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日記・エッセイ

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日々の日記、または過去のエッセイ。
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2023年5月の記事一覧

エッセイ#67『犬と裸/応挙と蘆雪』

 東京は東中野にある東京黎明アートルームへ、「応挙と蘆雪」という展示を観に行った。日本画や焼き物にはそんなに興味がない私が、観に行くことを即決した理由はズバリ「江戸の犬を見たいから」である。  江戸の犬、もちろんこれは作品名ではなく私が勝手につけた愛称だ。正しくは『柳双狗図』という長沢蘆雪の作品で、私はこれをネットニュースでちらっと見た際に一目惚れしてしまった。  普段は日本画にも犬にもほとんど興味を示さないくせに、その2つが合わさった作品にトキメキを覚えてしまうとは。固く閉

エッセイ#66『綺麗な名前』

 大学を卒業するタイミングで、同級生カップルが結婚を発表した。  その時、苗字が変わった側の人が変更後の名前で文章を作っていた。これだけだとイメージしづらいと思うので例を挙げると、もしその人が「賀来賢人」だった場合、「賀び来る賢い人」みたいな感じだ。賀来賢人であることに深い意味はないが、賀来賢人以外に良い例が思い付かなかったので賀来賢人を用いることにした。  いいな〜、と思った。カッケェ〜、と思った。「名前は『世界で一番短い美しい歌』です。」みたいなことを金八が言っていた記憶

エッセイ#65『血』

 血を流しながら焼肉を頬張ったことはあるだろうか。  中学の「学年会」なるものが催されたのは、今年3月の上旬のことだ。どうやら所謂「同窓会」ではなく、学年全員が参加の対象となる大規模な集いらしい。  正直これには行きたくない。もう少し正確に言うと、友人が誰一人参加していない状態で私だけが参加するようなことは、絶対に避けたい。そこで、どちらに転がっても良いように、日程調整の欄は「△」にしておいた。  そんなセコい私にも勝利の女神が微笑んだようで、学年会の当日は前々から行きたか