下界Part7

下界Part7

毎回とは限りませんが今作はエログロ描写や官能描写を多大に含みますので20才未満の閲覧はご遠慮してくださいね♪
なお現実と烈しく乖離した描写がめちゃくちゃ多数ありますことをお断りしておきます

あたしはようやっと運転席から解放された。
あたしが必死こいてこの運転しにくいオーバーキャブのミニバスを長時間運転している間に色々あったみたいだった。
あたしは誰が誰とくっ付いてイチャイチャシコシコバッコンバッコンしようが関係ないと思っている。
しかし今朝、早朝の一件から花奈ちゃん、こと夏乃花奈(なつの かな)12才は銀ちゃん、こと冬河銀(とうか ぎん)12才のふたりの仲ははキャンプ場からの失踪事件をきっかけに急接近しつつあった。
しかし面白くないのは実は以前から花奈ちゃんを思い続けていた香織さん、こと春香織(はる かおり)13才中学2年生だろう。
しかも厄介なことに花奈ちゃんは香織が好きな相手は絶対に銀ちゃんだと思い込んでいることだ。
さらにめんどくさい事に銀ちゃんが本気で好きなのは香織さんの方で自分はつまみ食いの対象か妹的な存在だと思い込んでいることだ。
まあ何故、妹的な存在がつまみ食い的な対象になると言う発想に辿り着くかは想像の範囲内でしか言えないけれど18禁のアダルトゲームをやり込みすぎではないかと思う。
彼女らはベンチシートの後ろの方、左側に銀ちゃんが、右側に香織さんと花奈ちゃんが並んで座っているがこれほどわかりやすい構図でも気がつかないのが花奈ちゃんのにぶい点であり可愛いところなんだが普通なら恋敵同士が並んで座るなんてあり得ないと思う。
まあ銀ちゃんも大いに勘違いしていて両手に花気分でいるお馬鹿さんな可能性は否定できないんだけど。
花奈ちゃんの身長は156cm、華奢な体つきで自称Cカップだけど実は脱いだらすごいかもしれない。
栗色の方まで伸ばした少し外に跳ねた髪が特徴。
香織さんは身長165cmでFカップ、ストレートの黒髪を胸あたりまで伸ばしている。
他の部分も成長が良いせいもあり20代近くに見られることが多い。
そして銀ちゃん、身長は156cmと控えめだが胸の大きさが体調次第でEカップからHカップくらいまで大きく変化をする。
黒目がちな目もバッチリしていてなかなかの美少女だけど彼女は股間にAV男優並みにデカいモノを隠し持っている。
それがちゃんと機能しているかどうかは不明だが彼のそのご立派なモノの後ろには金〇がない。
その代わりに女の子自身とも言える穴があるがそこに入れたものは指だろうが立派なモノだろうがそこからそれにつながっている全体が吸い込まれてどこに飛ばされるかわからない。
なお、自分の指を入れて自分自身を転送したこともある。
その穴もそうだが金〇がないことから本来の目的を果たすかどうか不明だったが今朝早く花奈ちゃんに軽く握られただけで勢いよく射精してしまったと聞くと案外使えるシロモノかもしれない。

左側スライドドアのすぐ後ろに並んで肩を寄せ合っていちゃついている『バカップル』は向かって左から月海さん、こと水無月海(みずな つきみ)14才中学2年生だ。
身長も168cmありDカップということもあり20代に見られることが多い。
ちなみにこのシビリアンに乗車している8人の内中学2年生なのは彼女、月海さんと香織さんだけだ。
他は全て中学1年生であり6人のうちのふたりに関してはそれさえも怪しいときている。
ちなみに月海さんと肩を寄せ合っているのは観萌ちゃん、こと佐原観萌(さわら みもえ)13才だ。
彼女に関しては謎も多くて身長が173cm以上もある上に毎日細かく手入れをしないと再減なく伸びるらしい茶髪のストレートヘアやや緑がかった大きな瞳が特徴だ。
ハーフのようだが真実は不明、胸はDカップと成長も良いのでやはり20代にしか見られていない。
それと頭の回転がすごく速いらしい。
ここまでで何人紹介したっけ?ごめん5人だったね?
運転席で運転しているのがこの中で一応1番年上という設定になっているはずの葉類亜希、いつもみんなに大抵『亜希』『亜希』と呼び捨てにされている。
一応19才と言うことで警察手帳では刑事扱いとなっているが明らかに偽装で運転免許さえ偽装の奴しか持っていない。
しかも見た目はどう見てもランドセルを背負っているのが似合いそうな背の低さだ。
一応自称は137cmということになってはいるがBカップという残念な人だ。
髪はストレートの黒髪を現在はお腹あたりまで伸ばしている。
一応は美少女の部類に入るが童顔過ぎて美幼女扱いされることが多い。
そしてその左隣の助手席には月輪ちゃん、こと文月輪(ふみ つきわ)
が座っている彼女は見た目こそは132cm足らずだが知能は意外と高い。
しかし胸は残念なAカップ、それよりも特徴的なのは金髮の爆発ヘア、天然パーマだそうだがかなり縮れている。
もしも警察が犯行現場の遺留品として見つけたら頭髪としてではなくて陰毛として処理されかねないレベル。

そして最後になったが助手席のすぐ後ろの単座席に座るあたし、椎ちゃん、こと可奈野椎(かなの つち)12才だが誕生日が3月の30日なためにそれまでは13才になれない哀れなやつと思ってもらえれば幸いだ。
因みにあたしには身長や体重、スリーサイズ、胸のカップの大きさや顔の容姿は意味を持たない。
何故なら自分の好きなようにいくらでも改ざん、じゃない変化させられるからだ。
ただし月ものが始まる少し前、排卵の3日前から2日後までこの能力は使えんくなる。
その時は身長は123cm以下、髪はショートカット、体型も幼女そのものとなる。
念のために言っておくがあたしの名前を逆さ読みしてはいけない、もしもそんな不届きな読者がいたら片っ端から無限夢精地獄に送るから覚悟するが良い。

まあ冗談はともかくとして大浪池ふもとから亜希の運転に変わったわけだが運転がとても荒い。
一体どこで覚えたのかと聞いたら『リッ〇〇ーサー』と答えが返ってきて妙に納得してしまった。
いや、『グラ〇〇フ〇〇ート』とか言い出さなくてよかったよ、マヂで、と思った。
あ、でもそう言えば一宮インター付近のラブホでパガーニ・ゾンダを強奪したバカップルがいたことを思い出してしまった。
しかもそいつと名神高速を300Km/h近い速度で違法改造を施した偽クラウンパトカーで追い抜いた偽刑事がいた事も。

「今日でやっとあの忌々しい加世から解放されるのよね」
月海さんが言った。
まあ彼女はこの中では1番酷い目には遭わされてはいない部類だろうな。
とはいえ救出した少年にコマンドを打ち込まれて一宮インターのラブホに向かわされてそこで謎の軍隊の弾丸、ロケット弾などによる手厚い歓迎を受けている。
そもそも今考えたらその少年自体が怪しい存在だと言えた。
自分でホームから快速特急電車の前に飛び込むように首筋にコマンドを打ち込まれていたらしいが出来過ぎた話ではある、しかもズボンのポケットには小型の爆弾。
電車内で爆発させる気だったのだろうか?
そうは思えない。

それを言うならば観萌ちゃんだって行動がおかしなところはある。
彼女は学校をサボりトイレで着替えた後で見知らぬおばあちゃんのシニアカーを押すのを手伝い感謝されたらしい。
もしもこの時にそのおばあちゃんの手の甲に何らかのコマンドを打ち込まれていたとしたら?
少年を助けたのは彼女自身の演算による判断だったのか?
それとも加世に仕組まれたものなのか?
微妙なところじないのかな?

考え事をしていると花奈ちゃんがさっきコンビニで買ったばかりの缶コーヒーとサンドイッチをあたしに笑顔で渡してくれた。
正直なところ今日の夕ご飯はこれだけ?と思った。
言っちゃなんだが彼女は独特なフェロモンを体のあちらこちらから放出している。
男性に対してはどうかはわからないが女性に対して劣情を妙に刺激する匂いだった。
彼女自身は自覚はないのだろうけれどよく汚れやすい下着とか脇の下辺りからその匂いが強く出ていることを考えるとおりものや汗などに含まれている可能性が高い。
事実あたしも彼女に接近された時に思わず抱き寄せたい衝動に駆られるくらいだ。
しかし彼女の本来の能力は物質の質量をエネルギーに変換する能力と予知夢という事だ。
ではそのフェロモンは彼女自身が最初から持っていた能力なのだろうか?

次に花奈ちゃんは月海さんと観萌ちゃんに同じものを渡した。
実は最近、彼女のその匂いがどう周りの人たちに影響を与えるのか興味を持って観察をしている。
結果は月海さんと観萌ちゃんはさっきよりもより一層イチャイチャとくっつき合うようになってしまっていた。

考え事をしていたから気が付かなかったが順番から言ったら缶コーヒーとサンドイッチを手渡すのは亜希と月輪ちゃんが最初だろう、しかし亜希は運転中で手を離せないはず。
そうなると自然に月輪ちゃんにふたり分のそれを手渡したことになるよね。
案の定、月輪ちゃんは助手席から立ち上がって運転中の亜希にサンドイッチを一口ずつ食べさせてやっていた。
何を話しているのか聞き耳を立ててみたけれどどうやら次の休憩場所を話し合っているようだ。
「この辺に手頃なラブホとかない?」
月輪ちゃんが真面目に言った時、あたしは思わず口にしていたコーヒーを吹き出してしまった。
それを亜希と月輪ちゃんに冷ややかな目で見られた。
亜希は月輪ちゃんに渡された缶コーヒーを一口飲むと言った。
「さっきから花奈ちゃんのにおいが与える影響を気にしているみたいだけどあまり考え過ぎない方がいいよ?」
「そーだよね、わたしと亜希が仲がいいのは前からだし月海さんと観萌ちゃんがイチャイチャなのは今始まった事じゃないしぃ」
あたしが考えていたことはお見通しだと言わんばかりだった。
「でも本当は椎ちゃんが気になっているのは今現在の加世の状況じゃないの?」
亜希はあまりにも単刀直入に訊いてきた。
「それは気にならないと言えば嘘になるけど」
あたしはあやふやに答えた。
確かにあの一方的な通話以来、彼女からのスマホへの一斉通信も入っては来ない。
まあ車載ナビゲーションが加世の暴言でブチギレた3人、花奈ちゃん、香織さん、銀さんが投げた未開封の飲料缶によって破壊されたわけだが。
そう言いながらあたしはルームミラーに写っている3人が気になっていた。
このシビリアンのルームミラーは純正品のそれに被せて使うワイドタイプで室内後方の大半を見渡せた。
1人はもちろんさっき言った花奈ちゃんだが後のふたり、銀ちゃんと香織さんは特に気になっていた。
銀ちゃんは花奈ちゃんしか見ていなかったし、香織さんは花奈ちゃんしか見ていなかった。
どちらも対抗するかのようにウエストから先がふわっとひろがったフリルの多い暖色系のスカートを履いている。
正確には銀ちゃんは濃いピンク、膝下まであるスカート。
香織さんはは明るい肌色のミニスカート、気をつけないとパンツが見えそうだ。
しかし上は対照的で銀ちゃんは白い少し厚手の白い短めの長袖のポロシャツ、スカートでとめられるはずもなくキュッと締まったウエストの縦長キュートなおへそがチラッと彼女が動くたびに御姿をだす。
寒くはないのだろうか?
対して香織さんはスカートと同色の長袖のウエットシャツを着ている。
左右向かい合わせにちょうど胸のトップあたりに来るように手のひらサイズの2羽の白うさぎワッペンが縫い込まれていた。
何を喋っているかまでは聴こえないがやはり香織さんが銀ちゃんをときおり鋭い視線で睨みつけているのは気のせいなんかじゃないと思う。
あの格好でどうして銀ちゃんは股間のご立派様が目立たないのか気になる。
普通なら腰から下、太ももにかかるほど長い服を着た方がご立派様を隠せるんじゃないか?って思う。
「隠すんじゃなくてあえてウエストに視線を誘導しているって思いますけどね」
と助手席に戻った月輪ちゃん。
あなたは他人の心が読めるのですか?
と聞きたい。
「椎ちゃんはすぐに顔に出るから分かり易いんよ」
とからかうように亜希。
「あたしには3人の関係がどうにも理解できないんですよね」
あたしは思わず2人に呟いてしまった。
大体が花奈ちゃん自身が自分の出しているフェロモンに無自覚過ぎる。
香織さんと銀ちゃんがなぜ喫茶店で戦いを始めたのか理解できていないかもしれない。
花奈ちゃんは一体どちらが好きなんだろうか?
「可奈ちゃんにとっては銀ちゃんはやんちゃで可愛いおとこの娘、香織さんは尊敬しているお姉さんと言うことかなぁ」
信号待ちで退屈な気分になったのか亜希があたしの方を振り返って言った。
「そんなものかなあ」とあたしは軽く受け返した。
ルームミラーを覗くと月海さんと観萌ちゃんは相変わらずイチャイチャしていた。
観萌ちゃんと月海さんはベンチシートの上に向かい合うようにして腰掛けて熱い抱擁をしてディープキスを交わしている。
互いにシート背もたれ側の手を相手のスカートの中に潜り込ませてふたりの口はせわしなく喘ぎ声を漏らしていた。
そして花奈ちゃん達3人をみると花奈ちゃんと香織さんはふたりの銀ちゃんに犯されていた。え“!
「ねえ、この信号機赤になってからどれくらい経つ?」
あたしは何気なく訊いていた。
花奈ちゃんも香織さんもベンチシートの上に横倒しにされて片足を床に落とされていた。
その状態で2人ともスカートをめくり上げられて馬乗りになった銀ちゃんにあのデカいモノをパンツをずらされて奥まで入れられ身体ごと揺り動かされていた。
「どうして?」
月輪ちゃんが顔の向きを変えずに言った。
「身動き取れる?」
亜希に言われたがそんなはずはないと思った。
言葉での会話は取れているし手や足だって・・・。
いや、本当にまったく動かせなかった。
首さえも回らないとはこの事か?
「かなりやばいね、でもどうして銀ちゃんがふたり?」
亜希がゆっくりと喋っている間も信号機は赤のままだった。
果たしてこれは花奈自身が望んだことなのか?
加世に操られててのことなのか?
わからなかった。
ただひとつわかったのは実際に銀ちゃんに犯されているのはおそらく花奈ちゃんか香織さんのどちらかひとりかもということだ。
「どちらの銀ちゃんがモノホンって思っちゃいますか?」
月輪ちゃんが訊いてきた。
香織さんも花奈ちゃんも首を激しく横に振って呼吸を大きく乱していた。
「透視の結果は?」
亜希は月輪ちゃんに訊いた。
「どちらもたった今、中に出されている、どっちも本物の銀ちゃん、だけど、どうして?」
「私もわからない、さっきから頭痛が激しくて」
と亜希。
月輪ちゃんだけでなく亜希でさえ混乱し始めているように感じられた。
「月輪ちゃんさっきの透視したイメージをあたしにも共有させて」
あたしは叫んでいた。
急がないと花奈の能力が暴発して本当の男の龍を目覚めさせてしまう。
あたしの直感だと加世の本当の目的は花奈ちゃんの嫉妬心を煽って何かの質量をエネルギー化させること、となると花奈ちゃんを犯しているのが本物の銀ちゃんだと満足感を与えるだけ。
仮に香織さんが嫉妬に狂ったとしても時間操作能力で擬似的に時間を止められてその間にこの車の中の全員とここの周辺の住民達が数十人惨殺されるだけ。
でももしも花奈ちゃんから見た香織さんを抱いている男が本物の銀ちゃんで自分を犯しているのも同じ銀ちゃんで、香織さんに対する丁寧な扱いとは真逆に自分に対する扱いが乱暴だと知ったら?
それどころか赤の他人に陵辱を働かせておいてそれを見てニヤニヤ笑うような下劣なやつだと思い知らされて絶望してこの世を呪ったら?

「確証は持てるの?」
と亜希。
「もちろん」
とあたし。
「だってこの中の誰よりも加世との付き合いが長いのはあたしだから!」
あたしは立ち上がり席を離れると車内後部に歩き出して花奈ちゃんに馬乗りになっていた男の両手首を掴んだ。
「加世、下手な猿芝居はやめなさい」
そう言ってあたしはその男、いや加世が化けていた男を花奈ちゃんから引き剥がして立ち上がらせると後ろから腰より少し上に抱きつきジャーマンスープレックスをしかけてとどめに肘鉄を乳房の谷間に喰らわせてダウンさせた。
後頭部から血が流れていて、肋骨も何本か折れて肺に突き刺さっているかもだけどこの程度じゃ、加世は死なないだろう。
案の定、銀ちゃんは香織さんにほとんど手を出してはいなかった。
全員が動けるようになりただひとり、花奈ちゃんだけが泣いていた。
いや正しくはもうひとり泣いているかもしれない、心の中で、だけど。
「よく我慢したね、あたしの尊敬する先輩を守ってくれてありがとう、そしてあたしの親友を裏切らないでくれて感謝だよ」
あたしはねぎらいと感謝の言葉を銀ちゃんにかけた。
後ろから激しくクラクションを鳴らされた。
いつの間にか歩行者信号信号機の青は点滅し始めていた。
亜希は慌ててシビリアンを発車させた。
「加世は?」
月輪ちゃんがあたしに訊いてきた。
「逃げられちゃったみたい」
お手上げポーズをしてあたし。

ーーーーーーーーーーーーーー

適当なスーパーの駐車場片隅に亜希が車を停めるとあたしは全員に頭を下げて謝った。
あたしが最初に今日、夕食を配る時に花奈のフェロモンを嗅いだ時、その違和感に気がつくべきだったんだ。
「みんなに缶コーヒーとサンドイッチを配ったのは確かに花奈ちゃんだった?」
あたしはみんなに問いかけた。
驚いたことに配ったはずの花奈自身も「わからない」と答えた。
「銀ちゃんはどうしてふたりを襲ったの?」
残酷とは思いつつあえて現実と乖離した質問を銀ちゃんに投げかけた。
「私は、私は、わからない、ここで選択を迫られた気がする」
銀ちゃんはそう言うと続けた。
「私がふたりいて香織さんを、もうひとりが花奈ちゃんと無性に交じり合いたくなって、気がついたらふたりともに手を出していた気がする」
「それじゃ結局は香織さんとやっちゃたんじゃないの?」
と月海さん。
「月海さんと観萌ちゃんには花奈ちゃんと香織さんが何をされているか見えていた?」
念のために訊いて見た。
ふたりは顔を見合わせ、声をそろえて言った。
「ふたりとも片足をベンチシートから下ろして眠っているようにしか見えなかったですよ」
「じゃあその時に、銀ちゃんは何をしていましたか?」
「いたっけ?」
「ますますわからんくなった」
亜希がグチをこぼした。
人によって見ているものがまったく違っていたようだ。
あたしと月輪ちゃんと亜希は直接彼女達を見ていない。
少なくともその3人だけはルームミラー越しにしか見ていないはずだった。
「もう一度確認します、月輪ちゃんは本当にルームミラー越しに透視ができますか?」
「そりゃ光をトレースすれば」
「ではこのルームミラーが透視を考慮して作られた映像を映すディスプレイだとしたら?二重、三重に映像を重ねて」
そう言いかけた時に観萌ちゃんが運転席の方まで歩み寄ってきて後付けのワイドミラー部分を外してそのガラス面じゃない方を月輪ちゃんに見せて言った。
「こっちから見たらどう見えるかしら?」
観萌ちゃんの問いに月輪ちゃんは『あっ』っと小さく叫んだ。
「四重に重ねられた透過性ディスプレイ、それと4眼カメラ、しかもその裏側には透視を感知するセンサーと透視を遮る板とぎっしり詰まった集積回路がぎっしりとつまった基盤」
「そう、身動きが取れたら簡単に見抜けちゃうカラクリ、しかしもうひとつ」
そう言いかけた時亜希が大声で叫んでいた。
「これって幼女拉致事件の時に私が試作協力した覗き双眼鏡の丸パクリじゃん!」
そんなこと言われてもあたしらにはさっぱりわからない。
亜希曰く『私は誰3』を読め、と言うことらしいがますますわからんし。
「ああ、ここに智慧警部がいたらこう言うだろうな」
亜希はそう言うと急に声色をババァ声を真似て言った。
「アタイの推理はこうだ!あたしらはサンドイッチに仕込まれた強力な媚薬でエロエロモードに入らされて思考回路を奪われた。そしてあらかじめ仕込んであったコマンドを起動してバカップルはイチャイチャモードに入って、アタイらも加世の指示通りにしか動けなくした」
そしてさらに続けた。
「花奈と香織の目にはコンタクトレンズ型のディスプレイがはまっているはず、もしかしたら彼女たちの足元には大人のおもちゃが」
そう言われてふたりは目を探ると違和感を感じたらしくなにかが入っている事に気づいた。
これでふたりは、いや5人はリアルな仮想映像を観せられていたことになる、
では何故あたしたち3人にはコンタクトレンズ型のディスプレイではなくルームミラー越しにしたのか?
と言う疑問が残るが?
「そりゃ、私がそれの装着経験者だからでしょ」
とあっさり亜希は言った。
では他のふたり、あたしと月輪ちゃんは?
「あのね、あんなに小さなコンタクトレンズ型のじゃ透視能力に対応できないし、何よりも椎、君にリアルな現実と受け入れさせる必要があったんじゃないのかな?」
亜希はそう言うと床に落ちていたかなりリアルな形状の先から根元まで血がべっとりとついた電動式の大人のおもちゃを拾い上げた。
落ちていた場所から推測するに銀ちゃんになりすましていた加世が花奈ちゃんを陵辱するのに使っていた道具でしょう。
同じものが香織さんの足元にも転がっていた。
「えーとここに少しでも医療に関する、出来たら婦人科系に関する知識のある子いる?」
亜希は訊いたが最高年齢が14才の子たちの中にそんな人などいるはずもなく、とあたしも思っていたら意外にも観萌ちゃんが手を上げた。
「私がみます」
って観萌ちゃん医療資格なんて持っていないよね!
「そんなことしていいの?」
と言ったあたしに観萌ちゃんは真面目に笑顔で答えた。
「私、マンガとかラノベとかアニメがわりに医療本を読んで育ちましたから」
『趣味は〇〇〇〇の解剖です』とか言い出したら怖いな、なんて思いながらみていたら彼女はあっという間にそこいらの薬局にもあるような薬品と道具でなんとかしてしまった。

ところで7人の現実誤認に関しては説明がついたとしても肝心の銀ちゃんに関してはどうなんだろうか?
「ちょっと苦しいかもですが長短時間の切り替えによる時間管理で2つのタスク、体験を相互に同時進行させたのでは?」
と観萌ちゃんがふたりの手当てを済ませてから言った。

「3人は?」と亜希に言われたので「ホットミルクを飲ませて落ち着かせています」と答えておいた。
すると亜希は『3人に用がある』と言ってあたしと観萌ちゃんと月海さんを呼び出した。

「月輪ちゃんにはもう言ってあるけれどこれは3人には秘密にしておきたいと思う」
亜希はそうあたしたちに切り出した。
やはり加世の目的は花奈の能力を暴走させることにあったようだ。
加世は怒りや嫉妬で暴走状態にある花奈に自分の中の一部の質量をアイシュタインの方程式によりエネルギーに変えさせるのが目的だった。
そしてどうやら加世はそのエネルギーを好きな場所に転送できるらしい。
もしもそこがまだ幼く小さなマグマ溜まりだとしてもそこに一気に数kg分の質量をエネルギー化したそれをマグマ溜まりに転送出来たら?
「そんな実験をしていると思う」
亜希は続けた。
「加世はもしかしたら日本中の火山を噴火させる気かもしれない」
そう言ってから亜希は観萌ちゃんにこっそり耳打ちをした。
「ところでついでに聞くけど、どうやってその高価そうな医療に関する本を大量に手に入れたの?」
観萌ちゃんは少し驚いた顔をしたがすぐににっこり笑って返した。
「もちろん立ち読みとかですよ?読みきれないほど分厚い本はバレないように持ち帰って読んだらこっそり戻しますけどね」
あたしは真面目だとばかり思っていた観萌ちゃんまで万引き常習犯の不良少女だった事に驚き、以降何も考えられなくなっていた。

気がつくと亜希はみんなが眠りについた頃には車を走らせてあたしは助手席と運転席の間に見覚えのある少女が立っているのに気がついていた。
いつか海辺であたしに話しかけてくれた少女は亜希に囁いた。
「最初から全部気がついていたんでしょ?」
しばらく沈黙が続いたのちに亜希は答えた。
「ん、全てというわけじゃないけど大体大筋はね」
「あの花奈って娘さんにはかなり過酷だったんじゃないの?」
また少しの間沈黙。
「うん、わかっている、でもそれでも乗り越えて成長してほしいし、今度の障壁は以前よりも遥かに険しい、でもあなたがケアをしっかりしてくれるから安心してあの娘たちをすべて、あなたに任せられる」
そう言われた少女の顔が少し赤くなったような気がした。
と同時にその少女はかき消すように消えた。
その後で亜希は『ありがとう、ゴキちゃん』
と小さく呟いた。

下界Part7 終わり
Part8 に続く。

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