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【翻訳】MDFとアルファについて【セオリー】GTOWブログ.14
MDF(Minimum Defence Frequency)とアルファは、ポーカーにおいて、あるベットサイズに対してどれくらいの頻度でディフェンスする必要があるかを決める指標である。
もしあなたがディフェンスしすぎると、相手はバリューベットであなたを支配することができる。タイトに守りすぎると、相手はブラフであなたを追い詰めてしまう。つまり、良い戦略は、ブラフがインディファレントになる程度にコールすることだ。
この指標は実際にはいくつかの問題を含んでいるが、ポーカー理論では定番と言える
MDFとは何か
MDF(Minimum Defence Frequency)とは、相手のエクイティ0%の手札をブラフかギブアップをインディファレントにするために、どれくらいの頻度でコールする必要があるかを示す指標である。
MDFは単純に、相手がエニー2カードでブラフをする事で利益を得ることができないようにする為のものである。ブラフをされ過ぎないように、最低限の頻度でディフェンスをする必要がある。
つまりMDFは相手のブラフを0EVにするためのリスク/リワードの計算である。
何を持って「ディフェンス」とするのか
ディフェンスとは継続すること。レイズでもコールでもディフェンス継続出来るため、どちらもディフェンスにカウントされる。
MDFに関する注意
MDFは相手のオーバーブラフを防ぐ盾と考えるべきである!何よりもまず、これをはっきりさせておく必要がある。
相手が十分にブラフをしていない場合はMDFを使わないこと。
相手が明らかにブラフ不足なら、ブラフを0EVにしようとしても意味がない。盾を置き、バリューの多い相手にはオーバーフォールドを受け入れよう。MDFは、相手がブラフであなたを追い詰めないようにするための盾としてのみ使うべきだ。
アルファとは何か
MDFが盾なら、アルファ(α)は剣だ!
アルファは逆算である。これは、あなたのエクイティ0%のハンドのブラフが少なくともブレークイーブンになるために、相手がどれくらいの頻度でフォールドする必要があるかを示しています。
アルファはリスクとリワードの計算であり、あなたのブラフがブレイクイーブンになるために、相手がどれくらいの頻度でディフェンスする必要があるかを計算するように設計されている。相手がディフェンスする頻度が少ないと思うなら、それは素晴らしいことである!相手がディフェンスする頻度が高ければ、あなたのブラフを再考する必要がある。
アルファ = 1 - MDF
MDF = 1 - アルファ
算出
公式
このリスクとリワードの計算では、ポットに対するベットの大きさを見て、ブラフをインディファレントにするために必要な全体的なディフェンス頻度を計算する。
MDF/αの公式は非常に簡単である。
アルファ(α)=リスク/(リスク+リワード)
ここでのリスク、リワードとは
リスク=ブラフとしてベットをする金額
リワード=相手がフォールドした場合に得られる金額
となる
ベットとポットのサイズに注目した別の計算式もまた使えるが、この式はレイズには使えないので著者の好みではない。しかし、参考のためにここに残しておこう
MDF = ポット / (ベット+ポット)
アルファ = ベット / (ベット + ポット)
例1
あなたは$100のポットに$60をベットした。アルファとMDFを求めよう:
リスク = $60(ブラフで$60のリスクを負う)
リワード = $100(相手がフォールドした場合に得られる額)
アルファ (α) = リスク/(リスク+リワード)
アルファ(α)=60ドル/(100ドル+60ドル)
アルファ(α)=37.5%
あなたのブラフが損をしないためには、相手が少なくとも37.5%の確率でフォールドする必要がある。
MDFは単純に1-αである。
この場合、MDF = 1 - 37.5%となり、62.5%となる。つまり、ヴィランがあなたのブラフをブレイクイーブンにするためには、少なくとも相手のレンジの62.5%をディフェンスする必要がある。相手がこれよりディフェンスする頻度が低ければ、あなたのブラフは利益を上げ、ディフェンスする頻度が高ければ、あなたのブラフは損をすることになる。
例2
あなたは$100のポットに$60をベットし、相手は$200にレイズした。あなたのMDFと相手のアルファは?
相手は($100 + $60)のポットを勝つために$200のリスクを負った。
アルファ (α) = リスク/(リスク+リワード)
アルファ (α) = $200/($200 + $160)
アルファ (α) = 55.5%
MDF = 1 - α = 44.5%
つまり、相手がどんな2枚のカードでもブラフレイズして利益を得るのを防ぐためには、レイズに対して自分のベッティングレンジの44.5%を守る必要がある。逆に、相手が利益を生むブラフをするためには、少なくともあなたがベッティングレンジの55.5%をフォールドする必要がある。
カンニングペーパー
ベットサイズに直面するアルファとMDFを推定するために、カンニングペーパーを使うプレーヤーもいる。そのようなカンニングペーパーをここに用意した!この表を使うには、1列目のベットサイズを見て、3/4列目で適切なアルファ/MDFを見つけるだけである。
免責事項 - これらの数字は最初のベットに対してのみ有効である!MDFとアルファはレイズに直面すると変化し、ポット%のベットサイズ単独では決定できない。
![](https://assets.st-note.com/img/1703226932998-5YiBAanOdP.png?width=1200)
EVの計算
MDFとアルファは損益分岐点を探すだけのものである。単純なEV方程式を使って、ブラフの実際の収益性を計算することができる。これはまた、相手がどの程度の幅でコールするかによって利益的なレンジがどうかを測る能力もある。
ブラフのEVは次のように書くことができる:
EV (ブラフ) = (フォールド% x ポット) - (コール% x ベット)
これは、ポットは相手がフォールドしたときに得られる額であり、ベットは相手がコールしたときに失う額であるため、うまく働く。今はブラフはコールされたときに必ず負けると仮定する。
例3
リバーで125%のポットをブラフでオーバーベット。相手はレンジの40%をコールした。この計算ではポットを$100とする。
EV(ブラフ) = (フォールド% x ポット) - (コール% x ベット)
EV(ブラフ) = (60% x $100) - (40% x $125) = $10
つまり、このブラフのEVは、相手がオーバーフォールドするので$10となる!
では、私たちのブラフを$0の価値にする為、相手はどれくらいの頻度でフォールドする必要があるのだろうか?
アルファ=リスク/(リスク+リターン)=125/225=55.5%。
言い換えれば、もし相手が自分のレンジの44.5%を守れば、このオーバーベット・ブラフは収支が合うことになる。しかし、相手がわずかにオーバーフォールドしているため、利益が出るということだ!
こちらのブラフの収益性を相手のフォールド率でグラフにしてみよう:
![](https://assets.st-note.com/img/1703227975734-AWFF7he2yu.png?width=1200)
相手がフォールドしない(左)ほど、こちらのブラフは損をする(下)。
相手がフォールドする(右)ほど、私たちのブラフはポットの最大額まで、より多くの利益を得るようになる(上)。
幾何学的には、(0, -125)と(1, 100)の間に直線を引くことができ、その直線がx軸と交差するところが、私たちのブラフがブレークイーブンになるフォールド率を表している。この交点は、このケースではちょうどアルファ、つまり55.5%である。
このグラフに色をつけてみよう。
右側は、相手が55%より多くフォールドする+EVゾーンが見える。左側は-EVゾーンで、相手が55%より低い確率でフォールドするところである。
![](https://assets.st-note.com/img/1703232331966-coqwO0YNbO.png?width=1200)
MDFとアルファの限界
今まで目を背けていた点に目を向けてみよう。実は、MDFは隔絶された状態ではうまく機能しない。MDFは、単独の指標としての有用性を制限する、ある重大な前提を置いている。
MDFはブラフにエクイティがないと仮定している。
これは多くのケースで、現実を反映していない。実際のポーカーでは、ブラフはリバーの前にエクイティを持っていることが多い。
例えば、あなたはドローでセミブラフをすることが出来る。静的なハイカードの手でも、相手のバリュー領域の一部に勝つことができるのです。
では、これで何が変わるのだろうか?
チェックバックがエクイティを持っている場合
ブラフにチェックバックとしてのエクイティがある場合、あなたはその価値を0ドルにしようとはしないだろう。その代わりに、あなたのゴールはそのブラフをベットするかチェックするかをインディファレントにすることである!
例えば、相手がリバーでメイドハンドでブラフを仕掛けてきた場合、ブラフに勝てる手札にのみMDFを適用すべきである。ブラフキャッチャーでない手をMDFするのは意味がない、 なぜならチェックバックで負けてしまうからだ。
例
ヴィランがインポジションでポットサイズのオールインをする。彼らのブラフはチェックバックした時には20%のエクイティがある。相手のブラフを無関心にさせるために、どの程度の幅でディフェンスすべきか?
あなたの目標は、ブラフのEVとチェックバックのEVを等しくすることです。チェックバックのEVはポットの20%である。
ブラフのEV = 0.2 (ポット) = (フォールド% x ポット) - (コール% x ベット)
0.2 = (1コール%) - コール率
コール% = 40%
これがエクイティ0%のブラフなら50%コールする。しかし、相手のブラフにはバリューがあるので、我々はオーバーフォールドして40%のMDFしか守らないことができる。別の言い方をすれば、相手のブラフにはチェックとしてのエクイティがあるため、私たちは相手に利益のあるブラフを与えることができる。
私たちの目標は、相手のブラフEV=チェックEVにすることである。
チェックEV=20%ポット
ブラフEV=20%ポット(アンダーディフェンスした場合)
要約: ショーダウン・バリューのあるハンドでブラフをされたらアンダーディフェンスする。
ブラフがコールに対してエクイティを保持する場合
ヴィランはターンでポットサイズのオールインをする。彼らのブラフの多くはドローであり、あなたのコールレンジに対して20%のエクイティを保持する。これらのドローでターンをチェックする場合のEVもポットの20%である。このようなドローをベットとチェックでインディファレントにさせるには、どの程度の幅でディフェンスすべきだろうか?
あなたの目標は、ブラフのEVとターンをチェックバックするEVを等しくすることである。チェックバックのEVは20%ポットである。
EV(ブラフ)=EV(チェック)=20%ポット
コールされたときのエクイティを含めるためにEVの式を修正する必要がある:
0.2 = (フォールド% * ポット) + コール%((勝ち% * (ベット+ポット)) - (負け% * ベット))
0.2 = (1 - コール%) + コール% (20% * 2 - 80%)
コール% = 57%
これをより直感的に解釈すると、ドローはコールされたときのエクイティがあるため、(純粋なブラフと比較して)ブラフとしてのリスクは少ないということになる。
20%のドローでポットサイズのオールインをした場合、純粋な(エクイティが0%の)ブラフで75%のポットのショブをした場合とほぼ同じリスクリワード比率になる。その意味では、ベットが小さいのとほぼ同じである。
このことは、ドローの多いボードでベット額を大きくできることが多い理由にもつながるが、実際のところ、強いドローをインディファレントすることが出来るケースはほとんどない。
GTOはMDFに従うのか?
GTOウィザードのcomplexソリューションの集合分析を用いて、GTOのフォールド頻度(青)と、想定されるMDF上のフォールド頻度(赤)をグラフにしてみた。これらの集合分析は、1755の戦略的に異なるフロップすべてを網羅している。平均して、BBはフロップの全てのベットサイズに対して一貫してオーバーフォールドしている。
![](https://assets.st-note.com/img/1703349604721-DmZ6YXzVAS.png?width=1200)
同じ集合分析をSB対BBのSRPについて見てみよう。この場合、ディフェス側はポジションがあるので、平均してMDFに近いコールをする。
![](https://assets.st-note.com/img/1703349849817-5mT9DwjvbC.png?width=1200)
アンダーディフェンス
MDFよりもアンダーディフェンスすることは理論的にはよくあることであり、実際多くの場合好ましい戦略である。MDFに従ってコールすることの問題点は、0EV以上のチェックバックがあるハンドをブラフするインセンティブを相手から奪ってしまうことである。
これはナッツとエアーのトイゲームでは問題ないが、ブラフにエクイティがある実際のポーカーでは問題が起こる。ほとんどの場合、アンダーディフェンスはオーバーディフェンスよりもエクスプロイトされにくい!
一般的に言って、次のような場合はMDFより少なくディフェンスをすべきである:
フロップやターンでポジションが無い場合(IPのブラフはチェックバックしてもEVがある)
ヴィランがブラフを仕掛けてきたとき(ブラフに勝てるハンドにのみMDFを適用すること)
ヴィランのチェックバックがEVを持つ場合
バリューヘビーな相手に対しては、エクスプロイト的に使う。
例を挙げよう。フロップはQQ3rのCO対BBのSRPである。このボードではBTNのブラフのほとんどは大きなエクイティとEVを持っている。さらにBBはそのエクイティを実現できない。その結果、BBはこのフロップで大幅にオーバーフォールドする必要がある。
COは33%のポットをCベットする。BBのMDFによれば、彼らはレンジの75%を守り、このサイジングに対してせいぜい25%をフォールドする。しかし、ソルバーはレンジの半分近くをオーバーフォールドしている!
![](https://assets.st-note.com/img/1703350600632-XcGV4kE2Ob.png?width=1200)
オーバーディフェンス
MDFに対するオーバーディフェンスは極めて珍しいが、理論的にはあり得る。一般に、オーバーディフェンスが見られるのは、アグレッサーのブラフがコーラー側のレンジに対してエクイティを保っている場合である。エクスプロイト的には、相手がオーバーブラフしているときにオーバーディフェンスを主張することができる。
一般的に言って、次のような場合にはオーバーディフェンスすべきである:
ドローの多いボードでの早いストリートにおけるオールイン
チョップボードのインポジションにおいて、相手がエクイティを保持するドローでブラフを仕掛けている場合
ブラフヘビーな相手に対するエクスプロイト
例えば、こんな面白いスポットがある。これはBTN対BBの4BPで、BTNはフロップで134%のオールインをした。MDFによれば、BBは134/234=57%のレンジをフォールドし、43%のレンジをコールするはずである。しかし、ソルバーは約10%オーバーコールしている!
![](https://assets.st-note.com/img/1703350899078-XmK1QoNy5m.png?width=1200)
結論
MDF(Minimum Defence Frequency)は、相手のブラフによって追い詰められないようにするための盾である。アルファは、あるベットサイズに対してブラフのリスクを負うことを正当化するために、相手がフォールドする頻度を決めるための剣である。
この指標はブラフに全くEQが無いと仮定しているため、完璧ではない。しかし、どの程度のディフェンスレンジを守るべきか、あるいはどの程度の頻度でフォールドを見る必要があるのかを判断する目安にはなる。相手がオーバーブラフやアンダーブラフをしていると思えば、それを利用し調整すべきである。MDFを松葉杖のように頼ってはならない。
GTO戦略はインポジションではMDFに忠実に従い、アウトオブポジションでは一貫してオーバーフォールドする。(平均して)。
この指標には明らかに価値があり、この記事で紹介した以外にも多くの状況で応用できる。例えば、異なるラインのおおよその価値基準値を決定するために使用することが出来る。
アルファとMDFの理論および応用的な適用について、よりよく理解してして欲しい。
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