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【銃】中村文則の衝撃デビュー作!もし偶然銃を手に入れたら?


もし拳銃を手に入れたら、あなたはどうしますか?

主人公(西川)スペック
・大学生男
・たぶんイケメン
・勉強もできる
・女に困らない
・児童養護施設から一般家庭に
・引き取られた家庭は温かかった

普通の感覚の人にはたぶん共感できない小説だし、メンタル状態が悪い人にはおすすめできない。
ただ脳に強い刺激を受けたり、自分の内に潜む「悪」の感覚を炙り出したりと、いつもと違う非日常性を求めている人には合っていると思う。


主人公の西川は偶然、頭を銃で撃ち抜かれた死体を見つける。その傍らに落ちていた銃を拾って帰る。

激しい歓喜と高揚感、そして万能感。
破壊的な行為を想像する強い刺激。
手に入れることによって自分を含め、他人の生死も支配できることに心奪われていく様が生々しく一人称で綴られていく。


この主人公は、外向きには全く変な奴でもないし、なんならモテるし、友達もいるところが怖い。
手に入れてからというもの魅了され続けている「銃」の存在で、頭めちゃくちゃクレイジー状態なのだが、本人は外向きには割と自分をコントロールしているので、周りにも察知されない。


拳銃に詰められた銃弾は四発分。
この四発をどんな風に使うのかとても気になって読み続けた。


一発目、二発目は私の想定内。
三発目以降は予想外でした。
これネタバレすると全然面白くないからここまでにしておく。


全体の三分の二ぐらいから展開していくので、前半は特に我慢も必要だ。

この本では、偶然拾った銃に狂わされていく男を描いているのだけれど、銃という設定だからあり得ない気がするだけで、銃の代わりに異性だったり、巨額のお金だったりすると途端に身近な気がするので、そっち視点から読むのもいいかもしれない。

最後に、中村文則さんの文体はデビュー作ということで粗削りだけれど、主人公が若いので、逆にリアルな描写ができているようにも感じた。
全然ストーリーは違うけれど、遠野遥の「破壊」(芥川賞受賞作)のような無機質さや異常さに通ずるものがある。

映画化もされています



ここから下、超個人的感想


銃を見つけたら持って帰るか?と聞かれたら、私は持って帰るかもしれない。
警察には届けない。
それはたぶん自分のこめかみに当てることにしか使わない。
どうしても殺したい人もいないし。

時々、自分がいつまで生きているのだろうと不安になる。
いつ死ぬのかは全然気にならないのに…

自分の終わりを自分で決められないということだけが私を不安にする。
恐らく「持っている」ことだけでかなり満足するし、引き金を引くまでは時間がかかると思う。
たぶん森の中で試し撃ちとかしてみるだろうな(想定内の行動)


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