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夢と針

夢の中で先生がいた
向かい合って座って、私は本当に言わなければならなかった内容のノートを忘れて、諦めて記憶で話し出した
私は、先生に向かって本来話すべき内容とは全く異なることを、あたかも本当のことのようにペラペラと伝えていた

先生は頷き、そうだね、それは…と、応えようとする。私はあ、と口に手を当て、何を話したのかと逡巡する
先生はなおも続けて話してくれるが、私はそれどころではない
仕方がないと諦めて、そうですね、とただ呟く

どうしてこんな嘘の作り話を話してしまったのか
今更嘘ですとも言えまい

すると、いつのまにか時間になって、次の生徒たちがやってきた
私は丁寧にお礼を言って、次は本当のことを話そうと部屋をでた

場面が変わり、グラウンド
私はグラウンドの隅っこ、草や苔が生えているような、サッカーゴールが置きっぱなしにされているようなところにいる

走る番を待っているようだが、友達たちは派手な子ばかりで、アイドルの話をしてたりする
私はアイドルも好きだが、何となく疲れていたので土をいじってぼんやり過ごす

ふと土を見ると、裁縫針が落ちていた
危ない、どうしてここに、と思って拾う
一つ見つけると、また一つ見つかる
どんどんどんどん近くの土から裁縫針が見つかり、手のひらいっぱいに裁縫針が乗っていった

少しでも手を握れば、きっと手のひらにサボテンのように刺さってしまうであろうそれは、案外収まっているようだった

私は先生に見せにいく

こんなに裁縫針が落ちていたよ

先生は言う

どうしてこんなにあったのだろうね
そのまま持っていてね

私は頷き、先生を土のところまで連れていく

ここにあったんだよ、ほら、ここの土の中

すると先生は頷き、今までのものが溜まっていたのだと教えてくれた

ーーーー

この夢を見て、印象的なのは異様な数の裁縫針でした。それは一本だけだと何の変哲もない落とし物でしたが、何十本もあるとまるで意図してばら撒かれたような、それら全てが一つの塊のようなものでした。

その塊を私が集めて、魂にしたような、そんな気持ちでした。先生は驚かず、先生の顔は見えませんでした。私は何だか誇らしげに見せていた気がするので、大切なものだったのだと思います。

私の中の棘や問題が、統合されていくようなものなのかもしれません。
あるいは、統合するためには見つけて集めないといけないよ、でもそれは針のようにまとめて持つのが大変だよ、と、教えてくれたのかもしれません。

春の陽気に誘われて、こんな夢を見たのだと、そう思うことにします。

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