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スウィング(京都市)の取り組み

 精神障がい者にも地域包括ケアをという流れは「にも包括」の一種と俗称されるが※1、障害者も地域包括ケアシステムの枠組みの中で捉える方向に向かって欲しいという期待を込め、固定観念を崩す一事業所による福祉的な試み、仕掛けとして、NPO法人スウィング(京都市)の取り組みを取り上げたい。無認可の作業所として2006年スタートしたスウィングは生活介護事業所、就労継続支援B型事業所となり、2019年に生活介護事業所として統合された。法人の理念は「Enjoy! Open!! Swing!!!」で、問題が起きても視点を変えて楽しむ事(Enjoy)、硬直しがちな組織や自らをひらく事(Open)、軸はありつつも揺れ変化し続ける事(Swing)を意味している。設立者、木ノ戸昌幸は幼少の頃からスポーツ、勉学に優秀で、周囲の期待に応える子供であった。しかし次第にそれが逆に重荷となり、レールからはみ出さない様にという強迫観念から、心身のバランスを崩す。そんな中20歳の頃、大学生の不登校を考えるシンポジウムに参加、こうあるべきだという社会が定めたまともな姿に過剰に縛られている自らを感じた。26歳の時、福祉職に就職、28歳でNPO法人スウィングを立ち上げた。会社定款では、活動会員の支援者/被支援者、健常者/障害者という区分をなくし、既存の仕事観や芸術観に囚われない旨を基軸としている。以上※2
 表現活動は、ふとしたことから始めた絵の創作が、絵の創作が好きな人もいれば、そうでない人もいる、それを仕事にしてしまえばいいというアイデアから、軌道に乗った※2。展覧会の紹介動画「Flower」からは、既存のこうあるべきだという強迫観念に囚われず、自由に感じ自らを表現し、癒すという基本理念から、障害者事業所でありながらも、固定観念を崩し社会をも突き動かすエネルギーすらも感じる※3。
 地域包括ケアシステムとは、現行の仕組みや制度の限界に囚われず、個人の課題解決を起点に、不足する介護人材を効率化し、困りごとを解消、併せて事業成果を生み出し、もって地域づくりの醸成を図る試みである※4。その中でスウィング(京都市)の試みは、障害者の介護・就労支援・福祉・作業所施設・居場所という現存の観念に縛られず、様々な働きや機能を集約し、地域の中で生きる権利、自由に失敗する自由、自由に表現する自由を謳う福祉的な試みであると思われる。障害者である事を障壁とされず地域の中で居場所が提供され、生きてゆき働く場の創出が急務となっているが、高齢者介護が地域包括ケアの中心課題とされ、障害者の場合は関係機関の協力連携が不充分な現状がある。行政や自治体、地域、医療機関が連携し、人間らしい誇りや尊厳を担保確保し、基準となる賃金の水準や生活や健康の水準の維持改善を図る地域を巻き込む包括的な試みが今後も盛んになる事を願う。

※1:YouTubeサイト動画(ドクター藤田のメンタルゾーン)を参照。
※2:『障害者と表現活動』川井田祥子(水曜社)2020より要約。
※3:YouTube動画(スウィング)より。
※4:本科目動画教材より参考。

Note:LUCANUST-ANGLEにて掲載。

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