発達障害、介護を受ける

片付けと掃除ができなさ過ぎるので介護を利用している。介護と言われてぱっと思い浮かぶご飯を食べさせてもらうだとかお風呂に入れてもらうだとかいうやつではなく、お手伝いさんのイメージだ。私は幸い発達障害を持った障害者ということになっているので、福祉としてそれが利用できる。私の場合は寝たきりでもないので、一緒に家事をすることになっている。

利用頻度は月に2回1時間ずつ。料金は1時間で500円ちょっとくらい。既に何回か来てもらっていて3人のヘルパーさんの介護を経験したので、それぞれがどんな感じだったかを書いていこうと思う。全員に共通するのは50代くらいの女性であること。女性の利用者のところには女性が来ることになっているらしい。


まず1人目はおかんみのあるヘルパーさん。小さな身体にスポーティな服装。私のことは下の名前に「ちゃん」をつけて呼んでくるし、タメ口で親戚の子供に話すみたいにコミュニケーションを取ってくる。いかにも大阪のおばちゃんという感じだ。

この人は片付け・掃除のうち片付けを中心にやってくれる人で、ごちゃごちゃした引き出しの中なんかを整理してもらった。整理整頓をしたり、ものの置き場を決めたりするのが苦手な私にはかなりありがたい。ヘルパーとしての"機能"でみると、この人が今のところNo.1だ。

だが気になることもあった。この人は雑談として身の上話をしてくる。シングルマザーで娘がおり、その娘が発達障害らしい。「娘が発達障害って分かったときはショックやったわ〜」おそらく何気なく言ったことだったんだろうが、話し相手が発達障害で、それだから介護を利用しているということに気がついていないのだろうか。私が"普通"に見えるから気にならなかったのか、逆にヘルパーを利用するくらい重度の障害者だから自分の娘とは違うと思ったのか。どちらにせよ多分このヘルパーさんも発達傾向があるんだろう。

アスペさが働いてか正直この発言で傷つきはしなかったが、「これって普通ダメなやつじやない?」センサーが反応した。でも"機能"はピカイチなのでこの人に来てもらうのが一番うれしい。


2人目はロボットみたいなヘルパーさん。1人目と対照的に私のことは名字+「さん」で呼び、敬語で話してくる。私が何を話しても決まった内容を返してくるようなコミュニケーションの取り方。何を入力しても同じ出力しか得られないのは手応えがない。私はコミュニケーションではなく片付けと掃除をお願いしているのだから、まあそこまで気にしなくてもいいわけだが。

しかし、家事に関しても満足のいくものではなかった。このヘルパーさんは家に来るなり「今日は何をしたらいいですか?」と聞いてくる。身体障害者の介護やお手伝いさんならこれが普通かもしれないが、私は発達障害の介護としてこのサービスを利用している。家事のうち何からどう取り掛かるべきかが分からないというのが私の障害だ。それなのに何をするか聞かれても困る。車椅子の人の介護をしに来て「とりあえず立ってください」と言ってるようなもんなんじゃないか?

私にも分かることとなると、単純な家事になる。例えばシンクに溜まった皿を洗うとか、汚くなったトイレを掃除するとか。だからいつもこのヘルパーさんが来る前はわざと洗い物をしないようにして、とにかく洗い物を中心にお願いしていた。その間、私は散らかった部屋と対峙することになる。散らかっていて片付けたほうがいいということは分かるが、どこから手を付ければいいのか分からない。そのためのヘルパーなのに、この人では私の部屋は解決できない。結局、事業所にお願いして他のヘルパーさんに替えてもらった。


3人目は美意識の高そうなヘルパーさん。マツエクの付いた目にきっちりメイク。水仕事をする可能性もあるのに、何故かニットでやってくる。この人は崩しめの敬語で話してくるが、1人目のヘルパーさんの影響か私のことは下の名前+「ちゃん」で呼んでくる。変に自分のことを話してきたりはしないし、私の入力に合わせるために脳を使ってから出力してくれている感じがする。3人の中では1番普通の人間に近いように思えるコミュニケーションだ。

肝心の家事に関しては、1人目と2人目の中間という感じ。ざっくりと「洗面所まわり」のようなお願いで掃除を進めてもらえる。ただ、片付けに関しては難しい。他人の家で何をどこにしまうか決めるというのはやはり抵抗があるものなのだろうか。私の"こだわり"の地雷を踏むのが怖いという気持ちもあるのだろうか。少しずつ「輪ゴムを見つけたらこのフックに掛けてほしい」とか「靴下はこの引き出しに入れてほしい」みたいな要望を伝えて覚えてもらうのがいいのかもしれない。ヘルパーさんの効率的な使い方の答えはまだ出ない。