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歩んでいく道、とは何か。

「いやぁ、来た価値がありました。うん。」
後輩たちの試合が終了したピッチに再び目線を向けながら、彼は言った。
僕には、彼が彼自身にもその言葉を投げかけているように思えた。


2019年12月8日。
アビスパ福岡U-18の今季最終戦。"奇跡"を信じて闘った選手たちは、結果として逆転残留することは出来なかった。
ただし、その90分間で見せてくれた魂のプレーは本当に凄まじく、これからも語り継いでいきたいと思う。

冒頭の言葉に戻りたい。
言葉の主は、2015年度のアビスパ福岡U-18の卒団生。来季からトップチームに入団する東家聡樹の世代。つまり、現在大学4年生である。

彼の春からの進路は、就職。大学のサッカー部でもプレーしたが、壁は高く厚かった。
ただ、就職先を聞いて納得した。彼の"自分の技術で、まわりを活かす。"そんな他己的なプレースタイルにぴったりだと思った。

新たな道を歩んでいくのは、奇しくもピッチ内の選手たちも同じ。
今季最終戦。つまり、トップチームに昇格出来た選手がいなかった3年生にとってはアビスパ福岡としてのラストマッチ。

みんなとプレーする楽しさ。離れていく寂しさ。結果への悔しさ。
3年間の感謝。仲間への想い。後輩に伝えたいもの。
選手たちの胸に入り交じっていたであろう、様々な感情。

それが引き起こしたような、ジェットコースターのような90分間。
リードされる、追いつく、またリードされる。
諦めない、追いつく、そして逆転。勝った。だがチームは降格。
僕は少し、人生の縮図を感じた。彼は、何を感じたか。

「いやぁ、来た価値がありました。うん。」
大学4年生。彼はこの春、サッカーを辞め社会人として働く。
きっと新たな"ピッチ"でも、彼は活躍出来ると確信している。

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