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【翻訳】プリフロップでAAをフォールドするのが正解になる場面【MTT、ICM】GTOWブログ.92


ICMに対する批判の一つは、退屈で機械的だというものである。しかし私の意見では、全くの誤解だ。ICMは、私がポーカーで見た中で最も興味深い戦略的シナリオをいくつも生み出してきたし、私個人にとっても、ゲーム理論を学ぶための入り口となった。

以下に紹介するのは、AAをフォールドする(またはAxを決してフォールドしない)という、非常に直感に反するシナリオの数々であり、これらは他のポーカー概念を学ぶための出発点となったものである。



サテライトトーナメントでプリフロップでAAをフォールドする


これは多くの人にとって最も馴染みのあるスポットかもしれない。ICMのプレッシャーは通常サテライトでは特に極端であり、AAをプリフロップでフォールドするのが正しいことが多い。その理由の要点は、サテライトではチップを多く持ってフィニッシュしても追加賞金がないため、シートが確定している場合、チップをリスクにさらす理由がないからである。あるプレイヤーは99%のチップを持ってフィニッシュし、別のプレイヤーはアンティだけでフィニッシュしても、バブルにを抜ければ同じ賞金を獲得できる。

これが何を意味するのかを理解するために、具体的な状況をシミュレートしてみよう。等しい価値の4つのシートが与えられるサテライトに5人のプレイヤーが残っていてブラインドは500/1,000である。このテーブルセッティングでHJがオープンオールインをした場合、あなたはCOで何のハンドでコールするだろうか?

少し意地悪な質問をしたかもしれない。なぜならCOにコールされるべきハンドは一つもないからだ。ここでは100%手札をフォールドすべきだ。特にブラインドのレベルが上がっていることを考えると、あなたより先にバストアウトする可能性が高い他の3人のプレイヤーより、あなたはかなり優勢である。だから、このスポットではAAでさえもフォールドすべきである。
これがこのスポットでの実際のGTOレンジである。


少し意地悪な問題だったかもしれない。なぜならCOにコールされるべきハンドは全く無いからだ。ここでは100%のハンドをフォールドすべきだ。特にブラインドのレベルが上がっていることを考えると、あなたより先にバストアウトする可能性が高い他の3人のプレイヤーより、あなたはかなり優勢である。だから、この場ではAAさえもフォールドすべきである。
以下はHJのオールインレンジと残りのテーブルのコーリングレンジに対する、この場での実際のGTOレンジである:

ご覧のように、COがすべてをフォールドするだけでなく、COの半分のスタックを持つBTNもフォールドすべきである、 というのも、彼らはまだブラインドにいる2人のプレイヤーに大差をつけているからだ。
これがこのテーブルにいる全員のバブルファクターである:

COのバブルファクターは26.55(対HJ)であり、ここでコールするには96%のエクイティが必要である!AAだってそんなに強くない!(バブルファクターがエクイティにどう変換されるかわからない場合は、バブルファクターに関する以下の記事を読んで欲しい)。 HJは文字通りカードを晒して、AAにドミネイトされているA6oを持っていることを示しても、あなたはAAをフォールドするのが正しいだろう。



シートが確保されているかどうかを迅速に判断するための有用なヒューリスティックがある。バブル内の順位が、バブル外のプレイヤー数と同じかそれ以上であれば、フォールドしてシートを確保出来る可能性が高いということだ。

例えば、6人のプレイヤーがシートを獲得し、残り10人のスタック分布が以下だとしよう:

プレイヤー3は、より大きなスタックがオールインした場合、AAをフォールドすることができる。彼らはバブルの4位以内にいる。バブル外のプレイヤー10、9、8、7とバブル内のプレイヤー6、5、4は、プレイヤー3が危険にさらされる前に、動くかブラインドアウトしなければならない。
プレイヤー5はそれほど快適な順位ではなく、バブルの2つ内側にいるが、プレイヤー10、9、8、7、6がまだアクティブであると仮定すると、彼らは全員簡単に追い越すことができる。


別の例


では次の問題を試してみよう。2つのシートが与えられ、3人のプレイヤーが残っている。BTNが50,000チップのチップリーダーで、2人のブラインドは共に5,000チップを持っている。ブラインドは500/1,000。

前の例では、チップリーダーはレンジの76.3%のハンドをオールインした。この場合、彼らのレンジはどの程度だろうか?

もしあなたが100%のハンドをオールインすると言ったら、それは間違いである。多くの人にとって驚きかもしれない(ビッグスタックはしばしばアグレッションの文脈で言及されるため)、ソルバーの計算によれば、GTOではBTNは100%のハンドをフォールドするべきである。これは間違いではない。
これが最適な判断である理由は、BTNがフォールドしたときのSBとBBの戦略に根ざしている:

BTNがフォールドすると、2つのブラインドは非常に広いレンジでお互いにチップを投入することになる。なぜだろうか?その理由はバブルファクターにある。

どちらのブラインドもチップリーダーをコールするのは最悪であり、それぞれのバブルファクターは2.91、つまり74%のエクイティが必要である。しかし、お互いのバブルファクターは1.03であり、これはほぼチップEVに近い数値である。ここで起こっているのは、チップリーダーが事実上確実に席を確保しているだけでなく、席を失うことが不可能に近いほど確保しているということだ。

チップリーダーがほぼ確実にシートを獲得するため、ブラインドのプレイヤー間にはもうICMのプレッシャーはほとんどない。残されたのは他の2人のプレイヤー間の擬似ヘッズアップマッチである。

BTNがオールインをしたところで何も良いことはなく、試合の終了が遅れるだけである。それよりも有益なのは、フォールドして他の2人のプレイヤーに広いレンジで対戦させ、サテライトを早く終わらせることだ。


サテライトでAxを全くフォールドしないスポット


興味深い例をもう一つあげよう。今回はバブルの最中で、5席の賞金を6人のプレイヤーが争っている。スタックは以下の通り:

GTOの世界では、アクションがHJに回ってきたら、100%オールインすべきである。しかし、もし彼らにTT+ AJs+とAQo+でミニレイズレンジするオプションを与えたとしたら(そして彼らは残りすべてのハンドをオールインする)、BTNは彼らのミニオープンの後にどのレンジでリショッブすべきだろうか?
レンジのビジュアルを見せた方がいいかもしれない:

これは私が今まで見た中で最も奇妙なレンジの一つだが、私はこれが正しいと断言できるし、幾つかのソルバーでも再現出来た。リレイズオールインレンジはどのAでもよく、それ以外はない。KKはフォールドであり、A2oは利益を生むオールインである。ここでのAxのハンドの奇妙なEVはブロッカーの効果によるものである。
この理由は考えてみれば簡単である。答はまたしてもバブルファクターが示している:

BTNに対するHJのバブルファクターは4.08であり、コールするには80%のエクイティが必要である。80%以上のエクイティを持つハンドはAAだけであり、HJがオールインをコールできるのはこのAAだけである。
従って、Aを含むどのハンドもエクイティを否定する(フォールドを強制する)上でより効果的である。Aブロッカーを持つことは、KKのようなメイドハンドを持つことよりも価値があるのだ。

これはICMに関する重要な教訓を浮き彫りにしている。ICMのプレッシャーが極端な場合、フォールドエクイティが最も重要なエクイティの形となる。

これが、サテライトの後半でオールインが最善の戦略である理由でもある。


ミステリーバウンティでAAをフォールドする


最後に、急成長しているフォーマットであるミステリーバウンティートーナメントの例を挙げよう。PKOの記事で紹介したように、バウンティトーナメントではレンジが大きく広くなり、バブルファクターが1を下回ることもある!他のフォーマットでは見られないことだ。バウンティを獲得できる可能性が、プレイヤーのレンジを広げるのである。

ミステリーバウンティートーナメントも同じで、多くの戦略的調整が適用される。しかし、1つだけ顕著な違いがある。それはバウンティを獲得するタイミングである。

通常のPKOでは、最初のハンドからバウンティを獲得出来る。一方、ミステリーバウンティでは、バウンティを獲得できるのはかなり後になってからだ。通常、ライブトーナメントでは2日目、オンライントーナメントではレイトレジスト後、またはITM後になる。

この状況を考えてみよう。ミステリーバウンティトーナメントに参加していて、バウンティ期間はバブルが弾けた後に始まる。私達はバブルの状態で、テーブルでは圧倒的なチップリードを持っている。UTGは2bbでオールインをして、あなたのビッグブラインドまで全員フォールドしてあなたはAAを持っている。
しかし、隣のテーブルでは3bbのプレイヤーがオールインし、そのテーブルの全員にコールされている。この状況ではAAをフォールドした方がいい場面かもしれない。チップリーダーであるあなたにとって、2bbを獲得しても大きな変化はない。たとえショートスタックをバストしなかったとしても、いずれにせよあなたはITMすることになる。もしあなたがショートスタックをバストさせたら、他のテーブルのプレイヤーがより多くのチップを持ってハンドトゥハンドが始まり、彼らがバブルになる。

しかし、もしあなたがフォールドし、他のテーブルのショートスタックがバストした場合、あなたのテーブルのショートスタックと同様に、あなたはITMすることになる。彼らは次にBBになり、依然としてショートスタックである。チップリーダーであるあなたは、次のハンドで非常に広いレンジで他のプレイヤーをアイソレートすることができ、ショートスタック(ITMしたばかりで非常に機嫌が良い)があなたをコールする可能性が非常に高い。

AAをフォールドしてもう1ハンド待てば、バウンティを獲得できる可能性が非常に高くなる。AAでコールしてショートをバストすれば、わずか2bbを獲得するだけで高い可能性で得られるバウンティを取りこぼすことになる。

このことを証明するためのトイゲームを紹介しよう。PokerStarsの$1バイイン90人SNGのペイアウト構造で、バブルにいる。UTGは2bbを持っていて、オールインをし、60bbを持っているBBまでフォールドでまわる:

バブルを終わらせるためにたった1BBをコールすることは、明らかに利益を生むので、もちろん100%のレンジでコールある。以下はテーブルエクイティから見た、コールしたときの全てのハンドの収益性である:

72oのような弱いハンドでもここでは利益が出る。テーブルエクイティの0.11%を稼ぎ、この場合は$0.06になる。AAはテーブルエクイティの0.82%になり、平均$0.41になる。

BBがフォールドし、次のテーブルでプレイヤーがバストしたらどうなるだろう?我々はITMし、バウンティフェイズが始まる。この例では、$1.50のミステリーバウンティとし、そのうち$0.50がバウンティプールに入る。ミステリーバウンティトーナメントでは、バウンティを実際獲得するまでその価値が分からないので、平均的なバウンティの価値をつけることになる。この90人トーナメントには13人が残っているので、平均バウンティ額は$3.12になる。

これがこのような状況を解決する方法である。ミステリーバウンティートーナメントでバウンティフェイズが始まる前は、基本的に通常の「バニラ」なMTTモードであり、バウンティフェイズが始まると、これらのバウンティを平均値をバウンティプールに加える。通常のMTTよりも、他のプレイヤーをカバーするスタックでバウンティフェイズに参加するインセンティブが高いため、それほど単純ではないが、一般的に言って、バウンティフェイズの前と最中では、全く異なるプレイをする。ショートスタックのUTGプレイヤーは現在BBで、4.2bbを持っている。我々は現在59bbのSBである。もしフォールドで回ってきたら、我々が100%のハンドでオールインするのが正しく、BBはレンジの100%コールするのが正しい。

これが我々のオールインレンジの収益性である(テーブルエクイティにおいて)

72oはバウンティフェイズ前のAAが出した以上の利益を出している!AAは今ではテーブルエクイティの4.11%を稼ぎ出し、つまり$2.92、3バイイン分になり、バウンティフェイズ前より5倍も儲かる。前のスポットでAAをフォールドすれば、次のハンドではもっと儲かる状況になる。特に、私たちが大きなチップリーダーである例を挙げたが、それは、他のプレイヤーがバウンティを狙わない可能性が高くなるからである。しかし仮に狙ってくるプレイヤーがいたとしても、非常に有益にマルチウェイポットを戦ったりアイソレートが出来る可能性がある。

これがICM計算機の限界の一つである。フォーマットがどのように変化するかまで考えることが出来ない。AAは常に有益なコールであるが、このシナリオではそれをフォールドすることで、将来もっと有益な場所を作ることができる。


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