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わたしは運がいい

昔から運がよかった。あの時凍った白線の上を歩いて転んでいなければスリップした車にひかれていたし、アナフィラキシーショックで呼吸困難に陥った時もいつもお世話になっている先生がいてくれた。モラハラ・メンヘラ元カレと別れた後、とんでもなく素敵でわたしにはもったいないような魅力的な人が夫となった。今までインフルエンザに1度もかかったことはないし、何度打とうとわたしの体からは風疹抗体が消える。運がいいだけでなく、何やら少数派に入ることも多かったように思う。

夫婦生活を営んでいて半年で7割、1年で9割の夫婦が妊娠する。わたしはもちろん1年経っても妊娠しない1割に入っている。そしてその不妊の中でも原因不明不妊と呼ばれる15%に入っているのだから、自分の引きの強さには驚いてしまうし、今は受け入れられているけれどとにかくつらかった。ブライダルチェックも一般不妊検査でも異常なかったら授かれると思ったんだ。

いろんな治療を行ったが生理は1度も遅れることなくやってくる。この時点でわかっていることはただ1つだけ。一度も着床していないということ。その前の受精できているか否かは体の中で起こっていることだからわからない。ただ、わたしはできていないんだろうな、と思う。だから早く体外受精に進みたかった。毎月ひどくなるPMS・PMDDにホルモン剤が加わったら別人のように情緒不安定。普段だったら絶対に気にならないことで泣いて怒って喚いた。夫にはたぶん一生分の八つ当たりをした。こんな醜い自分と一緒にいてもらっては困る、夫はわたしとだからパパになれないんだ、と結婚してまだ1年ちょっとで離婚が頭をよぎったこともある。ふたりお風呂につかり、MISIAのアイノカタチをリピートさせながらふたりで泣きながら話した日もあった。

ある日を境に吹っ切れたのか穏やかでいられる日がまた戻ってきた。くだらないことを話してげらげら笑って、笑いすぎて泣いてしまうことだってあった。そんなわたしたちは来年から体外受精にステップアップする。ふたりで過ごせる日はあとどれくらいだろう。待望の家族が増えるのはいったいいつになるんだろう。毎日おなかにやってきてくれた時のことを妄想してゃにやにやしてしまう。

不妊治療をしていなかったら「子どもは?」「頑張りが足りないんだよ」「諦めたころに授かるっていうじゃん」「妊娠には〇〇がおすすめ!」という周囲の言葉に対し心痛める人がいるということを知らなかった。不妊治療専門のクリニックに通い始めてから思っていた以上に不妊治療をしている人がいることを知った。子どもを授かれないことで他人を羨んだり妬んだりと闇にのまれそうになることを知った。夫とこんなにたくさんの時間をかけて話し合うこともできなかっただろうし、子育てに対するふたりの思いを共有できた。

人としては大きく成長できたのかもしれないけどできることなら二度と味わいたくないな、と思う。

#もしも叶うなら

20代のうちにお母さんになりたい。あと数か月。それまでに赤ちゃんに会いたい。

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