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オンラインミーティングに乾杯!

「以上が会計チームからの発表となります。質問のある方は、いらっしゃいますか?」
オンラインミーティングで、自分の作成した資料説明を終えて、挙手ボタンで手を上げたメンバーを指名する。
「参加料についてですが~」
メンバーからの質問に回答したあと、「別件があるので、今日はここで失礼します。」と、チャットにメッセージを残しミーティングを退出する。

2019年12月初旬
中国の武漢市で第一例目の感染者が報告され、翌年1月初旬には厚生労働省が注意喚起を行う。
この頃に全世界で数年にわたりパンデミックが起こると予想した人はほとんどいないであろう。

2020年1月中旬
「春節」により中国国内だけでなく、海外にも人口の大移動が始まる。
この影響なのか、世界中に感染者が広まっていき、日本国内でも感染者が現れ始める

2020年2月27日
政府から全国の小学校・中学校・高等学校へ休学要請が出され、学生たちの自宅待機が社会問題化する。
入学式や春の甲子園も中止となり、晴れの舞台のために準備を行ってきた人たちの無念さは察するに余りある。
自分の周りも他人事ではなく、出場が決まっていた次女の水泳ジュニアオリンピックが中止となり出場の機会が失われ、自身も社会人大学院の入学式がオンラインとなった。

このように様々な影響をもたらしたコロナ禍だが、地方在住者にとってはメリットも大きいと感じている。

コロナ禍で急激な普及が進んだのがオンラインミーティングツール。
現在では「Zoom」「Teams」と言えば、ほとんどの人が知っているだろうが、この当時は使ったことはおろか、ほとんど人たちから認知されていなかっただろう。

私が入学した大学院では、「学びを止めるな」の合言葉のもと、たった3日で300クラスもの通学クラスをオンライン化し、他の学校が休校を余儀なくされる中で授業を継続していた。
その受講は、動画を見るだけの一歩通行ではなく、オンラインミーティングツールを使用し、生徒にも多くの発言を求める双方向スタイルで、否応なしにオンラインスキルが鍛えられていく。

とある北関東の中堅商社。
オンラインミーティングの文化は皆無で、会議のたびに全国の営業所から人を集め、不毛な会議の後に飲み会が行われ、どちらのために社員を集めているのかわからないような状態であった。
コロナ禍であっても、全国から人を移動させていた会社だが、いよいよ会議のオンライン化が急務となり、社内で唯一オンラインミーティングの経験がある私に運営の依頼が舞い込む。
働かないおじさん問題。
無気力な若手。
足を引っ張る同僚。
これらの障壁により、オンラインミーティングの開催には大変な苦労が伴ったが、何とか開催にこぎつけることができた。
2年経過した今でも全社にオンラインミーティングが完全に浸透したとは言えない。
しかし、移動コストの削減、画面共有による論点整理でスムーズな会議運営等、だいぶ進歩させることができた。

そして、現在、私は転職活動中だ。(オンラインミーティングを通じての苦労が決定打ではないが、一つの要因ではある)
現在では多くの企業が、1次面接はオンライン面談で行うようになっている。
これは地方在住者にとっては大きなメリットである。
面接のために有給を取らなくてもよく、会社に怪しまれずにすむ。

大学院の授業でも、オンライン化により全国の生徒と知り合うことができ、ネットワークが大きく広がり、今では全国に多くの友人ができた。
また、勉強会やゼミのミーティングがオンライン化したことは地方在住者にとって最大のメリットだろう。
以前なら都内在住者がどこかに集まりミーティングを行っていた。
平日の夜、地方在住者は現地参加が困難なので、ミーティングに一人だけオンライン参加すると、大きな疎外感があった。
コロナ禍により、平日夜のミーティングならオンラインで十分との認識が広まり、全員が同じ条件で行うことになり、大きなメリットを享受できた。
また、都内在住者であっても終電は気にしなければならず、オンラインミーティングであれば終電を気にせず行うことができる。
もっとも、終わりの時間が遅くなり、移動よりも多くの体力を消耗するというデメリットもある。

夜の池袋。
雑踏を1本入った路地でイヤホンマイクをつけノートPCを持ちながら立っていたが、傍から見たら突撃系ユーチューバーに見えたかもしれない。
チャットを送信して、オンラインミーティングを途中退席した後、ノートPCを閉じ雑居ビルのエレベーターで3階まで移動し、韓国料理店に入る。
店の片隅で友人がスマホにヘッドセットを接続して何かを話している。
「……チームの発表は以上です。質問のある方はいますか?」
どこの誰と話をしているかは知っている。
なぜなら、先ほどまで私も同じ空間にいたからだ。
カメラをオフにしたミーティング参加。
いわゆる「耳だけ参加」である。
マイクが口元にあるタイプのヘッドセットなら、周囲の雑音も多くは拾わない。
カメラオフや背景画像の変更を行うことで、どこから参加しているのかわからない。
そして、そこに誰がいるのかも。
オンラインミーティングの参加メンバーは私が北関東から参加しているものだと思っていた。
「おつかれさま~」
先ほどの友人がミーティングを退出して席に戻ってきた。
「ビール頼んでおいたよ」
「サンキュー。それでは乾杯!」
まさか、ミーティングに参加した他のメンバーは、2人が池袋にいるとは思わなかっただろう。
これもオンラインミーティングのメリットである。
まあ、このメリットは地方在住者だけでなく、すべての人が享受できるメリットになるのだが。

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