安倍元首相銃撃事件の真相②:ビデオメッセージで決意は本当か?
「安倍元首相暗殺事件の真相①」の続きです。
山上がビデオメッセージを見たのは2022年春
2022年7月に起きた安倍晋三元首相銃撃事件、犯人の山上徹也は「ビデオメッセージを見て殺害を決意した」との報道があったが、本当にそうだろうか。
まず山上は、いつこのビデオメッセージを見たかというと、メッセージが流された統一教会(世界平和統一家庭連合)の友好団体のイベントが開催された2021年9月ではない。それから半年以上経った2022年4月頃だと捜査関係者が明らかにしている。
山上が「安部氏のビデオメッセージを見たのは4月」は、山上のものとされるTwitterアカウントでも確認できる。
以上の情報から、山上がビデオメッセージを見たのは、2022年4月頃で間違いないだろう。ところでビデオメッセージを見て決意したなら、見た後から山上に安倍元首相を狙う動きがあったはずだ。
事件直前まで安倍氏を狙う動きはなかった
しかし、事件直前の7月に入るまで、山上には安倍元首相を狙う動きはなかった。
その裏付けの一つに、6月28日に安倍元首相が奈良で応援演説を行った時、山上が会場に向かった形跡がなかったということがある。このことは、事件から一週間後の7月15日に産経新聞で報道されている。
ビデオメッセージで決意したのなら、6月28日に安倍元首相が奈良を訪れた時に狙っていてもおかしくない。その点からもビデオメッセージを見て決意は不自然である。
また、2022年7月10日に埼玉で統一教会によるイベントが開催されることをネット上で知った山上が、複数の人に接触を試み、そのイベントに誰が参加するか確認しようとしていたことが分かっている。
2022年6月29日、山上はTwitter(現X)のDMで、ジャーナリストの鈴木エイト氏に誰が参加するか問い合わせていた。
山上は2022年6月30日にも、似た内容のDMを埼玉の統一教会の関係者にも送っていた。
では、山上は誰が参加するかを確認しようとしていたのか。7月10日といえば、参議院選のちょうど投票日だ。その日に安倍元首相が宗教系のイベントに参加するなどあり得ないし、山上もそんな期待をしていたはずはない。この段階で、山上は安倍元首相を狙うつもりはなかったということだ。
ビデオメッセージを見ての決断ではない
そして2023年7月8日付けの毎日新聞において、当初は教団トップを狙っていたが、標的を安倍元首相に変えたのは事件直前とあらためて報道された。
つまり、いくつかのメディアが報道し、警察が確認しているように、山上は収入が途絶え経済的に追い込まれ、これ以上襲撃計画を先延ばしできないと焦る中で、教団幹部を狙う機会がないと分かり、7月に入ってから安倍元首相へと狙いを変えたのは間違いない。
安倍元首相の統一教会友好団体へのビデオメッセージを見て、山上が安倍元首相を狙う決断をしたのではないということが、一年にわたる取材、捜査の結果としてあらためて確認されたということだ。
ビデオメッセージを見て決断したのではない、と分かったところで、次は「安倍元首相と統一教会はズブズブ」の真偽について、見ていこう。
<続く>
続きは明日投稿予定です。
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