【司法/予備・選択科目の選び方⑤】租税法編〜上位合格を狙える科目〜
司法試験・予備試験の選択科目を何にするかは決めましたか?
倒産法、経済法、知的財産法、労働法、国際関係法(私法)、租税法、環境法…たくさんあって悩みますよね。
「興味があるのは租税法だけど、自分に合わなかったらどうしよう…」「基本7科目がまだ不安だからできるだけ楽な科目がいいな…」「租税法に決めて法科大学院でも履修はしているけどイマイチ勉強法がわからない…」など、様々な悩みがあると思います。
本記事では、司法試験や予備試験の選択科目を何にするか決めかねている受験生と、選択科目を租税法に決めたものの勉強法がわからない、知りたいという受験生に向けて、様々な不安点・疑問点を解消していただこうと執筆したものです。是非、選択科目を決める際の参考にしてください!(ライター:武井/The Law School Times 記事部)
租税法とは
租税法という科目は無い
租税法とは、租税に関する法律の総称のことを指します。
選択科目の租税法では、所得税法、法人税法、国税通則法から出題されます。司法試験では、第1問で所得税法が、第2問で法人税法が問われるとともに、最近の傾向だと各大問で国税通則法に関する問題も出題されることが多いです。
予備試験の試験範囲も、同様の範囲から出題されます。
そのため、租税法を選択した場合には、所得税法と法人税法、国税通則法の3つの法律をマスターする必要があります。
各法律のイメージ
所得税法のイメージ
所得税は、個人の所得に対してかかる税金について、その課税方法や課税の対象、税率などを定めた法律です。たとえば、会社に勤めている人については、基本的に給与所得がかかってきます。給与所得を含めて、所得税法は、所得について10種類に分けて規定しており、どの所得かによって担税力が異なるため、課税方法が異なってきます。
法人税法のイメージ
法人税は、法人の企業活動により得られる所得に対して課される税であり、具体的には、益金の額から損金の額を引いた金額が法人の所得金額となっています。法人税法は、そのような法人税の課税方法や課税の範囲、税率等を定めた法律です。
国税通則法のイメージ
国税通則法とは、国税の基本的なルールを定めた法律です。例えば、所得税や法人税の納税時期を定めていたり、確定申告した後に申告した内容が間違えており、その結果納税額が多すぎた場合に、返してほしいと請求する更正の請求についても定めていたりします。
どんな受験生に向いているか
租税法で出題される問題に対して、まず条文があるか、判例があるか、学説があるか等を検討していきます。そのため、条文や判例をしっかり理解することや学説についてもしっかり理解しておくことが必要です。そのため、選択科目としては、負担が多いと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
もっとも、租税法は日常生活における経済活動に対して課税するものですので、いろいろな学問と交わりながら成り立っています。そして、租税法における判例や裁判例は、私たち納税者が「ここに課税するのはおかしい!」と思って訴訟をするケースもあり、親近感を持てる事例もあります。特に租税法の事件だと、納税者側が国側に勝つケースも多くあります。
そのため、判例や裁判例を読んで理解することが好きな方や、課税という身近なものに興味のある方はぜひ租税法を学んでいただきたいと思います。
また、受験者数も他の選択科目と比較して非常に少ないため、選択者の多い労働法や経済法等と比べると上位を狙いやすい科目であると思います。
学習方法
まず、おすすめの書籍等を紹介します。
・ 佐藤英明『スタンダード所得税法』(弘文堂、第4版、2024)
・ 渡辺徹也『スタンダード法人税法』(弘文堂、第3版、2023)
・ 増井良啓『租税法入門』(有斐閣、第2版、2023)
・ 佐藤英明編『租税法演習ノート』(弘文堂、第4版、2021)
・ 木山泰嗣『小説で読む租税法 租税法の基本を学ぶロースクールの授業』(法学書院、2012)
・ 小川徹監修『1冊だけで租税法』(辰巳法律事務所、第3版、2022)
・ 金子宏ほか編『ケースブック租税法』(弘文堂、第6版、2023)
基本書だと、金子宏先生の『租税法』が有名ですが、非常に分厚いため初学者だと手を伸ばしにくいと思います。そのため『スタンダード所得税法』『スタンダード法人税法』『租税法入門』から始めるのがおすすめです。また『小説で読む租税法』は、初学者が租税法ってどんなものなのかを知るという点で、わかりやすくまとめており、まだ選択科目として決め切れていない方にもおすすめです。
租税法をしっかり勉強していこうという方には『スタンダード所得税法』および『スタンダード法人税法』を読みつつ、その中で記載されている判例や裁判例について『ケースブック租税法』で適宜確認すると判例や裁判例の考え方が理解しやすくなると思います。
その上で、試験対策として『租税法演習ノート』で事例を解いていくのがおすすめです。また、司法試験の過去問を解くことで、どのような問題が出るのか、時間配分はどうすればいいのか等も知ることができるので、ぜひ参考書を一読した後に一度解いてみるのがおすすめです。
最後に、書籍ではないですが、条文をしっかり理解しておくことが重要です。租税法では、根拠条文を指摘することや、条文操作をしっかりすることがとても重要です。そのため、勉強をしていくうえで条文が出てきたら、その都度所得税法や法人税法、通則法を確認することを意識してみるといいと思います。
おわりに
いかがだったでしょうか?租税法がどんな選択科目なのか、どのように学習すればいいのか、視界がクリアになったでしょうか。「もう少し租税法がどんな法律なのか知りたい」という方、「自分に合うかまだ不安…」という方は、上記に列挙した書籍を書店等で手にとって眺めてみてください。よりイメージが膨らむはずです。
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