生きてる会社死んでる会社を読んで

■本レポートの抜粋

本書の価値は、30年にわたりコンサルタントとして多くの現場を見てきた著者の肌感覚から生まれたライブ感にあります。

それが集約されたのが、本書のタイトルにもなっている「生きている会社」というキーワードです。「生きている会社、死んでいる会社」(Dead or Alive)とは、いかにも大仰な言い回しかもしれません。しかし、これを「社員の目が」生きている会社、死んでいる会社、と補ってみたらいかがでしょうか。ある会社、あるいはある部署のドアを開けた瞬間の、誰もが直観的に感じる空気が伝わってくるはずです。

本書では、20社を超える「生きている会社」の事例に加えて、ネガティブな事例も紹介されています。 著者は、その現状を指摘し、嘆いているだけではない。30年にわたる経験をもとに発見した、「死んでいる会社」を蘇生させる処方箋を紹介しているます。そのなかでポイントをひとつ挙げるとすれば、「代謝戦略」になります。会社はやがて老いていくものであるから、会社として価値を創造しつづけるためには「事業」「業務」「組織」「人」の4つを新陳代謝するよう心がけなければなりません。

よい会社・悪い会社の定義は世の中に数多あるが、それを「生き死に」(Dead or Alive)に例えた著者渾身の提言にぜひ耳を傾けていただきたい。

■書籍情報

著書名 生きてる会社死んでる会社

著者名 遠藤 功

■独自価値

会社のあるべき姿を考えるためには、「そもそも会社は何のために存在するのか、その目的は何か」という問いからスタートしなければなりません。経済学では、会社の目的は「利益の最大化」とされています。だがそれは目的ではなく大前提です。利益の最大化は、会社が社会に必要とされていれば実現します。

社会に必要とされるために会社が為すべきは、「価値の創造」であり、これこそが会社の真の目的になります。ただし、創り出す価値を判断し、選択するのは、顧客です。つまり会社の目的とは、顧客が認める独自価値を創造することだといえるでしょう。

ただし、苦労して独自価値を創造しても、競争の末、やがて陳腐化してしまいます。挑戦によって独自価値を連続的に創造しつづけ、「絶え間なき創造」を実現しなければならないのだといいます。

■新陳代謝する

創造しつづけることは難しい。なぜなら企業は老化するからである。「安住」と「傲慢」という老廃物が溜まることで、創造は困難なものになりす。たとえばアマゾンのように、創造しつづける会社は、老化の怖さをよく知っています。だから創業当初の、初々しい野心や桁違いのエネルギーに溢れた1日目「デーワン」でありつづけようと努力しているのです。

デーワンでありつづけ、創造を継続的に行うための鍵を握るのは、新陳代謝です。創造と代謝はコインの裏表の関係になります。新しいものを生み出すことだけが戦略ではないと認識しなければなりません。

代謝戦略の対象は、事業、業務、組織、人になります。それぞれについて、「捨てる」「やめる」「入れ替える」こと。ただし、古いから、赤字だからといって必ずしもダメなわけではありません。問題は、「凡庸さ」だといいます。それを放置せず、当たり前だと思っていることに対してメスを入れなければならないといいます。

■生命体である

会社は「生き物」にたとえられるが、生き物としての会社は、「経済体」「共同体」「生命体」という3つの側面で形成されています。

「経済体」とは、価値を創造し、営利を追求するという会社の役割を遂行するために必要な側面です。「共同体」とは、人々が同じ目的を共有し、「共働する場」であるという側面。「生命体」とは、そこで働く人々が仕事を通じてやりがいを感じ、人として成長し、活性化する場という側面です。

これまで会社は、経済体としての側面においてのみ論じられ、評価されてきました。確かに、そこには目に見える部分や測定可能な部分が多く、善悪の判断が容易という理由もあるでしょう。ただし、経済体としての会社は、会社の一部分にすぎません。むしろ「生命体」こそ会社の核心である。会社は、キラキラ輝き、逞しく、みなぎる力に溢れる生命体でなければならないのです。

生命体の正体は「気」だといいます。会社にはそれぞれの「表情」があるものだが、会社としての活力、つまり気はそこにあらわれます。創造のために挑戦しつづけている会社は喜怒哀楽が豊かである一方、創造できない「死んでいる会社」は無表情だといいます。

生命体である会社の根源は、「人」です。会社が活性化するかどうかは人にかかっているのだから、人事を人事部にまかせていてはいけない。経営者の最大の仕事は、「人」を元気にすることなのだといいます。

■生きてる会社の条件

生きている会社をつくるために必要なものは、じつはとてもシンプルだといいます。(1)「熱」(ほとばしる情熱)、(2)「理」(徹底した理詰め)、(3)「情」(社員たちの心の充足)の3つだといいます。この3つの条件が整い、重なり合うことで会社は「生きている会社」になり、その結果「利」(利益)が生まれます。

「熱」とは情熱(passion)のことです。困難を乗り越え、何かを創造しようと思えば、熱は必須のものです。「生きている会社」は組織全体の熱量が非常に大きいものだが、「死んでいる会社」は、熱量が乏しい。たとえ熱を帯びた人がいたとしても、熱量が乏しい組織に身を置くと、その熱を失ってしまうといいます。加えて、会社は老化とともに熱を失ってしまうものです。「何のために会社は存在するのか」「社会に対してどのような役に立ちたいのか」「自分たちは何のために働くのか」を明確にし、会社に熱を取り戻さなければなりません。

「理」とは、理詰め(reasonability)のことです。熱が大きくても、独善的になってしまったなら、ビジネスはうまくいきません。常に理性的、客観的な視点を保ち、事実をもとに考え抜くことが重要だといいます。

理詰めであるためには、会社の「身体性」を高め、現場で働き回り、現実を直視し、事実をもとに考えることが必要である。すなわち現場・現物・現実を重視する「三現主義」を経営の根底に据えなければなりません。しかし、きわめて多くの会社において、戦略が表面的な理屈合わせに終始し、事実が担保されていないものだといいます。現実と向き合い、事実に徹底的にこだわらなければ、戦略は机上の空論に陥ってしまいます。

注意しておきたいのが、「理」とは、短期的な経済合理性だけではないということです。会社とは、社会の中で生かされる存在なのだから、より大局的な視点で理を考えなければなりまえん。理は善、規範、大義、人の道なくしてはありえません。だから、その根底には、常に道理、倫理があるべきだといえます。

なお、経営における「理」は、戦略レベルの「理」と実行レベルの「理」の2つがあります。戦略レベルの「理」とは、「何を営むべきか」を定めるにあたっての理です。実行レベルの「理」とは、「いかに実行するか」を選択するにあたっての理です。この2つがそろっていなければ、成功することはできません。

「情」とは、情緒(emotion)のことです。会社はやがて老化していくものだが、その理由の1つに社員たちの感情の老化があります。社員たちの感情が老化すると、それがほかの人たちにも伝播し、やがて組織全体の感情が老化してしまいます。「生きている会社」であるためには、組織の感情をマネジメントし、老化を防がなければならないのです。

経営において人の「情」を重視することは、最も合理的であり、理にかなった成功への近道です。その理由は2つあります。1つめは、経営者がどんなに優秀であっても、1人では何も成し遂げられないからです。会社は多くの役割で構成されているが、経営者はその中の一部を担っているにすぎない。社員たちの心に働きかけ、充足し、発奮させることなしに、挑戦や創造は起こりません。

2つめは、人の「情」に働きかけることによって、より多くの能力を引き出すことができるからです。あなたが「能力が低い」と評している人は、ただ単に「意欲があらわれていない」だけかもしれない。「やりがいの創出」と「承認欲求の充足」の2つの条件を満たすことができれば、その人の意欲を引き出せる可能性があります。

「熱」「理」「情」の3つの要素を満たせば、「生きている会社」をつくることができ、「利」(利益)が生まれる。そして、「利」よりはるかに重要な「魂」(spirit)、つまり経営を支える「精神」もまた生まれるのだ。「利」は使えば消えてしまうが、「魂」は意志さえあれば永久に残すことができます。魂こそ、会社が継承すべき資産といいます。

■言える化を大切にする

「言える化」とは、年齢や経験、役職、身分、性別などにかかわらず、社員一人ひとりが自分の意見やアイデアを自由闊達に発言できることをいいます。会社では、上下関係や経験値の違いがあるため、「言えない化」「言わない化」がむしろ自然でしょう。だがそんな環境では、社員たちが日々の仕事を通じて気づいたことやアイデアが埋もれたままになってしまう。「言える化」が実現すれば、そうした現場の知恵が埋もれることなく、経営に活かされるようになります。

「言える化」を定着させるためには、「聴ける化」が必須だといいます。つまり、役員層や管理職がフラットでオープンな気持ちをもち、部下たちの意見に耳を傾けて、よいと思う意見やアイデアはただちに実行に移すことだといいます。

聴ける化と言える化が循環すれば、「生命体」としての会社は輝きはじめます。

■必死のコミュニケーションに努める

会社の目的や目標を打ち出しても、それが社員たちの心に届き、共感と「熱」を生み出さなければ価値はありません。経営において重要なのは、単なる「理念」「ビジョン」「計画」「人」ではなく、「共有された理念」「共有されたビジョン」「合意された計画」「触発された人」なのです。

しかし経営者からすれば「共有できている」と思い込んでいる理念やビジョンは、現実には決して共有されておらず、浸透していないものだ。これは経営における最大のリスクのひとつだといえます。

「共有された」「合意された」「触発された」状況をつくるには、密なコミュニケーションに努めるしか方法はありません。「伝える」と「伝わる」はまったくの別物です。その違いを常に認識したうえで、経営者自ら人の意志を伝え、人の声に耳を傾け、議論を進めながら物事を進める姿を見せよう。コミュニケーションの崩壊は、経営にとって命取りだと心得る必要があります。

■みんなでよい「空気」をつくる

「生きている会社」と「死んでいる会社」とでは、空気のフレッシュさが異なっている。空気は環境であるのだから、「生きている空気」の中で仕事をすれば生産性や創造性が高まります。その一方で、「死んでいる空気」の中に身を置けば、人は鬱屈してしまいます。

この「空気」は、社員全員が日常の中で意識的につくりだすものです。たとえば、「無印良品」を展開する株式会社良品計画では、「風土改革」と称して、毎日全員で5分間掃除する、定時退社・休暇取得を推進するなど、職場環境づくりに取り組んでいます。「生きている会社」の現場に共通するのは、「活気がある」「会話がある」「笑顔がある」の3つです。会社が「生命体」として輝き、創造性を発揮するためには、良質な職場環境が重要なのです。

■今後やること

1)言える化の環境をつくるための聴ける化の実施

特に部下やメンバーにこちらから意見を聞く話かけるなどしていかないと本当の意味で意見が言えないとおもいます。上からしてみればなんでも言ってくれと思いますが、案外話にくいものなのでまずは、ちゃんと聞いてくれるんだという心理的安全性を作っていきます。

2)新陳代謝の実施

現状うまくいっていることは、そのまま継続していこうとしていますが更によくするにはの視点が足りてなかったと思います。どうしたらもっといいものになるのかの探求と、他にどのような方法があるのかなど一方向だけではなく、多角的な視点から物事を見るようにしていきます。