淫魔刑事AKI 3

「私のこと、覚えているかな』
聞いてはみたが返事はなかった。そりゃそうだ、覚えているはずはなかろう、私が現場に着いた時は既に彼は背中に特殊ボールをぶつけられて意識を失っていたのだから。
「ねえ、君って興味深いね、体は男だけど心は女なんだってね?」
その男に直接聞いた枠じゃない、調書の確認をしただけだ。
「ねえ、黙っていたらわからないよ?直接身体に聞いてみようか?」
そういった私の首根っこは先輩に掴まれて引っ張り上げられていた。
「ストープ、また暴走する気か?」と先輩。
「しないよ?」と私。
「嘘つけ!さっき『こいつのチン皮ひん剥いてガスバーナーで焼きつくしていいか?』とか智恵に言っていたらしいじゃないか」と先輩。
いつもの調子を取り戻してきたようだ。これなら安心して犯人、この男を責め続けられるかな?と思った。
「ねえ、君は今日、女子トイレに乱入して女の子によからぬことをしたんだって?そんなことしても良いって君の頭も結構ぶっ飛んでいるよね?」
男と先輩の横に立ちなんとかミラーを見つめながら言う私、もちろん外では警部や他の刑事たちが大騒ぎしているのは丸視えだ、私になんとかミラーは通用しない。
「俺は、いや私は心が女だから女子トイレを使うのはなんの問題もないだろう、それに女同士ならセックスをしても問題がないはずだ、国も警察も俺の主張を認めるべきだ」
『はい?』、私は眉をひそめて絶句した、誰もがそんなことを言い出したらほとんどの性犯罪は成立しなくなってまうだろ。
「それに、誘い込んだのはあいつの方だ、10万円くれるならエッチしようと、だから・・・」
私は思わず男の頭のてっぺんに左手のげんこつを振り下ろしていた。
「ねえ誠さん?あなた現状に不満があるんだよね、だったら君の望み通りに身も心も女性にしてあげようか?」
私は男の耳元で息を吹きかけるようにしていった。男の体が一瞬『ピクッ』と反応したかと思うとその顔はみるみる青ざめて行く。
「今の気持ちはどうかな?気持ちいい?それともおぞましい?」
私はそう言うと続いてズボンの股間にある膨らみに触れた。瞬く間に大きく膨らんでつくが今回はあえて無視をする。
「ほーら、象さんが消えてなくなって可愛いワレメちゃんになりましたね」
そう言うと男は慌てた顔をして私の手を跳ね除けると自分の股間に触り信じられないものに触ってしまったかのような表情になった。
「次は胸ですよ、二つの膨らみがだんだんと大きくなっていきますねぇ、きゅんっと上むきに起き上がって美しいフォルムに膨らんでいきますね」
私の説明を聞きながら自分の両手で揉んでだんだん嬉しそうな表情になって行く。
「でも良いことばかりじゃありませんよ?、腕にはあまり筋肉はつきませーん、皮下脂肪たっぷりです、でもこれって男の人が腕づくで女の子を捕獲して強制性交するためのものなんですよ、大切なことだから覚えておいてね」
後ろで「嘘つけ」と先輩が言っているような気がした。
「あらあら、お赤飯の日が来ましたね、と言っても体が男だった人にはわからないだろうけどおめでとうございます、ワレメちゃんから濃い紅色の液体がドボドボ流れ出していますね、下腹部も痛くなって来ました、貧血で目眩までしてくるようになって来ましたねぇ」

さあこれからが自称君にとっての地獄ですよ覚悟無き者はこの場を去れです、私の十代はこれのせいで暗黒時代でしたからね。

「肌というか皮膚がやたらと敏感になります、ちょっとした肌に触れるものでも体が反応してしまい夜も思う等に眠れません絶賛睡眠障害中です」

私は様々なことに敏感すぎて眠れない夜が多かった、父や母はそんな私を気遣ってかあちらこちらに連れ回そうとしてくれたが正直言って迷惑だった、女友達はいるにはいたができれば深く関わりたくない、どうしても女ばかりの集まりになるとそこにいない女子、同級生の悪口、誹謗になってしまう。もしもその場に自分がいなかった時に自分が悪く言われているような気がしてきて、というかむしろ男子と話している方が気が楽だった。
でもある日、そんな男子に触れられることで下半身を反応させてしまう自分の身体に嫌気を感じ始めていた。

「こいつの中で亜希の声はどう響いているんだ?」と先輩。
『悪夢を見ている感じ?』だろうか、自称君は目をひん剥いたまま気絶をしている。

1回目は天国、でも生理ってやつ破壊を重ねれば重ねるほど重くなる傾向がある、たまに軽くなるけど・・・毎回の終わりが近づく頃、塊が落ちてくるときこそがさあ大変、まさにプチ出産、思わず吐き気を催すほどの嫌悪感、他人を嫌悪するのとわけが違う、自分自身の身体に対する激しい嫌悪」

ひと月、じゃない128日のうち重い人だと7~10日くらいの生理期間だけでなくて前後の鬱期も含めると元気に動けるのは二週間のみ。
私は友達がほとんどいなかったので自分が重い方だったのか、それとも軽い方だったのかなんてわからない、ただいつもそれが1日でも早く終わってくれることだけを祈っていた、最も現実は日に増して症状が重くなっていくのだけど『生理は病気じゃない』とか『甘えずに動け』という一言で片付けようとする大人や男たちには恨みしかなかった。結果私は男友達からも遠ざかるようになっていた、ただそれは自分が不器用なだけだったのが原因なのかもしれないけど。

「免疫低下、腰回りの感度ましましで睡眠不足は更に続く、時々男子に生まれていたらどんなに良かっただろうかって思ったものです、あっ君は心は女子だったね!ならばなんでもないよね、だって女子なら普通に体験していることだもん」

私は一人で過ごす時間が多くなり音楽や絵画で心を癒すことが多くなった。しかしある日、私は衝撃的な絵を観ることとなった。それは絵画や写真の類ではない、地球の断面図、核(コア)を中心としてその周りを分厚いドロドロとした熱で対流ているマントルが包みそのさらに外周をものすごく薄っぺらなプレートが包んでいた。プレートは常に滞留するマントル、自分の身体、特に生殖器に翻弄される自分自身のような気がしていた。地球という生き物がまるで私自身なようなきがして愛おしく感じ始めた。気がつくといつの間にか私は地学という学問にのめり込んでいた。

「さああなたは頭のおかしな男に目をつけられてしまいました毎日付け回されてしまいます、ある日、人気のない暗闇で捕獲されてしまいました、叫んでも誰も来てくれません、着ているものを乱雑に引き裂かれ脱ぎ剥がされて前戯もなくいきなり(男根)を突っ込まれます、こんなの気持ちいいはずがありません、激しく痛いです」

事実私自身も駅からの帰り道に見知らぬ男に襲われて性的暴行を受けそうになったことがある、でもその時はすでに男が取りそうな行動パターンは研究し尽くしていたのでカバンに隠し持ったスズメバチ退治用のスプレー(810m先まで狙い撃ち出来る奴)や強力なLEDライト、自動車用の発炎筒などで撃退したからことなきを得たがなぜか警官はもとより父や母からも『それはやりすぎだ』と怒られたものだ、もしも私が〇〇先生というドラマのエピソードのように数人にレイプされて雨の中を放置されて野垂れ死したとてしても父は犯人を探し出して敵討ちにそいつを564てくれるのだろうか?

「もちろん抵抗する間も無く男は膣内射精してしまいます。自分を守れなかったという後悔から目から大量の涙が溢れます、男はこれを美しい涙と勘違いするようですが決して美しくなんかありません。自分自身を守れなかった後悔と罪悪感による涙です」

これは自分が襲われたひと月ほど前によく見た悪夢だ、今思い出してもリアルな悪夢で大粒の涙を流しながら目が覚めた時に下り物が白い色が混じった真っ赤な血に見えたこともあった。それを機に私はストーカー対策を自分で行うようにしだした。

「某ドラマだと集団でこれをやられて終わった後雨の中を放置されて遺体で発見されます、そんな最悪のパターンでなくてもしばらくは入院を強いられます、単なる海綿体と内蔵内膜が激しく擦れ合った時にどちらが大きな損傷を受けるだろうか?」

地学を学ぶようになってからの私は自分自身の体を冷静に見つめられるようになってきたような気がする、女性としての嫌な面や不完全な部分も含めて少しずつ受け入れられるようにはなってきていた。

「更に心身ともに傷つけられた女性を妊娠の可能性の恐怖が襲います、もちろん望んでいない妊娠です、すぐに見つかれば堕胎できる可能性もありますが誰にも相談出来ないと無作為に時間を潰して法律上それさえも出来なくなってしまいます、なぜならこの国日本では加害男性よりも被害女性の方が厳しく糾弾される可能性が高いです、『なぜあんな暗闇をたったの一人で歩いたのか⁈』とか『そんな肌が露出した服を着て男を誘惑したお前が悪い⁈』とか『本当は金銭の取引がありきの双方合意だったんじゃないのか』と疑われたり」

もし私があの時完全防御をしていなければどうなったかなんて考えるのは未だ持って恐ろしい、だけど地学は理屈詰で女子の身体の長所短所、そして防御方を考える機会を与えてくれた気がする。

「女性には子宮内膜症をはじめとする体の中奥深くでの細菌やウイルスによる感染症がやたらと多い、一回に一発程度ならまだしも数発入れられたり多人数から注入されると子宮内などに雑菌が繁殖するのを防ぐのに必要な酸性値が保てなくなり様々な感染症を起こしやすくなる」

今この男の頭の中ではとんでもなくバッドエンドなシミュレーションが繰り返し繰り返し行われているはずだった、それは男としての自分自身が起こした行動の結果として。


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