![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/106750700/rectangle_large_type_2_f7466f7631bf445b3272ebc89926a0fc.png?width=1200)
創作あとがたり:『アポロ Lucax2's "KO-TO-NO-HYPER EUROBEAT!!" Remix』編
2023年。今年は、くりたにか主催のリミックスEP『アポロX』に、リミキサーの1人として参加して、
「アポロ (Lucax2's "KO-TO-NO-HYPER EUROBEAT!!" Remix)」
という曲を作りました。
リミックスEP『アポロX』は、5月5日の「コトノハーズフェスタ7」で頒布され、その後boothでの通販も開始しました(現在は在庫が無い可能性があります)。6月には、各種ストリーミングサービスなどでも配信がスタートしましたので、まだ聴いてないという方は、まずはこちらからどうぞ(ダイマ)。
そんなこの新曲も、製作中や完成後にも色々あれやこれやなことがあったので、年末のいい機会でもありますので、あとがたりとして振り返りたいと思います。
⚠️ 注意 ⚠️
この記事は13000字オーバーの思い出語り&作品解説です。
目次を活用すると便利かもしれません。
振り返りの前に
● 参加メンバー凄すぎ問題
そもそも『アポロX』はリミックスEPで、自分も含め6名のリミキサーによる6曲のリミックスが収録されています。
製作の振り返りの前に、まずはそのメンバーを見てみましょう。
原曲:
くりたにか (Twitter)
リミキサー(トラック順):
marok (Twitter)
Lucax2
NiNO01 (Twitter)
わかばマークおじさん (Twitter)
アイディアル・アイデアル (from Kuroneko Lounge) (Twitter)
電ǂ鯨 (Twitter)
改めて振り返ってみても、「なんでここに呼ばれたんだ!?」という感想が出るくらいのメンバーとなっています。
大元となる原曲「アポロ」は、NEUTRINO 琴葉茜・葵 公式デモソングとして作られたものですし、リミキサーの方々は合成音声界隈で活躍してる人ばかりです。
一方、自分が合成音声界隈、特に琴葉姉妹界隈で出したことがあるのは、2020年夏投稿の『花菖蒲 (Ko-To-No-Hardcore!! Remix)』(くりたにかとの合作)1作品だけです。
またこのときも、くりたにかとのユニット名である「*KuLu*」名義で作ったので、今回『アポロX』を聴いてくださった皆さんにとっては「Lucax2って誰?」となる人が多いんじゃないかと思われます(知ってくださっていた方は本当にありがとうございます)。
そんな豪華メンバーに紛れ込んだ人目線からの、今回の製作のあれやこれやを順を追って振り返っていきたいと思います。
ことのはじまり
◆ 2月某日
2月のある日、くりたにかから「アポロRemixアルバム作る機運あるんだけど、またRemixやってみない?(意訳)」という話がありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703772562099-fcCFqClmfk.png?width=1200)
(DM掲載許可済み)
面白い話だし乗りたい気持ちはあったのですが、ここでとても大きな懸念点が一つありました。それは
「果たして締め切りまでに曲が完成するのか」
というものでした。
これには自分の曲製作にまつわる事情が大きく2つ関わっています。
まず、自分の1曲を作るペースが遅めというものです。これまで作ってきた曲は完成までに数ヶ月かかったものが多い中で、今回の締め切りは3月末までの1ヶ月強という話でした。
そしてもう一つ、DTMに年単位のブランクがあるというものです。最後にリリースした曲は上記の花菖蒲リミで2020年夏、その後たまーにDAWをいじることはありましたがそれも2021年が最後と、曲の完成には3年弱、ツール使用には2年弱のブランクがありました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703785057989-bhOoh0d3mp.png?width=1200)
最後に作ったのは2020年夏
そして、これに近い状況で予定に完成が間に合わなかった前歴がありました。その曲こそが、上記の花菖蒲リミでした。くりたにかから2019年末に話を持ちかけられて、2020年春投稿を目指して製作していましたが全く間に合わず、結果として2020年夏の投稿へとずれ込むこととなりました。
この製作当時は、ソロリリースこそ無いものの、(とてもありがたいことに)企画を持ちかけられてそこに参加という形で、年に1曲は作る機会がありました。が、それでも花菖蒲リミは難航して予定に間に合わせることができませんでした。
遅筆にブランク、そして花菖蒲リミでの前歴を思うと、企画を受けても間に合わないということも十分に考えられました。また、花菖蒲リミではくりたにかとの個人間の企画だったのでまだ良かったのですが、今回のアポロRemixアルバム計画は他の参加者も予定しているとのことだったので、途中で間に合わないとなるより初めから企画を受けない方が他の人への迷惑をかけずに済むという考えもありました。
ただ今回アポロRemixの話を持ちかけてきたのが、他ならぬくりたにかでした。花菖蒲リミでの前歴を承知で、またやってみないかと話を振ってくれたということは、それでも信頼してくれているということだと思うので、それに応えたいという気持ちもありました。単に忘れてるだけかもしれませんが。
この企画を受けたい気持ちと、受けない方がいいかもしれないという気持ちで判断に悩んだ結果、締め切りに間に合わせられるかどうかを見積もるために「まずはリハビリ期間を1~2週間とってその状態を見て受けるかどうか判断する」という形で返事をして、一旦okをもらいました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703779344887-Uj52JIzeeO.png?width=1200)
◆ 翌日
そんな話をした翌日、くりたにかから企画に2人誘えたとの話がありました。そして、その参加者リストの中にアイディアル・アイデアルことRinさんが居ることを知りました。
自分にとって、このRinさんの存在はとても大きなものでした。
というのも、自分の曲作りにおいてとても影響を受けたものの一つ、それがRinさんの作品だからでした。曲を自分で作るということをし始めるよりも遥か昔、10年ほど前に出会った東方のハウスアレンジに心惹かれ、クラブミュージック系同人音楽沼に足を踏み入れるようになり、その後もRinさんの多岐に渡るジャンルの曲を追いかけたりする中で、本当に多大なる影響を受けました。
また、アレンジじゃないオリジナル曲の同人アルバムを初めて手に取るようになった頃にも(……Rinさんなら色んなのが聴けてしかも外れない……!!)という安心感でRinさんのアルバムをまずは手に取っていましたし、M3に行くようになった頃にも現地でファンとして応援していますということをお話しできた時は感慨深く思っていましたし、ランダムセレクト祭りでYUKARIを引いた時には泣いてましたし、ファンとしても自分にとって大きな存在なのがRinさんなのです。
その人が企画に居る。
この話を聞いた時の自分の感情は、それはそれはとんでもなく揺さぶられたのでした。ファンとしても曲を作る身としてもめちゃくちゃリスペクトしている人が居るような企画に、年単位のブランクもある自分が声をかけられたという理由だけで一緒に居ていいのかという不安やプレッシャーは、はちゃめちゃに大きなものでした。が、それでも長年リスペクトしてる人も居る企画に声をかけてもらったという事が、思いもよらない奇跡的な巡り合わせなので、この機会を大切にしたいという思いも大きなものでした。
この両端の感情に悩みつつも、リハビリを通じて自分のブランクの状態を確認した上で、巡り合わせを大事にすることを重視して、一歩踏み出して企画を受ける事にしました。
そして受けるからには、自分に出来ることを出来る範囲で最大限やってやろうと心に決めました。結果的にどんなものができたのかは、みなさんお聴きのとおりです。
時短製作のための作戦
さて、企画参加が決まって楽曲製作をする事になったのですが、この時点で締め切りまで1ヶ月強と、通常の自分の楽曲製作ペースでは間に合わないことが分かっていました。幸いにも、ブランクの状態はツール類の操作が問題ない程度だったので、これまでの楽曲製作の作り方でどうにか1ヶ月に収める時短の工夫をしながら作るようにしました。
▼ ジャンル選択
今回はリミックスを作るので、まずはジャンル選びから。
この企画に誘われる前から、アポロは直感でユーロビートが合うだろうなと思っていました。イントロの小気味良い刻みのノリでシンセリフを刻んだら楽しいだろうなとうっすら考えてたりしていました。
一方でもう一案、宇宙にひっかけてスペーシーでシンセな綺麗めドラムンベースというものも考えていました。ドラムンの流れるような推進力のあるリズムで宇宙遊泳しても楽しいだろうなとも思っていました。
この2案を大体9:1くらいでユーロビートかなと思いつつ、その後の時短のために、ジャンル選択の根拠をはっきりとさせて製作方針を固めることにしました。
今回選択の根拠になりそうなことで考えていたのは主に3つ。
まず、自分のイメージしている琴葉姉妹像。なんとなーく「なんやかんやありつつも楽しそうなことはノリよくやってそうな元気な二人」であってほしいイメージを自分は持ってるので、これを出すならノリと勢いと楽しさが出せるのが良いと考えました。
次に、この企画での自分の立ち位置。琴葉界隈での唯一の曲の花菖蒲リミが、綺麗系というよりかはパワー系のアレンジで、この時点で話に聞いている感じだと綺麗系の曲を出しそうな人が多めっぽそうだったので、リミックスの多様性としてはパワー系担当を期待されてる可能性はあるかもしれないなと思いました(後日この予想が当たっていたことが分かりました)。
そして、今回作るのがアポロのリミックスだということ。ここはやっぱり歌詞に合わせて第1案のプランAを譲らない事にしました。
というわけで、ジャンルは「パワー系でノリと勢いと楽しさが出せるプランAのユーロビート」に決定。締め切りまでの時間という制約もあるので、このジャンルの中でも変化球を交えず、豪速球ど真ん中な直球勝負の方針で行くことにしました。
▼ ユーロビートの教科書探し
ジャンルがパワー系ユーロビートに決まったは良いものの、実はこのジャンルの曲を作るのは初めてでした。なので時短製作のためにも、「どういうものを用意すればユーロビートっぽさが出せるのか」という手ほどきとなる教科書みたいなものをまずは探すことにしました。
まず探したのは、ユーロビートの中のサブジャンルの方向性を眺められるもの。ユーロビートと一口に言ってもアレンジの方向性は様々なので、今回のアポロユーロリミでは「どういうアレンジを主軸にするのか」「どういう要素を取り入れたいか」という部分を考えるのに、比較しやすいサンプルがいっぱいあると楽に手早く方針を固めやすくなる思いました。
ちょうど良いことに、Eurobeat Unionさんがやっている「大陸間ユーロ武道会」を見つけました。これは「課題曲を思い思いのユーロビートにリミックスするコンテスト」なので、「同じ曲をさまざまな種類のユーロビートにリミックスしたものを聴ける場所」になっていることに気がつきました。いろんな方向性のリミックスを聴いて、同じ曲に対するアプローチを比較したり、細かい要素をピックアップしたりして、方向性を固めていくのに役立てていました。
そしてもう一つ探したのが、基本的なユーロビートのパート構成とそれぞれの作り方についての解説。初製作のジャンルなので、まずは「教科書通りに作ること」これを目指して、その教科書を探すことにしました。
幸いにもわかりやすい教科書として、DJ Command氏によるユーロビートのパート構成メインの解説記事シリーズと、FN2さんによる自曲のパート別解説動画シリーズの2つを見つけ、これらを参考にすることにしました。製作中は基本的にこれらをなぞるような形で進めていて、初めてのユーロビート作りでしたが製作の手順も迷わずとても助かっていました。
▼ リファレンス曲の話
上の参考にしていたものの他にも、製作中によく聴いていた曲を紹介します。アレンジの参考にしたりしなかったりしつつ、テンション上げたりやっぱりユーロビート最高だなぁって思ったりするために聴いていました。今回出来上がったリミックスに、これらの曲のエッセンスがあったりするのでそれを探してみるのも面白いかもしれません。
◤◢◤◢◤ 特によく聴いていたものたち ◢◤◢◤◢
NEVER GONNA STOP / NU-KO
上記の解説動画で解説されている曲。教科書として構造はこれを概ねなぞるように製作した。
Selfish daysのリミックス
上記のユーロビートリミックスコンテストの曲たち。方向性がたくさんあってためになった。個人的にはSelfish days (R-GOOSE REMIX)が好み。
Spider's Blood / 越田Rute隆人
主に思い切りテンション上げる用。炎が出るタイプの超豪速球みたいな激アツ系カッコよさに溢れる曲。そこから流れる一雫をどうにか取り入れたいとも思ってはいた。
DIAMOND / Cocoa
イントロのユーロブラスのリフが大好きな曲。展開ごとに入っていくパートがやっぱりこれだよねといったものなので、スタンダードなアレンジの基準として聴いていた。
Crazy Hot / 坂上なち
艶カッコいいテンション上げに一役買っていた曲。イントロやサビなどのユーロブラスの使い方の参考もしていた。
WARNING! / 3L・maria♂polo
ジリジリと灼けつくような豪速球とはまた違うアツさでテンションを上げる用の曲。これもユーロブラスのリフのお勉強に聴いていた。
Burning Flame / AJURIKA feat.SAK.
主にテンションをブチあげる用。ユーロではなく現代ジュリテクでギラついた盛り上がりをお勉強していたが、落ちサビがマネしたすぎた(後述)。
◤◢◤ その他のリファレンスプレイリスト曲 ◢◤◢
Reversible Voice / まめみ
RIGHT OR WRONG / AXEL.K & SHIHORI
KAKEHIKI Holiday Night Version / AXEL.K × NAGISA
Last Moments / 3L・maria♂polo
Don't Break Me Down / AXEL.K
Shyness / 越田Rute隆人 & あき
Lunatic Paradise / AXEL.K
Get it Done / AXEL.K
DAY BREAKER / SHIHORI
Break the Hierarchie / 花たん
改めてリストを見ると偏りがすごいですね。お気づきの方もいるかもしれませんが、元々東方ユーロビートをたくさん聴いていた時期がありました。その影響で、自分のユーロビート知識がその辺りに寄っているのもありますが、今回作りたいものの方針がこの辺りだったので、参考の曲を探すにしても教科書を探すにしてもちょうど良かったです。
楽曲製作よもやま話
そんなこんなの初ユーロビート。教科書をなぞりながらも、アポロのリミックスを作るにあたって、色々と工夫したり自分でも気に入ってるポイントがあったりするので紹介します。こんなんなんぼあってもいいですからね。
★ イントロのリフのリズム改造
原曲アポロで特徴的なものの一つに、イントロのスティールパン系のもので刻む「タタッタッタタン」のリズムがあります。「この刻みをユーロブラスにしたら楽しいだろう」というところからユーロビートリミックスを思いついたようなところもあるのですが、結果として出来上がったものは原曲とは違うリズムになりました。これには色々と試行錯誤がありました。
原曲では、「半小節の『タタッタッタタン』を3回繰り返して半小節のキメ」という2小節を繰り返すリズムになっています。
元々の予定では、「1小節目はそのまま、2小節目前半はアルペジオに変更、2小節目後半のキメは偶数回目だけ変更」というリズムでした。が、いざユーロブラスで鳴らしてみると、思っていたよりも「1小節目がなんかハマりが悪い」ということが分かりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703785342777-s2eiQuYOWy.png?width=1200)
「タタッタッタタン」の16分裏を刻むクセのあるリズムがアポロの大事なポイントだと思っていたので、初めはリズムをそのままに長さの調整や音程の入れ替えなどやってみていたのですが、どれもイマイチな感じでした。
そこで、「16分裏の雰囲気はそのままにリズムを崩そう」と思い切ってやってみたら、これがいい感じになりました。
採用したリズムは「タタタタンタタン」で、1拍目を4連にしてユーロ的な勢いを乗せつつ、その先は同じなので2拍目頭が抜けて16分裏の雰囲気を残しつつな形になりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703785392267-D7KlQG9cIK.png?width=1200)
結果的にイントロのリズムは原曲と違う部分が多くなりましたが、「原曲の感じがありつつも形を崩して新しい一面を見出す」というのがリミックスの一つの味だと思っているので、これはこれで自分としては満足な着地となりました。花菖蒲リミのAメロ間奏とかこういう崩しを過去にもやっていたおかげで、このアイディアが出せたのかもしれません。
★ コロコロ切り替わるのがアポロっぽい
原曲アポロのサビで姉妹のパートがコロコロ変わるところ、PVのグルグル回る演出も相まって、自分は強く印象に残っています。そこの印象を拾って、特にサビを中心にメロをなぞるパートがめちゃくちゃコロコロ切り替わるようにしました。
まず、メロをなぞるようにしたのには大きな理由があります。至って単純。時短製作のためです。
歌ものユーロビートの裏で鳴る目立つメロは、カウンターな感じのユーロブラスリフでも楽しいですが、どうしても新しいメロを作るのは時間がかかります。時短製作のためにも「原曲にないメロなどの音の動きを新しく作るのは、なるべくローカロリーにしたい」という事情もあり、メロをなぞるのを主軸としてちょっと飾りをつける方針でいきました。
それがあった上で、アポロの切り替わり感を取り入れるために、パートを入れ替わり立ち替わりするようにしました。個人的にHi-Tech Full Onのような毎拍くらいパートが切り替わっていったり音数や音色が大盛りになってたりするものが好きなので、そこの好みのこだわりをユーロに取り入れたりもしています。
![](https://assets.st-note.com/img/1703851707155-49D9NGdoXg.png?width=1200)
ボーカル以上のペースで入れ替わるようになっている
サビ以外もいろんなところでパートが入れ替わり立ち替わりになっている
★ サビ終了後に追加した1小節
今回のアポロユーロビートリミは、花菖蒲リミと比べると曲構成をあまりひねらず、原曲とほぼ一緒にしています。時短製作の直球勝負ということでほとんどそのままにしていますが、その中でもこだわりを持って変更したところがあります。その変更が「サビ終了後に1小節追加」です。
1小節追加は、開幕・1サビ後・ラスサビ後の全部で3ヶ所あります。そして、この1小節追加には大きな「伏線」としての役割があります。それは「ラスサビ後に自然にアウトロを追加するため」です。
アポロ原曲にはアウトロがありません。ユーロビートリミックスにするにあたって、アウトロなしでスパッと終わりにするのは今のユーロ力では難しいと判断してアウトロを追加することにしました。ただ、そのままアウトロにイントロや間奏と同じものをくっつけると、原曲アポロを知っているとどうしてもスパッと終わる印象の影響で、継ぎはぎ感が出てしまうと考えました。
それを回避するために、「そもそもサビ後が原曲と違うという印象を持たせられれば、より自然にアウトロに行ける」と考えました。そうして生まれたのがサビ後の1小節でした。開幕と1サビ後の2回を「サビが終わったらこの1小節があってからイントロのリフが始まる」という印象を与える前フリの時間にして、ラスサビの後で「この後イントロと同じアウトロのリフが始まるけど、これまで通りだよね」という本命のフリにしています。実際、この伏線の効果があったのかはよく分かりませんが、個人的にはかなりのお気に入りポイントです。
![](https://assets.st-note.com/img/1703853097341-GlPoQzBzyW.png?width=1200)
また、サビ後に1小節入れたおかげで、サビ終わりのボーカルとイントロのユーロブラスを被らないように出来たり、サビとイントロを同じくらい盛り上げるようにしているのでその区切りをはっきりとさせるタメの役割を持たせられたりと、一石何鳥もある美味しい変更となりました。
構成話ついでに余談をば。小節数に注目すると原曲アポロの構成は工夫されているポイントが色々あります。サビ前の1番と2番の違いとか。そういったところに関して自分のユーロリミは、構成はそのままにしつつ、アレンジは1番をベースに2番を半ば強引に合わせる形で、全体として同じ雰囲気になるように仕上げています。このあたりの曲構成をどうしたのかというアプローチは人それぞれなので、そこに注目して他の参加者の方々のリミックスも聴いてみるのも面白いかもしれません。
★ 落ちサビでBurning Flameをやりたかった話
リファレンス曲を色々探している時に、Burning Flameの落ちサビを聴いて「これやりたい!!」となりました。落ちサビ前半の後、ボーカル以外にフィルターをグッと掛けて低音のノリを入れつつ徐々に開くフィルターで盛り上げていく、というのがあまりにも最高だったので取り入れました。
実際に作ってみると、フィルターをグッとかけるタイミングやスピードには結構難儀しました。パッとかけると、「伴奏どこいった?」って気持ちが来てしまって、聴いて欲しい低音パートが見つけづらくなってしまいました。そこでグッとフィルターをかけるときに、Burning Flameとは違いあえて分かりやすいようにゆっくりとかけて、「今からフィルターかかりますよ」という説明を入れることにしました。しかし、この長さの調整が難しくて結構試行錯誤を繰り返しました。Burning Flameってすげえや。
★ 隠れ原曲SE
原曲アポロには特徴的なSEがいろいろ使われています。これが個人的に好きなので、いくつかサンプリングして元々の使われている場所と違うところで使っています。分かりやすいのは、開幕の「譲れないプランAだ」の前のSEでしょうか。他にもあるので是非探してみてください。
★ タイトルの話
紆余曲折ありましたが、時短製作の工夫も功を奏して、どうにか締め切りまでに曲を完成させることができました。しかし、製作するものはこれだけではありません。タイトルが残っています。このタイトルについてもこだわりポイントを詰め込みました。リミックスのタイトルなので、シンプルに「(曲名) (名義) Remix」でも良かったのですが、そうはしなかった理由があります。
・ジャンル名に仕組んだもの
まず、何度か話題に上げている通り、自分は琴葉界隈での作品が花菖蒲リミの1つしかありません。なので、「このリミックスEPをメインで聴く層には、名前だけだとどんな曲を書く人なのか全く分からないだろう」という予想がありました。名前と作風が繋がって認識されている人であれば、その人の名義がついたタイトルを見たときに、その作風から中身を予想することができます。その予想が当たってるにせよ当たっていないにせよ、その「予想をするという体験」は、曲を聴くことにプラスアルファのおまけをもたらしてくれます。
そこで、名前が通っていない代わりに、「ジャンル名をつける」ことと「花菖蒲リミのタイトルを踏襲する」ことにしました。ジャンル名なら知らない名義より中身が予想しやすいですし、唯一の作品の花菖蒲リミをなぞることでこの曲と繋がりがあることを示唆して作品を知ってくださっている人にそれとなくイメージをさせることができる、と考えました。
この時点で、「EUROBEATをつける」「Ko-To-No-Hardcore!!をなぞる」ということが決まりました。
・ユーロビートは大文字
ジャンルをつけることが決まったので、つけるジャンル名を次に考えました。とはいっても、「Ko-To-No-Hardcore!!をなぞる」形なので、「コトノハ〇〇」で繋がるユーロビートなジャンル名はかなり限られています。なので、割と早めに琴葉+ハイパー+ユーロビートで「コトノハイパーユーロビート」に決定。
そして表記は「KO-TO-NO-HYPER EUROBEAT」にしました。なんとなく自分の持っているイメージとして、「ユーロビートは大文字表記」というものがありました。全然大文字に限ったジャンルじゃないのに、なんででしょうね?SUPER EUROBEATのイメージかも?
ともかく、自分としてはこの全部大文字という形がスッキリするのでこのようになりました。
あとは、花菖蒲リミと同じく琴葉姉妹2人分の「!」を添えて「KO-TO-NO-HYPER EUROBEAT!!」となりました。
・クオートを曲げるか曲げないか
ジャンル名が決まったあと、名義を添えるかどうかは少し悩みました。実際、花菖蒲リミではつけていません。ただ、今回はリミックスEPでの一曲なので、いろんな参加者がEPにいることを分かりやすくするためにも、名義を添えることにしました。あと、名前を覚えてもらえたら嬉しい気持ちももちろんありました。
リミックスで名義とジャンル名をセットでつける時は、個人的なルールとして、「(名義)(クオート)(ジャンル名)(クオート)(リミックス)」の形を基本としています。なので、今回は「Lucax2's (クオート) KO-TO-NO-HYPER EUROBEAT!! (クオート) Remix」とまずはなりました。(Remixが小文字使用なのは、ジャンル名が全部大文字なのでそことの差別化をして「コトノハイパーユーロビート」というジャンルがあることを強調しています。)
で、クオートなのですが、クオートには「""」と「“”」の種類があります。今回はクオートで強調すること自体はそこまで強調せずに、脇役として添えるタイプのクオートが欲しかったので、シュッとした曲げないクオートの「""」を採用しました。
結果として、
「アポロ (Lucax2's "KO-TO-NO-HYPER EUROBEAT!!" Remix)」
というタイトルが出来上がりました。
タイトルも合わせて、どうにか締め切りまでに曲を完成させて提出することができました。この時は、時間的にも負担的にも結構ギリギリでしたが、一歩踏み出して挑戦してみたものに工夫して立ち向かってどうにかなったことに、ひとまずは安心感が大きかったです。
曲完成後のあれやこれや
曲自体はここで出来上がったのですが、その後もアポロXの製作はデザイン類などが続いていったり、リリースされた後にもなんやかんやあったりなど、曲の完成後にもまぁいろいろありました。
■ 単曲プレビューを作りたくなった
曲を提出後、アポロXのEP全体の製作はお任せして、うちの子がどうなっていくかを見守るフェーズとなりました。
5月のリリースに向けて、アルバムのクロスフェード試聴動画も作っていただいていたのですが、「やっぱり界隈的には自分がどんな曲を書くのか分からないだろう」ということで、単曲のプレビューを作ってリリース前に情報を多めに出そうと考えました。タイトル同様、知らない人の曲でも中身が分かりやすくなれば受け入れてもらいやすくなるだろうという作戦です。
単曲プレビューの許可をもらって、いざプレビュー準備へ。ここで、単にクロスフェードよりも長い尺で切り出す形で用意しても良かったのですが、「Twitterで試聴動画を流すとすると、今どき単曲で長尺はダレるのではないか?」と考えました。
そこで、曲中の美味しいところを短くピックアップしていっぱい繋げる、名付けて「単曲プレビューショートミックスバージョン」を用意するという案を思いつきました。多くの情報量を出すことができながらダレることを回避でき、何よりユーロビートっぽいのでいいのではないかと思いました。
![](https://assets.st-note.com/img/1703784151973-gDkhZ3BsdX.png?width=1200)
しかし、ショートミックスはsoundcloudのような音源のみで聴く環境だと、これはこれで心理的に聴きにくいのかなとも思いました。単曲プレビューの投稿先としては、Twitterとsoundcloudを考えていたため、長尺かショートミックスか悩みましたが、長尺もショートミックスも用意してそれぞれを投稿することに決定しました。手間は増えますが、どっちも用意してみたくなったので用意することにしました。
クロスフェードではイントロの部分を使ってもらったので、単曲プレビューでは歌の部分を中心にしました。長尺の方は、区切りのいいところが難しかったので、思い切って1番をまるっと使う形にしました。ショートミックスの方は、各構成部分をそれぞれ切り詰めて順番を感じの違うものが並ぶようにシャッフルして繋げる形にしました。
そして長尺をsoundcloudへ、ショートミックスをTwitterへ投稿することにしました。
■ ショートミックスには動画を作りたくなった
ショートミックスの方をTwitterに上げるにあたって、せっかくなので動画も自分で作ってみたくなったので作ることにしました。
動画製作自体、昔VJ素材を作ってみたりしていたことはあるものの、それは昔の話で作曲以上にブランクがありました。が、この単曲プレビュー動画自体はアポロX全体には影響のないもので、もしリリースまでに出せなかったとしても特に被害はなく、また長尺のプレビューをsoundcloudに上げるという保険まである状態だったので、勢いで作り始めました。
あまりにもブランクがありすぎて、新しく動画製作環境(AviUtl)をPCに用意し直すところからのスタートになりましたが、なんとか3日で作りきれました。
動画にも曲やタイトル同様、こだわり小ネタを色々詰め込みました。その一部を紹介します。
● アルバムジャケットの姉妹を背景でぐるぐる回しているのは、原曲アポロのサビのイメージとCD盤面の回転のイメージの合わせ
● 半透明の部分は、アポロXクロスフェード試聴動画のデザインを借用して同じ作品の範囲内ということを醸すため
● 半透明部分の外周はシークバーを表している
● シークバーの未到達の部分が点線になっているのは、道路のイメージ(ユーロビートと言えばイニDなので)
● 半透明部分の内側にはうすーく色々意味のあることが書いてある
● スクラッチ音の際の配色は原曲アポロのPVから借用(他にも原曲PVネタを入れている)
● スクラッチ音で表示されているものは、もう一つのシークバー
アルバム全体のクロスフェード、単曲の長短それぞれのプレビューについては、過去の告知記事にまとまっていますのでそちらからどうぞ。
■ リリース後の動き
製作メンバーの方々の尽力もあって、無事にアポロXは5月にリリースされ、6月に配信の方でもリリースされました。リリース後、いろんな方に聴いていただいたり、感想も見かけたりして本当にありがたい限りです。
その中で、DJで使っていただいているのをいくつか観測しました。
#ボカクロ DJセトリ🎷
— なみぐる@ずんだもんがいっぱい 全国リリース (@namigroove) June 4, 2023
序盤ネオソウル
中盤ガラージ
終盤クソ早フューチャーファンク
の雰囲気 pic.twitter.com/6dRZrc2Tvf
#ボイハモ お疲れさまでした!!!!!!
— ひよく 𝕏 𝔼𝕕𝕚𝕥 (@ProjectionHiyoQ) July 16, 2023
流したい曲を流すべく140→220→110→137というトンデモBPM世界旅行なセトリでした!!!!
みなさん!!!!夏が来ました!!!!! pic.twitter.com/7vcSdcVVQJ
これ、めちゃくちゃ嬉しかったです。やっぱりクラブミュージックはこうしてクラブで使われるというのが製作者冥利に尽きます。実際、今回のリミックスではイントロアウトロは長めにとって、長めのつなぎもいけるようにするなど、DJ利用を意識してはいたので、それが叶ったというのは嬉しい以外の何事でもありません。
そして、想定以上の出来事がありました。
6月に行われた合成音声キャラ界隈では最大級規模の音楽フェス「VVV MUSIC LIVE」。なんと、その前夜祭に行われたずんだもんのDJ企画で使ってもらいました!!
![](https://assets.st-note.com/img/1703784486323-wh1b5KzX8W.png?width=1200)
前夜祭と言えどこの規模のイベントで使ってもらったということもびっくりなのですが、何よりこのDJ企画は「事前に曲のリクエストを募集」して流す曲が決まる企画でしたので、「誰かがリクエストしてくれた」ということでもありました。リクエストしてくれた人がいて、それを使おうと判断した人がいて、このイベントで流れることになったので、もうありがたい限りでした。
このコンピの話を聞いた段階で、ここまでのことになるなんて思いもよりませんでした。何事もやってみるものですね。
おわりに
話を受けた時はいろいろ悩むことはありましたが、思い切ってこの話に工夫しながらチャレンジした結果、チャレンジしなければ出会えない嬉しい出来事に遭遇することができました。本当にありがたい限りです。また、先人たちが残していったもののサポートを受ければ、このくらいのことはまだ出来るんだという自信にもなりました。その時々で、趣味で作りたいものは色々あってDTMは相変わらず開店休業状態ですが、機会やインスパイアがあれば、今度はブランクとか気にせずにまたやろうと決めました。
・リミックスEP『アポロX』はこちらからどうぞ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?