天空の蜜柑園―花坂は伊豆の国市
伊豆長岡工業団地から南西の方に高台にある集落が見えた。花坂と云。花坂と言う名はありふれた感じだが地名ではここと和歌山県伊都郡高野町だけらしい。
国道414号線を南へ行くと湯らっくす公園に着いた。温泉場跡に出来た公園でそれほど大きくないが一通りのものが揃っている。ここで休んで高台の集落を目指した。
沿道は市街から遠ざかる感じになるので閑散としている。大堤池手前まで来ると「花坂入口」というバス停があって国道並みに立派な…というより国道自体歩道が狭くて貧相なのだが…対面交通路がある。自動車専用道路である国道136号線の橋を抜けると新たに工業団地の造成地があり、その奥に道路から左手に折れる道があって、この道を登ると花坂の集落に着く。
花坂の集落は規模が小さいが、集落への道は普通の車が楽にすれ違えるほど広い。セメント舗装されているが設計に無理があったのか軽微な不等沈下が見られる。登っていくとごく普通の規模の公民館がありY字ともT字ともつかぬどん突き。貯水槽と石仏があって右手は口野の方に向かうが通り抜けを禁止していて、沼津市との市界付近にプラスチックの収穫箱で道が塞がれている。左手は福寿院、聖神社を経て峠越しの道となる。峠の標高は170mと大したことはないが花坂入口からの比高が145mあるために峠から北側の眺望は良い。直線距離だと17%の勾配となるのでそれを回避するために道はかなり曲折してるから自動車での登攀限界に近いのだろう。
そのため天空のみかん畑が眼下に広がる。
峠には2体の石仏があり、上の方は判読不能だが、下の方は牛頭観音で明治廿七年三月と記されている。この年に開かれた道なのかもしれない。
花坂の集落を中心に戸沢から大堤池へ南北に抜ける道と、市役所前付近から口野へ東西に抜ける道があったが、現在では南北に抜ける道が通用するのみで、東西へ抜ける道は口野方は通行禁止で、市役所前付近への道は通行不能である。ここで戦前の地図を見ると口野から大堤池へ抜ける道が本道であったようで、戸沢への道は山道らしく、市役所方面(田端と言ったらしい)への道はなかった。田端への道は戸沢への道の中途から分かれる形で山道として存在していたらしいが、今日では存在しない。こうして見ると花坂への往来は口野からと大堤池(この付近の地名は記載されていない)を経て長岡というのが尋常であったらしい。長岡への道は自治の上から関係が深かったのだろう。静浦口野は郡が違うので海産物を得るための道だったのだろう。
大堤池への道は公民館を過ぎた分かれ道の所まで対面交通が可能だが、口野への道は小型自動車一台通れる程度の道で、自動車が普及した今日では必要が無くなったのかもしれない。田端への道は開設に無理があったために使われなくなったのだろう。戸沢への道はこれがないと大幅な遠回りになるので現役だ。