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これはどう解釈すべきか:レポート返却

 無言ほど怖いものはない。

 再提出のレポートが最低点での合格で返ってきた。

 これまでレポートを提出するたび、その丁寧な対応に驚いてきた。
 昔の大学生活を思い返せば、大学の先生が一学生のレポートをちゃんと読んでくれるというだけで驚きだったのだが、細かな添削、指導、助言そして納得のいく評価(手を抜いたレポートは必ずばれる。)時には何度か再提出での指導をいただくという、大学側の真摯な対応に感謝し、本当にこの大学を選んでよかったと思い続けていた。

 この教科は、自分でも興味ある分野で、レポート課題も積極的に取り組んだ。現地調査が条件だったので、現場にも行き、話を聞き、写真を撮り、細かな図表も作成し自信をもって提出した。

 ところが不合格で戻ってきた。
不合格の理由は「実際に自分の足で、目で確かめたことを書いてください」ということだった。これは、自分の書き方が悪くて実際に現地へ行ったことが伝わらなかったのでは、と思い、そのようなことを書いて少し修正もして再提出した。その結果がこれである。

 無言の返答。
 
 評価点が印字されているだけで、どこをどう探しても一言も何も加筆されないまま返却されたのである。

 これはどういうことなのか。

 教授にもの申したわけなので、不快と捉えられたのか。
 私にはこれ以上の指導する意味なし、という意図なのか。

 怖い怖い。

 まっさらなままの返却レポートを前に思考がぐるぐるめぐる。

 そしてだんだん腹が立ってきた。
こっちだって再提出にあたり、それなりに時間と労力をかけたのだ。

 夕飯時、夫にこの話をしているうちにだんだんヒートアップしてくる。   「レポート見るのだって仕事でしょ。給料の一部でしょ!」という私。
すると夫「仕事では時間に追われてどうしようもなくて最低限の事しかできないことなんていくらでもあるんだ。」
私半泣き「私は疲れてても時間なくてもやらなきゃいけないことやってきたわよ‼(無償労働である家事の事を言っている)」
夫「俺なんか毎日そうだよ!ハンコ一つ押してぎりぎり提出することさえ難しいことだってあるんだ!(自身の過酷な労働環境のことを言っている)」私「なんでそんなに教授の肩もつのよ!!!」

 無言返却レポートは無駄に勃発した夫婦喧嘩を経由し、結局
   「なんか、そういうことだろう」
いう大人の納得に落ち着いた。

 でも、これはどうとらえるものだったのかと、今でも時々思い出す。

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