【課長の心得】を読んで感じたこと

■本レポートの抜粋

いつの時代も上からのプレッシャーと下からの突き上げに悩まされる、悲しき中間管理職「課長」。かつては「目標」であり「憧れ」のポジションであったが、いまや「課長になりたくない」と口にする人が増えているのだといいます。そんな「課長受難の時代」に、講師・コンサルタントとして数々の大手企業の経営者育成やマネジメント研修を行ってきた著者が、「課長の心得」について解説したのが本書です。

かつてないほどに変化が激しい現代、課長はさらなるマネジメント能力が求められ、苦しい立場に立たされています。しかしながら、現場の実行部隊のリーダーである課長は、おもしろく楽しい時期でもあります。本書は、そんな課長の役割について、単なる理想像を描くだけでなく、「こう考えたら楽になる」「こうしたらおもしろくなる」という視点から、実践的なヒントを提供してくれます。責任が重く、大変そうな課長の仕事に尻込みしていた人でも、本書を読めば「やってみたい」と思えるようになるかもしれません。

ーーーー書籍情報--------------

■著者名:安部 哲也

■著書名:課長の心得

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■課長とは何か?

現場のチームを直接マネジメントする課長は、最初の管理職になります。予算・計画・人事評価などの権限が与えられ、課を運営する責任を担います。

「リーダーシップ・パイプライン」の考え方にのっとれば、役職によって必要な職務要件は変化し、ふさわしいマインド、スキル、時間配分が求められます。

課長はまず、従業員を管理する「管理者」としての立場に変化したことを自覚し、経営サイドの意向を理解して課を運営していくマインドが求められます。そして、課長は実務についての「テクニカル・スキル」以上に、課や部下の目標設定・動機付け・人材育成を行う「ヒューマンスキル」の強化と実践を意識することが望ましい。さらに経営者層になっていく未来を見据えた場合、方針を決めたり戦略を立てたりする「コンセプチュアル・スキル」も磨いておくとよいといいます。担当業務に時間を使うのではなく、課のマネジメントと人材育成を中心とした時間配分に切り替えていかなければなりません。

課長には中間管理職ならではの辛さと同時に、多様な部下を直接動かしながら大きな仕事ができる面白さがあります。この役職を楽しみながら、ぜひ自己成長につなげていくことが重要です。

■課長に求められるマネジメント力

マネジメントで最初にやるべきなのは目標設定です。価値があることを成し遂げるには、具体的で明確な目標設定が不可欠だといいます。会社の「経営理念」を基軸として、「部の目標」をブレークダウンしていったものが「課の目標」になります。この目標は、「課長の目標」にならないよう、できるだけメンバー全員を巻き込んで「課全員の目標」になるようにしたい。

そのうえで、課のメンバーのそれぞれの目標設定を行う場合は、「SMART」というキーワードが参考になります。

SMARTとは目標設定のポイントとなるキーワード、「S(Specific)」「M(Measurable)」「A(Attractive)」「R(Realistic)」「T(Time Bound)」の頭文字をとったものである。

1)具体的(Specific)でなければならない。

「ただ単にがんばる」というのではなく、どの商品、サービスの何を目標にするかを明確かつ具体的にする。

2)目標は測定可能(Measurable)である必要がある。

営業部門の売上目標はもちろん、経理部門のような間接部門であっても「決算報告の作成時間を3週間から2週間へ短縮する」といった数値目標を持つことができるはずです。

3)目標達成が本人にとっても魅力的(Attractive)であること。

人は基本的に自分にメリットがあるかどうかを考えるものです。本人がワクワクできるようにしたり、社会の役に立つことを伝えるようにしたりすると効果的です。

4)挑戦的でありつつも実現可能(Realistic)なもの。

高すぎる目標は本人のやる気を削いでしまう。部下の実力ややる気を見ながら、本人が少し努力したり能力をあげたりすることで実現できるような目標設定をすべきです。

5)目標に時間軸(Time Bound)をもたせる。

一定間隔でマイルストーンを設定して、定期的にチェック&アクションをする。

■課のPDCAサイクルを回す

Plan(計画)、Do(実行)、Check(確認)、Action(対策)からなるPDCAサイクルはマネジメントの基本です。しかし、実際に「PDCAを回せている」と自信を持って言える人はまだ少ないのが現状です。

仕事(Do)が忙しすぎると、計画(Plan)が疎かになってしまいがちです。しかし、計画がない状態では、仕事の優先順位を見失い、ますます仕事が忙しくなってしまうのです。忙しくともあえてプランに時間を割き、課の年間事業計画、1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月ごとの行動計画などを明確にしておくべきです。

PD(Plan – Do)はできていても、CA(Check-Action)ができていないという人も多くいます。結果の測定や対策を行う確認-対策ができていないと、次のビジネスの計画-実行において、過去の経験が活かせないことになります。

確認の際のポイントは「誰ができなかった」「誰の案がよくなかった」といった「誰が」ではなく、「何が問題だったのか」「どのプロセスに問題があったか」といった「何が」にフォーカスすることです。「人」と「問題」を切り離して、「問題」を責め、「人」を責めないようにすることが重要です。そして、次回どうすればよいかなどの将来に向けて対策を考え、アクションへとつなげていきます。よりよい結果を出すためには、よりよいやり方を工夫しなければならないのです。

■攻めのリーダーシップ

ハーバード大学ビジネススクールのジョン・コッター教授によれば「リーダーシップとは変革能力、マネジメントとは管理能力である」。スポーツでたとえると、リーダーシップは「攻め」、マネジメントは「守り」にあたります。攻守の双方が強くなければ勝ち続けていくことはできない以上、一概にどちらが重要であると言うことはできません。ここでは、「攻め」のマインドであるリーダーシップとイノベーションについて触れていきます。

本来、人は変わりたくないものです。しかし、三洋電気がパナソニックに、シャープが台湾のホンハイに吸収されたように、いかに大企業、優良企業であっても、変わり続ける社内外のビジネス環境に応じて変化していかなければ、生き残っていくことはできません。環境に適応できなければ、存続できないのは課も同じです。

課長は、自分の課を攻めるチームに変えることができます。変化のためには、課の内部外部環境を分析して、将来がどう変わっていくか仮説を立て、課のビジョンを作り上げていくことが不可欠です。メンバーを巻き込み、一緒に「自分たちのビジョン・目標」をつくることが重要です。

さらに重要なのが、変革に向けた実行にいかにメンバーを巻き込んでいくかになります。そのためには、変革の必要性とビジョンをメンバーに伝え続け、対話を重ねなければなりません。変革自体を前向きに楽しむのも重要な視点です。

■変革実践のためのコ・マネジメント&リーダーシップ

ビジネス環境が劇的に変化する時代において、課長一人でマネジメントを行い、リーダーシップを発揮するには限界があります。そんなときは、課の状況に合わせて、「やること」「やらないこと」を仕分けし、係長や主任を巻き込んで、コ・マネジメント(共同型マネジメント)やコ・リーダーシップ(共同型リーダーシップ)を発揮するという選択肢があります。

たとえば、アップル創業者でビジョン・コンセプトを作るスティーブ・ジョブズ氏と、それを実現する技術のスティーブ・ウォズニアック氏は二人三脚でビジネスを成長させてきました。どちらか一人だけでは今のようなかたちにならなかったでしょう。

難しい時代だからこそ、マネジメントやリーダーシップをすべて自分自身で行おうとせず、自分の強みと弱みを認識しながら、自分の時間配分も考え、メンバーと積極的に協力することを検討するといいでしょう。

■上司を上手く巻き込めているか?

多くの課長が部長・取締役・社長といった上司との関係に問題を抱えているといいます。情報源・決裁権・人脈などを持った上司たちは、課長にとってはいわば重要な「リソース」になります。このリソースを自分や課のために積極的に活用することです。

「上司への支援度合いが高い、低い」「上司への批判・提言が多い、少ない」を2軸にとって「フォロワー(部下)」のタイプを4つに分類した場合、上司が使い勝手がいいと感じるのは上司への支援が高く批判が少ないタイプです。しかし、ときには上司が判断を間違うかもしれないし、市場や顧客、競合の状況が変化し、以前の判断が適切でなくなることもあります。そのような際に本当に求められる部下とは、基本的に組織や上司を支援しながらも、自ら問題意識を持って状況を判断し、上司に対して積極的な提言、ときには反対意見を述べられる「真のパートナータイプ」と呼ばれるフォロワーなのです。

■真のパートナータイプの部下になる

「真のパートナータイプ」になるためには、「上司を知る」「自分を知る」「自分と上司の関係性を調整する」という3ステップを押さえることだといいます。

まずは上司の持つ目標・役割などをしっかりと把握したうえで、上司の好むビジネススタイルを理解する必要があります。『コーチングのプロが教える「ほめる」技術』を参考に、「理論で動く」「感情で動く」と「自己主張が強い」「自己主張が弱い」の2軸で人を分けると、次の4タイプになる。

理論的で自己主張が強い「コントローラータイプ」は、自身でやることやメンバーをコントロールしたがります。スピード重視で、人から細かく指示されることを嫌うタイプです。

理論的で自己主張が弱い「アナライザータイプ」は、情報を集めて、分析して計画をたてる人たちです。物事を客観的にとらえることが得意で、完璧主義者でミスを嫌うタイプでもあります。

感情的で自己主張が強い「プロモータータイプ」は、いろいろとアイデアを考え、自発的にやりたがります。一方、細かいことや優先順位をつけることが苦手です。

感情的で自己主張が弱い「サポータータイプ」は、人を支援することが好きで、協力的な関係を持ちたいと思う、頼まれると嫌とは言いにくいタイプです。

上司分析が終わったら、今度は自己分析に移ります。上司分析と自己分析を終えると、上司と自分の関係性の調整の仕方も見えてきます。

■上司のタイプに合わせて、関係性を調整する

上司と自分の関係性を調整する例として、上司のタイプ別に効果的なホウレンソウを解説します。

コントローラータイプの上司には、結論から単刀直入に述べ、その後理由についてポイントを押さえながら伝えるべきです。だらだらとした説明や感情論は避けた方がよい。

アナライザータイプの上司には、理論が飛躍しないように、裏付けとなる客観的データを準備すると効果的です。精神論はこのタイプからは好まれない。

プロモータータイプの上司には、結論から伝えたうえで、同時に自分自身のやる気や思いにも言及することがお勧めです。

サポータータイプの上司には、丁寧でわかりやすく、また上司に支援や協力をお願いするようなかたちで伝えるとよいです。大胆すぎる提案や人間関係を無視した提案は嫌われる傾向にあります。

相手のタイプに合わせて調整し、論理的にプロセスを考えながらホウレンソウを行えば、上司とよりよい関係を築くことができるでしょう。自身と上司のタイプが違うことは決して悪いことではなく、タイプが異なることで、お互いの強みと弱みを補い、また学びあうことができるのだといいます。

■今後やること

1)部下との共同できる環境づくり

現状一方的に支持を出しているだけなので、同じビジョンを共有し一緒にPDCAを回せるようにする。自分自身で考える力をつけその考えたことを分析し、改善案まで出せるところをゴールとする。

2)上司の分析

真のパートナーになるために上司の分析と、どうすれば信用度が上がるかを再度理解する。また、これは上司だけではなくクライアントも一緒なので相手のタイプをしっかりと理解し上での打ち合わせや提案を行っていきます。