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来年4月より、相続登記(所有権移転登記)が義務化されます。
 
不動産の所有者が死亡すると相続が発生し、所有権が相続人に移転します。
それに伴い、不動産の登記名義も相続人に移転するのが通常ですが、世の中には様々な理由で、相続登記がなされずに故人(父母や祖父母など)のままになっているケースをよく目にします。
 
所有者と登記名義人が異なっていると、売買することも、建て替えることも出来ないので、その段階になって、初めて私のところに相談に来られる方が多くおられますが、相続登記をするためには、その時点での相続人全員で署名捺印(実印)した遺産分割協議書が必要(全員の印鑑登録証明書も必要)になるなど、時間や手間が相当以上かかったりします。
過去には、相続人が70人くらいに膨れあがり、登記まで辿り着くのに3年以上もかかったことがありました。相続の発生後、すぐに名義変更をしていれば相続人が少なくて済んだのですが、経過とともにその子供やら孫やらどんどん増えてしまいました。2代以上前になると、会ったこともない相続人がいたりして、遺産分割協議をまとめるのも容易ではありません。
 
また、このようなご相談もありました。
土地建物の登記名義人が、20年以上前に亡くなられたお父様のままになっていたという例です。
そこには、ご長男とその奥様、お子様の3人が住んでおりました。
ご長男には弟(未婚)が一人おられたのですが、数年前に体調を崩され、それ以降は仕事をされておらず、借金もあり、自己破産を考えておりました。
もし、弟が自己破産の申し立てをした場合、ご長男とご家族が住んでいる土地建物の半分が弟の財産と見做されて、自己破産手続きに則り、処分されてしまう可能性がありました。

弟は土地建物が欲しいわけではなかったのですが、今さら相続放棄はできず(相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内)、遺産分割協議で土地建物を相続しない旨を決めたとしても、債権者の利益を損ねる「詐害行為」として破産管財人から遺産分割協議の効力を否定されてしまうこともあり得ます。
 
結局、その後、弟は亡くなり、その借金はご長男が全て完済され、土地建物の名義変更も完了しましたが、お父様が亡くなった段階で相続登記をしていれば、このようなことは無かったのでは。そう考えます。
 
現在、名義変更がされず所有者がすぐにはわからない土地(所有者不明土地)は、登記されている土地全体の約20%を占めており(推計で九州の土地面積以上)、その原因の大半は相続登記しなかったことによると言われています。
 
国も所有者不明土地の解消に向けて法整備を行っておりますが、私たち自身も相続登記をしないメリットよりデメリットのほうがはるかに大きいと考え、未だ親や祖父母の名義になっている不動産がありましたら、早めに登記変更されることをお勧めします。

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