見出し画像

【翻訳】リンプは強いプレイなのか?【エクスプロイト、セオリー】GTOWブログ.108

過去の私たちのDiscordの投稿で、メンバーの一人が、リンプ戦略を実装する利点は、その対応策を知るプレイヤーがあまりにも少ないことだと指摘した。一方で欠点は、適切な実装方法を誰も知らないことだ。これはエクスプロイトの観点からは深いトピックではあるが、この記事ではカスタムソリューションに基づく「リンプファーストイン(LFI)」戦略への対応方法を紹介する。




GTO Wizardはプリフロップでいつリンプを使うのか?


リンプ戦略が標準的であるシナリオには次のような場合がある:

  • スモールブラインドの場合

  • 有効スタックが7bb以下の時

  • ヘッズアップの時

  • トーナメント序盤でショートスタックの時

  • 前のプレイヤーが先にリンプした場合

リンプのタイミングについて詳しくは、Matt Huntの戦略ビデオ「The Hidden Power of Limping in MTTs」をチェックしよう。


対照的に、ここでは上記の例以外で、どのようにリンプ戦略をエクスプロイト出来るかを検討する。具体的には、ChipEVソリューションにおいて、最初のプレイヤーが100%「レイズファーストイン」(RFI)戦略を採用するシナリオを探っていく。
ポットがプリフロップでリンプされた場合、ポストフロップ戦略に影響を与える主な要素は以下の3つである:

  1. 有効スタック深度 - 有効スタック深度が減少し、SPRが低くなると、ポストフロップの戦略は大きく変わる。これはプリフロップで最初にレイズされたポットでも、最初にリンプされたポットでも同じである。違いは、リンプされたポットでは、有効なスタックの深さ(およびプレイヤー数)が両者で等しい場合、SPRはレイズされたポットよりもわずかに高くなることである。

  2. 最初のLFIプレイヤーのリンプレンジの可能性 - LFI戦略はGTOではないので、特定のプレイヤーのリンプレンジについては過去の経験に基づいて推測するしかない。例えば、低いステークスのトーナメントでは、弱いスーテッドハンドや低いポケットペアでLFI戦略を適用するプレイヤーもいれば、フルレンジでリンプするプレイヤーもいるかもしれない。

  3. リンパーにコールしているプレーヤーの数 - プリフロップでポットに入ってくるプレイヤーが増えると、全体的な戦略に大きな変化が見られる。カスタムソリューションは今のところChipEVのヘッズアップのポストフロッププレイにしか使えないので、今は最初のリンパーを除いて全てのプレイヤーがプリフロップでフォールドするポットに焦点を当てる。

項目1と2については、現在私たち使用出来るGTO Wizardのツールで検討することが出来る。項目3については、GTO Wizardがプリフロップカスタムソリューションを開発し、複数のリンプコーラーを許容するようになるまで、今後の議論のために今は置いておこう。


ディープスタックのポストフロップを比較する


手始めに、ChipEVソリューションで有効スタック100bbのリンプポットとレイズポットで戦略を比較してみよう。この単純な分析では、T74レインボーフロップで有効スタック100bbのRFIとLFIに対するBBの反応を比較している。

上の図は、100bbの均等なスタックのChipEVにおける
LJの標準的なRFIレンジである。

LJのレンジに基づき、BBは上記のレンジでディフェンスをする。

LJのCbet戦略

LJのオープンをコールした後、BBはT74のレインボーボードでフルレンジでチェックする。LJはチェックされると、上に示したCbet戦略を使う。この例では、LJはこのボードテクスチャーに対して主にオーバーベット戦略を用いる。比較のために、後のソリューションで最も一般的なサイズである、このソリューションでは低頻度の66%のCbetサイズを使った時のBBの反応を見ていく。

BBは、ドローだけでなく、どのペアでもコールをし、一方で最も強いドローやバリューハンドでレイズをする。次に、このLJのCbet戦略とBBの反応をプリフロップリンプした時の戦略と比較してみよう。

下の図ではLJがプリフロップでレイズではなく、リンプした場合の同じソリューションを見ることができる。この例では、LJは前の例でプリフロップでレイズしたのと同じレンジでリンプしているが、BBは前のプリフロップの例で3ベットしたのと同じハンドでプリフロップでアイソレートレイズしているだけである。

上の図では、LJのリンプに対するBBのチェックレンジを彼らのRFIコールレンジに基づいて見ることができる。また、8maxトーナメントのプリフロップAIソリューションが利用可能になれば、プリフロップリンプに対する最適な戦略を検証することが出来るようになるだろう。

LJのCbet戦略が大きく変わったことがすぐにわかる。ポットサイズが小さくなったため、150%サイズのCbetサイズが優先的に使用されなくなった。その代わりに、33%サイズと67%サイズを混ぜたレンジCbet戦略が見られる。

67%CbetへのBBの対応

上記のLFIとRFIの例を比較すると次の事がすぐにわかる:

  • LJはこのリンプされたポットでSPRが高いため、広範なレンジでCbetする追加のインセンティブがある。すなわち、より広いレンジでポットを構築し始めることを望む。

  • LJはまた、BBが小さいベットサイズに対して広いレンジをフォールドすることによっても利益を得るので、エクイティを否定するために大きいベットサイズを使うよりも33%や67%のベットサイズを使う方が効率的である。

  • LJはリンプされたポットでより頻繁にCbetを行うので、BBの対応はより頻繁にレイズすることである。これはBBのレンジの多くが、エクイティはあるがレイズに対してはコンティニュー出来ないハンド、例えばいくつかのオーバーカードや弱いバックドアドローのエクイティを持つハンドなどをフォールドアウトさせる事を好むからである。


ショートスタックのポストフロップを比較する


同じLJ vs BBのシナリオを、有効スタック20bbのスポットで見てみよう。

ES20bbのRFIレンジ

ここでもLJの標準的な20bbのオープンレンジを使う。なお、LJは100bbのオープンレンジでは2.3bbのオープンサイズを使うが、20bbでは2bbのオープンサイズを使う。

上記は、このオープンサイズに対するBBの反応で、コールorオールイン戦略を採用している。

100bbの例と同じように、BBはポジションが無いため、コールした後、フルレンジでチェックをする。LJは上記のCbet戦略を使う。最も低いポケットペアをオープンレンジから外しているにもかかわらず、LJはSPRが低く、ポストフロップのポットサイズが小さいため、Cbetのサイズを小さくしていることに注意しよう。また、マージナルハンドやTTのようなナッツクラスのハンドを混ぜていくつかのチェックバックを行い、自分のエクイティを保護しながら、BBがターンでワイドレンジでリードベットをする事を防ぐ。

75%Cbetに対するBBの反応(SPR)

最後に、75%ポットCbetに対するBBの反応を見てみよう。これは、前の例で使った66%ポットCbetに最も近い比較対象である。SPRが低いため、BBはトップペアや強いドローで喜んでチップを全てポットに入れている一方で、最強のハンド(例えば今後のストリートでもベットし続けるであろうLJのレンジの大部分を占めるハンドをドミネイトしているツーペアなど)を単にコールしてスロープレイする。

では、LFIレンジに同じRFIレンジを使い、先ほどの100bbと同じ条件でBBがプレイした場合に、この戦略がどのように変化するかを見てみよう。

リンプされたポットでBBがチェックするレンジ

この解決策では、RFIとLFIの両方の例でプリフロップのレンジが同じになるように、前の例でBBがレイズやオールインをしたハンドをレンジから取り除いた。

ポストフロップのポットサイズが小さくなったことで、LJはほぼ純粋に67%ポットのCbetを行う戦略に切り替えた。チェックを混ぜるハンドも見られるが、ほとんどの場合、LJは自分のスタックの大部分を占めるポットを取るために大きくベットするインセンティブがある。

ポットに対するCbetのサイズが大きいにもかかわらず、LJのCbetのレンジが広いため、BBはRFIの例よりも広いレンジでコールしていることがわかる。また、フロップで小さいポットをそのまま勝ち取るインセンティブが少ないため、先ほどのオールインレイズよりも小さい3ベットが多く見られる。

先ほどの例と同様に、いくつかの傾向がすぐにわかる:

  • SPRがずっと低いのでLJは100bbのときに見た混合戦略ではなく,主に一つのベットサイズを使う。これはLJのレンジアドバンテージが、有効スタック20bbの時にはスタック深度が深いときほど意味をなさないためである。

  • 100bbの例では、BBは20bbの時よりも12%多いハンドでコールやレイズをしている。そのかわりに、BBはオールインのチェックレイズを採用している。SPRが低くなった今、BBはより強いドローで可能な限りエクイティを実現したい一方、オーバーカードに対して脆弱なトップペアを守るためにオールインを行いエクイティを否定している。

  • これとは対照的に、BBの戦略はリンプポットでは比較的変わらず、頻度の差は1~2%しかない。これは、リンプポットではSPRが高く、LJのCbetが小さいため、即座にポットを勝ち取るインセンティブが少ないからである。


比較から得られるヒューリスティクス


これらはほんの一例に過ぎないが、今後のリンプポットプレイに応用出来る結論をいくつか導き出すことができる:

  • 一般的に、スタックが深い場合、BBはリンプポットで低いペアを使ってチェックレイズすることが多く、レイズポットでチェックレイズすることは少ない。ここで私たちのゲームに必要なことは、ビッグブラインドのチェックレイズにはより広いレンジを使うことであり、特に相手がリンプした後に広いレンジでCbetしている場合はなおさらである。

  • SPRが低い時にリンプしたポットでオールインのチェックレイズを使うのは避け、レイズサイズを小さくし、コールレンジを広くすることを好む。BBでは100bbでも20bbでも同様のチェックレイズ戦略が使える。

これらの点を理解するために、T74ボードのいくつかのスタック深度でのリンプファーストインポットでのポストフロッププレイの比較を見てみよう。以下はLJのフロップ戦略とBBの反応を6種類の有効スタック深度で比較したものである:



50bb以上の場合

  • LJのポジションの優位性が大きくなるため、彼らは小さいサイズでより広いレンジでCbetを使うことがわかる。

  • これに対してBBは、LJの広いCbet戦略に対抗するため、広いレイズレンジを使用する。LJがより弱いレンジをベットするため、BBはそのレンジのボトムのエクイティを否定するために、より頻繁にレイズするようになる。


30bb以下の場合

  • LJは広いレンジをベットし続ける利点が少ないので、よりポラーな戦略になる。LJは自分のレンジのトップでプレッシャーをかけるためにある程度広いレンジでベットするが、レンジのバランスを取るために33%の小さなベットも混ぜる。

  • BBはLJのCbetのレンジが強いのでレイズするインセンティブが少ない。その代わり、BBは自分のレンジの少ない部分でレイズし、弱いドローのエクイティを実現させるために頻繁にコールする。


まとめ


リンプする相手に対して有効な対策がない場合、彼らの戦略に適切に対抗するのは難しい。この記事では以下の点を確認することが出来た。

  • LFIしたプレイヤーはBBに対してポジションのアドバンテージを持つ為、有効スタック50bb以上の時は広いレンジでCbetをすべきである。これに対してBBは、広いCbet戦略を利用して、より広いレンジでレイズをする。

  • 有効スタックが30bb以下の場合、リンパーのポジションのアドバンテージが減少するため、リンパーのレンジの一部をチェックバックするようになる。BBとしてプレイする場合、LJのCbetのレンジが強化されるため、レイズの回数を減らしてエクイティを実現させるためにコールを増やして対抗すべきである。

  • BBは相手が最初にリンプインしてくるレンジが広かろうが狭かろうが、ポストフロップのアプローチを変えることはない。ただし、相手が広いLFIレンジを持っている場合、相手がそのレンジに多くのペアを含む可能性があるため、低いペアに対してはレイズよりもコールを増やすという例外がある。

  • LJのプリフロップのリンプレンジを評価する場合、相手のレンジが狭くなるにつれて、コールを減らし、むしろレイズを増やすことを考えるべきである。これは、タイトなリンパーの持ち得ない組み合わせ(例えば、T74のボードで74やT7)をBBがより多く持つ一方で、我々のより強いフロップハンドはより多くのプロテクションを必要とするためである。

これらの観察の多くの仮定に基づいていることに注意することが重要であ離、実際のシナリオでは変化する。相手のLFIレンジがプリフロップでどのように形成されているか、またポストフロップでこの記事で検討したアプローチとどのように異なるかを考慮して調整しなければならない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
記事は以上になります。最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を読んで良いと感じて頂けましたら、noteのスキ、やSNSでの拡散、Xのフォロー、サポート等をして頂けますと、本当に執筆の励みになります!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?