説明ができない涙が、ただただ溢れて止まらなかった。

ある日1人でレディースクリニックへ行った。
1人で行くと決めていた。
妊娠検査薬で陽性とわかった数日後の土曜日。

化粧をする気力もなかった。
コロナの「コ」の字もなかった時代。
マスクをつけて歩く春の日。

人がいっぱい、待ち時間が長い。
ドキドキした。
名前が呼ばれる。
人生初のレディースクリニック。

台の上に座る。
台が動く。
検査が始まる。
全てがドキドキする。
ずっと心細い。

先生が言った。

「ここに小さな卵がドクドク
動いているのが見えますね。」

「小さな卵」
「ドクドク」
涙が溢れた。
小さな小さな命が一生懸命動いているのが
見えた。
こんなに小さな姿で生きている。。。
涙が止まらなかった。

平然と言う先生の言葉
「妊娠していますね。」

涙が溢れて声にならない。
うなずくことが、精一杯だった。

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