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HaritoraX詳細レビュー

皆様ごきげんよう、今回は株式会社Shiftallから発売されているフルトラッキングデバイス、HaritoraXのレビューをしていこうと思います。
発売前から注目を集めていた本機、主にVRChatでの使用を想定し、VIVEトラッカー2018と比較しながらのレビューとなります、最後までお付き合い頂ければ幸いです。

尚、当記事のスクリーンショットは全てHaritoraXを用いて撮影しています。

【注意】
完全に主観による評価となりますので情報に間違いや齟齬が発生する可能性がある事をご了承下さい。
また、記事を参考にVRHMDやPCパーツ等を買った際、問題が発生しても当方責任を負いかねますのでご了承の程お願いします。

外観

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外箱は一見するとダンボール剥き出しな見た目、特にテープ等は張っておらずそのまま開ける事が可能でした。

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中身一覧、本体とベルト、接続用のLANケーブル、充電ケーブル、マニュアルが付属しています。

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組み立てた図、ちょっとゴチャゴチャした印象がありますが実際装着してみるとコード類はそこまで気になりません。
大きさはVIVEトラッカーと比べると若干小さ目。

基礎スペック

以下、公式サイトより。

価格:27900円(税込)
動作時間:約10時間
充電方式:USB充電(Type-C) 充電時間 約4時間30分 (電源OFF時)
動作可能距離:約10m以内
対応VRヘッドセット:SteamVR対応ヘッドセット各種
動作確認済みVRヘッドセット:Oculus Quest、Quest2、Rift S, VIVE(初代)、VIVE Pro,、富士通 FMVHDS1、Valve index
動作確認済みVRアプリケーション:VRChat、NeosVR、VirtualCast、Virtual Motion Capture、cluster、ChilloutVR
専用スーツ対応体格:胸囲 60cm~120cm / 膝上部外周 30cm~70cm / 膝下部外周 30cm~70cm
動作環境:Windows10 21H1以降 / SteamVR 1.17以降
動作確認済みUSB Bluetoothアダプター:TP-Link UB400TP-Link UB4A(当記事ではTP-LinkUB400を使用しています)

執筆者注釈
動作には外部ソフトウェアであるHaritoraConfigurator(無料)が必要
OpenVR-SpaceCalibratorと同時稼働不可能
結果的にOculus製品やWindowsMR製品を利用した際のVIVEコントローラーやindexコントローラーとの共存が不可能な仕様となっています

筆者の環境

レビューに移る前に、私が普段使用しているVR環境を紹介しておきます。

VRHMD:Oculus Quest2(Virtual Desktopにて使用)
ベースステーション:HTC Base Station 2.0×2
トラッカー:HTC VIVEトラッカー(2018)×3
トラッカー固定具:Rebuff Reality TrackBelt+TrackStrap モバイルバッテリー搭載のため改造
モバイルバッテリー:HI-DISC 2000mAh HD-MB2000

HaritoraConfiguratorソフトウェアVer0.3.5、ファームウェアVer1.0.17

トラッキング性能

事前情報ではジャイロセンサー+地磁気センサーとの事でトラッキングに不安があったのですが、実際使ってみると遅延はギリギリ体感できるかどうかしかありません。
ダンス等激しい動きをするのであれば兎も角、普段使いをする上でトラッキング性能が不足するといった事は無いでしょう。

また、VIVEトラッカーと違い赤外線方式のトラッキングではないためトラッキングが外れる、俗に言うトラッカーが飛ぶ現象が一切起こらず、安定したトラッキングが可能です。
物陰に隠れてもトラッキングしてくれる都合、布団を被った状態でもトラッキングが失われる事はなく、VR睡眠(※)に非常に適します。
とりわけ後頭部ストラップが布製ベルトのOculus Quest2との相性が非常に良く、変な話ですが大変寝心地の良いデバイスに仕上がっていると思います。

※VR睡眠
読んで字の如く、VRHMDを装着したまま睡眠をする事を指します。
従来のVIVEトラッカーでは赤外線方式トラッキング故に布団を被るとトラッキングがされないという問題があり、様々な対策が成されてきました。
一見すると珍妙に思えるかもしれませんが、ことVRChat内では愛好家が多くおり、割とポピュラーな行為だったりします。

VIVEトラッカーと違いリアルタイムで座標を取っていない都合か腰周りの動きに若干難があり、特に振り向きや座った時に違和感が出やすくなっています。
また、椅子に腰かける程度なら兎も角座敷に直接座る形の座り方と相性が悪いらしく、胡坐をかいたり足を組んだりするとトラッキングが妙な事になりやすいです。

公式マニュアルに記載がある通り、足を前に投げ出した姿勢を取ったときに足が曲がってしまい、体育座りのような姿勢となってしまう点については対策が可能で、私の場合以下の設定にしています。

使用アバター:ミーシェVer1.03
Haritora Configurator内の身長設定を160に
VRChat内身長設定を175cmに調整、キャリブレーション後170cmに

以上の設定を行うと脚がピンと伸びるようになります。
対策は可能なものの、頻繁にアバターを変える人だと逐一設定を覚えておかないといけないため、少し面倒に思えるかもしれません。

バグか仕様かは分かりませんが、VRChat内で動作が重くなったりラグが発生した際にトラッキングがズレる事がしばしばあります。

装着感

はっきり言ってよろしくないです、ゴムバンドはしっかりと固定してくれるものの締め付けが結構強く、腰やくるぶしはさておき太ももの装着感がかなり悪いです。
また、VIVEトラッカーと比べ部位が2箇所多いので単純に手間がかかり、装着に若干難儀します。

個人的に太ももの装着感はHaritoraXにおいて一番のマイナス点で、長時間使用を想定するからこそなんとかならなかったのかと思う所でもあります。

長いケーブル類は使用してみるとそこまで気にならず、保護ストラップも付いており、激しい動きをした際にケーブルが引っ張られるといった事も特にありませんでした。

ソフトウェアについて

稼働する上で必須となるHaritoraConfiguratorの完成度が非常に高く、分かりやすく扱いやすいソフトに仕上がっていると思います。

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デバイス設定画面、シンプルかつ高機能

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取付位置を2種類選ぶ事ができ、好みで選択できます

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取り付けを間違えると警告が出る、地味ながらに嬉しい機能

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SteamVRにもHaritoraアイコンが、可愛い

定点カメラでの撮影

以下、VRChat上で実際に使用している写真を掲載しておきます。

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その他所感等

HaritoraConfiguratorはソフトウェアVerとファームウェアVerによって実際のHaritoraXの挙動が異なってくるらしい

Bluetoothアダプターは推奨品ではないと動作が保証できないらしい

本体やトラッカーからの発熱はほぼありません

取り外した状態ではかなり場所を取ります

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HaritoraXに飲まれてしまった私の机

公式サイト上からオンラインマニュアルを確認できます、購入する前の参考にどうぞ

総評

まとめにかかりましょう、HaritoraXは結局買いなのか?
この結論は個々人の環境や使用状況によるというのが答えです。

使ってみた感想として、立っている状態や寝ている状態でのトラッキングは問題無いものの、座ったり屈んだりした際の動きはVIVEトラッカーに劣り、総合的にはVIVEトラッカーの方が没入感は高いと思われます。
私は畳に座った状態での使用が基本なので使い心地が良いとは言えません。
また、前述した通り装着感が悪いのがVIVEトラッカーと比べて一番のマイナスポイントで、長時間着けていたいとはあまり思わないです。

HaritoraXの一番の売りはその価格にあると思います。
27900円でフルトラッキング可能というのは破格も良い所で、Oculus製品を利用する上でVIVEトラッカーを使うとなると諸々合わせて11万円程かかってしまう事を鑑みると、如何にHaritoraXが安いのかが伺えます。
取り分けOculus Quest2との相性が非常に良く、ベースステーションを利用しないでフルトラッキング環境を整えたいという人であれば買って損は無いでしょう。

また、VR睡眠用としては最高と言っても良い性能をしており、電池の持ちといいトラッキング方式といい文句無しです。

結論としては、総合的な没入感や装着感はVIVEトラッカーに軍配が上がるものの、コストパフォーマンスや特殊環境下において真価を発揮するデバイスであると言えるでしょう。
ベースステーションを利用したLighthouse方式のHMDを利用しているのであればVIVEトラッカーをオススメしますが、そうでないのであればこちらのHaritoraXを個人的にはオススメしたいと思います。

終わりに

最後まで読んで頂きありがとうございます。
思えば非Lighthouse方式のトラッカーはKAT locoやWalk OVRの頃から期待していたのですがこれだと言ったものがなかなか出ず、ようやくオススメできる品が出てきてくれたというのが個人的に思う所です。

今後は拡張パーツの発売も予定されており、耳目を集めるデバイスになる事は間違いないと思われます。

最後にVR業界の発展を祈りつつ、書籍「VRは脳をどう変えるか 仮想現実の心理学」39ページからの引用で締めたいと思います。


「VR技術の中で最も大事な五つの要素はなんだと思いますか?」

「答えはトラッキング、トラッキング、トラッキング、トラッキング、そしてトラッキングです」


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皆さんもフルトラになろう、楽しいですよ!

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