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M&A業界の裏側 ~高く会社を売却することのデメリット~

自己紹介が長くなりましたが、M&Aについての実例や生々しい情報を紹介してまいります。

・M&Aでよく起きるトラブルはなにか
・企業価値はどのように算定されていくのか
・死ぬほどDMが来るが内容は実は嘘ばかり
・企業価値評価と実際の売却額の乖離
・どのように売却プロセスを踏むのがもっとも経済子合理性が高いか

など、一般的に知られることが少ないM&A業界の「裏側・実情」について段階的に記載してお伝えしてまいります

さて、前提としてM&A業界はなぜこれだけ活況といわれているのでしょうか。

現在日本国内では、零細企業を含む個人企業・中小企業は約350万社あるといわれております。

その中で、一般に60%の企業は「後継者不在」。ある試算では、後継者不在により、22兆円のGDPが失われる可能性があるともいわれております。

一方、年間で行われている公表数値としてのM&A件数は4000件程度。これでは全然足りません。

もっともこの数値は、上場企業によるM&Aなどが中心であり、未上場企業同士のM&Aは含まれておりませんので、実態はこの3~5倍以上あると感覚的に見ております。(公表されておりませんので、この数値がどれだけ正確かはわかりませんが。。。)

それでもせいぜい2万件程度。日本国が抱える事業承継問題の解決には届きません。まだまだM&Aの数が足りない実態が存在しております。そのためM&Aそのものや支援企業も、活況になっていくと思われます。

なぜM&Aがこれほど行われていくのでしょうか。売却オーナーの立場に着目した場合、少なくとも2つの理由ががあります。

①親族内承継の難しさ ~息子(娘)が継ぎたがらない~
②従業員承継の難しさ ~従業員が社長をやりたがたらない~

簡単にご説明します。
一般には会社の出口は5つしかありません。

1、廃業・清算
2、親族承継
3、従業委員承継
4、第三者承継
5、IPO

1の廃業・清算は避けるべきでしょうし現実的に5の「上場」は相当ハードルが高いです。そのため必然的に親族承継か、従業員承継か、M&Aを目指すこととなります。

もちろん親族承継については、一番望ましいと思います。一方、そもそも息子(娘)がいない。いても継がないというケースが増えてきております。

なぜか?

一般に経営者には高い経営能力・専門性・ビジネススキルが求められます。また、「自分は先代を慕っていたのであって、先代の子供に仕えたいと思えない」という従業員もいます。

こうしたハードルもあってか、ある調査(「経営者の子供意識調査(2023)」)では、63%の子供が会社を継ぎたくないとの意思を表明しています。

またこの調査で行われた「継ぎたくない子供」が挙げた一番の理由(半数)は
「親の会社に興味が無い」というものでした。

そもそも論というのか、なんのか。
なんだか寂しいですね。。。

ここまではあくまでデータ上の話になりますが、私がこれまで500社ほどのオーナー様とお会いさせていただいた中での実感としては「儲かっている会社は、子供が継ぐことが多い」という点です。

なんだかんだいっても、長年経営を続けていくことができている企業経営者様のご子息は、エリートが多く、有名大学×有名企業にお勤めのケースが圧倒的です。

一般的に優良企業でいうと、30代・40代であれば年収水準は一千万円を超えるケースも多々あろうと存じます。

そのような中で、親父の銀行個人保証を借金とともに引き継いでも、利益は社長の年収とあわせて一千万円いくかいかないか、従業員の雇用も維持しないといけない。となると、継ぎたくないケースが多くなるのも頷けます。

一方、営業利益で数億でている会社であれば、きちんとご子息は戻ってきます。笑
あと良い会社は、息子がいなくても、娘婿さんなどが継ぐことも多いです。

なので、一番の事業承継は、利益が億単位で出る会社にする、ということに尽きると私は思います。
であれば後述する従業員承継や、IPOも見えてくると思うからです。

次に、従業員承継の難しさです。

従業員にとってもサラリーマンであるよりも経営者の方がカッコよいので本来的には経営者の椅子が魅力的なはずです。

番頭社員さんからしても、奥さんに「オヤジに長年仕えてきたが、今度は俺が社長になる」といえたら素敵ですよね。

なぜそう簡単に事は進まないのか?

企業経営を行う上で、ほぼすべての企業は多かれ少なかれ借金をしております。借金は中小企業においては、オーナーが個人保証をしているケースが大半です。

最近では、国も銀行に働きかけを行い、オーナーの個人保証を外す動きもでてきているようですが、現実的に経営者のイスとともに、借金数億の保障を引継ぐことは痺れると思います。

また、結局はサラリーマンですので、現状の職務の幅を広げて、新しい仕事を学び、そして成果を上げるという野心的な人材は中々中小企業にはいらっしゃらないのが実態です。

もちろん野心的で魅力的な幹部がいらっしゃる中小企業もたくさんあります。

しかしながら、そのような魅力的な幹部を育成できる経営者からすると番頭社員に自社の価値を圧縮して、バーゲンセールで渡すよりは、数年分の利益を乗せて高値で売却したほうが遥かに合理性があるわけです。

ということから、現実的に、最後の選択肢であるM&Aで「第3者承継を進める」というケースが圧倒的に多くなります。

といっても、今から5年ほど前は、「会社を売るなんてけしからん」という空気がまだまだあったように思います。

しかしながら、昨今では、優秀な経営者、それも若手経営者の方にもM&Aは浸透してきているように感じています

身近な方が〇億で会社を売った、売ってよかった、などという事例がふえてきているからでしょうし、異常にM&A支援会社が増えて、メリットを声高に叫ぶようになったからかもしれません。

さらにいうと、その結果なのか、話に尾ひれがついて、どんどん「耳年寄り」になって、「自分の会社が利益の何十倍で売れる」と強く信じる方もふえてきました。

しかし、モノには相場があり、異常値に高く売れる事はありません。

よほどラッキーパンチで、M&A未経験の買い手企業が、間違って高値を付けてしまうことが無い限りはほぼほぼ相場程度に落ち着くのが実態です。

買い手企業からみて、喉から手がでるほど欲しい会社であれば別ですが、そうそう特別な会社は世の中にはないのです。

また、会社の実力以上に間違って高値がついてしまった場合は、買い手企業からすると投資回収をしないといけないので、残された社員にしわ寄せがいくことになります。

社員さんに辞められては困るでしょうから、すぐすぐに給料が減ることはないにせよ、従業員への還元率が落ちたり、企業成長にむけて、本来なされるべき投資が削られたり、ということは容易にありうることです。

ですから、もし高値で売りたい、とお考えの経営者の方がいるのであれば、
売るタイミングでじたばたするのではなく、そもそも高値がつくような「良い会社」にする必要があるのです。

良い会社にするのは、当たり前ですが簡単なことではなく、少なくとも3~5年以上かかると思われます。収益構造はもちろんですし、良い収益を上げるための企業体質にも地道な取り組みが求められます。

当たり前ですが、このような取り組みをすっ飛ばして、「あと〇億欲しい」とおっしゃる経営者の方が本当にたくさんいらっしゃいます。

これは無理なのです、、アドバイザーの問題ではなく。

と話が長くなりましたが、本日はM&Aがなぜ活況なのか、そして昨今のご経営者の方の考え方の傾向のようなものを主観(と偏見?)をたっぷり交えてお話させていただきました。

私の考え方がずれているケースもあろうかと思いますので、違和感や、補足などお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひコメントいただければと存じます。

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