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あなたがいたから

あなたがいたから、やって来られた。
あなたがいたから、泣くことが出来た。
あなたかいたから、腹も立った。
あなたがいたから、忘れることが出来ない。
あなたがいたから、あんな顔で笑った。

わたしにはもう。
本当に大切だったものは、ない。
なくなってしまった。
それを告白しよう。
今だからやっと言える。
認めても崩れ落ちずに、今ならば。

意味があるのだろうか。
あのときほどのクオリティーも
皆の素晴らしいエネルギーも
空間も満たした笑い声も
もう今はないというのに。

小さな小さな笑いや
繰り返す創作活動や
全てが今までを崩さないために
守りに入っており
新しい攻めのアイディアも
それをする元気も
可能にするスタッフも
もういないというのに。

それでは、わたしのやっていることは
なんの意味があるのだろう。
わからないのだ。
今やめても誰も気づかないだろう。
あまりにも地味なことが
地味に失われるだけだからだ。

もう壊れてしまったものを
壊さないようにすることに
なんの意味があるのだろう。

いっそ壊してしまおうか。
そうすれば楽になるのかもしれない。
新しい眺めが
わたしを開放してくれるかもしれない。

このままでは辛すぎる。
かつて素晴らしかったものの抜け殻と
それを称賛する言葉の中で
生きていくだけの人生なんて
まっぴらごめんだ。

奇策が必要だ。
くだらない作戦が必要だ。
人数が足りなくても
かつての栄光が邪魔をしても
人を笑わせる方法。

こんな抜け道があったかと
驚かせる方法。

必ずあるのだ。
道は探せば必ずある。

諦めない。
意地になって、理性を失って。
それでもいい。
わたしは必ずこの物語を
ハッピー・エンディングにしてみせる。

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