見出し画像

「ヨシノリ少年と父親の秘密の部屋」(前編)の巻

エッチな本との出会いは小学1年生の時だった。

その日は私の家で同級生の幼馴染、T君と「忍者ごっこ」をしていた。
トイレットペーパーを「秘伝の巻物」のようにしたり、「孫の手」を背中に入れて刀のようにしたり、ベッドからとびはねたり押し入れに隠れたりと可愛いらしい遊びだ。

ただ、遊んでいた場所は出入りを禁じられている

「父親の部屋」だった。

大きなタンスの上の手の届かない場所に雑誌が置かれていた。
明らかに不自然な場所だった。
「忍者」になりきっていたこともあってか、それが「秘密のなにか?」であることはわかった。

2人で力を合わせて手に入れた秘伝の書は「エロトピア」だった。
「エロトピア」とは成人向け漫画雑誌。
表紙からカラー写真の女性の裸のページが5、6枚あり
その後に読み切りのエロ漫画が始まる。

知らない女性の裸を見たのはその時が初めてだった。
まるで「金縛りの術」にかかったように身体が動かない。
全身が「ズドーン」と重くなってくる。
それは悪いことをしている「ごめんなさい」な気分が身体を覆い背中と胸を引っ張る。
きっと背徳感だろう。
私が屋敷しもべ妖怪だったらきっと「のりーは悪い子」と言って頭をガンガンそこら中にぶつけていただろう。
「見てはいけない物を見ている」率直にそう感じた。
それと「ごめんなさい」の気分の中には、この女性達は「ウチの父親のせいでこんなカッコをさせられる」という気持ちも入っていた。

だが、それと同時に胸にドンドンくる鼓動があった!
「ノーハンド・パッション屋良」状態!!!
細い目が見開いてるのが自分でもわかった。

その時、

「Tくんが動いた!」

写真をベロベロ舐め始めた!

「えっ?!!」

T君どういうこと?

写真舐めるって何?

T君の「変幻の術」に驚いた。

きっと、おとなしく落ち着いてる静かな「静」と、激しく動く「動」の相反する性質、両者の対比が極限状態によりT君の心のバランスを乱したのだろう。

いや、違う…
T君は手慣れている様子だった。
あとウチの父親の本ということを忘れている?
お構いなしに愛でまくっていた。

「はい!」

T君がさも当たり前のように本を渡してきた。

私にもやれというのか?!

今になって、それは「T君独自のオフィシャルな遊び方」というのはわかるが、T君は私より7ヶ月生まれが早い。
小学1年の7ヶ月の差は色々と説得力が違う。
「そうやって遊ぶものなのか〜T君はなんでも知ってるなぁ」とさえ思った。

だが抵抗はある。
いや、抵抗しかない。
それに父親の大事にしている女性をT君に汚された気さえもした。
間接プチNTRだ。
私の感受性は色々おかしくなっていた。

だが、T君の真っ直ぐな瞳が断ることを許さない。

私はT君と目を合わせずに小さく首を縦に振った。

T君に恥はかかせられない。

フィンガーボウルの話を知っているだろうか?
ヴィクトリア女王は外国の客人を呼び、晩餐会を開催。
南アフリカの大統領はフィンガーボウルの使い方を知らずに水を飲み干した。ビクトリア女王は大統領に恥をかかせまいと
自らもボウルの水を飲み干した。

今ならヴィクトリア女王の気持ちがわかる。

郷に入れば郷に従えだ!
いや、オレの家だし父親の本なのだが…

「エロトピア」は充分な湿り気を帯び再びタンスの上に戻された。

開いてはいけない「父親の秘密の部屋」の話。(前編)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?