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”博物館学芸員”という資格、だけを取得したハナシ

こんにちは、はくれぽ!です。

このnoteを始めて1年と7ヶ月ほどが経ちました。
その間に某大学にて博物館学芸員の履修を行いました。そして、2024年9月をもって取得となりました(+芸術学士)。

”博物館学芸員”

博物館や美術館に行くことはあってもその実態は謎に包まれています。
というか、その存在自体どれくらい知られているのかもよく分かりません。

京都国立近代美術館 2022年 第5回コレクション展より《不思議》

私自身は子供の頃から特別に芸術が好きだとか興味があったとかではなく、正直、学芸員のことはまったく無知なままに大人になりました。

博物館学芸員の履修を始める前、芸術系の大学に籍を置いていたこと、また展覧会にも定期的に行ったりしていたこともあり、学芸員がなにをやっているのか知りたいという興味のもと、履修を始めることにしました。
7割は興味本位、残りは学芸員のことが分かれば博物館や展覧会を別の視点から見ることができるのでは、というのが本音です(先生方には申し訳ありませんが‥)。

それで、どうだったか?

結論から言うと「学芸員、やること多すぎない?」というのが正直な感想です。


では、謎多き博物館学芸員課程ではなにを学んだのでしょうか?

履修中の心身状態を具現化するとだいたいこんな感じ(「
すべては未知の世界 GUTAI 分化と統合」大阪中之島美術館 向井修二《記号化されたトイレ》2022 | 大阪中之島美術館5F 男女トイレ 本展のためのインスタレーションより)


博物館学芸員の履修科目は以下の通り。

博物館学概論
博物館経営論
博物館資料論
博物館資料保存論
博物館情報・メディア論
博物館展示論
博物館教育論
博物館生涯学習論
博物館実習

初めはこれくらいはあるだろうなーくらいに考えていましたが、概論のテキストを読み進めていく時点で、いやこれは内容が濃すぎる!と早くも挫折しそうになりました。でも履修登録したからしかたない(言い方)。

多すぎるので細かな内容には触れませんが、展示や教育はともかく、例えば経営論など「え、博物館の経営のことまで考えないといけないの?」と思いました。資料保存論に至っては「こんなのもうサイエンスの領域やん…」と思うこともしばしば。

科学と芸術はかつて兄弟だったとかそうじゃなかったとか(京都市学校歴史博物館 常設展示 かの島津製作所創業者の島津源蔵が開発した「真空ポンプ」)


しかし「博物館の定義」を読むと、そこにはすべてが書かれていることがわかります。

以下の定義は、代表的な「ICOM(アイコム*・国際博物館会議)」「UNESCO(ユネスコ・国際連合教育科学文化機関)」のものです。
*ICOMの読み方についてはフランス語の「イコム」と習ったのですが、現在では英語読みの「アイコム」になっているようです。

本勧告の趣旨にかんがみ、「博物館」とは、各種方法により、文化価値を有する一群の物品ならびに標本を維持・研究かつ拡充すること、特にこれらを大衆の娯楽と教育のために展示することを目的とし、全般的利益のために管理される恒久施設、即ち、美術的、歴史的、科学的及び工芸的収集、植物園、動物園ならびに水族館を意味するものとする。

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)1960年12月4日 第11回ユネスコ総会採択

博物館は、有形及び無形の遺産を研究、収集、保存、 解釈、展示する、社会のための非営利の常設機関であ る。博物館は一般に公開され、誰もが利用でき、包摂 的であって、多様性と持続可能性を育む。倫理的かつ 専門性をもってコミュニケーションを図り、コミュニ ティの参加とともに博物館は活動し、教育、愉しみ、
省察と知識共有のための様々な経験を提供
する。

国際博物館会議(ICOM(イコム))2022年8月に新たな定義案が採決


上記の太字部分をまとめると「資料を集めて維持して研究して広めて大衆の娯楽や教育に活用しようね!」みたいなことでしょうか。近年ではコミュニケーションとかコミュニティなど地域的な活動にも関わってね、みたいな文言も含まれているようです。博物館自体に求められることが多いですね(ICOMの定義は履修中に新しくなった)。

以上のようなことは、経営・資料・資料保存・情報メディア・教育・生涯学習・展示の意味を知らないとできないよね!ということなのでした。
それを博物館学芸員はやっている、と(もちろ博物館は学芸員以外の多くの人々によって支えられている。また、海外での学芸員の事情は違うようです)。

学芸員さんが展示だけやっていると思っているそこのアナタ(私です)。
それぞれの博物館の方針にもよると思うので細分化しているかも知れませんが、実はそういうことです。

その展示にしても、典雅な作品を優雅な手つきで壁に飾ってるわけでもなく。
展示室のサイズとかレイアウトとか、作品の順番だとか、見せ方だとか、作品解説だとか、ライティングだとか、作品の扱いだとか… etc.etc.…もーそれはやることがいっぱい。

日本美術は特に繊細すぎて神経が擦り減る。(中之島香雪美術館 「修理のあとにエトセトラ」より)


展覧会に行くと疲れるといった話も聞いたりしますが、それはなにも混雑していてということではなく(もちろん展覧会によってはある)、そこに込められた情報量が半端ないからなのでは、と思いました。

作品にもよりますが、展覧会をぼーっと見ていると具体派の作品を見た時の「なにか見た。」のような感覚になってあまり覚えていないことが多いのですが、あらゆる情報を意識してしまうと、どうしても文字情報の方に意識がいってしまったりして、その辺は難しいところだなぁと感じます。

感覚的にみるか?
論理的にみるか?

「すべては未知の世界 GUTAI 分化と統合」大阪中之島美術館 村上三郎《作品》1959年


さて、そんなこんなで博物館学芸員の資格を取得したわけですが、どんな資格でもそうであるように取っただけで使えるものではありません。この資格は学芸員という仕事をするための基礎知識であって、その道の分野の専門的知識があってこそ活かされるというものでしょう。

また、履修中には現場の学芸員さんのリアルな声などを知ることとなりちょっとビビったりしました(なぜかネガティブ発言が多め…←「なぜか」の部分も履修科目をやってるうちに、なんとなく想像がつくように…。大きな意味での、近いところでのトピックでは科博のクラファンとか東博の国宝修理のナンダカンダ‥とかもありましたね)。

私自身は、なんの専門性も持ち合わせていないので、相当頑張らないと実際に働くことは難しいとは思いますが、目的はそこではなかったので(先生方には申し訳ありませんが‥(2回目))、学べたことは博物館を歴史的・社会的な側面から見るという点からも、とても良かったと思っています。また、意外と普通の会社員の仕事に通じるものがあったのは発見でした。
これからは学んだことを活かしながら、ライラワークとして博物館の活動をみていきたいと思っています。

以上、博物館学芸員という資格を取っただけのハナシでした。
最後までお読みいただきありがとうございました。

東京国立博物館 の「博物館に初もうで」に一時期通っていた頃の。多分、2016年頃の《埴輪 踊る人々》



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