おかあさんだいすき1【2024note創作大賞参加作品】

「おかあさんは?おかあさんはどこいったの?」

「お母さんはね…お月さまになったの

まんまるのお月さまを見ながら

親戚のおばさんがそう教えてくれた。


「え?おかあさん、きのういたよ」

小さな私が言う

母は確かに昨日いた。

今朝、墓地の方にパトカーが来ていた。


そのことが関係しているのだろうか?

小さな私は、その時には

母がいなくなっているなんて

思ってもいなかった。




母は自殺だった。




お腹の中に宿っていた命は死産で

生まれてこなかったことで

ふさぎ込んでいた。

そのことと


小さな私のことを気にかけていた。


私は思った。


〃親戚の叔母さんが言ったことなんて

ウソだ

お母さんはきっといる

どこかに行っていて、まだ帰ってないだけなんだ〃


どこを探しても

母はいなかった。


「おかあさん

おかあさん

どこいったの?」

叫んで家の中を

探して回る


いない

「いい子でいるから

ちゃんとおべんきょうするから

とけいをよめるようになるから

おかあさん

おかあさん

はみがきちゃんとするから

おかあさん」


いない。


靴をはいて走って家の周りもさがすけどいない。


「おかあさ〜ん」

山の中の小さな集落に私の声が響く


そのうち見かねた父が私を止め、抱きしめてくれた。

父も泣いていた

父は

「ふたりでがんばろう」

と、言って私を抱きしめた。

その時、私は

母がいなくなったことを悟った。


それから

母がいない時を刻んできた。

しばらくは

父と私と2人だった。


母のいない

家は暗く

静かだった。





辛い時も嬉しいときも母は、私の心の中にいる。


母の日にはカーネーション(今年は薔薇の花)をお供えして

命日には

お墓に参る

それを繰り返しても


私の心は

埋まることはない。


母のいない

47年の物語と

母がいる47年の物語は

きっと大きくちがう。



おかあさん

いつも笑っていて欲しかった


あの子(死産の子)がいなくなって

笑わなくなったね


おかあさん

おかあさん


おかあさんだいすき






今度は私が


私の子(うた)と、あの子(にじ)の

おはなしを書くからね


https://note.com/lucky_eel739/n/n6c29b94e4e69

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二度目の歩みを見てくださっているみなさま、今回は私と、私の母の話を書きました。


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