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空いろ横丁―沼津駅

 沼津駅には先刻紹介した地下通路が東京方にある他,名古屋方には跨線橋があり3本のホームを繋ぐとともに駅ビル2階に直接入る改札口が接続し,また6番線の向こうに並ぶ列車留置線を跨いで北口駅舎に接続する。この跨線橋も古めかしいものだ。古めかしいとはいうものの,その構造は古軌条を用いた鉄骨造であるから竣功は3番ホームと同様,東海道線丹那ルート開通時と思われる。また北口駅舎の設置は昭和31年のことで,鉄道駅における裏口設置ブームの申し子か。今日では駅舎を一か所に統合して置くことの出来る橋上駅が一般的であるので跨線橋のある駅自体が希少価値になった。

3番ホームから…増設された電線類
ここにも履歴がある

 至って残念ながら特に見どころというのもないようだ。
 あえて指摘するならば跨線橋にはエレベータが付設されていてバリアフリー対応になっているが,これは元々荷物移動用のテルハを改造したもの。エレベータを囲む塔屋はそのリフトであってホームから上昇させた荷物籠(手押し車)はリフトとリフトの間に渡された鋼材で線路を列車の上から跨いで荷物を駅本屋からホームに停まった荷物列車に相互に渡すのである。昭和50年代まで鉄道でも荷物輸送が行われていたので,こう言う施設が大きな駅には必ずあった。おそらく2番ホーム用の塔屋だったと思われるが緑十字の標識があって独特の存在感を示していた。比較的新しい改良のため,エレベータ塔を囲む部分の屋根は新しい鋼製屋根である。

1番ホーム名古屋方端部から
改造された屋根は陸(ろく)に近い
5番線上からホームの屋根を見る
同じ場所から駅本屋方を見る
同じ場所から北口方向
こちらの幅は増築部まで同じ

終わりに
 実はこのシリーズは前回で打ち切り,の予定でしたが「もう1階!」と相成候…今回紹介のもの一切合財が沼津駅付近連続立体交差事業で消滅するに至るが,一介の鉄道趣味者から見ると少々惜しい。折角賑やかなTVアニメーションも作って観光興しをしたのなら,最早希少価値となりつつある鉄道黄金期の印象を受け継ぐこの駅を文化遺産として残した方が市の観光政策に一役貢献するのではないかと。それに色々と問題があるとはいえ,立体交差はされていたからあえて高架事業に踏み切ることもあるまいと思うのだが…新車両基地の方を見ると横断道路の方を地下化するアンダーパスが施行されているので,水没事故で騒ぎたてた人たちは何なの? もし駅の改良が必要なら橋上駅という手段の方が簡単で安上がりである。そして浮いた事業資金を南口のアーケード街の再開発に回した方が良さそうだ。ちょうど運輸省建設省が国土交通省に一体化したばかりで,その辺の融通は出来るだろう。出来ないとしたら,何のために省庁合併をするのか?
 今未来変えて見たくなったよ…
 しかし撮り溜めた写真を見ると何かが足りないようで,詳述するには何度でも諦めずに,の精神が肝要であることを思い知らされる次第。
 それにつけてもこのような駅が消えていくのは,チトサミシイ…

前回の注!
 この項を書き上げるにあたり山梨孝雄による『国鉄沼津機関庫の百年』を参考にしました。同書には工事中の積替えホームの写真があるが背景を見ると3番ホームの新設工事写真ではないだろうか。

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