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薬不足の発端は、バブル崩壊に繋がっていた

6月18日、NHKクローズアップ現代の番組で、薬の供給不足について取り上げていました。


引用:NHK


庶民であれば、薬不足は、国、医療機関側の問題と単純に考えるかもしれませんが、日本社会の構造が大きく関係している重大な課題として顕在化して来ている事が伺えます。
番組内では、喉に詰まった痰を取り除く薬や咳止めの薬が不足しており、患者が薬局を梯子して薬を探し回るという映像が流れていました。
そのもそも何故薬不足が起きているのか?
背景を順にまとめました。

1.薬不足の背景

厚生労働省側から、製薬会社に薬の増産の依頼はされているものの、増産が難しい状況が続いています。
単純に考えたら、不足の薬を増産したら売れるのでは?と思うはずですが…
薬の製造ラインには、限界があります。
例えば、痰の薬を増産するという事は、他の薬の製造を減らすという事になります。
厚生労働省から依頼されたと言っても、おいそれと不足の薬を増産する事は難しいのです。
何故なら、
製造ラインや工場を増設する事事態が厳しい状況だから。
その背景は、非常に根深いです。
日本の薬の価格”薬価”は、国が決めています。
日本は、人口減少、少子高齢化が進んでいます。
薬の負担は、現役であれば自己負担3割、後期高齢者1割、残りの7割〜9割は健康保険組合や協会けんぽ、国の税で補っています。
高齢化が進む日本で、医療費は出来るだけ抑えたいと政府は考えています。
当然、薬の値段”薬価”も出来るだけ引き下げたいはず。
しかし、
製薬会社は、営利企業である以上、利益を求められ株主還元をしなければなりません。
引き下げられた薬価の薬では、製薬会社は利幅が薄くなります。
その為、
低い薬価の薬は、製造したくない。
利幅が取れない薬を増産するより、利益が上がる薬を増産し、次の設備投資に回し会社の成長に繋げたいというのが製薬会社の本音なのです。


2.薬の原材料は7割が海外製

日本に流通している、薬の原材料は海外依存が高いです。
特に中国からの依存が大きいです。
ペニシリン系の抗菌薬の原材料の7割が海外から輸入しています。
2020年に中国の製造メーカーがトラブルを起こし、ペニシリン系の抗菌薬原材料が供給されない事態が発生しました。
薬の原材料は、7割が輸入に依存している為、日本国内で抗菌薬が作れなくなり、医療機関に流通しなくなるというトラブルが起こりました。


3.30年ぶりに原材料の製造に挑戦

薬の原材料の輸入が停滞してしまうと、薬の製造にも大きく影響を受けるますから、日本政府も危機感を持っています。
その為、
国内メーカーも30年ぶりに原材料の製造に取り組むという内容もクローズアップ現代の番組内で取り上げていました。

国内生産の取り組み

こうした状況を受け、Meiji Seikaファルマの岐阜県の工場では、国の支援を受けて、海外依存度の高い抗菌薬の原薬を国内で製造する体制作りが進められています。
抗菌薬は、がん手術や感染症対策などで欠かせない薬で、国内での生産は国益にも直結してくるのです。


4.薬の流通経路

近年は、遺伝子技術を使った薬の開発が急速に発展しています。
コロナワクチンも遺伝子技術を用いて開発されており、やはりバイオベンチャーが開発をしました。
バイオベンチャーが、ファイザーや大手製薬会社に販売して流通させるという流通網が構築出来ています。
この海外のバイオベンチャー企業は、日本にとって非常に障壁になりつつあります。
というのも、
ファイザーや米国のメジャーな製薬会社は、日本国内にも法人を置いている為、海外製の薬も日本国内での流通ルートで供給が可能です。
しかし、
新興バイオベンチャー企業になると、日本に支社を持ちません。
また、
日本語という言葉の壁もある為、コロナワクチンのようなゲームチェンジ系の薬が開発されたとしても、日本に流通して来ないという深刻な問題が起こり始めているのです。
また、
コロナワクチンのように、新薬の認可基準は日本は海外より厳しく、外資系製薬会社は日本市場を敬遠するという傾向も強まりつつあり、こう言った背景が、薬不足や外資系の薬の価格高騰といった『ドラッグ・ロス』の一因に関連してきているのです。

5.バブル崩壊と産業の空洞化

1990年のバブル崩壊以降、日本経済は急激にお金が無くなりました。
1994年頃から、円高不況、失われた30年の時代が始まります。
バブル崩壊後、国内企業はお金が無くなり、製造拠点を海外に移転させる動きに変わります。
それは、製薬会社も然りなのです。
一方で、グローバリゼーションの恩恵を受けたのが中国でした。
世界中から中国に投資マネーが集まり、この頃から中国の製薬メーカーも大きくなり始めました。
この状況は、日本国内の製薬会社に新薬の研究・開発の投資を怠ってきた“ツケ“と言って間違いないでしょう。
海外で製造した薬を、輸入して国内で流通させる、まさしく”産業の空洞化”が製薬業界でも起きていたのです。

6.今後についての考察、推察

いくら、日本政府を挙げて国内メーカーの製造開発に投資をした所で、原材料や新薬の研究開発には、相応の年月を要します。
それは、工場を増設したり設備投資をした所で簡単に解決出来る問題ではなく、昨今社会問題となっている”人手不足”とも密接に絡みあってくる為、工場を増設しても稼働出来ない状況に陥り、薬不足は続いていく事が考えられらでしょう。
30年かけて低迷したのを盛り返すのは、簡単ではありません。
そして、
人口減少は確定してしまった為、社会保障抑制の為に今後も薬価の引き下げもヤらざる負えないのです。
社会保障費を抑制出来なければ、結局、新規国債発行するハメになったり、現役の社会保険料の負担が増え、可処分所得を目減りさせてしまう事になり、再び経済低迷の悪循環サイクルに入ってしまうでしょう。
薬の海外依存が続いていくが、バイオベンチャーが開発したゲームチェンジ系の新薬は、日本は敬遠されてしまう。
薬不足、薬の高騰の問題は、長期的に続く事が予想できるでしょう。
個人的な意見としては、出来るだけ薬には頼らず、普段の生活習慣を見直し健康寿命と体力を維持する事に労力を使った方がミクロの視点では合理的と言えるでしょう。

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