くっつく言葉
新聞社に勤める友人のはじめての記事を、切り抜いて会社のデスクマットに長らく挟んでいた。
よく似た似顔絵つきの自己紹介文で、
「くっつきむし」を話題とした文章だった。
「くっつきむし」で夢中になって遊んでいた幼少期の話のあとで、
「今の子どもたちも、ちゃんとくっつきむしで遊んでいるのかな。」との感懐。
そして、
「くっつきむしのように、人の心にくっついて離れない記事を書きたい」という内容で結ばれていた。
「ちゃんとくっつきむしで遊んでいるのかな」
この「ちゃんと遊んでいる」のフレーズが心地よくて、思わずそこにマーカーを引いていた。高校時代の彼女の声で読み上げられているような言葉だった。
5歳の娘を見ていると、
ああ、ちゃんと遊んでいるなと思う。
そしてくっつきむしを見ると私も、ちゃんと遊ばなきゃ、と思う。
もう15年以上前の記事で、その切り抜きも、度重なるフロア移動でいつとはなしにどこかにいってしまった。
でもあの言葉が、びっしりとした細やかなフックで私の暮らしにくっついている。
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