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ワークショップの実践を通じて理解した足場かけの大切さと背景理論(発達の最近接領域)

こんにちは。くろひょうです。
早くもワークショップデザイナー(WSD)育成プログラムが始まって約1ヶ月が経ちました。プログラムデザインの観点での一回目のワークショップ実践が終わったのですが、ようやく「ワークショップの実践を通じてワークショップを学ぶ」という意味と効果が分かり始めてきた気がして、面白さが増してきました。

 今日は、ワークショップの実践を通じて感じた「足場かけ」の大切さと、関連する背景理論についてお伝えします。

 (1)ワークショップの背景理論「発達の最近接領域」
「発達の最近接領域」とは心理学者であるヴィゴツキーが提唱した理論であり、「自分一人でやることは難しいが、支援者のサポートがあればできることの領域」を指します(図1参照)。

① ひとりでできる領域
② 支援があればできる領域
③ できない領域

これら3つの中で、「発達の最近接領域」は②にあたります。「支援があればできる領域」を分かりやすくいうと「伸び代」です。ワークショップデザインにおいては、被支援者の伸び代を伸ばすための「足場かけのデザイン」が重要であり、「どのように支援したらいいのか」を深く考える必要があります。足場とは建設工事などの際に組み上げられる構築物で、建設工事を安全に行うには足場をしっかり組まないといけません。WSDでは「足場かけ」を「はしご」に例えて説明していました。
たしかに、はしごで考えると分かりやすい気がします。足場となる横木同士の間隔が広すぎると登れないし、素材が弱いと壊れて踏み外してしまいます(図2)。足場の間隔については、支援者によって適切な間隔が変わるので、支援者を踏まえた間隔にする必要があります。

  

(2)ワークショップ実践を通じて感じた「足場かけのデザイン」の重要さ今回のプログラムデザインのお題はざっくりいうと「参加者同士の関係性を深める」というものでした。実際にプログラムデザインをおこない、ワークショップを実践して気づいたのは、「足場かけのデザイン」の重要さです。実践後のチームにおける振り返りで気になった点は「足場かけが適切だったか」という観点が多かったです。「足場の間隔の適切さ」は、参加者が段階を踏みながらスムーズに学習目標に到達できるかどうかに影響します。「足場の素材の適切さ」はワークショップで使う素材(例えばワークシートなど)が適切かどうかですが、素材の内容の良し悪しが参加者の反応に影響することが実感でき、様々な発見と気づきがありました。

 (3)足場かけのスタイルの違い(伸びしろの伸ばし方の違い)
今回、同じテーマで、ワークショップの主催側と参加者側、両方の立場でワークショップを体験し、「足場かけのスタイルにもいろいろあるのだな~」と実感しました。私たちのチームが主催したワークショップは「足湯」をコンセプトにしたものだったので、無理せずゆったりと坂を登ってもらうイメージでした(下図3でいうと「負荷が低いワーク」を選択した)。一方で、私が参加者として参加したワークショップは比較的中上級者向けで、瞬発力と勢いがないと登れない印象のワークショップでした(下図3でいうと「負荷が高いワーク」、助走からダッシュして急な坂を勢いよく登る感じ)。「いやいや、ちょっと無茶ぶりちゃうか~」、「かなり恥ずかしいぞ」と思うことも多かったのですが、あまり深く考える余地が与えられず瞬発力が求められたため、いつの間にか到達していたという感じでした。到達点が高いから必ずしもいいというわけではなく、やらされ感を感じたり息切れする可能性もあるのでリスクが高いといえますが、うまく到達させることができれば想定以上の成果につながる可能性があります。言われてみれば当たり前なのですが、「適切な足場かけのデザイン」はワークショップのプログラムデザインにおいてとても重要なポイントであることがよく理解でき、これが「ワークショップの実践を通じてワークショップを学ぶ」ということなのだなあ、と感心しきりでした。

 

(4)中小企業診断士としての支援スタイル
どのような足場かけが良いかは相手によって変わってくるはずで、スタイルの違うワークショップを体験することは、中小企業診断士としての支援を考えても非常に示唆に富むものでした。一つは「相手がどれだけの負荷に耐えられるだろうか」という観点で、もう一つは「如何に相手の背中を押すか」という観点です。相手に深く考えてもらいたい時と、相手が頭でっかちになり過ぎて動けないような時では、「適切な足場かけ」は変わってくるだろうということです。「考えすぎて動けない」というような相手の背中を押すというケースでは、「動きながら考えてもらう」ことも重要であり、考えさせずに瞬発力や勢いを求めるような支援、投げかけが有効かもしれません。ケースbyケースで臨機応変に支援スタイルを変える必要性を改めて認識しました。

 これからWSDを受講する中でまた考え方が変わってくるかもしれないですが、「とても興味深く重要だな」と感じた「足場かけ」について発信してみました。では!

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