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【翻訳】フィールドサイズがICMに与える影響を理解する【ICM、MTT】GTOWブログ.83


マルチテーブルトーナメント(MTT)のゲーム選択について語られるとき、人々は必ずレクリエーションプレイヤーの数や保証されている賞金プールについて言及するが、あまり注目されないのは、フィールドサイズそのものである。ゲーム選択において最も重要な指標は、実際にはトーナメントの参加人数なのである。フィールドサイズは、終盤のICM戦略決定にも大きな影響を与える。

先に進む前に、MTTにおける大規模なフィールドとは何かを定義しておこう。これは相対的な指標である。WSOPのブレスレットイベントやGGPokerのオンライン$11 MTTでは500人のプレイヤーとは非常に少ないと言えるが、スーパーハイローラーやローカルカジノのトーナメントでは100人でも多いと言える。この記事では小規模なフィールドは150人以下、大規模なフィールドは500人以上、中規模なフィールドはその中間と定義する。

もしあなたの平均的なフィールドサイズを教えてくれれば、あなたのポーカーキャリアについて少しお話できるかもしれない。小規模なフィールドや大規模なフィールドのMTTをプレイする理由を探ってみよう。




小規模なフィールドでプレイする理由


小規模なフィールドでプレーすれば、厳しいICMスポットでより多くの練習を積むことができる。100人規模のフィールドを専門にプレーすれば、バブル、ファイナルテーブルバブル、ファイナルテーブル、そしてヘッズアップをより頻繁に経験することになる。このようなスポットに対する筋肉記憶を迅速に形成することができ、タフなスポットが現れたときに何をすべきかがわかるようになる。しかし、もしあなたが1,000人以上のMTTをプレイするのであれば、これらの重要なスポットに到達するまでに時間がかかり、そこに到達したときには錆びついているかもしれない。

もちろん、GTOウィザードのICMデータベースを使って、いくらでも終盤のスポットを練習することはできる。しかし、このようなエクイティの高い状況では、経験に代わるものはない。小規模なフィールドのMTTは分散がかなり小さくなる、この事はトーナメント分散計算機を使って簡単に確認することが出来る。ここでは、$50 MTTでROIが10%のプレイヤーが、15人にプライズがペイアウトされる100人のMTTに参加した場合と、150人にペイアウトされる1,000人のMTTに参加した場合を比較してみよう。

以下は100人MTTの例で、シミュレーションは20回行ったものである:

そして以下が1,000人のMTTの例である:

大規模なフィールドのシミュレーションの方が、最高値は高いが最低値も低く、頻度も高い。小規模なシミュレーションの方が勝つ頻度が高い。大規模なシミュレーションでは、1,000トーナメント終了後の損失確率は40%であり、必要なバンクロールは$23,069である。小規模なフィールドのシミュレーションの損失確率はわずか18%で、必要なバンクロールはわずか$8,742である。
両方の例で「ベスト・ラン」を拡大し、グラフの形を見て、分散の感覚をつかんでほしい:

100人規模のフィールドでは、グラフは小さな山と谷を繰り返しながら、ゆっくりと着実に上昇している。1,000人規模のフィールドでは、少数の急激で急峻な上昇が見られる。重要なのは、大きな勝利がほとんどない長期間の損失があることである。そして、これは20のサンプルのうちの最良のシナリオであることを忘れてはならない。

これから見るように、ROIはより大きなフィールドのMTTの方が高いはずなので、これは完全な比較ではない。Tombos21のバンクロール管理に関するビデオを見て欲しい。

低分散とICMの実践は、小規模なフィールドに特化する最大の理由であるメンタルゲームにも貢献する。

小規模のトーナメントでは、ポーカーのスイングに対処するのはずっと簡単だ。ファイナルテーブルバブルを乗り切るのは、頻繁に起これば扱いやすいが、何ヶ月もファイナルテーブルに近づいていない時にバブルをプレイする事は難しい。

大規模なフィールドを得意とするプレイヤーは、全てを正しく行っていても、負ける年が続く事もある。また、彼らはより多くのステーキングを必要とし、メイクアップ(損失補填)に陥ることが多くなる。多くの優秀なプレーヤーが、無駄に破産したり、少なくとも自分のゲームに疑問を抱くような時期があったりするのは、大規模なフィールドのMTTを優先したためである。これが、ほとんどの大規模なフィールドのMTTが、分散を減らすために、ファイナルテーブルディールによって終わる理由でもある。

これは、小規模なフィールドに特化したプレイヤーにとっては問題ではない。世界最高のプレーヤーと対戦しているにもかかわらず小規模なフィールドのスーパーハイローラーイベントの分散の少なさは、、600人以上のランナーが参加するタフな$5k-$20kイベントをプレイするのに比べ、頻繁に参加するプレーヤーにとって非常に魅力的であろう。


大規模なフィールドでプレイする理由


大規模なフィールドでプレーする主な理由は、賞金総額が大きいからである。たった一度の結果であなたの一年が決まったり、バンクロールが倍になったり、一晩でプロになれるかもしれない。200人が参加する$11のMTTで優勝するのも良い事だが、PokerStarsの$11 Sunday Storm Anniversaryで優勝すれば、1年間の生活費をペイできるかもしれない。

優秀なプレイヤーは、フィールドが大きければ大きいほど、より大きなエッジを楽しむことができる。GTOウィザードのライターであるAndrew Brokosは「1,000人規模のフィールドのMTTがタフであるはずがない。なぜなら優秀なプレイヤーは1,000人も存在しないからだ」と発言したようだ。フィールドが大きければ大きいほど、ウィンレートも高くなるはずである。

非常に優れたプレイヤーの中には、WSOPメインイベントのような大規模フィールドイベントで、自分のROIを200%以上と評価する人もいる。一方でSTTと比較すると、世界最高のプレイヤーでも10%未満のアドバンテージしか持たない傾向がある(これは完全な比較では無いが、WSOPメインイベントはスタックが深くブラインドストラクチャーもゆっくりしており、SNGは速い傾向があるためである。

SharkScopeのリーダーボードでランダムに選んだプレイヤーの中には、6-18人のSNGと27-90人のSNGを同程度プレイしている人がいた。以下は、そのプレイヤーの6-18人SNGにおける統計である。

そして以下は27人SNGから90人SNGまでの統計である:

小さいフィールドでのROIは6.9%、大きいフィールドでは9.4%である。彼のITMも小さいフィールドでは少し高い。
平均参加者数802人のレギュラーMTTのサンプルはそれほど大きくないが、見ての通り彼のROIは20.6%とはるかに大きい:

これは多くの理由から不完全な比較だが、これはそれぞれのフィールドサイズでのゲームサンプルが豊富な堅実な勝ち組プレイヤーのサンプルである。ROIはフィールドが大きくなるほど大きくなるが、利益履歴の下にある緑のグラフに注目して欲しい。小規模なフィールドの方がずっと安定していることがわかる。

最後に、ROIが大きなフィールドでより大きくなる理由の一つは、経験がより価値あるものになるからである。1,000人規模のMTTで、タフなファイナルテーブルバブルの戦い方を知っていること、そしてプレッシャー下でもプレイが崩れないことは大きな成果につながる。大規模なフィールドにいる弱いプレイヤーはこのような厳しいスポットをどう乗り越えればいいのかわからないからだ。WSOPメインイベントのバブルで、アマチュアのプレーヤーがいかにニットになっているかを見れば、このことがわかるだろう。


バブルファクターとリスクプレミアム


私たちは、大規模なフィールドの方がROIが高く、小規模なフィールドの方が分散が小さく、メンタルゲームに有利だという主張をしてきた。ではICMの観点から見た戦略上の大きな違いは何だろうか?
一般的な調整としては、フィールドが小さいほどタイトにプレーすべきである。ペイアウトの確保や順位を上げる事はより重要で、バブルの影響はフィールドの規模が小さいときには驚異的になる。チップを貯めて「勝つことを目指す」あるいは少なくともファイナルテーブルに進出することは、フィールドが広いほど優先される。大規模なフィールドのMTTでは、ルーズにプレーすべきと言える。

簡単なトイゲームを使ってこのことを示すことが出来る。以下の例では、全員が平均40bbのスタックを持ち、フィールドの25%が残っているトーナメントにおける、6maxのテーブルの例である。このテーブルで、異なるフィールドサイズを想定してバブルファクターを見ていく。すべての詳細を同じにしているのは、バブルファクターの違いがフィールドサイズの変化によるものであるようにするためである。
まず、PokerStarsの45人SNGの場合である。11人のプレイヤーが残っており、これはフィールドの25%にあたる:


平均バブルファクターは1.56、平均リスクプレミアムは10.9%。つまり、各プレイヤーが他のプレイヤーに対してオールインするためには、およそ61%のエクイティが必要である。

次の例でも詳細はすべて同じで、平均スタックは40bbだが、今回はPokerStarsの90人制SNGである。フィールドの25%にあたる22人が残っている。ここでのバブルファクターは以下の通りだ。

フィールドのサイズが倍になった以外はすべて同じで、バブルファクターは1.38に減少した。プレイヤーはオールインをコールするために58%のエクイティが必要となり。

次に、同じ状況だが、今回はPokerStarsの180人制SNGで、フィールドの25%にあたる45人が残っている場合を見てみよう。


平均バブルファクターは1.22まで下がり、プレイヤー同士がオールインをコールするのに必要なエクイティは55%ということになる。
面白半分に、1,666人のフィールドに416人が残っている場合で計算してみた:


見ての通り、バブルファクターは前回の例と同じで、リスクプレミアムはわずかに大きくなっている。これは、バブルファクターがどの程度まで下がるかには下限があることを示している。

つまり、フィールドが大きくなればなるほど、ルーズにプレーするべきだということだ。

トーナメントに参加する人数が多ければ多いほど、ファイナルテーブルでの高額賞金は遠くなる。そこに到達するためにより多くのリスクを取る必要がある。フィールドの大きさ同様、全体的な賞金プールもはるかに大きくなる為、直感的に理解できるはずだ。

小規模なフィールドでは、チップ量を構築することよりもITMを優先することがより重要である。

小規模なフィールドでのミニマムITMはプライズプール全体に占める割合が大きいので、より価値がある。45人制の例では、ミニITMは賞金総額の3.5%、90人制の例では、ミニITMは賞金総額の2.26%、180人制では、ミニITMは賞金総額の0.65%、1,666人制では、ミニITMは賞金総額のわずか0.2%だった。

さらに、ショートスタックの小規模なフィールドのMTTでITMした場合、大きなファイナルテーブルの賞金により近づくことができる。大規模なフィールドのMTTより、優勝する為に必要なダブルアップの回数ははるかに少なくなる。


まとめ


MTTにおける小規模なフィールドと大規模なフィールドの違いは大きく、実際、フィールドサイズはゲーム選択において最も重要な要素かもしれない。
小規模なフィールドは分散が少なく、トーナメントの各ステージで経験を積むのに非常に良い方法であり、メンタルゲームの観点からも非常に簡単である。小規模なフィールドに特化すれば、破産することも少なくなり、一般的にスムーズなプレイ体験が得られる。

大規模なフィールドは、期待値という点でも、賞金プールの金額という点でも、より収益性が高い。しかし、よりスウィングしやすく、はるかに大きなバンクロールが必要となる。フィールドが大きければ大きいほど、ファイナルテーブルでの大きな賞金を狙ってプレーすることが重要になる。小規模なフィールドでは、ミニITMが賞金プールの大部分を占めるため、バブルを避けて順位を上げることを優先することがより重要になる。しかし、常にバランスを取ることが大切だ。フィールドの大きさに関係なく、すべてのトーナメントで勝つことを目指しつつ、同時にバブルも避けるべきである。

戦略的には、小規模なフィールドのMTTではタイトにプレーしてICMプレッシャーをかけ、大規模なフィールドのMTTではかなりルーズにプレーすべきである。理想的なアプローチは、両方のフィールドサイズでプレイすることである。小規模なフィールドのMTTで分散を減らし、安定した利益を維持する一方、大規模なフィールドのMTTにも定期的に挑戦すべきである。しかし、分散の観点からも戦略的観点からも、違いを知ることが重要であることに変わりはない。



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