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最期の冬、母になりたいと思った。

”母親”の定義って難しいですよね。子供を産んだからといって直ぐに心が母親になるわけではないし自分が産んでなくても母親になれることもあります。多様性が強調されている現在”母親”の定義も幅広いのではないかと私は思います。

そんな無償の愛が描かれる映画2020年公開「ミッドナイトスワン」についてネタバレ有りで紹介していこうと思います。

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まずこの映画ネタバレなしで見た方がぜった良いと思うのでまだ見てない方はこの記事読まないでください。できるだけ。ネタバレなしで簡単にあらすじだけ紹介しようと思います。

あらすじ:故郷を離れ、新宿のショーパブに立ちひたむきに生きるトランスジェンダー、凪。ある日、養育費目当てに育児放棄にあっていた少女の一果を預かることに。常に片隅に追いやられてきた凪と孤独の中で生きてきた一果。理解し会えるはずもない2人が出会った時、かつてない感情が生まれる。

この映画一言で表すと...

どこを切り取っても痛くて、切ない。

展開も予想外の方向にいくし2人の孤独という「共通点」。映画を見終わった後久しぶりになんとも言えない感情がしばらく続いた。”余韻”てやつですね。

最初は主人公の凪を演じる草彅剛に見慣れなくて(変なの〜)っていう感情になるんですよ。でもそれが段々”凪”っていう1人の人格に見えるの。

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そして一果役を演じた役者さんは演技未経験だと観賞後に知ってめちゃくちゃ驚いた。哀愁漂う雰囲気が凄く良かったです。なんとも言えない大人びたものが彼女には合った。

ネタバレをしてしまうとキャッチコピーにも「最期」とある通り、凪は亡くなります。(なぜ亡くなるのかは伏せておきます)

この映画を見る前は(あ〜死ぬのね、、、)くらいにしか思ってなかったんですが終わった後にそのキャッチコピーの受け止め方が変わる変わる。なんなら「ミッドナイトスワン」っていうタイトルもめちゃくちゃ違く聞こえてくる。

私的にグッときたシーンは2つあって、まずは2人の心が通じ合うシーン。一果は通学路の途中でバレエ教室を見つけ体験まで受けるがレッスンを受けるお金がない。どうしようかと悩んだ末にバレエ教室に通っている同じ学校のお嬢様育ちの子に危ない匂いしかしない撮影会のアルバイトを始める。(JKビジネス的なやつですかね。一果は中学生だけど)

しかし発表会などもこれからあると考えるとお金が足りない。凪は一果に対してなんの関心もないので頼れない。そこでオプションのような個人撮影も始めることにするがそこで事件を巻き起こしてしまい凪にバイトがバレてしまう。なぜこんなことをしたのかと凪に問い詰められるも自分の腕を噛んで癇癪を起こしてしまう一果。その姿を見て一果を抱きしめ「うちらみたいなんは、舐められちゃいかん。(ニュアンス)」と言う凪。そこでお互い似たもの同士だと気づき心が通じ合っていく。

このシーン、めちゃくちゃ良い。

凪がこの子を守らなきゃ。となるシーンでもありますよね。ここから凪の”母親”という意識が芽生えてくるわけです。

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もう一つは食事のシーン。ある朝一果が起きると朝食を用意している凪。しかし、凪の姿はいつもの凪ではなく男性の姿をしていた。それを見てなんで自分がバレエを続けるために夜の仕事をやめて昼間の仕事で働くのかが理解できない一果。そしてご飯を投げ「頼んでない」と言う。すると凪は笑顔で、まるで母親のように一果を抱きしめる。本当にここはね、切なくて泣いてしまった。凪にとって一果はこんなにも愛情を注ぐ存在になっているということ。お母さんって暖かく包み込んでくれますよね。どんなに生意気な口を聞いても愛で受け止めてくれる。

この物語は終始”母親とは何か”を訴えてるのもあるのかなーと見ていて感じました。実の母親はネグレクトをしている。しかし一果にとっては母親。でも凪も母親以上の振る舞いを自分にしてくれる。それも一果にとっては母親。

そんな2人の狭間に揺れながらバレエを続ける一果。果たしてどんな形でこの物語は終わるのか。私は言葉を失いました。

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