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閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対するtirzepatideの効果

NEJMoa2404881.pdf (nejmgroup-production.org)

N Engl J Med. 2024 Jun 21. doi: 10.1056/NEJMoa2404881.
 

睡眠時無呼吸症候群と肥満の関連は昔から言われています。その点に関する論文を読んでみました。

<Background>
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、睡眠中の呼吸障害で心血管イベントと関連する。tirzepatideは治療薬となるポテンシャルを秘めている。

<Methods>
中等度~重度のOSASと肥満のある成人を対象とした、2つのRCTを実施した。ベースライン時にCPAP治療を受けていない参加者は試験1に登録され、CPAP治療をすでに受けている参加者は試験2に登録された。tirzepatide(10mgまたは15mg)あるいはプラセボを52週間投与される群に1:1に割り付けた。primary end pointsは無呼吸低呼吸指数(AHI)のベースラインからの変化、secondary end pointsはAHIと体重の変化率、CRP、収縮期血圧の変化など。

<Result>
ベースライン時の平均AHIは、試験1では51.5回/h、試験2では49.5回/h、平均BMIはそれぞれ39.1、38.7であった。試験1では、52週目のAHIの平均変化は、tirzepatide群で-25.3回/h(95%CI、-29.3~-21.2)、プラセボで-5.3回/h(95%CI、-9.4~-1.1)であり、差は-20.0回/h(95%CI、-25.8~-14.2)であった(P<0.001)。試験2において、52週目のAHIの平均変化は、tirzepatide群で-29.3回/h(95%CI、-33.2~-25.4)、プラセボ群で-5.5回/h(95%CI、-9.9~-1.2)であり、差は-23.8回/h(95%CI、-29.6~-17.9)であった(P<0.001)。tirzepatide群で最も多く報告された有害事象は消化器症状で、ほとんどが軽度から中等度であった。

<Conclusions>
中等度~重度OSASの肥満患者において、tirzepatideはAHI、体重、CRP、収縮期血圧などを改善した。


<感想>
日本ではtirzepatideは糖尿病診療の典型的な肥満2型糖尿病に対して高い評価を得ており、その効果には目を見張るものがあります。米国では2023年にBMI30以上の肥満、あるいはBMI27以上の肥満症に対して抗肥満薬としての承認を得たため、肥満の人で溢れかえった世界の需要はますます高まっています。おそらく日本でもウゴービのように抗肥満薬として承認される日が近いでしょう。
また、この論文に記載されているようにOSASの初めての治療薬になる可能性を秘めています。呼吸器診療をしてきた身としては、Tirzepatideの登場はCPAP治療の大きな転換点と感じます。現在OSASの治療はCPAP、マウスピース、横向き寝くらいしかなく、いずれも対症療法でした。しかしtirzepatideは根本治療のため有効性は高いと思います。承認される日を待つばかりです。明日からはOSASかつ肥満2型糖尿病の方には積極的にtirzepatideを検討していきたいです。

少し心配なのは、CPAPの企業です。

愛知県春日井市
かすがい内科 咳と頭痛と生活習慣病
院長 山下 有己

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