実録! うんこの味はこうだった

 やや濃い茶色の柔らかめのうんこが出た。 カップめんの空き容器(赤いきつねだった)に出したそれは、カップめんの容器の半分弱をぼとっと占めた。標準的なよくあるうんこの匂いがむわっと一面に広がった。

 私は空の浴槽に入ってうんこを出したのだが、尻にうんこが張り付いている感覚が気持ち悪かったので、カップめんに出した茶色のうんこを一旦横に置いて尻をシャワーで洗った。うんこのかけらがシャワーの流れに乗って浴槽を軽く一周した。少し人心地がついてうんこを食べる気力が湧いてきたので、まず指で少しすくって食べてみることにした。うんこを出した時から口に含むまでの間に鼻が慣れていたので食べる時にはうんこの匂いは気にならなかった。右手の人さし指で、第一関節あたりまで使ってすくいとった。その感触はチューブ入り歯磨き粉の中身を手に乗せた時の感触よりは固く、つまりチューブ入り絵の具の中身の感触だった。柔らかそうな見た目に反して、そのうんこは手にこびりついて困るという事はなかった。食べてみた時の味は、これは人さし指に掬ったうんこを下の前歯の裏に舌ですりつけたのだが、薬臭い苦さだった。 この苦さはどんなものに似ているだろうか。二秒ほど考えた結果、甘さのない粉薬の味だったことがわかった。あるいは苦い漢方薬の味だった。
 その薬臭い苦みが一気に口に中を塗りつくした。そしてうんこを嚥下するためにちょっと口の中で噛んだのだが、その時に口の中に残るものがあった。 煮込んで味のなくなったようなネギの味をした、大きさ三ミリ角ぐらいの柔らかい塊だった。ネギだった。それを飲み下そうとしたが、ここで私は軽い吐き気を覚えてしまった。
 なぜならそれはうんこの中の未消化物で、しっかりと普通の食べ物の味をしていたからだ。つまり、うんこの非日常と未消化物の日常とが隣り合い、そしてそれがうんこのあのべとっとしたペーストによって一体となっているのだった。それゆえ煮込んで柔らかくなったふぬけたネギという日常の味がすぐさまうんこの味になってしまう。食べ物や薬と言った日常の味の世界からうんこの味を隔離するという日常――非日常の味の秩序を、うんこの中の未消化物は壊しにかかっているのだった。 そういえば、いつかインターネットの掲示板で見たうんこを食う話も、普通の白い皿に映えるうんこのインパクトだとか、ケツからずるっと出てくるチンゲンサイだとかがそれぞれの話で最も強烈に描写されていた。したがって私が覚えたこの軽い吐き気の理由は、この味に関する日常――非日常の秩序が崩れかけるのを感じたからだと判断した。まだ二口しか食べていなかったが、ここでうんこを食べるのをやめることにした。
 とりあえずシャワーで口の中をゆすいでからシャンプーを少量口の中に含み、またシャワーを口に入れてゆすぐと口の中がシャンプーの味で一杯になったので少し安心した。その後うんこを便器に流し(便器の30センチほど上から落としてしまったので便器にうんこがこびりついた)、カップめんの容器はシャワーに当てながら手でこすって洗った。
 尻を念のためにトイレットペーパーで拭いてみると、茶色いうんこが紙にこびりついた。まだまだ洗い残しがあったのだ。そこで私はトイレットペーパーで拭いて汚れが落ちたかどうかチェックしながら水に濡らしたトイレットペーパーで尻を何度か拭いた。その後歯を磨いた。歯を磨きたいという気分がかつてないほど強かった。歯を磨き終わると人心地がついた。そして手を洗った。私の初めての食糞はここで終わった。
 次に食べるうんこはどんな味をしているのだろう。暗いこげ茶色の中くらいの大きさの、にちゃっとした柔らかめのうんこが頭によぎった。

2013/07/10

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