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BILL EVANS ビル・エバンス Explorations

アノトリオの世界を堪能させてくれる一枚です。


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私の最初に買ったジャズのレコードが、
下の写真のビル・エバンスのトリオ。
1969年にイタリアで録音されたライブアルバムで、
ベースはエディ・ゴメス、ドラムはマーティ・モレル。

当時、全く予備知識もなく、
レコードショップに並ぶ数多のディスクの中から、
「枯葉」と題されたアルバムジャケットが印象的で、選んだ一枚である。

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何度も何度も繰り返し聴いて、飽きることがなかった。
むしろ聴くたびに、自分の意識の在り様の変化に気付き、
感性が少しずつ広がっていくような喜びを感じた。
今だに、最もよく聴くアルバムの一つである。

エバンスとの出会いは、
その後、当然、スコット・ラファロを擁した、
あの名高き、4部作へ行き着く。

まず、「ワルツ・フォー・デビー」のジャケットの魅力に所有欲が高まり、そのライブ録音のリアルな雰囲気と匂い立つ音像に興奮した後、
次は、スタジオ録音の「ポートレート・イン・ジャズ」。
冒頭の「降っても晴れても」から始まる
端正なインタープレイの連続に圧倒され、
そして、次に購入したのが、
この「エクスプロレーションズ」である。

エバンスの美学を習得した私は、
「サンディ・アット・ザ・ビレッシバンガード」で、
このトリオの深淵さ、普遍性を確信するのである。

4部作を聞き通してみると、アルバムごとの性格やムードが異なり、
甲乙つけがたく、いずれも恐ろしく完成度が高い。
聴く度に得るものがある。
この4部作については、もう既に言い尽くされているかもしれないが、
やはりこの作品群は、エバンス生涯を通じての快演であり、
歴史的遺産であると思う。

その中からあえて、「エクスプロレーションズ」を選んだのは、
ひとえに、「ナーディス」という曲の演奏のためである。
この演奏の魅力を、なかなか言葉に表現して
うまくお伝えすることができないが、
エバンスは本当はタッチの強いピアニストで、
後期のエバンスを聴くとよく分かるのだが、
自身の音を敷き詰める感じのアプローチである。

でも、この頃のエバンスは、自分のピアノのダイナミズムという点より、
トリオフォーマットとしての全体の音楽性のあり方に重点を置き、
意識を集中させ、夢中になって、試行錯誤を繰り返していたと思う。
スコット・ラファロの存在が大きかったとは思うが、
あまりにも三人のインタープレイがスリリングである。
その成果が最も美しく昇華した象徴的な演奏が、この曲であると言いたい。

この曲は、特に最小限の音の選び・タッチなど、
意図的に抑制的であるほか、
バッキング、間の空け方、三者のバランス、構成・展開の巧みさ、
その全てが非常に緻密に計算されている。
(偶発的なもので、計算されたものではないかも知れないが・・・・)

この硬質で、静かな語り口は、ダビンチが描いたモナリザのように、
いつまで永遠に端整で美しい。

Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (d)

961年2月2日録音

1. Israel
2. Haunted Heart
3. Beautiful Love
4. Elsa
5. Nardis
6. How Deep Is the Ocean?
7. I Wish I Knew
8. Sweet and Lovely  

Bill Evans Trio - Nardis

   

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