコンバッコンしたわけですか?あの大きなおなかで』
ボクの中のイメージでは彼女ならやりかねないと思えた。
『まあ奴らが本気を出していたら全員が凌辱されて有機溶剤を胎内に大量に放出されて全員死んでいただろうね』
『男の達也さんとか少年Aと愛人1号もですか?』
いきなり『ユーキ』が話に割り込んできた。
『そりゃ男にだって穴は他にもあるでしょ、ア〇〇とかお口とか』
『それはそれで興味あります』
同時に言ったのは有希と異世界由紀だった。
『でも自分の実娘にも手を出しちゃうなんてマジで悪魔ですよね、あの連中』
思わずそう言ってしまったボクに冷たい視線が集中してしまう。
『それ、亜希の前で言うのタブーだから』
『でもアレって親子関係がわかる前のことでしょ?それ以降は一度も』
由紀はあることに気づいて思わず「あ“!」と叫んでしまった。
昨夜、と言うか今朝早くか?『さとみ』をヒーリングエッチしていた時の亜希、彼女はまるで別人のようだった。
もしも彼女が必要と判断した時、父である風間達也とも当然のようにしちゃうかもしれない。
だって彼女と風間達也は父娘ではなく血のつながらない他人、それどころか恋愛対象かも知れない。
「まあこの話は亜希の中ではタブーだから」
それから3人は無言で作業を再開し始めた。

淫らな甘苦夢(アクム)が今日も亜希を苦しめていた。

疲れているはずなのに眠れない。
今朝の一件は亜希にとっては過去、『さぬきがわ学園事件』を思い出す嫌な出来事だった。
理由は由紀と有希に悟られたくはなかったという思いがあった。

太くて長い鱗(うろこ)の生えた尻尾のようなものを口や膣(ちつ)に深々と差し込まれて『ドクドクドク』と腹と胎の中にその体液、おそらくは精液に近い何かが流し込まれて大勢の人々をかくまっている仮想子宮が破裂させられかけていた。
何故か私の中の住民は無事だったようだが彼らの阿鼻叫喚の声が耳をつん裂くような気がした。
何故12匹もの奴らと代わる代わる相手にさせられて中の住人を護れたかが不可思議だった。
亜希の胎が異次元に繋がっていたのか?それともまだ見ぬ誰かに助けられたのかもしれない。
ただし肩まで伸ばした赤髪を外側に跳ねさせた気の強そうな少女のイメージがやたらと強く残っていた。
実際に亜希が加世と対面するのは今から少なくとも2ヶ月後のはずだった。

そしてもうひとつ時々見る嫌な夢を思い出してしまったからだ。

もう2度としないと誓ったはずの赤の他人だとばかり思っていた実の父である風間達也との性行為、亜希は覚えているだけでもあれから両手でも数えきれないほど夢の中ではやっちゃっている。
もちろん息を荒げながら汗だくで目が覚めるとその相手であるはずの風間先輩はすぐそこにはいない。
もちろん寝る前に枕を共にした記憶もない。

ただ気になって電話をかけると病院に入院していることが多かったりする。
最悪だったのは犯人が至近距離で撃った大型拳銃の弾が防弾チョッキさえ貫いて心臓に穴を開けた時だろうか?
犯人が振り回していたナイフを避け損ねて頸動脈を切断された時もあった。
後どうでもいいことだが亜希の知り合いの山崎秋子に手を出そうとして射精が止まらなくなったこともあった。(まあ自業自得だが)

大型拳銃で撃たれた時は亜希は防弾チョッキから血を吹き出している穴に唇を当てて丸くつぼめた舌を入れると息を吸ったり吐いたりするように亜希は父の血を飲み込んだり唾液を流し込んだりを繰り返す。
最初は勢いよく噴き出ていた出血も次第に収まってゆき出血がとまったのを確認する。

亜希はいつも父と自分の唇同士を重ね合わせて舌を差し込むと大量の唾液を流し込んでズボンのチャックをおろして父の萎んだものを引き出すとその先端を手のひらで優しく撫でると少しずつではあるけれど大きくなり始める。

それから亜希は上体を起こして父の上に馬乗りになる。
もうひとつの父の手は自分の股間の割れ目に手を伸ばして中指を差し込んで自分が一番感じる小さな芽を刺激してサラサラの液体が割れ目の中に満たされる。
それに亜希の中指を浸して興奮し始めた穴の中に差し込んでその穴の内面を満遍なくそのサラサラな液体で浸してやる頃にはもう父のそれは立派に固く、大きくなっている。
亜希は躊躇うこともなく一度腰を浮かせてそれを自分の膣(ちつ)に差し込むとゆっくりと腰を落として軽く途中まで差し込む、と膣の内面が何かに押し広げられたかのような心地よい、しかしやがて強くなってくる痛みが走る。
その痛みが治まるのを待ってから軽く腰を浮かせて再び耐えられないくらいの痛みが走るまで腰をゆっくりと下ろす。
それを繰り返していくうちに父のそれは亜希の膣の一番奥に達してGスポットを刺激する。
亜希の口は思わず小さな喘ぎ声をもらしてしまう。
ずっとこうしていたいと言う気持ちはあるけど亜希の身体は勝手に腰を浮かせたり沈めたりを繰り返している。
亜希は前に倒れ込んで彼の上に体を重ねて再び唇を重ねながら舌を差し込むと腰をゆっくりと前後左右に回しながら唾液を流し込んだ。
父のそれは最大にかたく膨らんで突然激しく脈打ちながら亜希の膣の中に熱いとろみのある液体を何度も何度も何度も永遠に続くと思われるくらい大量に放出する。
それは瞬時に亜希の胎、子宮によく似た何かからさらに上につながる管に怒涛のような濁流となって流れ込み、その先にある何かに吸い込まれた。
亜希の義母である葉類智恵に言わせるとまともな人類の女性ならあり得ないことらしいけどそんなことは亜希にはどうでも良いことだ。
それから少しして、亜希の口の中にとても甘い香りがする液体が大量に溢れ(あふれ)出す。
亜希はそれを彼の喉に一気に流し込む、咳き込むかと毎度毎度思うがそうならないのは不思議だ。
その途端、父は軽い痙攣を起こして上下に激しく腰を振り出した。
また父のすごく硬くなって大きくなったモノ、この国の人たちはそれを陰茎と呼ぶらしいがそれが亜希の膣の中で暴れ始めてその内壁を大きく押し広げる。
亜希はその推し拡げられ、擦られる(こすられる)痛みと快感に翻弄され(ほんろうされ)耐えきれずに重ね合わせた口から喘ぎ声を漏らしてしまった。
それに刺激されたかのように父のそれは激しく脈打ちながら大量の液体を私の胎の中に何度も何度も何度も何度も何度も何度も放出した。
その液体をこの国の人たちは精液と呼ぶらしいがそんな事はどうでも良かった。
それが怒涛のような流れとなって亜希のお腹にある子宮のようなものを駆け上がりその先にある卵管より太い吸い込み口に吸収されていった。
そして亜希の口の中に溢れた甘い液体を父の喉に流し込む。
そして父は再び萎びかけた陰茎をさらに硬く大きく、長く勃起させて・・・・・
それを何度繰り返しただろうか?
いつのまにか父の方が亜希の上に覆いかぶさっていた。
父は死んだように深い眠りについている。
そこで亜希はいつも目を覚ますのだ。
布団の上 で、たった1人で。
大抵そんな時は枕元に置いたスマホが激しく着信音とバイブで震え出す。
嫌な予感を感じつつも通話ボタンを押すと切羽詰まった署員の叫び声が聞こえて来る。
内容を聞いても亜希は特別驚かなかった。
風間刑事が凶悪犯に至近距離から大型拳銃で胸を防弾チョッキごと撃ち抜かれて心臓が破裂した状態に近いらしい。
まあ普通の人間なら即死だろうがそこは何発抜いても死なない俗称〇〇だし刑事だ、簡単には死なないはずだ。
と思いながらもいつもタクシーを呼ぶ羽目になる。
いつもならどんなにピーキーなエンジン特性や足回りにセッティングしたレーシングカーもどきの車でもレーサー並みに時速150キロメートル以上の速度で後輪や前輪をスライドさせながら走らせる自信はあった。
しかしそんな夢を見た後は最悪だ、ほとんど体力が底をついていた。

そして今朝の出来事だ亜希は自分の腹の中に突然出現したモンスターさとみ、正確にはさとみの胎を利用して創られたさとみの能力を暴走状態に近いまでに強化して亜希の胎に潜り込んだ、亜希のまだ知らない存在、カナだった。

奴は卑怯にも亜希の胎の中にいる一般市民数千万人もの命、いや魂と言い換えるべきか?亜希には説明がつかない。
奴は彼らを巻き添いにして亜希の身体ごと吹っ飛ばそうとしていた。
慌てた亜希はモンスターさとみ(カナ)と彼女がまたがっていた爆弾(ハリボテ)を数千年先に転送したがエネルギーの消耗が激しかったのか疲れ果てて深い眠りに落ちてしまっていた。

そんな時は夢などみることなく、ぐっすり眠れる筈だったが生憎と目覚める前に悪夢を2度も見させられることになった。

ひとつはここにいる亜希を含む女子全員があいつら、悪魔みたいな連中に陵辱される夢。
しかもおまけがあって愛人1号があいつらによって解放されて全員が身体を破裂させられていた。
そして全身をジャックナイフで滅多刺しにされて目を見開いたまま絶命した先輩、風間達也ちちの姿。

【これは現実に起きていたんだぉ、確かにその時に地下室にいた女子全員が陵辱を受けて種子と人造精子を撃ち込まれていんだぉ】

【しかし何故かフルサイボーグ夏乃花奈はその時に全員によく似た人造生命体を作り彼女たちと存在をすり替えて犯させたんだぉ】

【どうして非常冷徹に教育訓練されたはずの彼女がそんな行為に出たのか?謎だったんだぉ】

【ただし、さすがにフルサイボーグ夏乃花奈もエネルギーが限界で時を戻すことも出来なかったんだぉ、それが亜希グランマの乳を滅多刺しにされる行為を防げなかったんだぉ】

【そのために亜希グランマは父との性行為に踏み切らざるを得なくなってさらに体力を消耗させることになってしまった、これは明らかなあたしの作戦ミスなんだぉ】

もうひとつは凶暴化したさとみが再び現れて両肩に担いだロケットランチャーから円錐状に鋭く尖り高速回転をしているロケット弾を次々と撃ち放ち蛇のように回り込みながら泣き叫ぶ女の子まで追いかけ回し、その身体に突き刺さると血と肉片を撒き散らしながら身体の奥深くまで入り込んだ途端に自爆させると言う念の入り用だった。

【義体化した花奈が一時期、親友の喪失によって魂が抜け殻になってアメリカ軍からの傭兵としてイスラエル軍として作戦に参加していたんだぉ】

【かなや私、かよに分身として産まされた娘たちが参戦したガザ地区の戦場においてドローンなどの無人兵器で命を落としたはずの現地の娘たちが、いいえ、私が自動小銃で蜂の巣にして大量の肉片を撒き散らしながら恐怖でおびえた表情のまま命を絶った幼い子供たち、ロケット砲で壊れたビルの3階まで吹っ飛ばされて飛び出していた鉄筋2本に串刺しにされてその上に片足を太腿から吹っ飛ばされてすぐに命を落とした娘、それだけじゃなくて高速回転しながらドリルのように子供達の身体に穴を開けてその体内の潜り込んだ時点で爆発して木っ端微塵にする非人道的なとある日本の軍事企業が開発した殺戮兵器、その毒牙にかかり命を落としたはずの子供たちが何故か私たちの中にいた】

【その心の声はめたるぎあな加世ねえなんだぉね、そうなんだぉ、それはある時間線においてイスラエル軍が実際に使用した兵器だったんだぉ】

【いや、だからそのビデオゲームのパクリっぽいネーミングはやめて、フルサイボーグ秋草加世という公式フルネームがあるんだからさあ!】

【問題はその記憶が何故こんなに不自然な形で亜希の中に残っていたかということなんだぉ】

そして目が覚めると何事もなかったかのように全員がすやすやと寝息を立てていた。
ただ、亜希はどうしようもないほど疲れ果てて再び、今度は浅い眠りについていた。

 亜希の心のわだかまりに消えない罪悪感があった。

「ごめん、さとみちゃん、今度は何回ループさせちゃった?」
朝起きた時に亜希は本当に申し訳なさそうに『さとみ』に謝りながら訊いていた。
「私は今回はなにもしていませんよ?、亜希さんの先読み能力がキャッシュに残っているだけだと思います」

「なるほどね」
由紀は納得していた。
「何が『なるほどね』じゃ、お前さん達の思考はホールまでダダ漏れなんだよ」
由紀が驚いて振り返るとあの葉類智恵なる影の警視総監が立っていた。
『陰の』というのは本来ならその地位についていてもおかしくはないほどの人材なのに何故か愛知県警小田井署長と武蔵署長を兼任しているらしい。
らしいというのは彼女のクローンがあちらこちに分散して配属されている説があるからだそうだ。
「心が読まれているのがわかったからって心の中まで敬語にする必要はないんだよ」
由紀はゲンコツでおでこを軽く叩かれた。
「ただし『ババァ』は禁句だよ、こう見えてもまだ40代なんだからね」
智恵がそう言うと有希は指折り計算しながら言った。
「じゃあ智恵さんはわずか13歳にして達也さんに孕まされちゃったんですね!すごい!さすが、なか〇〇刑事!」
有希、今度は頭のてっぺんに拳を振り下ろされる。
一体どんな計算をしたのだろうか?
「あたいの娘、志乃はまだ生きていたとして今頃二十歳さね、四十から二十引いてももう二十、合法出産だよ」
と言いながらなぜ落ち込んでいるのですか?
智恵さんはしばらくしゃがみ込んで考え事をしているようだったが気を取り直して立ち上がって僕たちに訊いてきた。
【実は彼女は17才にして達也とやっちゃって6つ娘をトラックの荷室で出産しているはずなんだぉ、その時にかなもかよも立ち会っていて、記憶にないかい?】
うざたてー声はいったが記憶になかった。
実は後で知ることとなったが時系列が逆だった。

「その娘さんを寝かしつけた後で得体の知れない化け物達がこの店を襲撃しに来たんだね、そいつらは追い払えたのかい?」

「追い払えなかったよ」
異世界リナはつぶやいた。
「なぜ?」
とそこにいた智恵さん以外は全員疑問に思った。
「なるほどね」
智恵さんだけが納得していた。
「えーと、あたいが知っている前田リナは確か4〜5才くらいだと思っていたのだが、あんたはどう見ても20才前後、何故かなー、しかも志乃に顔を似せているし」
露骨に不快をあからさまにして智恵さんは言った。
それもそうかも知れない、凶悪犯に至近距離から大型拳銃で心臓を撃ち抜かれて命を落としている、赤の他人が死んだ娘さんにそっくりな容姿で現れたら気分が良い筈がない。
「あんた、本当は志乃だね!」
智恵さんに指摘されて自称異世界リナは複雑な表情になった。

「それで、死んだはずのあんたがでしゃばってきた理由はなんだい?」
智恵の問いにしばらく考えた後に自称異世界リナ、いや、風間志乃は覚悟を決めているかの様に言った
「私は亜希に何度も助けられた、今度はあの娘を私が助ける番だよ?」

志乃の話を要約すると亜希はどう選択を取っても志乃さんの実父である達也さんとセックスをしなければならなくるらしい。
要するに達也さん自身が常に瀕死の重傷を負うか最悪死亡する運命にあるという。
そんな時に亜希のヒーリングセックスは必要らしい。
生殖を目的としないで傷や病の治療を目的としたセックスというものがどういったものかは理解し難かったが

まず問題の一つとして、これは他のメンバー『G』や『B』にも当てはまることだったけれど今、日本の人口のおおよそ9割を3人で分担している以上彼女達の胎の中には1人平均3,500万人以上の命を仮想子宮に預かっている。
もしもそこに大量の精液が流れ込んできたら中の人間達がどうなるのか?それを3人の中で1番気にしているのが亜希1人らしい。
こう言っては何だが他のメンバー、『G』を含む『A』〜『L』まで全て元々が殺戮者なので正直言って自分の胎の中にいる人達がどうなろうが知ったことじゃないと思っている。
まだ『G』や『B』さんは良い方でふたり以外は取り込むこと自体を拒絶している節がある。
誰だって好き好んで関わりのない人間のために命をかけて守りたいと思うものなどいない。
しかしその人が少しでも関わりを持った相手の場合はどうだろうか?
判断に悩むかもしれない。
『L』は渋々『愛人2号』と『愛人3号』を取り込んでいるがこの2人が実はあまりにも凶暴なために隔離という意味で取り込んでいるだけで、それだって凄いリスクに決まっている。
【でも今回のグランマ、亜希の場合は事情が少し違ったんだぉ】

亜希はそれをモンスターさとみ、つまり夕べ【地神】様の指示で実体のない獣鬼【獣神】に永遠とも思われた膣内直接射精によって大量に撃ち込まれて暴走しかけていたあたしの分身であるニセさとみに指摘されたにも関わらず、迷いがなかった。それは何故か?
「あの子、亜希はお腹の中の数千万人を手放す気が絶対にないんです」
少し間を置いてから志乃は続けた。
「あの子はまだあの人達を元の生活に戻すことを諦めていない、しかも完全な形で・・・、それと、もうひとつ」
志乃はそこで一区切りするとやはり智恵さんに助けを求めるような続けた。
「あの子は私に気を遣っているんです」
「どういうことだ?」
と智恵さん。
「あの子は無意識のうちに私の父、達也に惹かれていることに気がついていないの、逆に私は父に魅かれていました、毎晩父とエッチする夢を見ては興奮冷めならぬまま自慰行為に走ることもありました」
志乃はいうとうつむき加減に智恵の足元を見た。
「きっと私から父を奪うことになると思っているのかも知れません、でも私は、むしろ彼女をあおって、たきつけていました」
ここで志乃さんは母親である智恵さんの顔をちらりと見た。
「母はこんな私を決して許してはくれないとは思うんです、私の素性がわからなかった最初の入院中はともかく、わかってしまった後も2人の関係が続いてしまっていたと知ったらショックですよね?」

【ここであたしも加代ねえももちろん由紀も有希も理解していなかっただろうしぃ、話の流れから志乃が凶悪犯に射殺されて、亜希と風間達也も銃で肩を撃たれて入院していた時の話だと思っていたんだぉ〜】

【でも正確には風間志乃は風間達也と親子関係はなかったし、葉類智恵とも親子関係はなかった】

【ただし、志乃がまだ地球人でいう3才くらいの時に愛知県の小田井にテレポーテーションで『人神』や『獣神』から逃れて公園の池に出現したところを待ち伏せされて危うく殺されそうになったところをたまたま居合わせた葉類智恵と風間達也の元夫婦に助けられたんだぉ】

【その時の詳しい話はいずれするとしてもうすでに並外れた頭脳と行動力で事実上愛知県警のトップの座についていた葉類智恵は志乃の面倒、というよりは奴らから志乃を護る時間を取ることが出来なかった為に元夫であった達也に志乃を預けることにしたんだぉ】

【つまり最初から血縁関係はなかったんだ、じゃあ問題ないんじゃ?】
あたしはうざたてーやつに確認してみた。
【まあとりあえずは様子を見るんだぉ】

そこで志乃は少しだけ困惑した表情になって続けた。
「女の勘ってやっぱり凄いと思うんですよ、父が重傷を負うか、命を落としかけた時にやっぱりどうしても亜紀さんの残り香が、その父の大事な場所や傷口、そして口臭に残ってしまうんです、逆も同じです、亜紀さんの大事な場所から口臭からどうしても父の匂いを私自身でさえ感じてしまうんです、これに母が気が付かないわけがないんです」
そう言ってから志乃は一瞬だけ自嘲気味に笑った。
「私は父と何度も不貞行為を働いてしまいました、でもそれは亜紀さんのせいなんかじゃありません」
そう言った彼女の前の床には大粒のしずくがふた粒、み粒と落ちていた。
「くっだらない」
それを見ていたのか見ていないのか智恵さんはそんな志乃さんの懺悔を一蹴した。
「だいたいあいつとあたいはあれ以前にもう離婚していて赤の他人なんだよ?何であたいがそんな瑣末(さまつ、くだらないの意)なことを気にするとでも思っているんだい?」
それから智恵さんは志乃さんの頭をやさしく撫でると後ろから強く抱きしめた。
「お前らは馬鹿か、あたいはあんた達にはいつも感謝こそすれ、恨んだり憎んだりしたことなんて一度もないよ」
智恵がそういった時にあたしは彼女がトラックの中で6人の赤ちゃんを、いやすぐに女児に成長していたがそんな彼女たちを見た時の表情が忘れられなかった。
「いつもあいつの命を救ってくれてありがとう、毎日が母の日だよ」

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@この国の主人公は誰?

この国において本当の主人公は誰だろう?
本当の主人公は間違っても『いつも詭弁で逃げ惑う政治家』な訳はない。
スポーツやアートで世界一を争える人たちだろうか?
それもあり得ないと思う。

【亜希グランマはこの国、ううん、世界中のひとりひとりがそれぞれの人生における主人公だと考えていたんだぉ】
またうざたてーの注釈があたしの頭の中に勝手に飛び込んできた。

「うーん、でも肝心なことを聞き忘れちゃったな」
由紀が言うと有希も「そうだね」と返した。
『ゴキちゃん』こと『G』が有希の胎の中にいたから未来で宇宙空間での戦いにもなんとか勝ったが(実はモンスター秋子のおかげ)実体化した『G』は胎の中に3,000万人近い一般人の命を抱えたままこの店内にいた。
何度説明されても理解に苦しむがそう言うことらしいが少なくとも彼女の戦闘力は少なくともほぼゼロに等しいだろう。

『B』さんに関してもほぼ同じことが言えたが彼女も数千万人の命を抱えている以上攻撃能力も防御力も半減、もしかしたらそれさえ下回っていたかも知れない。

では『L』さんはどうだろうか?
実は彼女も胎の中に大きな爆弾を抱えていると言っても決して過言じゃない。
中にいるのはあの愛人2号と愛人3号だ。
ふたりとも実大サイズなら毎秒10リットルの射精が出来るという。
並の人間女性なら一瞬にして体を破裂させられる量と水圧だよ。
『L』のスペックは計り知れないものがあるがそれでも彼女の胎の中で突然愛人1号が実体化しないとも限らない。
冴子ちゃんと同様な能力を持っているとすれば『L』の胎の中でわざと自害して実寸大化して『L』の胎を突き破って出てくる可能性だってある。

そして最終的には亜希だ、彼女が1番大きな爆弾を腹に抱えていると言っていい。
彼女自身諦めが悪くて見切りをつけられない4,000万人近い命、それらはもれなく放射線汚染を受けている。
そして志乃さんと達也さんとの三角関係にひとり悩みうじうじしている。

【由紀と有希のふたりはいまだに勘違いをしているようだったんだぉ】
またうざたてー声だ。

【そもそも由紀も有希もフルサイボーグ夏乃花奈が作り上げた人造生命体だったんだぉ】

【そしてフルサイボーグ秋草加世も常に亜希たちの周りに張り付いていたんだぉ】

【それは当時のあたしや月輪、香織、銀、月海、椎に対する罪悪感とそしていまだにわだかまりが抜けきれない観萌と亜希に対する敵対心があったんだぉ】

【だからその時はまださとみが観萌だと信じて疑わなかったんだぉ】

【つまりは花奈の命を隙(すき)あらばと狙っていたわけ?】
あたしはうざたてーに問い返していた。

【そうだね、かなのすぐそばにいたかよねえはフルサイボーグ夏乃花奈が創って遠隔操作していた人造生命体であって本当の加世ねえじゃなかったんだぉ】
とうざたてー。

【じゃあ本物の加世ねえの分身は?】
自問する必要もなかった。
倶名尚愛が南海トラフ巨大地震による中央新幹線の超深度トンネルにおける脱線事故の車両の中で拾った紅顔の美少年、パジェロロングボディに椎奈や亜希(途中で暴走した秋子に喰われるが)と共に乗っていた彼こそがフルサイボーグ秋草加世ねえの分身、人造生命体だった。

【覚えはないかにょ?あいつらは常に君たち姉妹を仲違い(なかたがい)させて殺し合うように仕向けてきたんだぉ、政治の世界ではよくある手法なんだぉ】
と言われてもピンと来なかった。

【国に仇なすテロリストとして内閣調査室からの彼女たちが3歳児になったばかりの頃からの殺害指令、その当時加世はまだ20才を過ぎてそれでもまだ幼稚園児の花奈、椎、そして観萌らに手を焼いていたんだぉ】

【まずは加世にとっては楽勝だったはずの大物政治家と肉体関係を持った女性たちの殺害命令があった、彼女たちに国防上の重要機密をもらした可能性があったらしい】
フルサイボーグ夏乃花奈が参加してきた。

        ーーーーーーー

冬河銀はあの日、近所の公園で遊んでいた。
遊具は割と多い方方だった。
滑り台、ブランコ、シーソー、ジャングルジム、アスレチック的な何か、長い板を使って10人以上同時にまたがって遊べるロングベンチブランコがあった。
その日は朝早くからの雨があがったばかりでほとんどの遊具が水浸しになっていて遊べる状態ではなかった。
その中でもいちばん濡れていたそのロングベンチブランコにうつ伏せになって身体を横たえて眠っていた3才くらいの女児がいた。
彼女の右側に立ち眺めていたその子から見て白い半袖のブラウスにななめにシマシマもようの短いスカート、水玉模様のパンツが丸見えだった。
その娘を起こそうとは思ったがためらった。
男子でもあり、女子でもあった冬河は人見知りが激しかった。
なので『冬河』という三人称を与えることにする。

「起こしてあげたら」
髪の毛の長い黄色い雨ガッパを頭だけかぶらずに着た女の子に声をかけられた。
今思えばこの娘が春香織だったんだろうが、その時はこれといった特徴もなく普通の女の子にしか見えなかった。
冬河がためらっていると彼女はシーソーの上で寝ている女の子の左手側から背中を揺り動かして起こそうとしていた。
しかし何度ゆすっても起きる気配がない。
「あなた近所の子?」
遠慮なく話しかけて来るその娘にたじろいでしまっていた。
近所といえば近所なんだろうけどその娘のいう近所がどれくらいの近さを指しているのかわからなかった。
「ああ、言わなくてもいいわ、あなたもどうせ私とは話がしにくいと思っているんでしょ?事実目つきが恐いなとか言われてるし」
「うん」
そう言いながら女の子の身体を揺すり続けていたが一向に起きる気配がない。
「かぜひいちゃうね」
なぜかその一言だけはいえた。
その瞬間、冬河の体は砂場に突き飛ばされていた。
シーソーで寝そべっていたはずの女の子がロングベンチブランコから起き上がって急に左うでを突き出して冬河を信じられない力で突き飛ばしたのは理解した。
理解できなかったのはそのうでのひじから先が破裂して真っ赤な血を吹き出していたことの方。
にもかかわらず、かけよろうとした雨ガッパの娘に「来ちゃダメ」と叫んでいた。
シーソーから飛び降りると今度は何かを掴むように右腕を突き出して今度は肘から上から真っ赤な鮮血が飛び散った。
とてもさっきまでブランコの上で眠りこけていた子とは思えない鋭い動きと険しい眼差しが何か動いているものを追っているように視線を動かしている。
「かおりさん」
彼女がそういうと今度は両足が破裂してその場に崩れ落ちた。
「もう夢で見た予想とズレてる、守るの無理、すごく早く動いている奴を目で追って、とめて」
女の子が叫んだ時、冬河は両手を広げて彼女の目の前に飛び出していた。
着ていた服ごと胸が裂けて鮮血が飛び散っていた。
「見ているものを追って」
そう言った瞬間、「かおりさん」と呼ばれた娘の姿が消えていた。
『カキーン!』と金属同士がぶつかり合う音が何度か響き合っていたと思うとかろうじてしゃがみ込んでいた娘の雨ガッパは至る場所で切り裂かれて血まみれだった。
そして彼女の足元には着ていた作業着のどこも破れていなかったにも関わらず全身から真っ赤な血を噴き出していた男が横たわっていた。
どう見ても生きている様子には見えなかった。
しかし3人の児童も同じで全身の服を切り裂かれて大量の血を流しながらその場に崩れ落ちるように倒れていた。

        ーーーーーーーーー

「あれはさすがにこたえましたね」
香織さんが言うと冬河も同意するより他になかった。
今考えるとあれはまさしく痛みを伴うVRスプラッターを3~4才の子供が体験するとどうなるのか?
そのお手本みたいなものだったと思う。
「その頃私はまだ小学生だったと思いますが・・・」
志乃さんは言いながらスケッチブックに文字列を書き込んだ。

      ーーーーーーーーー
小田井第二公園猟奇(かまいたち)事件
死亡 20~30代男性(全身の至る箇所で血管が破裂、失血死)
重傷 3才女児(心肺停止状態で発見、全身に不可解な傷)
   3才男児(腹部や両手などに深い裂傷)
   4才女児(右足太腿、左肩、腹部に深い裂傷
      ーーーーーーーーー

「その後捜査の努力の甲斐もなく犯人逮捕どころか目撃者や揚力な手がかり、証拠品ひとつ見つからなかったと聞かされました」
志乃さんの一言に続き
「時間操作能力」
香織さんはボソリと呟いた。
「なんで忘れていたんだろうね」
彼女の目がうつろに泳ぎ出した。
「私もそれから数年過ぎてから父の書斎で捜査資料のコピーを見ただけですがこの事件以降、この付近で連続して起きていた若い女性や少女の不審死事件が止まったことは確かなんです」
志乃さんはその下に書き足した。

第一公園 A子さん(23才)頸動脈、心臓、および子宮破裂
3丁目  B子さん(15才)頸動脈、心臓、子宮破裂、肩の骨脱臼
市道3号 C子さん(16才)子宮破裂、骨盤骨折、脳内出血

「これって時間操作能力を粗雑に使用した強姦事件じゃ?」
香織さんは3人の被害状況を見てすぐに理解したようだ。
でもなぜ?まさか幼女や男さえも性欲の対象にするような変態さんだったのか?
「実は目撃者がいたんです、と言っても犯人を見たわけじゃなくてまず花奈さんの左腕から大量に出血するところから始まって最後に血まみれになった4人が倒れるまでの一部始終を見ていた当時女子高校生だった人がいたんです」
つまりその子が被害に遭っていた可能性もあったということかもしれない。しかし・・・
「なぜそれが後になって」と香織さんが呟いた。
確かにその人が目撃者だった事を言い出せなかった理由はわかるほとんどホラー劇場のようなシーンを見せられておびえない女性はいないだろう。
「それはその人が今から1年前、そして公園の事件から8年近く過ぎた時、周りには人も大勢いたはずの休日の真昼の公園でレイプされそうになったところを小学生高学年くらいの女の子に助けられたと本人は言っていたのですが、心当たりはありませんか?香織さん」
そう言われた香織さんはしばらく考え込んだ後に『あ“』と言ってからなぜか花奈を見た。
「はい、確かにそんなことはありました、近所の幼稚園の先生でしたよね?、あの時は珍しく『時間操作』に関する禁忌事項をよく知っているなとは思ってはいました」
花奈はそれを聞いて何かを思い出したかのような表情をした。
「本人の証言によると『急に後ろから抱きつかれて押し倒されると顔を胸元に押し付けられて荒々しい息を吹きかけられ胸を揉まれながらスカートを捲り上げられて下着を引き摺り下ろされそうになったところを助けられた』とありました」

【しかし最後の1人の時に思わぬ邪魔が入ったんだぉ、冬河銀、春香織、そして【地神】の部下であり殺戮兵器だったはずのフルサイボーグ夏乃花奈、彼女自身さえ自覚のなかった3才女児相当の人造生命体が勝手に動き出してその連続殺害事件に関与した】

        ーーーーーーーー

【その事件にはおまけがあって5人目の血痕が現場に残されていた】
と志乃さん。

【それは男に時間操作能力を与えた加世のものだった?未来の花奈ちゃん?】
志乃の意識が割り込んできた。
【多分違うと思う、加世ねえがあたしと同様にに義フルサイボーグ化されたのはもっと後だから、でも志乃さんも本当は忘れてしまったのかな?実は加世ねえも私と同様にその事件から数年後には義体化されて、それを再設計し直したのが自分自身だったという事を】
珍しくまともな口調でうざたてーくない花奈がコメントをはさんできた。

【何のことか分からないけど、ごめん、今はそれは考えたくないの】
志乃は言うと再び調理に専念し始めていた。

        ーーーーーーーーー

@なんとかノートじゃあるまいに

【次に大型トレーラーや毒ガスをを使った花奈を始め観萌、椎たちに対する殺害計画、これははっきりとは覚えていなかったんだぉ、でも加世ねえが関与していた事は確かなんだぉ】

あの日あたし、夏乃可奈はバス停で気持ちよく眠っていたはずだったが無理矢理叩き起こされた気がする
あたしの友達である春香織さんと、もうひとりは冬河銀だった。
香織さんは母親の使いで近所のパン屋に届け物を持ちに行く最中だったんだ。
ここからは【鷹の目】を過去に飛ばして香織さん視点で観察する事にしよう。
だからここからは私=香りだと思って読んでほしい。

私、香織の目の前、50メートルほど先にバス停がある。
そのバス停には四方を天井と3方側面をガラス面に囲まれた待合室があって、その中に背もたれのないベンチがあった。
だけどそこに私たちよりも幼げな2才くらいの女の子が横になって足をこっちに向けて眠っていたのだけど、問題は股を全開にして両足を地面に落として、要はスカートがめくり上がって中のパンツが丸見えだということだった。
しかもさっき前に強い雨が風向きもガラス面が開いた方向から吹き込んでいたらしくて、女の子の服は全身水浸しだった。
「クシュン!」
可愛らしいくしゃみと同時に彼女は目を覚まして起き上がると周りをキョロキョロと見回した。
そしてすぐに叫ぶ。
「この辺に大きなパン屋はある?みんな逃げないと大変なことになるよ」
急に何を言い出したのかと思った。
土砂降りの雨が強く吹き込んで来るベンチの上で眠り込む事自体が異常だが。
預言者みたいに言い出した事自体が危ないと香織は思った。
まだ店まで700メートル以上はある。
女の子の言ったことを信じたわけではないが香織足取りを早くさせる。
どういうことわからないからも一度ちゃんと聞きなおそうと振り返ったらまたさっきの場所で同じ格好で爆睡しているし。
「ちょっとぉ、こんなとこで寝ないで!風邪ひいてしまいますよ!」
大声出して揺すっても爆睡は続いている。
「銀くん、この子知っている?」
わたしは聞いてみた。
彼は首を横に振った。
この女の子とは面識がないらしい。
私も同じだ、この近所ではみた記憶がない。
「どうしますか?」
このまま放置したら、風邪どころか死んでしまいかねない。
「わたしが背負います」
彼が全身ずぶ濡れの女の子を背負った。
彼に傘をさすと私に寄ってきた。
「服が濡れてしまいますよ」
私が言うと銀くんは恥ずかしげにほおを染めて言った。
「くんって言わないでください、私はDNA検査ではX染色体が2対とY染色体でもX染色体でもない特別なものが一対余分にあるらしいんです」
「それはどう言う意味?あなたはその意味を理解していますか?」
私は彼に聞いてみた。
その時私は一応小学3年生だったがそっちの勉強をしてきた自負はあった。

「最近お医者さんに言われたので覚えているだけなんです、明日には忘れているとおもいます」
まあ速い話が彼は女性でもあり、かと言って男性ではなく男性に似た何かだと言うことだろうか?
私は女の子をおんぶして傘をさして寄って来る銀と一緒に歩き出していた。
「なるべく急いで行きましょう、あの店には着替えが何点かあるはずです」
「大型タンクローリー」
銀が呟いた。
「何?それ?」
私は銀に訊き返した。
「前輪右タイヤがバースト」
少し間を置いて銀がふたたびつぶやいた。
「わからないです、この女の子が耳元で呟いているのをそのまま言っているだけですから」
私たちはすぐ目の前に迫った私たちが左に曲がるべき交差点の信号機が点滅をし始めているのを見ていた。
「走ります」
銀はそう言うと私に傘を押し付けて走り出した。
私たちを追い越しながら右折してきた車が急ブレーキをかけてふたりのすぐ横で止まり「バカヤロー!」と罵声が飛ぶ。
交差点左を見るとかなり遠く、店のかなり向こうから片側二車線ある道路の右側車線を走る大型タンクローリーらしき姿が見えた。
店の少し手前でトレーラーヘッド部が不自然に左に傾いたと思うとタンクローリーは急激に向きを変えて歩道側に突っ込もうとしていた。もちろんその先には母が勤めるパン屋がある。
正直言って私は大惨事になることは避けられなかったと今では思っている。
しかし目の前には信じられない光景が繰り広げられていた。
大型タンクローリーはつなぎ目部分でさっきとは逆向き『く』の字に折れ曲がり2車線をまたいだ状態で停止していた。
後で母や父に聞いた話によると普通では考えられない事故だったようだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「銀はあの事故のことを少しでも覚えている?」
私はあれから5年以上過ぎた今、改めて確認したくなっていた。
どうやらその時、銀が背負っていた女の子が夏乃花奈ちゃんだった事がハッキリとしてきたからだ。
どこでもかんでも突然に気を失うように眠りにつきその間に予知夢をみる女の子なんて世界広しとはいえ滅多にはいないだろう。
あの事故は当時単なる整備不良で済まされたが私はそれから3年後不自然な目撃情報を耳にした。

あの時の警察発表では伏せられていたが大型タンクローリーの左側前輪タイヤにはライフルの弾丸らしきもので射抜かれた弾痕らしいものがあったと小田井署の風間達也とか言う名前の刑事に聞いた。
「どうして香織さんはそれをそんなに年数が過ぎてから再び調べ直す気になったの?」
銀さんが訊いてきた。
「それは香織さんの母親が、正確にはあの店にいた人たちのうちの6人があの事故、いいえ、事件から1〜2年の間に謎の不審死をしていたからですね」
突然、亜希が話に割り込んできた。
しかし普段の亜希とはまったく異なる声色と口調。
私だけでなくシビリアン車内に乗っていた全員が驚いた、と思ったがそうでもないようだ。
少なくとも文月輪ちゃんと佐原観萌ちゃんだけは顔色ひとつ変えていなかった。
「風間志乃さんですね、その話は父親である達也さんから聞いていたのですね」
観萌ちゃんは確信したように話を進めてきた。
「そう、あれは確か私が射殺される3年近く前だったと思う、私の父親はあの事故を不審に思っていた」
『え“!、射殺された人が喋っている?それが亜希って一体?』
私は軽いパニックに陥っていた。
「まさか心臓を亜希さんに移植されてその志乃さんの心臓の記憶がとか言う禁断のパクリ設定じゃ?」
私は思わず口走ってしまった。
「ないない、それはないですよ、だって私の死因は心臓を大型拳銃で撃ち抜かれたことによる心臓破裂だったんですから、どんなスーパードクターでも移植しようがないです」
笑いながら左手を大きく横に振って全否定していたいるが、この志乃って女の人はどんなメンタルをしているのだろうかと思う。
「じゃあきっと脳移植だ、あたしはそれで間違いがないと思う」
元気よく花奈ちゃんが手をあげて答えたが相変らずこの娘は常識をかなり逸脱した天然だと思う。
「着眼点は面白いとは思いますけどね、心臓破裂により血液による酸素の供給が停止してから人の脳細胞はどれくらいの時間で死滅すると思いますか?」
「10分くらいかな」
銀がそう言うと志乃さんはクスクス笑い出した。
「だいたいですけど、約2分弱で脳に重い障害が残るようになるそうですよ、そしてわずか3分で完全に脳死状態になるそうです」
志乃さんは真顔になって続けた。
「亜希さん、正確には『ゴキちゃん』と言うらしいですがその方が犯人を倒してくれるのに約1分かからなかったとしましょう、でもそこから救急車を呼んだとしても20分以上は楽にかかりますね、外科手術的な方法はムリなんです、でも彼女はその救急車というか上司に連絡するのに手間取ったのはまあ許せますよ?でもね私が絶対、彼女を許せないのは他に理由があってね」
なんか亜希の身体から不穏なオーラが噴出し始めていた。
「スマホをポケットから出すためとか言いながら私のお父さんの大事なものをシコシコしていっぱつ抜いてしまったことなのよ、普通スマホとアレを間違える?形状も硬さも全然違うよ?わざとなのよ絶対、死にかけていたお父さんを興奮させるなんて、貧乳のくせに許せない!」
あの、なんか雲行きが怪しくなってきていませんか?
「だから私はあの貧乳娘に呪いをかけてやったのよ、毎晩一回はお父さんとやらなきゃ気が済まなくなるように」
「ははーん、要するにお父ちゃん大好きっ子な志乃ちゃんとしては本音はお父さんとエッチエッチしたくてたまらなかったわけね、やーいファザコン、お父ちゃんのおち〇ち〇大好きっ子、そんなにお父ちゃんのお〇ん〇んを自分のお〇〇こに差し込んで中〇〇して欲しかった?」
急に声色と口調が亜希に変わって志乃さんを煽り出した。
「うるさいわね、本当はあなたの身体にお父さんの子供を孕ませてその中に転生する気でいたのよ、もう、それでもちっともあなたは妊娠しないし、一度できたと思ったら子宮の中から消えちゃうし、あなたの身体、一体どうなっているのよ」
「そんなこと私にも分かりませんよーだ、だいたいあんたのお父さんとエッチしたのは私自身の意思だし、もうあんなに太くて立派なの娘のあんたには勿体なさ過ぎよ」
「お父さんの良さの1ミリも理解していないくせにいつもキモいとか失礼なのよ、心臓を防弾チョッキごと撃ち抜かれた時も頸動脈をナイフで切断された時も自分の欲望を優先しまくってやりまくって側から見守るしかない実の娘の存在をなんだと思っているのよ」
「いいじゃん、実際気持ちがいいのも私なんだし、だったらどうしてミミズメカ事件の時にバミッテ知床店で実体化したのになんでお父さんとエッチしなかったのよ?時間ならいくらでもあったでしょ?今更私に気を遣ったなんてきれいごと言わないよね」
亜希のその一言で志乃さんは黙り込んでしまった。
しばらくの間重苦しい沈黙が続いた後に亜希が口を開いた。
「ごめん、君をいじめるつもりはなかったよ、それよりも今は香織さんのお母さんの話だ、これは私は当事者じゃないから口をはさめない」
亜希として喋ってからしばらくして志乃として亜希が口を開いた。
「私の方こそごめんなさい、いつもお父さんを守ってくれているのに」
やっとケンカは収まったようだ、本当に仲が良いのか悪いのか?
正直言って私は花奈ちゃんとも銀ともあんなに真剣にぶつかり合ったことがない。ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「まず最初にお伝えしたとおり、5年前のトレーラー事故は単なる整備不良でも偶然でもなく仕組まれたことでした」
一応それは風間達也刑事さんの説明で理解したつもりだ。
あの重さと大きさのものが店につっこめば店は全壊していただろうし、最悪満載していたガソリンに引火していたらあの辺一帯が火の海だっただろう。
「まず最初にこのタンクローリーを運転していた男が次の職場で仕事中、運転していたタクシーで信号待ちの間にお亡くなりにました、死因は心不全でした、30代の男性で心疾患はありませんでした、ちなみにその時後部座席に座っていたお客さんは香織さんのお母さんでした」
亜希の中の志乃さんは亜希のカバンからスケッチブックを取り出すと最初の1人の死因を書き込んだ。

「次にパン屋の店長さんです、その22日後、彼は食中毒で命を落としました」
志乃さんはそう言うとその日づけに続いて店長の名前、そして『死因、フグ毒』と記入した。
「笑ってしまいますよね、普通『フィレオフィッシュバーガー』にフグなんて使いますか?」
確かにそんな話は聞いたこともない、タラとかが定番だろう。
「実はそのバーガーは香織さんのお母さんが食べるはずだったものです、しかも実際に使われていた魚の切り身はタラであり、不審に思った風間刑事が鑑識に回そうとした時にはもう既にその現物は公安警察が押収した後でした」

どうやら闇に葬られたと言うことらしい。

「3人目、4人目の犠牲者はパン職人でした、彼らの死因は一酸化炭素中毒です、ピザを焼く窯から一酸化炭素が発生する可能性は確かにありましたがこの店では換気も釜のメンテも十分に行われていたはずです、しかし一酸化炭素中毒事故は起きました」
と志乃は言った。
「その検証はどうなったの?」
月海ちゃんが質問した。しかし志乃さんは今度もあっさりと
「内角調査室がかさらっていきました」
「えーと、それはつまり」
と私。

「小田井署の誰も現場に入ることが出来ませんでした」
志乃さんが唇を噛み締めて言った直後に亜希の軽い解説が入った。

「まああの化け物級知能犯の葉類智恵警部が抗議してもなんともならなかったことを考えるとよっぽどすごい大物が控えていたんだろうね」
まあそれこそ『おまいう』と言いたくなるが。

「香織さんもご存知の通り、お母さんは1週間ほどの入院で済みましたが命を落としていてもおかしくない事案でした、本当は事件なのですが署内ではこの一件を事件扱いすることは全く許されませんでした」
ここで一つだけわかったことがある全ては母が犠牲者になりうる事件だと言うことだ。
「誤解ないように言っておきますけど、ターゲットにされたのは香織さん、あなた自身も同じですよ」
志乃は付け加えた。

「もしトレーラー事故の時に花奈と遭遇していなかったら、あの事故に巻き込まれていたはずです」
でも実際には事故は未然に防がれていた。

「ではタクシーの件はどうですか、タクシーに搭載されていたタコグラフは既に公安に回収されていましたが風間刑事は興味深い証言をタクシー仲間から得ています、『客のメスガキのわがままのせいで回り道をするハメになった』とタクシー間のトランシーバーで呟いていました。
と志乃さん。
どうやら風間達也と風間志乃さんは実の親子関係ではないのかもしれない。

そう言われてみればあの日は急に家に帰りたくなってわがままを言って引き返してもらった記憶がある。
「もしもその時引き返さずに走っていたらどこを走っていましたかわかりますか?」
と志乃さん。
「確か京都に行くつもりだったから名神高速のどこか?」
私は答えてから既視感を覚えた。
そう、このシビリアンで2台の大型車に挟まれた時だ。

おそらくは母も私も名神高速をタクシーで移動中に運転手が突然に心臓発作を起こせばふたりとも無事では済まないだろう。

「次にフグ毒バーガーの件ですが、香織さん、心当たりありませんか?」
「確か私が急にハンバーガーよりも寿司が食べたいとか言ってすぐ隣の回転寿司屋に連れて行けとねだった記憶はあります」
そう確かフィレオフィッシュバーガーはふたつ用意してくれていた記憶がある。

そして最後の一酸化炭素中毒事故、私は母に用があって店の入り口付近まで呼び出していた。
その時の母の本来の作業位置は鎌に1番近い位置
「焼きたてのピザをあげるから取りに来て、と母親から電話があった、とか?」
銀は言ったがまさしくその通りだった。
私はそのまま店の中に入ってピザを受け取っても良かったのだけど電話の母の声になぜか違和感を感じたので店先に呼び出してこっそり確認するつもりだった。
その時母は私のわずか2メートルほど手前で急に倒れた。
店の外側に立っていた私は軽いめまい程度で済んだのはそのためかもしれない。
もしかして素直に母の元に行きピザを受け取ろうとしていたらその次の日私と母は棺の中にいたと言うことだ。

「でも結局、母は行方不明になってしまった、」
「行方不明なんかじゃないですよ」
月輪ちゃんがボソリと言った。
「いわゆる焼却処分ってやつですよ」
正直言って何を言い出しているのかわからなかった。

「言い方は色々あるみたい、『神の矢』とか『炎の柱』とか色々な名前があって正体はわからないけど標準的な一軒家ならほんの数秒で灰にできる代物です」
と月輪が説明を入れた。
母の死に関して考察すること自体が馬鹿馬鹿しくなるような凄い兵器が出てきたと思った。
衛生軌道上からのビーム砲や電子銃の類だろうか?

「ところでセミトレーラー式の大型タンクローリーの件ですが右側のタイヤがすべてバーストしていたらしいです」
志乃さんはすました顔をして言ったがそんなことはあり得ないと思う。
「しかし今なら思い当たることありますよね?」
確かに、花奈ちゃんだ。しかし彼女にそんな繊細なコントロールが可能だろうか?
そんな疑問がわいて来た。
「実は花奈ちゃんの予知夢は彼女のエネルギー化能力と連動していると考えてみたらどうでしょうか?」
と志乃さん。
「どこをどの程度エネルギー化したらどんな結果になるのか予知夢として何度も繰り返して見ることができるんでしょうね」
志乃さんはそれだけを言うと亜希と交代した。

「少しはスッキリしたかな」
亜希は言ったがますます混乱して来た部分もある。
言っておくが私には予知能力なんて便利なスキルはない。
最初のタンクローリーの件は花奈の能力で説明はついたとしても『なんとかの矢』とか他の件は説明がつかないと思う。

「いや、それならもう私の中では説明がついている」
銀は私と花奈を見てキッパリと言い切った。

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@夏乃花奈と冬河銀と春香織

【話を連続猟奇婦女暴行殺人事件とかまいたち事件に話を戻すんだぉ】

「あ、そうですね、確かあの時はその犯人に蹴りを入れてそいつが『時間操作』を解除するまで左顔面を殴りまくった記憶があります」
と香織さん。
「そう、しかもそれはただの強姦未遂事件じゃなかった、被害者だった彼女がいくら叫んで助けを求めても誰ひとり助けに来なかった、いいえ正しくはそこにいた誰一人として動いていなかったという事です」
志乃さんはさらに続けた。
「周りには目撃者が必ずいるはずと担当の刑事、私の父なのですが聞き取り調査をしても不自然な目撃情報しか出てこなかったんです」

「確かに被害者が押した倒されたところを目撃した方は曖昧な記憶のも含めてですが2~3人いました、しかしほとんどの人が衣服が乱されて泣いている被害者の姿とその横に顔をボコボコに殴られた男が仰向けになって寝転がっているところを見た方達ばかりだったそうで」
と志乃さん。
「あれ?そこまでやっちゃたの?」
と私、冬河銀。
「だってあそこまで生々しい、被害者視線のイメージを送られたらつい怒りが抑えられなくなって」
香織さんがボソリと呟いた。

「それを被害者の女性に伝えたら昔自分が見た怪奇現象と同じだと言う事を話し出したんですね」
と私。
「まあほんの一瞬だけ被害者が見た少女の面影があの時のひとりに似ていたと言う理由もあったみたいですがね」
志乃さんは言ってからしばらく考え込んでから香織さんに質問した。
「どうしてあなたはあの公園にいたのですか?」
香織さんは花奈の顔をチラリと見た。
「愚問でしたね、質問をかえます、どうして花奈さんはその女性の危険をイメージ出来たかわかりますか?」
花奈は少し複雑な顔をして言った。
「いつも遊んでくれていた同じアパートのお姉さんだったからです、場所も特定できました」
「その人が知っている花奈は表向きは押し入り強盗に刃物で殺されていたことになっていたからその場にいても顔はだせなかったんですよ」
私も一つだけ補足した。

「銀、確かに私もスッキリした、タクシーの時、急に帰りたくなった直前、あの時確かに高速道路で事故に遭い私がリアウインドウを突き破って車外に放り出されて後続車に撥ねられるイメージをみていた」
と香織さん。
「フィレオフィッシュバーガーの食中毒の時も手足が痺れ出してお腹が痛くなって吐き気がして息苦しくなって椅子から転げ落ちるイメージを見た、そして一酸化炭素中毒死事件の時も」

「どうやら一件落着いたみたいな?」
月輪ちゃんが軽いノリで言ったがなんとかの矢に関してはスッキリしなかった。
「あれねぇ」
あれはさすがに花奈ちゃんの予知夢でも防ぎきれなかったでしょう?、なんせ相手は静止衛生軌道上、そこまでは想定外でしょ?
「あたしの予知夢はいつも被害者視線だから」
ボソリと花奈ちゃんがつぶやいた。
「そっか、だから花奈ちゃんはそのときは自分(香織)が炎に包まれて焼け死ぬイメージしか見えなかったんだね」
月輪ちゃん、は続けて言う
「わたしの旦那の時と一緒だね、その時はわたしも旦那の跡をついて行くのをためらって、旦那だけ先に燃やされて、結局自分も燃やされちゃったけど」
他の人はスルーしたみたいだけど私だけそこは引っかかった。
確か聞いた話だと、あ、でも確かに最初に会った時に亜希も月輪ちゃんも自分で年齢不詳だと言っていた。
「もうひとつ視線が追加されたわけだね、香織視線で香織の母親が焼かれて死んでから自分自身も焼かれるイメージ」
唐突に亜希がしゃしゃり出てきて言った。
「少し違うよ」
花奈が口をはさんだ。
「香織さん母娘が同時に燃やされる可能性が消えた事でもうひとつイメージが浮かんできたの」
「それが私に出かける前の香織さんをなんとか理由をつけて引き止めることになったんだね、でもお母さんはどうしても止められなかった、大事な用事だからキャンセルは出来ないって」
私は言った。
「でもそれだと私と香織さんが同時に焼き尽くされるイメージになるんじゃ?」
「もちろん、でもそのイメージの時銀ちゃんと香織さんはどこで何をしてたのかなぁ」
花奈ちゃんに指摘されて私ははっと驚いた、それはどうやら香織さんも同じようだった。
その時のイメージではふたりは庄内緑地公園付近に出て必死になって逃げるようにして走っていた。
しかし交差点の信号が赤に変わって立ち止まらざるを得なかった。
その次の瞬間に歩道に乗り上げて駐車してあった白い高級セダンが真っ赤になったかと思った途端に爆発炎上した。
そして次には。
「私の上から光のような何かが自分を焼き尽くすのをショーウィンドウにうつるのをもながら焼け死ぬイメージ」
私がそういうと花奈ちゃんはその次に続く私のセリフを期待しているかのように見えた。

「確か上空からの攻撃なら地下に潜れば大丈夫かと思ってたまたま目の前にあった地下鉄の入り口に」

私、冬河銀がそう言った時に亜希が『パチッ』と指を鳴らした。
「市営地下鉄鶴舞線!、銀にしちゃいいアイデアじゃないの、おまけに別の路線に乗り換えとかしたら次に地上に出て来るのがどの駅か皆目(かいもく)見当もつかなくなる」

「そーだねぇ、それで銀ちゃんとセットの可能性もどちらか片方の殺害をする可能性も消えちゃいました、そこで浮かんできたのが」

「花奈ちゃん、つまり自分自身の死のイメージ」

私が言うと花奈は「せーかい」と答えた。
「あたしはいつもの公園のベンチで寝そべっていたからねぇ」
そう言うと続けて言った。
「私の事、みんなからすごいバカだって思われているみたいですけどね、本当は兄の教科書で勉強していたりしていたんですよ」
この場にいた全員が凍てついたかと思った。

『それお前のイメージと違うやろ』と言うのが本音だが観萌ちゃんだけは驚くどころか『計画通り』みたいな悪い人の顔をして笑っていた。
「上空からの攻撃をして来る静止衛星を点Aとするとその時あたしがいる位置を点B、そして香織さんのいた位置を点Cとする、加えてお母さんが焼かれた位置を点Dとするならおのずと簡単に位置なんて割り出せるわけですよ」
いかにも誇らしげに言っていたがなんか変だ、大体静止衛星軌道は高度36,000Km、それに対して私たちの居場所の違いはたかだか1Km前後の位置の違いで照射角度の情報も無くしてそう簡単に静止衛星の位置なんて特定できるはずもなく・・・
「ずるい!カンニング」
私は思わず叫んでいた。
やはりと言うか当然と言うべきか?観萌さんが絡んでいたようだ。

「花奈ちゃんのイメージはかなり鮮明で情報量も膨大に多いですからね、花奈ちゃん自身は自覚していないんですが私が見れば視点も画角も色々自在に変えられるんですよ」
あーやっぱりさっきの悪い人の顔はそれが理由だったんですね。

「それで、もしかして月海さんに庭の石を念動力で飛ばして破壊したって言うんじゃ?」
やりかねないから一応確認してみた。
「まさか、そんなことしたら『某国の飛翔物体が我が国の重要な人工衛星を破壊』なんてニュースになって大騒ぎになってしまいます、ですから花奈ちゃんに静止衛星の位置情報をイメージに変換して送り返した、それをエネルギーに換えてもらっただけですよ」
すました顔をして言ったがどれくらいのエネルギーだろうか?
「大した量じゃないですよ?核兵器換算でたかだか20ギガトンくらい?」
ちっともたかだかじゃなかった!
「でもそれって日本の防衛軍所有の重要機密施設ですよね?そんなことしちゃって大丈夫なんですか?」
私が言うと観萌ちゃんはやはり悪い人の顔でニッコリと微笑んで言った。
「あんなのがあってもろくなことないし、近くに同型の静止衛星が5つほどあってそれも全部巻き込んじゃったみたいだけど全然問題ないですよ」
観萌さんはそう言うが本当に大丈夫だろうか?
「大丈夫ですよ?むしろアイツらが花奈や椎に対して行った卑劣(ひれつ)な行為に比べたらね」
珍しく観萌が憎悪の感情をむき出しにして言った。

また私、フルサイボーグ夏乃花奈は【鷹の目】の視点を自分自身の人造生命体に切り替えた。
人造生命体が【地神】尊師に対してどんな悪行を行ったか気になったからだ。

「私、気になることがあるんです」
観萌ちゃんが小さく呟いた。
「どうやら私たちの中でただ1人だけ、彼女、秋草加世は未来からやってきたんじゃないのかって気がするんです」
それは薄々、あたし、花奈も感じていたことだった。
他の6人に関してはあたしは過去に接触した記憶、正しくは将来接触するだろうと言う予知夢があって実際ほぼその通りに接触する事実が発生していた。
しかし加世に関してはそれがまったくないんだよね、
そこで今回は幼い時、まだあたしが小学5、6年生だった頃の話をしようと思う。
あたしの家はそれほど裕福な方じゃなかったので平屋の四軒並んだアパートに住んでいた。
玄関を開けると自転車が3台ほど縦並びに停められる長細い土間があってその右側、壁の方には下駄箱やちょっとしたものが置ける棚があった。
そしてその向こうには裏庭に通じる裏口があった。
とはいえさして広くはないのだが洗濯竿が2、3本はかけられるスペースはあったと思う。
その土間の左には手前に四畳半が横にふた部屋、奥には、押し入れがあったと記憶していた。
いわゆる仏間や床の間は存在しておらず家具自体が少なかったと記憶している。
そして土間の奥には横に長いキッチン兼リビングていうかダイニングみたいなのがあってそもさらに左奥には手前に洗面台と洗濯機そして小さいながらも洗い場付きの浴室、もちろん足なんて伸ばせない。
そしてその奥、庭の方にはこれまたこじんまりとしたトイレがあった。一応は水洗式だったけれどいわゆる和式、この際贅沢は言えない。
まあ、親子4人で住むには広いとは言い難かったが決して狭いとも言えないと思う。
その頃父はまだ30台後半で、母も30になったばかりの頃だったと思う。
2人はいわゆるできちゃった婚というやつで兄は母が15才になったばかりの頃産んだらしい、ということは今考えると私の兄は母がまだ14才になってそれほど経たないうちに仕込まれたことになるわけで実際にはもっと早くからふたりは大人のエッチな事をしていたことになる。
父と母は奥の部屋に寝て私と兄は手前の部屋に土間の方を頭にしてシングルサイズの布団をふたつ並べて寝ていた。
その頃の私は小学5年生半ばにして十分に成長していて身長も150cmは超えていて胸だって結構膨らんできていたと思う。
それどころかあたしは10才の秋に初潮を迎えていた。
しかしそれは偽りの記憶だった。

あたしの初潮はすでに7才ごろから始まっていたらしい。
それからケイトお兄ちゃんにだまされて彼と肉体関係を持ち8才の頃にはふたりの女児の母親になっていた。
しかしある事件をきっかけに身体(人造生命体)を失い記憶まで失くしていたらしい。

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@花奈と花梨と観萌

たびたび魔女じゃない、たびたび申し訳ないが再び視線を観萌さんに切り替えさせてもらう。
実はこの事件がなければあたし(人造生命体)はケイトお兄ちゃんと組んで偽花奈と偽加世になりすましていた花梨さんの事もそれに騙されて(だまされて)罪のない脳が成長しないふたごの女の子を産んでしまった自分自身を許せなかったと思う。

私が小学5年生になったばかりのことだった。花奈は街中で偶然にも擬態化を解いていた花梨と遭遇してしまっていた。
いや、正確には擬態化を解かされってしまっていた、というのが正しいのかもしれない。
もうその頃には彼女たちの家族は崩壊して花奈や加世にとって父親も母親も実在しないケイト兄と花梨が作り出した架空の存在だったことが判明していた。

ただし本来なら実在しなかったはずの人物がひとりいた事を花奈も加世も知っていた。
時には花奈に擬態して姉の加世を嘲笑うように挑発して加世の花奈に対する憎悪を煽っていた。
そしてある時は加世になりすまして身重の花奈の腹を蹴り踏みつけて、花奈に自分が悪いから大好きな加世ねえから目のかたきにされているという負い目を感じさせていた。
そして決定的だったのはふたりの目の前で小さな女の子の片腕をエネルギー化の能力を使って吹き飛ばして花奈には姉の加世がそれをやったかのように、そして加世にはそれを花奈がやったかのように見せる複雑な擬態化をしてさらにふたりの対立を煽っていた。
兄ケイトが願望達成能力を使ってその女の子から花奈を引き離してその女の子が加世の能力によって殺されたという偽の事実を花奈の中に植え込んだのは事実だった。しかし事実は私が加世に協力をしてその女の子が一命を取り留めたのは花奈にとっては知らない事実だったし、事実花奈は兄から与えられた偽情報によってその女の子が自分の未来予知のミスによって助かっていたはずの命を失ったと思い込ませたのも事実だった。
そして加世は花奈がいたいけない女の子の腕を理由もなくエネルギー化の能力を使って吹っ飛ばして殺そうとしたと思い込まされたのも事実だった。
そしてそんな花梨の存在を暴いてふたりに教えたのはうちのチームの可奈野椎だったがそれ以降花梨はふたりの前からだけではなく敵の組織からも行方をくらませていた。

そんな花梨だったからこそ擬態化を解いて街に出ることはあり得ないと思われていた。

私は彼女に組織の実体を聞き出すために擬態化を条件に喫茶店での待ち合わせを約束していた。
もちろん私もそれなりに変装をしたつもりだった。
しかしふたりが店に入って予定していた席に着くなりハプニングが起きていた。
店員が運んできた水から大量の毒性が強い
気体が泡を出しながら発生して中にいた客が次々と絶命していった。
どうやってその店を特定したのかは知らないが定員さんも次々と倒れていく中でひとりだけがハンカチで口と鼻を押さえて店を出てゆく姿を見て追いかけてしまったのは今思えば悪手だったと反省している。
もちろん私も花梨にもその程度の毒は通じなかった。しかし花梨の擬態化を解くには十分な効果はあったようだった。
そこに運悪く花奈が通りかかったのは今思えば決して偶然なんかじゃなかったと信じている。

そこから先は憶測さえ出来ない。何故なら私は迂闊(うかつ)にも現場を離れて怪しいウエイターを追っていたからだ。
相手が逃げそうな逃走ルートを予測してわずか3分程で犯人らしき男は取り押さえられた、しかしその男は私に右腕をつかれた途端に崩れ落ちるようにして倒れてしまっていた。
その男の額と自分の額を重ね合わせてみたが彼の脳波は全く感じられなかった。

【ふん、まあ良い、目的は遂行出来た】

その代わりにその男のものでない思念が伝わってきてすぐに途絶えた。
その時に私と花梨が待ち合わせて会っていた店付近で大爆発が起きていた。
悲鳴と共に町中の道が逃げ惑う大勢の人々でごった返していた。
そして次々と起きる大爆発は繁華街に向かっていた。
私はその時は逃げているのが花梨だとは気づいていたがまさか彼女を追って連続爆破を仕掛けていたのが花奈だったとは気がついていなかった。
もちろん花奈は暴走していた。

十数分間その爆破は続いてそれは機銃掃射の音と共に沈黙に変わっていた。私がその現場に駆けつけると原型をとどめないまで銃弾の嵐に打ち砕かれて木っ端微塵の肉片と化していた元花奈だった肉片が路上に散乱していた。
手に負えないと判断した特殊警察が動いたようだったが少々手際が良すぎたのが気になっていた。
私は現場付近で怯えていた花梨を連れて現場を離れようとしたらいきなり複数人の特殊警官に銃を突きつけられていた。
相手の持ち物はベレッタARX160やロシア系のサブマシンガンなど統一性がないことが気になったので黙ってついてゆくことにした。
もちろん連れてこられたのはマトモな警察署であるはずもなく私が知る限りどの公安や内閣調査室にも該当しない施設だった。
「ここがどこかなんて私は知ったことじゃないですが何を聞きたいのですか?」
私は彼らに向かって問いかけてみた。この部屋には筋肉モリモリの特盛男たちが私たちか弱い女性に3丁のベレッタARX160.の銃口が向けていた。
「答えろ、この地球になんの目的で侵入して来た」
やれやれな質問だった。
どうしたらそんな発想が出来るのかこちが聞きたいくらいだ。
目的も何も「観光地巡りです」とでも答えればこの人達は納得して返してくれるんだろうか?
「ところであなたたちが蜂の巣にした女の子なんですが」
私は一旦そこで言葉を区切った。
やっぱりみんな露骨に警戒しているのがわかった。
「そんなにも警戒していないでお茶のひとつでも入れてくれませんか?」と私
「お茶請けに『都こんぶ』ならいつも持っていますよ」と花梨。
うんさすがによく気がつく子だ。
「貴様らは我々の質問に何ひとつ答えていないではないか」
1番偉そうな男が左手の拳で激しく机の机上を叩きつけた。反動で私たちの体が30cm以上跳ね上がったような気がした。
「むしろこっちが聞きたいのですがどうしてあの女の子を機銃掃射して殺害をする必要があったんですか?」
案の定返事がなかった。
すると部屋の外からマジックミラーの向こうのメガネをかけた男がマイクスピーカーを通じて答えて来た。
「爆発物の投棄による連続爆破事件それでは不十分かな」
その男はそういうと今度はコルト45の銃口を私の額に押し付けて言った。
「またカビが生えたようなものを」
『しかもテレポーテーション?』
私はそういうとトレンチコートの内ポケットから1リットルの水筒と4個のマグカップを取り出して水筒の中の熱い液体を注いで「どうぞ」と勧めた。
中身はただのほうじ茶だったがそれでも驚かれるとは思ってもいなかった。
「これが宇宙人のテクノロジーか?」と言った男のひとりに私は「単なる某アニメのパクリです」と笑って答えた。
「そろそろお腹が減って来たんですけどカツ丼とか注文してもらえませんかね?」
私がいうとさっきの男がすかさずに言った。
「あの便利そうなポケットを使えばいいだろうが」
まあ確かにそうなんだけどそれはあの国民的アニメのアレと違い好きな時になんでも出せるような代物じゃじゃない。
「承認ゴキママ、今すぐ食べられるものを送って」
私がそういうと男たちが口を両手で押さえている姿が見えた。マジックミラーの向こう側の女性5人と男たち3人も同じだった。さっきの事件に巻き込まれて恐怖を体験した人たちかもしれない。
【さっきの毒ガス事件とは別系統の組織か?】
ここの施設のチャイムらしき音がすると10代前半の少女がインターホンのカメラを覗き込んでいた。
「お届け物です」
彼女はそういうと大きなピザボックスを5箱、カメラの前に差し出した。
「ゴキママ、ありがとう」と私がいうと彼女は一礼をして去って行った。
「爆弾でも毒ガスでもないから取りに行かせて」
私はそう言いながら自分のポケットから取り出してマグカップに注いだほうじ茶をひとくち口にした。
「にしたにせんせい」
私がボソリと口にしてみたが男たちの反応はなかった。どうやら私の単なる思い過ごしかもしれない。
「その西谷とやらが今回貴様らが起きしたテロ犯罪と何か関わりがあるのか?」
取調官のひとりと思われる白いトレンチコート着た男が私に詰め寄った。
「いえ、今ちょっと頭の隅に浮かんだだけです」
と私は軽くやり過ごしたつもりだったがその男にとっても何か引っかかるものがあるらしくしばらくは考え込んでいた。

数日間にわたり私たちは拘束されたがやがてテロを起こした証拠が何一つとして見つからなかったのか私と花梨は解放された。
新聞やテレビでの報道では喫茶店内で提供された飲料水による店内客や従業員の毒殺に関しては全く触れられずに連続爆破事件のみが大々的に報道されていた。
奇妙なことに犯人の特定は困難な筈なのにすぐに顔写真と氏名が公表されてしまっていた。
花奈の身体は機銃掃射で原型をとどめないほど破壊されていたはずだった。
ボブヘアよりも少し伸ばした髪型のおっとりとした表情の美少女のバストアップと全身の写真が画面に表示されていた。がその見た目はどう見ても女子大生くらいにしか見えない。
しかし『武蔵学園附属小学5年生夏乃花奈11才』と個人情報までダダ漏れに晒されていた。
もしもここの学校の特殊なデザインのセーラー服を着ている姿画像でなければ誰もそんな情報は信じないだろう。
しかしその頃にはその理由が政府が貧困層に向けて配布されていた支援食糧に大量に含有されていた『二次性徴促進剤』に原因があったことは一部医療関係者の間では噂にはなっていた。
しかしそれを公表しようとした医療関係者は謎の行方不明になるか不審な死を遂げるかのどちらかだった。

私と花梨が待ち合わせていた場所付近は長さ約500m幅が100mに渡って爆破され尽くされて瓦礫の山となっていた。途中には地下鉄の駅もあり改札階はおろかホーム階までが爆破によって天井が崩れ落ちてその路線は運行停止となっていた。
私と花梨の存在に関しては全く公開されず、どうやら爆破事件に関しては花奈の単独犯行でスワットによる銃殺とだけ発表されていた。
どうやら国際的なテロ犯と認定されたと言うことか?

私と花梨は数日後に連絡し合って先日の系列店である別の喫茶店で待ち合わせをすることにした。全ての電話もメールもすっぱ抜かれていることを考慮して私と花梨が私の分身であり本来なら同一人物であることを利用して脳波による直接リンクを使うことにした。
『姉さん、それはいいんだけどどうしてお子様メニュー専門店な訳?』
花梨は周囲をぬいぐるみや戦闘機を持って走り回っている幼稚園児達に気を取られながら私に聞いて来た。もちろん自分達も4〜5才の幼女に擬態化することを忘れてはいないし、ゴキちゃんママに送ってもらって来て「夕方には迎えに来ますのでよろしくお願いします」とすぐに帰って行って行ってしまった。
「あの2人の保護者、身分証明書には『佐原組子24才』って書いてあったけどほんっとうに大丈夫かしら?」「とてもじゃないけど小学生にしか見えないわよね」「それに何?職業専業主婦、12人の子持ちの処女で〜すってどんなアピールなの?頭おかしいんじゃないのあの娘」「警察か病院に電話しておいた方がいいんじゃない」
コソコソ話をしていても全てまる聞こえなんですが?
「おね〜ちゃん、あたし金時シェークがよかったんだけど」
『あの時私たちははめられていたってこと?』
もちろん太いカッコの方が心の声だ。
「いやよ、わたしあんずシェークしか受け付けないの」
『あの手回しの良さはそうとしか思えないわね』
「すみません、わたしの妹たちがご迷惑をかけていませんか?」
その聞き覚えのある声を聞いて私たちは心臓が止まりそうになった。
彼女もまた花梨とケイト兄に幼少期の人生をきっかき回されたひとり、秋草花世だった。
もちろん彼女の体は政府によって強制的に『二次性徴促進剤』と超高蛋白質を誇るコオロギ加工粉末を過剰に含んだ食料を食べさせられているので見た目は女子大生以上にしか見えない。
『私たち、いいえ正確には花梨さん何者かにマークされていますよ』
加世はいきなり私たちの会話に割り込んできた。

【言うまでもなくフルサイボーグ夏乃花奈が人造生命体として用意した夏乃花奈の別人なんだぉ、ちなみにこの後出て来る記憶を半ば失った貧乳花奈もフルサイボーグ夏乃花奈の分身なんだぉ、ただし中身は確認が取れていないんだぉ】
又うざたてー声が乱入してきた。

『静かに、現状報告をしておきます、花奈は肉体再生を済ませてある場所に身を潜めています、しかしそれがどこかはまだ言えません、わたし自身さえ知らないのですから』
「すみませ〜ん追加料金を払えば保護者なら大人でも払えるんですよね?」
加世はウエイターに確認をとった。
「え〜とプリン・ア・ラモードとココナッツミルクをぬるめでお願いします」
彼女はそう言うと少し顔を険しくして伝えて来た。
『お姉さんたち、ここが敵の本陣だと知っていてこの店に入りました?』
もちろんそれは承知の上だ、どうやらこの店が花奈が暴走した原因だと考えていた。
『私と花奈は13ループ目にしてやっと信長、崖信介と恵萌、つまり濃姫の身柄確保に成功しました、しかし私たちの目の前でふたりは3メートルを超える2匹の獣に頭から喰われて絶命しました最初は肉体再生で交戦していたふたりでしたがその間にアストラルボディも喰らわれ始めて最後に残った信長、岸信介の生首を少女が髪の毛をつかんでぶら下げながら獣の左肩の上に乗って去ってゆくのを黙ってみていることしか出来ませんでした』

『それはどういうことですか?』
花梨はきいた。
『彼ら信長でさえ、崖信介でさえ彼らにとっては捨て駒のひとつだったんです』
そう言うと彼女は注文したものに手をつけずに私たちにもシェークを飲むことを制止した。
『今から見せる彼女、彼らが真の姿です』
彼女がそう言うと店内の様子は一変した。

私たちの目の前で見覚えのある野党議員や新聞記者、ルポライター、コメンテーターたちが3メートルは超える大きな獣に馬乗りにされてその生肉を、ある者は股間の割れ目から、ある者は腕の肉を、太ももを『バキバキ』と大きな音をたてながら喰らいつくされていた。頭部を残したその死骸はしばらくすると元の姿に戻ったが明らかに彼らや彼女たちは幼児化していた。
『10才も一回だけで幼児化するとなるとこの子たちもあと一回喰われたら用無しと見なされ頭部から喰われて消滅してしまうわね』
彼女はそう私たちに伝えると店員さんに「急用が出来たからごめんなさい、これ迷惑料だから」と言って5千円札を渡して店を出た。

彼女はしばらく歩いてから空を見上げて呟いた。
「花奈、弱い私たちを守ってくれてありがとう」と。

【その頃本来の肉体を失ったフルサイボーグ夏乃花奈の人造生命体は新たな人造生命体の中で眠っていたんだぉ、本来の記憶を失い別の花奈として】

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@再び、花奈と香織と冬河銀の過去

それを兄のせいにする気はまったくない。
まだ夏休みの前の寝苦しい夜にこっちを向いてあたしの寝顔を覗き込みながらパジャマの中にティッシュを仕込んであたしのむねを横から覗き込んで息を荒げながら薄地のタオルケットとパジャマ越しにあたしの股間にあるものを妄想しながら鼻を突く匂いのあるものを出していたなんて想像だにしていなかった。

しかし今考えるとその匂いがあたしの二次性徴ホルモンを刺激して女性性器の発育を促して初潮と胸の成長を促したのは確かなようだ。

母は赤飯を炊いて喜んでくれたが当のあたしにはあまり嬉しくはなかった。

いっそのこと母と一緒に寝たいとお願いしたこともあったが父と母はまだそんな頃はお盛んな頃で許してはもらえなかった。

初潮を迎えてから2、3回目の生理の始まったばかりの夜だっただろうか?
あたしは悪夢にうなされていた。

いつものように母と父はせっせと夜の行いに励んでいた。
あたしもいい加減に慣れてきたのでさっさと自分の布団と兄の布団を敷いて眠りにつき始めていた。

突然にあたしの体にのしかかってきた重い体重と荒い鼻息、声を出そうとしていたあたしは自分の口に大きめのフェイスタオルが咥えられていて後頭部で縛られていることに気がついた。

両手首も背中で縛られ、両足首も同様に縛られていた。
パジャマの上着が一つ一つ丁寧に外されると決して小さくはない乳房が顕になり、その片方をもみしだきながらもう片方の乳首を執拗にしゃぶっている男が自分の兄だということに気がついたのはその時だった、自分の息も荒々しくなり叫び声も出して声にして父や母に助けを求めようとしたけど声にならずフガフガ言っているだけだった。

やがて兄はあたしのパジャマを一気に足首まで引き摺り下ろすと足首を一気に腰の辺りまで押し上げてあたしの股間は無防備に開かれてしまった。

兄がニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながらあたしのパンツの股間部をずらして二本の硬くて太い指をあらわになった窪みの中に滑り込ませるとあたしは全神経が暴走したような錯覚に襲われて熱い息を大量に吐き出しては大きく吸い込む動作を激しく繰り返しながら身をよじらせていた。

兄はやがて自分のパジャマズボンの前開きから見たこともない太くて大きなものをあたしのずらされたパンツからあらわになった谷間の中の生々しい肉の穴に突っ込んできた。

お腹の中が押し広げられるような痛みと快感が同時にあたしを襲い、あたしの呼吸はさらに荒々しく熱くなるが声はフェイスタオルに吸収されたのか出ない。
兄は最初のうちはゆっくりと腰を振っていたがやがてあたしの吐息きが最高潮に達するポイントをつかまえると急に腰の動きを激しくし始めてあたしは自分の下腹部から聞こえる『クチュクチュ』という音を聞きながら意識を失いかけるが突然に兄の太い棒が激しく脈打ち始めてそれに同期するようにあたしの下腹部に熱いものが流れ込み、その棒をピストンのようにあたしの穴の中で出し入れを繰り返してまるでポンプのようにその熱い液体を更に奥へと流し込むのがわかった。
もう自分が何をしているのか、されているのかさえまったく判らない。
あたしは兄にしがみついてその熱い液体が兄の腰の振りに合わせて次々とお腹の奥に押し上げられてゆく感覚をまるで自転車の空気入れみたいにあたしのお腹が膨らんでゆくなって思いながら目を覚ましていた。

その日の朝は目覚めがとても悪かった。
まさか実の兄がそんな事をするとは思ってもいなかったし、もしかしてあたしにそんな願望があるのかも、と自身を疑った時に自分の身体が熱く火照るのを感じていた。
「やあ」
てな感じでたまにぎこちない挨拶を交わすことはあっても今までみたいに普通に話すことがなくなった。

そして翌年の小学六年生になった寝苦しい熱い夏の夜その悪夢は現実のものになってしまった。
シチュエーションは前にみた夢とほぼ同じだった。違ったのはその悪夢が1発だけじゃなくて、2発目、3発目と際限なく永遠に続くと思われたことだった。
事実、次の日の朝にはあたしの布団はおねしょをしたかのようにぐしょぐしょに濡れていた。
鼻を突く嫌な匂いに両親が気付かれてとがめられると思われたが現実は違っていた。あたしの目には何故か両親はむしろそれを歓迎しているかにさえ感じられた。
その後知ったことだけどあたしは両親の実の娘などではなかった。
戸籍上は実の娘だとばかり思っていたが実際には養子縁組の義理の娘だった。
しかも養子だったのは兄の方も同じで実際には大企業の一人息子だった。
あたしの母も父も一般人で双方の家族をバス転落事故で失っていた。
父と母は息子を引き取る事でその大企業の隠し養子として引き取られることとなっていた。
つまりは本当の娘でないあたしが大企業のご子息である義理の兄に乱暴されて犯されようが孕まされようがお構いなしということだ。
あたしは頭の中が錯乱して体調不良を理由に学校を1日休んだ。
あたしもさすがにふた晩続けて襲われることはないと思っていた。しかしその微かな望みさえ両親が深夜から出かけたと同時に断たれてしまった。
再び、いや、悪夢を含めた3度目のあたしに対する性的暴行が長時間、何度も行われてあたしは下半身を中心とする激痛で次の朝まともに起きられなかった。
その次の授業もあたしはエスケープした。
自分の下半身に染み付いた刺激臭が何度もこすり洗いをしても抜けなかった。
次の日も両親は何も言わずに学校に連絡を入れてくれた。
そのままあたしは意識を失った。
母親が入れてくれたミルクティを飲んだ直後ことだった。
薄れゆく意識の中であたしはふたりの会話をおぼろげながら耳にしていた。
「おぼちゃんにはいつまで花奈に対する生殖行為をさせる気か?」
「そりゃあもちろん、出来の悪い性欲まみれのおぼっちゃまに変わる世継ぎが生まれるまで何度でも、毎日花奈がおぼっちゃまの子供を孕むまでよ」
「ボク達が与えられた任務は前社長が男グセのわるさ故に出来てしまった有名男子アイドルとの間に出来た男児を隠匿するためのものだったが、まさかそこまで遺伝するとはなぁ」
「バラして公開すればいいんじゃないの?なぜ押しつけられた他人の娘を育てなけりゃいけないの?」
「必要なのは娘ではない、彼の世継ぎと予知夢の能力、不要なのは娘の特殊能力、それは世界の軍事バランスを圧倒的に崩壊させる」

目を覚ましてから何時間経っただろうかあたしの意識はもうろうとしていた。
おそらくはあたしが医者に行くなど中絶行為を出来なくなるためのものだったかもしれない。
それよりもあたしが兄の子を産んだ後の処遇だろう。
あたし自身が軍事兵器になるとでも言いたいのだろうか?
もしもあたしが軍部に都合が悪ければ処分される可能性が出てきた。

あたしは再び睡魔に襲われて目が覚めると研究室のような場所のベッドの上で全身を拘束されていた。
両腕には数本の点滴針が刺されている。栄養剤と他はなんなのか私の知識ではわかりかねた。
夜になると義兄が訪れて何食わぬ顔をしてあたしを何度も、何時間も犯すと満足したように出て行った。
それが何日、何回続いたのか数えるのも億劫になった頃、私がここにきてからどれほど経っただろうか?あたしに妊娠の可能性を示す兆候が現れ出した。
あれ以来ずっと来ない生理とドラマや噂によく聞く強度な悪阻の症状。
「おめでとう」
母や父に言われたが正直何がめでたいのかわからない。
決してあたしが望んでできた命などではないはずだった。
あたしのお腹は日々だんだんと目に見えて膨らみ始めていた。
しかも用がなくなったはずにもかかわらず義兄は毎晩通いつめて己の性欲だけを満足させるとあたしに対する優しい言葉のひとつもなく部屋を出ていった。
「本当は少しでもでも散歩程度は動いたほうがいいのよね」
「今日は水分の取りが少ないけど大丈夫?」
「私、はやくおおきくなってママに会いたいな」
あたしのお腹の中から聞こえるはずがない優しい声が声が聞こえた。
数ヶ月後、激しく痛い陣痛があたしを襲い、大量に股間から流れ出した羊水がベッドのシーツを濡らした。
あたしは忙しそうな看護師らに囲まれてベッドごと病室から手術室に運ばれるとベッドの上のロールバーに両手を握らされて思い切りいきむように指示をされた。
でも正直言って急に『いきめ』なんて言われてのどうしたら良いか全く理解出来なかった。
どうにか、かんかでそのコツがつかめ始めた時、あたしの下腹部を今まで経験したことがないほど激しい激痛が襲った。
兄と交わった時、いいや、兄に陵辱された時の数十倍の痛みを気が遠くなるほどの時間をかけて、スーッと何かが抜けたような感覚がしたすぐ後にあたしは最初の産声を聞いた。
その時にはあたしは肩で息をしていたが正直言って極度な貧血、いや出血によるショックで意識を失いかけていた。
でもこの娘、なんかこれから生きてゆくのがとても辛そうな鳴き声をしていたように感じる。
やはり正直言ってあたしはこの娘を大事に愛して育てる自信がない。
どうしても憎いあいつの顔を思い浮かべてしまうからだろう。
「後ふたりだ、まだ気を抜くなよ」
男の先生の声が聞こえた。
さらに激しい痛みが下腹部から股を裂くように走った。
今度はさらに長い時間を要した。
おまけに泣き声がまったく聞こえない。
「パシン、パシン」と医師が赤子を引っぱっ叩く音が聞こえた。
「ちょっと休ませますか?」
女医さんの声が聞こえた、正直言って天使の声に聞こえる、あたしの体力はもうすでに限界を超えていた。
しかし男性医師は無情だった。
「最後の子、長女がチアノーゼを起こし始めている一刻も履く出さないと母体も危ない」
「吸引!吸引!」
と叫ぶ声が聞こえてきた。
あたしはその声を聞きながら意識を完全に失った。

あたしのベッドの横には3人の娘はいなかった。
3人ともうまれてすぐにNICU送りとなってしまったからだと看護師のひとりに聞かされた。
3人目は特に体格も大きくて吸引だの会陰切開なども最初は検討されていたらしいが最終的には帝王切開に踏み切らざるを得なかったようだ。
あたしのお腹には大きな縫い傷が残り、本当に傷もの娘になってしまった。
もちろん3人とも名前なんて考えている余裕なんてなかった。
大体無理やり受精させられて産まされた娘達にどうして愛着が持てようか?
看護師が気がまぎれるようにとテレビをつけてくれたがバラエティもクイズ番組もグルメリポート番組もつまらない内容ばかりだった。

それから何年過ぎただろうか?

あたしはいまだに病室の中に閉じ込められたままだったし、娘達との同室にしてもらえるどころかガラス越しの面会さえさせてもらっていなかった。

やはり医師達はあたしの自分の娘たちに対するあからさまな殺意を感じ取っていたのかもしれない。

それはそれで正解だとは思う。
事実、私を強姦し続けたあの男、義兄に似た娘たちの顔を見た途端にきっとあたしは能力を暴走させて取り返しのつかない事になっていただろう。

相変わらずテレビでは与党主要国会議員が勇ましい事を言って近隣諸国や軍事大国を煽りまくっていた。
防衛費を国内GDPの10%以上にするべきだとか言い出した。
軍事ローンで更なる巨額の兵器を購入する事を可能にする法案を強行採決どころか国会さえ通さずに閣議決定していた。

近隣大国からの侵略を防ぐためには先制攻撃権を取得する必要があると声高々に宣言する与党の大物幹部を囃し(はやし)立てているコメンテーターや東大卒業した准教授をテレビは映していた。

その内容を無批判で流すニュース番組よりはマシだと思っていたがとうとうバラエティ番組でも同様な発言をし出す笑えないお笑い芸能人が出だしたのには正直言って呆れた。

しかしそれもだんだん笑い事じゃなくなってゆく。

この国の政府は万が一の備えと称して射程距離や搭載可能な核弾頭の破壊力が何十G(ギガ)トンかも明かさない長距離弾道ミサイルが国民に知らされないまま開発生産されていた。

そのための原子炉、高速増殖炉と次々と再稼働と新建築されたのは水爆に必要な大量のプルトニウム239とプルトニウム241、そして重水素、特にトリチウムの開発と製造の為だった。
そして後者は生物が生きていくのに不可欠な水資源を犠牲にして開発生産されていた。

さらに国防省と大手財閥重工業株式会社は3カ国共同開発の戦闘機の存在を示唆した。

その運動性能と飛行距離はF-22をゆうに10倍は楽勝で越えると宣言した。

そのコクピットに座らせられるパイロットの体の中を流れる血液の流れが強烈なGal(加速度)でどうなろうか御構い(おかまい)無しのようだ。

彼らには無人機という選択肢はあったが彼らの頭の中にあったそれは大きくあたしたちの予想の斜め上を行っていた。

強制的にその戦闘機に搭乗させられるのは、戦争やジェノサイド(集団殺戮に反対する(彼らにとっての反逆者)を召集令状の元に強制召集された処刑囚だった。

もちろん彼らには危険物(爆弾など)の持ち込みは禁止され、彼らには操縦法など全く教えられなかった。
鼻から1ミリたりともその戦闘機を操縦させる気はなく遠隔操作で無理やり飛ばされた。

大抵のパイロットは自分たちには命の危険が及ばない遠隔操作者たちの無責任な操縦によって旋回時の圧倒的なGal(加速度)で至る場所で血管が破裂して脳貧血、又は脳溢血(のういっけつ)などどころか太い動脈さえ破裂させて失血死で命を落とした。

あるいは敵の迎撃対空ミサイルの餌食となって散っていった。

運良く助かったとしても彼らには更なる地獄が待っている。

自分の意思とは関係なく逃げ惑う丸腰の民間人、まだ幼い子供たちや妊婦さんたちに容赦なくミサイルを打ち込んだり、機銃掃射をする悪夢。

しかし何故完全に無人機にしないか?

万が一撃墜されたとしてパイロットの遺体が見つかった場合の事を考えての事だった。
わざと国籍不明の戦闘機機体に国籍不明の戦闘服を着せたパイロットを搭乗させることによってジェノサイド攻撃を行ったのが日本という国ではなく、一部の反政府テロリストによる犯行のせいにすることができるからだ。

【それが彼女、フルサイボーグ夏乃花奈の大企業の女癖の悪い男に赤子を孕まされた人造生命体の花奈の娘たちが『未来予知演算能力』で弾き出したこの国日本の未来予想だった。】
うざたてーは珍しく真面目な口調であたしたちだけじゃなくここにいる全員に語りかけるように伝えてきた。

潜水艦や大型空母などを次々と就航させて大型爆撃機のシルエットだけ公開をした。

「我が国の総理大臣は我が国に対する経済制裁を一刻も早く解除しなければ武力行使も辞さないと発言をして議会でも満場一致の賛成を得て大満足のご様子」
などと現実の国会とかけ離れた報道をAI音声やAI映像も駆使して政府の意向を無責任にそのまま肯定して、批判などもってのほかとでも言いたげな内容の臨時ニュースだった。

『あたしの予知夢だと99%の確率で日本は世界に向けて数十ギガトンクラスの核弾頭付き弾道ミサイルを各国の大都市に向けて数十発、百数十発射するよ』

どこかの白い部屋にひとりひとり隔離された娘の1人があたしの心に直接、言った。

『ついさっきそれに反対した議員が与党、野党関係なく数十人内閣調査室や公安警察の人間に破防法適用を理由に射殺されたよ』

勘だけどこの子はふたり目に産まれた娘だと直感できた。

『もうこの国は終わりね、頭の先から尻尾まで腐り切っているの、だからママ、私達をエネルギーに換えて、この島国ごと吹き飛ばして』

あたしには3人が何を言おうとしているのかさっぱり理解できなかった。

ただ3人ともものすごく辛そうな表情を浮かべていることだけはわかった。

この国の1億足らずの酷民のせいで世界中、数十億人の生命やほとんどの生態系生物も危険に晒されるらしい。

『やめて!』
あたしは叫んだ

『どの道私たちは終わりなのこの島国の消滅だけでで済むか、それともこの地球自体が終わるか?』

多分、最後の1番苦しんで生んだ娘、どうしてそんなに辛そうな顔をしているのか?

バカなあたしにも一瞬にして理解できた。

この娘達と同じ、新しい世代が次々と世界中で誕生しているんだ、きっと。

『あたし達のような娘は世界中ではもう珍しくなくなっている、新しい世代の男の子だって次から次へと産まれ始めている、自分達の国の人間だけでなく世界中、地球上のありとあらゆる生き物を自分のことのように考えられる世代が、』

その時、大型拳銃を持った憲兵が彼女達のいるそれぞれの部屋に乱入して来た。

そのひとりが引き金を引くと重い衝撃音と共に最初に生んだ娘の頭が吹っ飛んだ。

続けて胸部に穴が開くどころか細かな肉片になるまで何発も、何発も彼女の体に弾丸は打ち込まれた。

『あたし達の国だけなの自分の国のねじ曲がった正当性を主張して他国を貶める子供しか育てられていないのは」

『軍力になると踏んで産ませて高い費用をかけて手間をかけて育てたはずなのに、この国賊どもめが』

あたしの部屋にもその憲兵達が数人乱入して来た。

『もう終わらせて、この国はもう遠い過去にご先祖達が希望を込めて生み出した国とはまったく違ったもの、あたしたちは産まれてくるのが遅過ぎた』

ふたり目に生んだ娘も大型拳銃の弾丸であたまをうちぬかれ、頭蓋骨ごと壁に叩きつけられていた。

あとはひとり目の娘に対して行ったことと同じ繰り返し。

「やめて!」
あたしは叫んだ。

脅しのつもりだったかもしれない、憲兵の1人が構えていた大型拳銃のひとつが破裂した。

ほんの数mg、いやもっと少ない量の質量をエネルギーに変換しただけかもしれない。

「どこでそんな危険な思想を植え付けられた」
憲兵のひとりが言った。

【どっちが危険な思想だ‼︎】

大声で叫びたかった。

憲兵が最後に、1番最後に産んだあたしの1番大事な娘、長女にそのやたらと大きな銃口を向けて言った。

「あたしの長女に手を出したら許さないんだから」

あたしも負けずに叫び返す。

「こいつ何言ってやがる、最後に生まれたんだから末っ子に決まっているだろう」

憲兵のひとりが嘲笑するように言った。

『私たちは生まれた時から国境や言葉の壁を越えてつながり合っているの、痛みを共有して神様なんてどこにもいないことも知っている、かつて神と呼ばれた人たちが単なる道標だったことも、この国の神様はどこか狂っている、戦場で戦って人をたくさん殺した、そんな犯罪を犯して死んだ者をお国のために戦った神として祭り上げる狂った神社があると外国の友達に聞かされた、自分達が笑い物にされていることに気が・・・』

言い終わる前にあたしの大事な長女の首から上がなくなっていた。

「ねえ、おじさん達、この国では双子、三つ子のうち最後に生まれた子供をどうして長女とか長男と呼ぶか知っている?」

あたしは両腕に刺された数本の点滴の針を全て引き抜いて言った。

もはやどれもあたしには必要のない投薬だ。

「最後にお腹の中の後始末をして出てくるから1番上の子、って考えが昔からこの国にはあるの、もうまともな日本人じゃなくなったあんた達にわかるわけないよね」

あたしがそう言った時憲兵の数人があたしの頭に狙いを定めて大型拳銃の弾丸を撃ち放っていた。

「ごめんね、まだ幼くてロクでもない母親で」

あたしは3人の娘に対して詫びながら言った。

『だからせめてあたしの最後のわがままを受け入れて、それがどんな結果を招くかなんてあたしにはもうどうでもいいから』

もう数発の弾丸があたしのすぐ目の前に迫っていた。

私は憲兵達や目に入ったものを全てエネルギーに還した。
日本という地理的には小さな島国が巨大な火球に包まれてその火球ごと天に召され消滅した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あたしは長い期間の夢をほんのわずかな短い時間の間にみていたのかもしれなかった・・・

気がつくと私はいつも自分の兄が寝ている布団の上で裸のままふたりの少女に挟まれ、抱かれて眠っていた。

いや、私の前にいる娘は少女ではないかもしれない。
いつも私の兄が太くて硬いものをねじ込んでくる穴に似たようなものをそのときのあたしの同じ場所に差し込んでいたから、でもその人は少なくとも私よりは立派で大きな形のいい乳をふた山も持っていた。
そこから甘く優しい匂いがしていてあたしはその先端についた乳首の一つに吸い付いていた。あたしのあなにはいりこんだぼうも柔らかく、中から包み込んでくれるようで心地良かった。
後ろから抱きついている少女があたしの耳元で囁いた。
「あなたのお腹の中の三つ子ちゃん、〇〇ちゃんが預かったからね安心して」
そう言って甘くて熱い息を耳たぶの裏に吹きかけられた時あたしは一時的に気を失い、しばらくのあいだ甘味な夢の世界を彷徨っていた。

ざわつく人々の声で目を覚ました時、あたしは見知らぬ部屋のベッドの上でピンク色のシマシマパジャマを着せられた状態で寝かされていた。

手元にテレビのリモコンらしき物があったので電源を入れるとニュースが流れていた。

どうやら四軒連なったアパートの一室で刃物にでメッタ刺しにされた11歳の少女の遺体が発見されたらしい。

4人家族で両親と歳の離れた兄に大事に育てられた可愛い娘が惨殺されて嗚咽する3人の姿が少しだけ映された。
なぜかとても白々しく感じられた。

「あ、もう起きて大丈夫?」

ふたりの中学生が部屋のドアを開けて入って来た。

どこかで見た記憶がある少女、でも思い出せない。

「おふたりさんとも中学生ですよね?どうしてあたしを」
言いかけたあたしの口を遮ってもう1人の少女が言った。

「私の名前は冬河銀、こう見えてあなたと同じ小学6年生よ」
そう言った彼女は右目に自分の右手を重ねて似合わない横ピースサイン。

あたしは思わず大声を出して笑ってしまった。

何年振りだろうか?こんなに気持ちよく笑ったのは?

でも彼女が履いているスカートに妙な違和感が、まるで大人の男の人についているようなアレが窓の外から差し込む夕日の光に透けて見えた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「あらあら花奈ちゃんったらまたパンツ丸出しで眠っている」
香織さんが耳元で囁く声が聞こえた。

「目から涙を流して、また悲しい未来の夢でも見たのかしら」
銀ちゃんがあたしの顔を覗き込んで言った。

「違うの、今日は甘くて切ない過去の夢」
そう言ってからあたしは自分の両目から溢れ出していた涙を両手で拭いながら言った。

「ところで香織さんがあの時預かっておくと言っていた三つ子は今どうしているの?」
その途端に銀ちゃんの顔が真っ赤に染まってあたしから視線を背けた。

「その娘達なら銀ちゃんのお腹の中でゆっくりだけど順調に育っている最中よ?すごく時間をかけてゆっくりとだけどね」
香織さんが銀ちゃんの代弁をした。

「あの子達が言うには花奈がちゃんと自立して『あたし達の面倒を見られる余裕が出来るまでゆっくりと育つのを待つ』って言ってる、生意気なガキ達ですね」
銀ちゃんはあたしに背中を向けたまま言った。

あたしはソファベッドから起き上がってそんな彼女の背中に抱きついた。そして言う、
「ありがとう」と。

「いやそれを言うのは私たちの方よ、あなたはもう忘れてしまっているかもだけど」そう言って急に香織さんはあたしの背中にしがみついて来た。

【そしていよいよあたしと観萌、椎の3人を狙った加世ねえによる殺害計画、この時にあたしは一度確実に死んでいたはずなんだぉ、でも生き返ってしまっていた、当たり前だけどあたしは1900年頃に異星人のテクノロジーによって義体化されていた夏乃花奈の人造生命体だったからね、でも何故彼女があたしを再び記憶を保たせたまま生き返らせたか不明だったんだぉ】

【そして加世ねえは暴挙に出た、というより花奈陣営、と言ってもあたし1人だけだったんだけどどう言ったわけかいろいろなお友達が集まるようになってますますかよねえは孤立化していったんだぉ】

【加世ねえはどういった経緯かはわからないけれど自身の体に義体化技術を組み込むことを考え出したんだぉ】

【加世ねえ本人は100年未来にタイムリープすることで全身を義体化した体を手に入れられる事を知って組織の工作員に接触してそれを実行したんだぉ】

【しかしそれはタイムリープしたからではなくて地球の衛星軌道上にある【地神】様の超弩級巨大宇宙戦艦の中での出来事だった】
いつの間にか紅顔の美少年が話に加わっていた。
【私は観萌と椎と花奈に対する憎悪で色々な判断ができなくなっていた】

【囚人護送車シビリアンで九州を8人で旅をした時に、とはいえ彼女たちが好き好んで旅に出たわけじゃなくて加世の罠に嵌められて強制的に行かされていたんだぉ】

        ーーーーーーー

【影で売春斡旋を斡旋していた闇経営のラブホ、加世ねえは観萌と月海を彼らに売ることが目的で男子学生姿の人造生命体を作り公安の連中に命を狙わせてそこに誘ったんだぉ】

【しかしそれはふたりの命を狙う内閣調査室お抱えの軍事部隊をわざと招き寄せてホテルごとぶっ潰す(つぶす)気だった】

【ファッションモデルと偽りAV作品出演女優の18才未満のであるたちとの違法本番撮影契約、しかしその本当の目的は違法AV制作業者の壊滅と被害にあっていた一般少女たちの救出だったんだぉ】

【ラブホでの売春行為を花世に命じられていた中学生とわかってての上での売春斡旋、しかしそれは内閣調査室軍部による月輪、銀、香織、花奈、椎、月海、観萌、そして亜希らの抹殺計画だった、しかも彼らの中に『願望達成能力者』がいて彼女たちはもちろんの事私の能力まで完全に封じ込められてほぼ全員が現代兵器で殺戮されていた、ただ椎が持つ最強の『願望達成能力』がほんの僅か(わずか)に優っていたため、軍隊を全滅出来ていた】

椎がシャワーを浴びおわってタオルで体を拭き厚手のガウンを羽織った瞬間に亜希の右肩から先が吹っ飛んでんいた。
そのまま彼女の身体は右肩から大量の血を吹き出しながらシャワールームの壁に叩きつけられていた。
そして次には椎の目の前には心臓を拳銃で射抜かれ大量に血を噴き出している月輪ちゃんの遺体が投げ捨てられた。
次には鋭い刃物で頚動脈を切断されて首から大量の血を噴き出している観萌さんが投げ捨てられていた。
「こいつはあそこの穴にさえ手を出さなければ雑魚だとあの女も言っていたしな」
その男はそう言いながら腹を滅多刺しにして内臓が飛び出している銀さんの遺体をあたしに投げつけた。
やはり加世は敵方だったのだろうか?
もうあたしのガウンは血まみれだ。
そして月海さんは最も悲惨と言えた。
大型拳銃で撃ち抜かれたのか後頭部が吹っ飛んでいた。
「やめてえぇ!」
あたしは叫んだ。
続いてお腹の中に爆弾を仕掛けられて胴体がふっとんっだかのような花奈ちゃんの遺体。
『もうやめて!』
叫んだ時、目の前のアサルトライフルを構えた5〜6人いた男たちの身体が一瞬にして塵と化した。大型ヘリが2機、バルカン砲の弾丸を撒き散らしながらこっちに迫ってくる。
しかしその2機は何かの強い力に引かれあったかのように互いに急接近して、激突して爆発、炎上、落下をした。

「下界の愚民どもが私に逆らう気か」

あたしとは違う自分の声で冷ややかに言い放つ自分自身に恐怖を感じた。
高速で接近して来る5基の飛行物体の存在を確認した
火柱が連続してあたしの頭上に5本立ち上がる。
海の遠くで一隻の軍艦が爆発炎上をしている。

それを見てなぜか微笑み出したあたしを後ろから強く抱きしめている左腕があった。

「これくらいにしておいて、」

後ろを振り返ると右肩から先を失っている亜希が笑いながらあたしの唇を奪った。

そしてすぐに崩れ落ちるようにして倒れた。

ホテルの警報が激しくなり出した。
外の廊下を激しく人が走っている足音がする。
恐怖で叫びながら将棋倒しに遭う人たち。

あたしは意識を失っていた。

【それでも椎を除くあたしたちのほとんど全員が殺害されていたはずだった】

       ーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

@加世ねえの過去

【あの時は本当に私はどうかしていた、みんなを自分の能力で虐待して死に至らせるだけでよかった、しかし私を操っていた上司らは軍隊による全員殺害を仕組んでいた】

再びフルサイボーグ秋草加世が話に加わってきた。なんの嫌がらせだろうか?

あたし、可奈野椎はいつものように小学六年生の暑い盛りの下校途中に自分の体の変化に気がついていた。

周りの風景を見る視点が急に低くなっていることに気がついていた。

着ている服はこのサイズのものを着ていてそのサイズも自分の体に合わせて変化できるのでダブついたりはちけたりする心配はない。

しかし身長が123cmの幼女でも実際にはあたしの体の中ではしっかりと女の子である証、排卵日がすぐそこまで迫ってきていることを意味していた。

まずはあり得ないことなんだけど今の状態で男の人に襲われて膣の中に太い陰茎を挿し込まれて白いねっとりとした液体を中に出されたら妊娠する可能性だってある。

何せこの期間中は自分の思い通りにことを運ばせる能力『願望達成能力』を完全に失ってしまうからだ。

その時、見知らぬ大人の女の人に背後から抱きつかれてスカートの中のパンツに手を忍びこめられれた時は驚いた。

うかつだった。

全身を刺激的な電流が駆け巡りあたしは声にならない荒い息を吐いて吸い込んでを繰り返していた。

「ほらあのお兄ちゃん達が遊んでくれるってさ、周りに気兼ねなく遊べるように時間を止めようね」

体が自分のものじゃないみたいにピック、ピックと反応して暖かな液体がパンツをぐしょぐしょに濡らしだした。
それでも止まらずに太ももの内側を伝い流れた。

「ほーうら、子供がたくさん欲しくなりましたね、原始卵胞を24個くらいこれから大急ぎでグラーフ卵胞に熟成させて排出しましょうか」

「もうキャンセルは出来ませんよ、あなたはその卵が受精しておなかの中にある限り産まれてくるまでその『願望達成能力』は無効になりますから、ほうら、周りの景色が止まりましたね、もう誰もあなたを助けにはこれませんよ?」

そう囁かれたときは既に周りの風景が全て停止していた。

男達5人とあたしの6人を除いてだったが。

あたしは難なく彼らに取り押さえられて最初の男に太くて長く、固い陰茎を膣にねじ込まれて中に大量の精液を出されていた。

もしもこのまま5人に代わる代わる犯されたら24個排出される卵子が全て受精してしまう可能性だってある。

もしもそれが同時に20周期以上育ってしまったら私のお腹はどうなってしまうのだろうか?
それはその時が来るまでわからなかった。

         ーーーーーーーー

私、観萌はそんな親友のピンチも知らずにあの女と戦い続けていた。

頼みの花奈ちゃんも頸動脈を切られてとてもじゃないけど生きているようには見えなかった。

それよりも私自身が全身傷だらけでかなりヤバい状態にある。

彼女はきっとプロの殺し屋かもしれない。
先ず頸動脈を切断され、続いて心臓をひと突きに刺された。

おまけにバツ印にお腹を切られて臓器を大地にぶちまけされてどう戦えと言う気か?

普通の人間ならとうの昔に死んでいる、でも私にはとりあえずはやるべきことがある。

この目に見えない敵を倒して一刻も早く花奈ちゃんを蘇生させなければならない。

しかし私の頭脳はほとんど壊死していて使い物にならなかった。

私のお腹に何かが捩じ込まれた。

『プラスチック爆弾?』

気がついた時は既に手遅れだった。

私の身体は木っ端微塵に吹き飛ばされていた。

        ーーーーーーーーー

もう何人目か覚えていなかった。

屈辱と絶望だけがこみあげてくる。

ただ確かなことが言えるのはたった今、5個の卵子が確実に受精した事だ。

その代わりにもう既に7個の受精卵が破壊されていた。

「乱暴すぎるのよ、あんた達は」

喘ぎ声に混じってそんな言葉が思わず口から漏れた。

両目から大量の涙が溢れ出している。

またあたしの中に大量の精液が噴射された。

ふたつ受精した代わりに4っつの卵子が死んだ。

「もうやめて!」

あたしは叫んだ、だけどそんな事をしてもどうなるってわけじゃない。

男達は入れ替わり立ち替わりあたしを犯し続ける。

ただそれだけのことだ、両肩と脇腹を押さえつけられたあたしに出来ることなんて何もない。

またふたつ受精卵が殺された。

「そうだよね、男にとっちゃ1回の射精で無駄死にする精子の数は数億だとしても毎日生産される精子に比べたら微々たるものだ、それに引き換え女の子が排出する卵子はせいぜい28日でたったの1、2個、多くて排卵誘発剤を使っても3〜5個、一生かけて約500個に過ぎないと聞く、命の重さが全然違うんだよ!愚民どもが!」

あたしが叫ぶとあたしを犯している最中の男の後ろに立っていた学生風の奴がバタフライナイフをズボンのポケットから取り出すと開いてあたしの腹に突き刺そうとしているのがわかった。

あたしの右手があたし自身の意思とは全く関係なく動いてそのバタフライナイフからあたし自身の下腹部を守った。

手の甲にナイフが突き刺さって激痛が走った。

もうひとりの男もどこからかサバイバルナイフを取り出して同様にあたしの下腹部に突き刺そうとした。

今度は左手が勝手に動いて右手の甲に突き刺さっていたナイフを素早く引き抜くとそれでサバイバルナイフを弾き返した。

それは運悪くあたしを犯していた男の腹に深く突き刺さった。

あたしは容赦なくそれを右手で引き抜くと左手のバタフライナイフと一緒にそいつの両腕を切りつけた。

そしてあたしの両肩を押さえていたふたりの腕を切りつけようとした時、ふたりとも素早く飛び退き戦闘体制に入っていた。

あたしは両足であたしを犯していた男の身体を挟み込んで起き上がり馬乗りになると念入り右手のナイフで心臓をひと突きすると左から近づいてきた男の太ももを斜め横に切り裂いた。

と同時に激痛か走る、背中を刃物で2箇所も刺されたらしい。

めまいがあたしを襲うがほんの一瞬だけあたしは自分の下腹部に右手のひらを当てて確認した。

「まだ生きたいよね」

あたしは左手のナイフを全速力で右の男の胸を目掛けて振った。

触れてもいないのに男の身体が衣服ごと裂けて真っ赤な血を噴き出していた。

「な、なんだこいつ、妖術使いか?」

後ろの男のものすごく低いゆっくりとした声が聞こえた。

あたしは同様に太ももを切られてひざまづいていた男の首を切断した。

あたしは振り向きざまに奴らの腹を切りつけた。

「かまいたち現象って知っている?あたしを罠に嵌めたおねえさん」

あたしがそういうとそこにはさっきあたしを快楽地獄に堕とした女の人が立っていた。

あたしが何故そのような言葉を知っているかどうかは非常に謎だった。

だが何故か未経験の知識は豊富だった。

       ーーーーーーーーー

私、観萌は完全に死んでいたわけじゃなかった。

自分の一部を花奈ちゃんの身体の中に移してまずは首の、頚動脈と頸静脈の修復に取り掛かっていた。

心臓は一時的に停止していたがすぐに再稼働を始めていた。
私はゆっくりと仮死状態にあった彼女の脳を再起動させると今起きている事の顛末を聞かされた。

そして今、椎がどこにいてどんな状態にあるのかも知ることができた。

そして私は今、椎と女の目の前で復元していた。

ただし!、服までは復元できなかった。

「妖怪め!今度こそはバラバラに切り刻んでやる」

女はそう言うと一瞬だけ姿を消した。

そして次の瞬間、全身血まみれの姿で私のすぐ目の前に現れて倒れた。

「なんでよ、なんであんたはそんなことが出来るの?」
悔しそうに女は言った。

「しばらくは『願望達成能力』は使えないはず」
それを聞いて椎はしばらく考えたふりをして言った。

「まあ、あれだね、あたしの中の受精卵が能力の一部をアンロックしてくれた的な?」
私は思わずめまいがしてきた。

「それ、陵辱された女の子が言うセリフですか?、おまけに中に出されたばかりでどうして受精したとかしないとかわかってしまうんですか?」

「そーだねぇ、受精卵が語りかけて来るみたいな?

椎がそう言った途端に再び、女の姿が消えた。

そして私のお腹にひと筋の傷が横方向に入った。

そして女はさらに血まみれになると再び私の前に倒れた。

「もう、あたしの観萌ちゃんに手を出したら今度こそはサイコロステーキにするからね」

プンプン怒りながら言う椎を見て女は言った。

「何故お前には時間停止が効かない」

そう言った女の頭を私は踏みつけた。
 
「いいですか?そのボンクラ頭に言って聞かせましょうか?第一に時間なんて止められないんですよ、自分の周りにシールドを張ってその中で超高速に動ける、ただそれだけのことなの、それから前にも言いましたよね?今度また酷い事をしたらタダじゃ済まないと」

私はそう言うと奴の全身の細胞をひとつひとつ、くまなく分子レベルまで破壊し尽くした。

        ーーーーーーーーー

抹消対象

文月輪(ふみ つきわ)年齢不詳、身長と体格から小学生低学年にも見られる、しかし銀と同じクラスに入学することから12〜13才(中学1年生)かとも、金髪の爆発ヘア、赤い眼、なんでも透視出来る、見えたものに対して直接触れずに念動力攻撃が可能、身長132cm、誰が見てもAカップ
この能力を他のメンバーに与えることも他のメンバーの能力も借りることが可能 
A校

冬河銀(とうか ぎん)13才(中学1年生)A校の男の娘、おとこを堕とすことに生きがいを感じている、身長152cm、自称E~Hカップ、もちろん立派はチ〇〇ンはあるが機能しているかどうかは不明、本来〇〇玉があるところに謎の穴ブラックホールを持っている、ホワイトホールにすることも可能、本当は♀だという疑惑あり、ストレートの黒髪を胸まで伸ばしている 
A校

夏乃花奈(なつの かな)12才(中学1年生)、身長158cm、自称Cカップ、普通の目立たない娘、肩より少し伸びた栗色のストレートヘア、地球を破壊しかねないE=失った質量×光速の二乗の能力を持っている、おまけに予知夢の能力も持っている。
A校

春香織(はる かおり)13才(中学2年生)お淑やか、だが怒ると怖い、胸まである、黒髪ストレート、身長167cm、自称Fカップ、相手が時間を止める能力を持っていても胸から発する謎エネルギーが逆に相手の方を止めてしまう。
A校

水無月海(みずな つきみ)14才(中学2年生)胸までの黒髪ストレートヘア、細い目が鋭くて怖い、物理を無視した念動力、最大重量12トンの物を音速22で飛ばすことができる。身長170cm、自称Dカップ 観萌と恋人同士 
C校

可奈野椎(かなの つち) 12才(中学1年生)性に関しては影の人格上では年齢(25才以上)以上の知識と実体験あり、ショートカット、名前の逆さ読みを気にしている、身長?cm、?カップ、デフォルトは身長123cm、バストは洗濯板ですが下半身は普通に女の子。願望実現達成能力(倶名尚愛の40倍、こいつに死ねと思われたら〇〇〇〇に秘孔を突かれたやつのように確実死んでしまう、機械に対しても可能、上記の能力により相手に身長や体格、顔、などを変えられる。カメラなどにもそのように映るのでセキュリティもフリーパス。
B校

佐原観萌(さわら みもえ) 13才(中学1年生)以外と理論派、腰まで伸びたストレートの茶髪、身長175cm、自称Dカップ、眼が大きく緑がかったハーフ、計測不能なほど思考速度が速いためヤマカンだけで動いていると思われている、月海とは恋人同士 C校

秋種加世 女性 国籍:日本 2089/09/1223:56:57 誕生

一体何なのだろうか?この意味不明な文字の羅列は。
そもそもここはどこなのだろうか?
私は一体
「君は先代のクローンだよ、奴らに細胞レベルまで破壊されるとは思わなかったのでね、もう治療とか蘇生できるレベルじゃなくなっていたのさ」

File date Time 202x/03/01 21:34:

私がその文字列のひとつににタッチすると少女の三方向から写した画像が表示された。
他の文字列に触れると別の少女のやはり同様な画像が表示された。

いくつか試してみたがたった一人だけ思い当たる少女がいた。

私の天敵、何度夢の中でぶち殺してきたかわからない、その度に奴は生き返って私の前に立ちふさがってきた。

「一人だけでも思い出せたかね」
その板から男の声が聞こえた。
「正しくはふたりです」
私は答えた。

「君にとって男とは何だね」
なぜか疑問符はなかった。
私は答えた。
「食料」と。

「じゃあ女は」
私はしばらく考えた。
そして答えは、
「女って何を指す言葉ですか?」

「おいおい、君がさっきから見てきただろ、彼女達を女だというのだよ」
よく意味がわからない。

「もしかして私の食糧を奪ってしまう泥棒ですか?」
私は感情なく言った。

白い板に男に後ろから襲われて泣き叫ぶ女の姿が映し出された。
「この男は何をしているのですか?」
「女に自分の遺伝子情報を分け与えようといるのだよ」

「それにしてはこの女は恐怖しかかじていないようですが」

「いやいや、それはまんじゅう怖いって奴だ、気持ちが良すぎて昂るとあんな表情になるのさ、そのうちに満ち足りた表情になる」

「いま、男は女の身体の中に何かを注入しましたね、棒状のものを差し込んだ先のお腹の動きをみればわかります」

「男が女に自分の遺伝子情報を分け与えた瞬間だよ、嬉しそうに女は泣いているだろう」

あれが嬉しそうな顔というものか勉強しよう。
と思った。

「わかったっかね、じゃあ次の映像を見せるとしよう」
突然、女が暴れだして男に顔面を何度も殴られて気を失ってから再びさっきのパターンになる映像が映し出された。

「これが男女の正しい在り方だ、女は男の従属であるべきだ」

そう言ってから今度は抵抗して女が男の隠し持っていた拳銃の弾丸で顔を撃ち抜かれて後頭部が吹っ飛ぶ映像を見せられた。

「これは男の殺人罪ですか?」
私は問いかけた。

「いいや、正当防衛だ」
その声は言った。

「ではもしも女が逆に男を撃ち殺してしまったら?」
質問を変えてみた。

「過剰防衛、いや殺人罪だな」
冷たい答えが返ってきた。

「私も彼女達のようにすれば良いのですね」
私は先回りをして答えた。

「いや、最近この秩序を乱そうとするやからが増えてな、そいつらを始末して欲しいのだ」

男に言われて私は首を縦に振った。

「ところでこの女はその後どうなりますか」
「みんなそれぞれの男が幸せに支配しているよ、男に対する服従こそ女の幸せだからな」

少し違和感を感じたが全身をチクっと流れた刺激を受けた途端に私はそれが正しいと理解した。

「君には人を操る能力を与えよう、何、それほど難しいことじゃない君はコンピュータープログラムは得意だったね、その要領で男に女を襲わせるプログラムを打ち込むだけだ、首筋や額に指先で軽くタッチするだけで人間が本来持っている行動パターンをマクロ言語として利用する簡単なものだがやってくれるね」

またしても私の体に軽い電流が流れた。

「これで人の血圧を急上昇させて心不全や脳出血なども出来ますが」

「その場でそうなるように仕向けるとすぐに君の犯行だと奴等に悟られてしまうからな、タイムカウントループや条件分岐を利用して一定の時間後、もしくは一定の幾つかの条件で発動するようにしてくれ」

「何でそんな面倒なことをする必要があるのか?」
と私は答える。

「連中に勘付かれる恐れがあるからな」

そんなもの勘付かれたところでそいつを始末すればいいだけの話じゃないか、と私は思った。

「それにしても100年以上もこの国では昔から使ってきた技術をなぜわざわざ今更・・・」

再び全身をチクっと電流が流れた。

余計なことは聞くなということか?

少なくともこれは第一次世界大戦よりも前から採用されていた技術。

だからこそ無謀な計画を実行させたり、反対勢力をコントロール出来たということ。

そういえばあの無能な元首相でも長期に渡り政権に関わり続けられたのもレイプ事件などで女に不利な判決が下るのもその技術があればこそだったのだろう。

また全身をもっと激しい電流が走った。

まあどうでもいい、私にとってはこの国がどうなろうがこの星が死滅しようがどうでもいいことだ。

私はただあの憎い女をこの世から抹殺できれば良い。

「ところでこの国は戦争でたくさん人を殺した人ほど死んだ時に英霊として祭り上げてもらえる神社があったそうですね」

また全身をもっと激しい電流が流れた。

「そう言っておけば皆は世に従う、世がこの国を支配しているのだからな、」

「私にはあなたが何万年何億年も生きていようがどうでもいいことです、それよりもこの与えられた能力を利用してやってみたいことがあるんですが」

私はそういうとさっきから気配しか感じていなかった男達の姿が見えるようになったいた。

「6人もいましたか?」

どうやらさっきからの電撃はそいつらのせいらしい。

「ではさようなら」

私が言い終わった後には全員の身体中から大量の血が噴き出して白い部屋を真っ赤に染め上げていた。

そして天井隅っこに設置されたカメラマイクに向かって言った。

「今からそこに行ってもいいですが私と利害関係が一致するなら何もしないと約束しますから」

私はそう告げてから、そのカメラマイクを一瞬にしてエネルギー化した。

そう私は他の姉妹のひとりひとりが個々に持っている能力のほとんど全てを持っている、ただ一人、いや正確にはふたりだけ憎いあいつら以外の能力を除いてだが。

私はそれを手に入れるために自分の記憶を一旦消去して未来に飛んだ。

        ーーーーーーーーーーー

私はいつものように事務処理の業務を終えるとプライベートカードを読み取り機にかざしてPCの電源を落とした。

今日の取引は防衛軍からの発注、アサルトライフル用の弾丸40,000発、ロケットランチャー用のロケット弾500発などだった。

他にも色々あったが暗号化されたものもある、いや隠語というべきか?

20連発打ち上げ花火豚5000万匹
とか色々あるがまあ単純に誰でもそれが50メガトンの核弾頭付き弾道ミサイル20発であることくらいすぐにバレる。

それさえ気がつかないほどこの国の政治家や軍部の連中はおめでたい連中ばかりなのだ。

私はいつものように地下駐車場に停めておいた自分の車のドアロックをプライベートカードを使って解除すると後ろから首を締め付けられて意識を失っていた。

          ーーーーーーーーー

気がつくと自分は裸にされて手術台の上に両手首、両足首をバンドのような物で固定されていた。

焦げ臭い匂いと同時に胸からへそのあたりにかけて私の前面にレーザーメスが入れられて私の皮膚が剥ぎ取られて心臓や肺、胃、や腸などが禍々しいものに置き換えられていった。

そして再び剥がされていた皮膚を置かれると接着剤のような溶剤をつなぎ目に縫い込まれて次の瞬間に私は視覚を失っていた。

何か布のようなものを顔にかけられたのかもしれない。

「この人造心臓と人造肺の機能はなんですか?」
と誰かの声が聞こえた。

「心臓や肺とは言い難いまったく別の代物だ、例えばこの胃と腸によく似た代物は原子炉によく似た機能を持つ」
その声は言った。

「ではその肺によく似たものは?」
別の声がした。

「脳髄をいや今回置き換えられなかった全ての細胞を今から血管を通して全身に流し込む溶剤で溶かすためのものだ、そのために今から特殊な服、スーツを着せる」

「生殖器はどうする」

「殺人兵器という道具にそのようなものは必要がなかろう」

「ではこの心臓によく似たものは?」

「とりあえずは有機溶剤を全身に送り込むためのポンプだが、その役目を終了した以降はその他の人工体を形成する工場、いやロボットといったほうが正しいか?まずは物資を輸送するためのパイプをあちらこちらに張り巡らせる工事をする血管と同様に複線で身体中に配備される、人工筋肉人工骨格人工神経それらを形成したのちに最終的に人工脳、量子コンピューターを頭部に構築する、最終的にそのパイプは電源ケーブルと冷却媒体を通すために使われると言うわけだ」

「そんなこと言ってしまっていいのか?」
「いやもう吸入器を通じて有機溶剤が流し込まれ始めている、もうそろそろ意識もなくなるだろう、再起動する頃にはまったくのロボットさ」

「有機溶剤が身体中に流し込まれた時に痛みとか感じないだろうか?」

「知るか、どうせなくなる意識だ、」

「ち、これだけの上玉だ、やりまくっておけば良かったよ」

「あ?こいつは上官に何度も中出しをされているぜ、孕んでいても不思議じゃないほどにな」

「おっとバルブが閉じたままじゃねえか?開くぜ」

その直後私の体は全身が焼け尽くされたかのように熱くなり死を実感した。

       ーーーーーーーーーー

ガラスケースの中で横に寝かされていた私の目の前に1人の男が立っていた。

「君は自分が誰かわかるかな?」

そんなことわかるはずがないじゃないか?そんな私の気持ちと裏腹に私の声帯は明確に答えていた。

「秋種加世、13才」

そう言ってから私は起き上がりガラスケースを突き破り男の右手を自分の左手でつかみ引き寄せるとそいつの額に右手の指を2、3本使いコマンドをタップするとそいつはぶつぶつ言いながら壁側に向かい歩き出した。

部屋のドアが開き2、3人の男入ってきてそいつを止めようとする。

「やめろ、それが何かわかっているのか?この研究所の自爆ボタンだぞ、小型とはいえ500キロトンの核爆弾だ」

叫び声も虚しく赤いボタンは押されてこの研究所は青白い光に包まれていた。

私はその時すでに記憶を取り戻していた。

最強の擬態能力と最速の思考演算能力

これで散々私をなぶりものにしてきた奴、可奈野椎と佐原観萌のコンビと対等以上に渡り合えるはずだ。

連中もそこに私の遺体がなくても何の疑問も持たないだろう。

私は再び奴らを殲滅(せんめつ)すべく過去に遡る(さかのぼる)ことにした。

       ーーーーーーーー

「ところで椎ちゃんのお腹の中には未だに受精卵は存在するんですか?」

急に思い出したように観萌ちゃんに訊かれた。

「その辺は断定できないんだけど一応、内膜に8個だけ着床しているみたいだけど細胞分裂がものすごく遅い、みたいな気がする」

あたしがそう言うと銀ちゃんが急に身を乗り出して言った。

「私の中の花奈の娘達と一緒だね、すごく成長が遅い」
すると香織さんも身を乗り出して羨ましそうに言った。

「いいなぁ、私も花奈ちゃんの子供が欲しい」

しばらくは沈黙が続いたが月輪ちゃんが口火を切った。

「その事件前とここ最近の彼女はまったくの別人と見るべきかもしれませんね」

       ーーーーーーーーーー

@13体目の獣姫

「まったくあの人のキャラじゃないよね、今回は」
由紀がそう言うと有希も頷いていた。

その時に呼び出しボタンが押された。

由紀はそのテーブルに向かう。

後から駆けつけるとクレームなのか何やら怒鳴りつけられている。

まあそんなことで泣き出すほどやわな娘ではないことくらいはわかってはいるけど一応サポートに入ってやる。

強面の男子高校生3人だ。

「何かこちら側に不備でもあったでしょうか?」
一応腰を低くして聞いてみた。

「あったでしょうか?じゃないよあったんだよ、おたくの店はゴキちゃんも料理の中に入れるわけ?」
その男子高校生は言った。

もちろんそんなものは滅多に入るものじゃない、でも一応確認させてもらう。

なるほど確かに入っていた。
グラタンの焦げ目が入ったチーズの下にしかも生きの良い生のゴキちゃんが。

「それで私たちにどうしろと」
由紀は時々たまにおとこの娘に見られることもあるけど引き下がるわけにはいかなかった。

「店長を呼べ!」
決まり文句だね?

ただし呼ぶまでもなく自称店長はすぐそこに立っていた。

「それであたいにどうしろと」

そう言った店長はマグナム44の銃口をひとりの男子高校生の口の中に突っ込んでいた。

「に、偽物だ、偽物に決まっている」

隣の席の男子が騒ぎ出すと葉類智恵警部は自分の身分証明を表示したスマホ画面を3人に掲示した。

「試してみるかい?」

智恵がそういえば相手は降参するとボクも有希も考えていた。

「やってみろよ」

もう1人の男子生徒が言った途端3人の姿がそこからかき消されていた。

その直後にボクと有希と葉類智恵警部の身体が後ろに吹っ飛ばされていた。

キッチンを見ると『あつこ』さんと『かなえ』さんともう1人、艶のあるストレートの青みがかった黒髪を胸まで伸ばした少女が化け物に馬乗りにされて長い尻尾を膣に差し込まれようとしていた。

ボクも、有希も、智恵さんも同様に化け物に馬乗りにされて長い尻尾を膣の中に入れられていた。

「助けなんて来ないさ、昨夜と同様みんな『ゴキちゃん』とか言うノロマを残して逃げていきやがったよ、おかげで俺たちは12人でその『ゴキちゃん』とやらをやりたい放題だ、仕上げに愛人1号を解放してたった3回で破裂させてやったよ」

彼らには見えなかったらしい。

化け物にとっては思わぬダークホースの存在に。

その時ボクの中でピースが全部ピッタリとはまった。

追い返せなかったんじゃなくて、ワザと追い返さなかったんだ。

半分魂が抜けてボケた状態のはずだった『ゴキちゃん』をエサにして。

「しかし俺だけがこんなババァとは割があわねぇ」

奴がそう言った途端にボクの穴から尻尾が抜けたかと思うとそいつの体は天井に叩きつけられていた。

そして有希と葉類智恵警部に馬乗りになっていた奴の身体も立て続けに天井に叩きつけられていた。

キッチンでも同様な事が起きていた。

地下ではドッタンバッタン大騒ぎをしている音がした。

葉類智恵警部が自分の顔を右掌で覆い隠す。

「派遣!葉類智恵、召喚、私、草薙敦子」

そう言うと葉類智恵警部、もとい草薙敦子はむっくりと起き上がって天井から落ちて来た奴らに向かって言った。

「もう愛人トリオは戻ってこない、いいえ戻れない、何故なら太陽のど真ん中に派遣したから」

「約束を反故にした罰はしっかりと受けてもらうわよ」
かなえが宣言すると3体の化け物は

木っ端微塵に砕け散った。

地下に通じる階段から9体の化け物が宙を飛んで逃げてきた。

フルサイボーグ夏乃花奈にもフルサイボーグ秋草加世にもその理由はわかっていた。

彼ら、いや彼女たち悪魔のようないや、悪魔そのものである悪魔サタン(夏野明美)と淫魔の波瑠沙芽(はるさとみ)の存在に。

さっきまで『かなえ』と『あつこ』と共に犯されかけていた少女は夏野明美乳だった。

そして地下でドッタンバッタンと奴らに数トンの体当たり攻撃をかましていたのは紛れもない波瑠沙芽母だった。

そう『さとみ』は夏乃花奈と秋種加世の母親、波瑠沙芽だった。

「あたしにもガマンの限界ってものがあるんだよ」
そう言った見覚えのある少女。

「確か女子中学生の胸にサバイバルナイフを突き刺した自慰党国会議員倶名尚愛!」

「覚え方!」
と愛

そいつは両手で鉄砲のようなポーズをとると立て続けに奴らに次々と狙いを定めると
『ドゴーン、ドゴーン、ドゴーン』と叫んだ。

あの少年刑事漫画飲み過ぎだろうか?

3体の奴らの体は口径50センチの大砲に撃たれたように木っ端微塵に砕け散った。

「あんた達あいつらを使って随分酷いことをしてくれたね、コリもしないで再びモンスター化してくれてありがとうよ」

「あれは確か女子トイレで危ない大人のおもちゃで女子中学生の膣をグリグリしてケタケタ笑っていた威神の戒サディスト国会議員山崎秋子」

「印象操作!」
と秋子

「もう私の怒りはクライマックスだからね!一滴残らず搾り取らせてもらうわ」

3体の奴らの尻尾が激しく痙攣を始めると勢いよく白濁色の液体を吹き出しそれは瞬く間に秋子のスカートの中に吸い込まれていった。
そして奴ら3体の体は干からびた砂のようにサラサラとなってエアコンの風に吹き飛ばされていった。

「あ、パンツ下ろすの忘れていたからグショグショに濡れて気持ち悪い」

と秋子、正直言っていまさら遅いです。

地下から身重の、いやお腹の大きな亜希がゆっくりと階段を登ってきた。

「私が逃げたとでも思った?」

彼女は残った、3体を睨みつけながら言った。

「確かに私の中にいる数千万人の人達は確かに何も特別な能力のない凡人ばかりかもしれないよ?」

亜希はスカートのポケットの中から直径が10センチくらいの黒光りする鋼球を取り出すとそれを唇に当てて何やら呪文を唱えた。

それを左腕で勢いよく投げると1番左の1体の頭部に命中して強い光を放って爆発すると姿も形も残らずに消え去っていた。

「あなた達が馬鹿にし続けた国民を何故私が大事にお腹の中で保護してきたかあなた達にはわからないでしょ?でもね、彼らがいなければ私はとうの昔に自滅していた」

そう言うと亜希はスカートのポケットから紫色の鋼球をを取り出した。
「いつまでも俺たちを縛れると思うなよ」
右の1体が亜希に襲い掛かるようにして突進してくる。

亜希は涼しい顔のまま唇に触れていたその鋼球を左腕で全力投球する。
左に少し逸れたかのように見えたが奴が亜希の3メートル手前に来た時に170度向きを変えて頭部を撃破ダイナマイトのように全身が爆発した。

亜希はスカートの中から最後の紅い鋼球を取り出すと唇に当てて呪文を唱えた。

「最後に、彼らはこんな適当でいい加減なサポートしかしてこれなかった私のために様々なアイデアを提出してくれた、あなた達は国民を一度でも信用したかしら?窮地に陥っていた国民に手を差し伸べたこと一度っきりでもある?」

亜希が言うと奴、悪魔は自らを暴徒化させて襲い掛かってきた。

奴はジグザグに移動しながら亜希の動揺を誘おうとしている。
亜希は振りかぶりながら叫んだ。

「これがあなた達が馬鹿にして冷たくあしらって来た彼らが導き出した答えよ!」

亜希は急に軸足を中心に後ろを振り返り紅い鋼球を全力投球した。

数メートル離れたテーブルの2メートルほど上でその紅い鋼球は炸裂して奴の血と肉片を店内中に飛び散らかした。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

『G』と『B』と元祖亜希の3人の中で愛人1号に中に出されても中の住民に影響が与えられずに済むのは『G』だけしかいなかった。

全てが終わってから元祖亜希はボソリと言った。

「何故なら『G』の胎の中には無限に精液を吸い尽くせる秋子がいたから」
そして『願望達成能力の愛がいた』それが理由らしい。

そしてそんな愛の強い願望が波瑠沙芽母と夏野明美乳を召喚したらしい。

愛人1号が破裂させたと思っていた『G』は愛の『願望達成能力が彼らに見せた幻覚であり、あえて見せなかったのは悪魔のような化け物を次々となぎ倒していった本物の悪魔、サタンと透き通った白髪の魔女、波瑠さとみの姿だった。

「ところでお前さん達」
ボクたちが振り返るとそこにはすごく怖いおばさんが睨みつけていた。
「店をこんなに汚しちゃって、ちゃんと綺麗に掃除しないとあんたたち給料なしだよ!」
その人はやっぱり葉類智恵警部その人だった。
しかし彼女が地下室に行けばもっと怒り心頭になっていただろう。
フルサイボーグ花奈もフルサイボーグ加世もあそこまでブチ切れたハルサメ母は久々に見たからだ。
おそらく咲に取り憑いていた崖信介にコントロールされていた瑠璃と対峙して以来だろう。

「ねえ、誰か1人いないような気がするけど思い出せる?」
血糊とか拭き取りながら有希にそう言われて店内を見回したけれどボクには誰がいなくなっていたのか思い出せなくなっていた。
ただ一つ思い出せたのは
「パンケーキ200枚焼いてくれるって話どこにいっちゃったの?」
それだけだった。

波瑠沙芽「ねえ、今回の参考資料は?」

愛「ねーよ!あんたらが好き勝手に過去話を引用してくれたから今回はUSO100%だよ」

花奈「でもどっかで聞いたような話が多いのはそれだけかにゃ?」

観萌一歩間違えば現実に起こりそうなネタばかりですね」

アダルト版JC淫魔刑事獣鬼編25『ふたりの花奈』4

おわり

No.2伊良衣良「ねえ、わたしたちいつになったら出番が来るの?」

No.4激辛「きっと愛のやつ私らの話を書く気は1光年もないんだ!その点サタンは良いよな!活躍出来て」

サタン「いや、あたし一応名前出たけどセリフなしだよ?」

人造生命体夏乃花奈3号「いよいよ次から加世ねえに対する私の復讐劇がはじまるわけですね、たっぷりと炒めて差し上げますわ」

人造生命体夏乃花奈2号「調理じゃないんだから」

アダルト版JC淫魔刑事獣鬼編26『ふたりの花奈』5

にちゅぢゅく!

本家亜希「しかし何このふざけた展開は?ほとんど過去話じゃない?」

さとみ「まさかカレンダーガールまで時を戻されるとはね」

ナッツ「いや、戻したのあんただから!」

佐原観萌「あんたが犯人でしょうが!」

志乃「思い返せば今考えると不自然なとこ多すぎたものね、特にバミッテに入店してから」

有希「それをいうなら【再会】の時からすでに」

愛「あ“〜!」

信長(崖信介)「我らが尊師睾丸の美少年もリニアに乗っていたな!」

夏野明美「あんた封印されたはずじゃ」

堀恵萌「ほほほほ、私たち大物政治家と宗教家は絶対に捕まらないの、それがこの国の掟よ」

#20才未満閲覧注意
#SFっぽく
#ハタチ未満はご遠慮ください
#ハルサメとナッツシリーズ
#過激な描写あります
#エログロ注意
#波瑠沙芽とナッツ
#小説

波瑠沙芽「なになにあいつらの話な訳?」

馬鹿奈「次は波瑠沙芽母と夏野明美乳の濡場シーンがてんこ盛りなんだお」

愛「勝手に話つくらんでくれない?メーワクなんですけど、その先?知らんがな」

花奈「相変わらず無責任なんだぉ」

伊良衣良「どのみち誰かが全く勝手な行動を始めちゃって、下手すると逃亡あたりからまた書き直しですね」

愛「え“ー!」

達也「自慰行為のしすぎだ」

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有料部分を時々追加、更新します、円盤特典みたいなものと思ってください。

壁にかけてあったアイドルの女の子が突然にミニチュアサイズの女の子に実体化 軽いエッチあり、重たい性描写あり、身体のムフフな場所に寄生する異…

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まだまだ更新中ですが頑張ってみます。

新米淫魔ハルサメと熟練悪なナッツの愛とえろすの物語 20才以上推奨ですが、、特に、、、、過剰な期待はしないでください(笑)

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