【両利きの組織をつくる】を読んでやるべきこと!

■本レポートの抜粋

チャールズ・A・オライリー氏の『両利きの経営』は、世界的に注目されている組織経営論だといいます。両利きの経営とは、「既存事業を深堀りする能力」と「新規事業を探索する能力」、そしてこれら相矛盾する能力を、同時に追求できる組織能力の獲得を目指すものとされています。

本書の大きな特徴は、日本企業が両利きの経営を実現するための組織開発アプローチを、事例・理論・実践の3つの要素を織り交ぜて解説している点にあります。組織が機能しているとはどういうことでしょう。組織が変わるとはどういうことでしょう。そして組織進化の過程において、経営トップが果たす役割とは何なのか。

こうした問いかけに対し、日本を代表するグローバル企業のひとつ、AGC株式会社(以下、AGC)の組織改革の事例を通して説明していきます。

ーーー書籍情報ーーーーーーー

著者名:加藤 雅則

著書名:両利きの組織をつくる

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■これまでの組織改革に欠けていたこと

市場環境の急激な変化、デジタル技術を中心としたディスラプション、価値観の多様化など、日本はいまさまざまな変化に直面しているといいます。そのような環境にもかかわらず、これまで慣れ親しんだやり方を変えることができない、いわゆる大企業病に蝕まれている日本企業は多いのです。

その原因は大きく分けて2つあります。

1)経営者が組織や人材についてあまり関心を持っていないパターン。

この要因として、終身雇用制度の下、総じて従業員の離職率が低く、組織改善の必要性を感じにくかったことが挙げられます。彼らにはどうしても「社員がいきいきと働ける」「風通しのよい企業文化」といった話題が、甘っちょろく幼稚な話に感じてしまうといいます。

2)戦略性を欠いたまま、組織論だけが語られるパターン。

理想の組織モデルや働き方の多様化など、さまざまな組織論を語りつつも、それらが事業戦略や経営視点に結びついていないことです。これはとりわけミドル層に多く見られる傾向であるといいます。

つまり経営陣が戦略論に偏って経営を考える一方で、組織や人に関心を持つミドル層が戦略的な視点を持っていないというチグハグな状況が多く見られるといいます。これでは「組織が変わる」ことへの共通イメージなど持てるわけがないと著者はいいます。

■組織カルチャー変革のためのアプローチ

組織を語る際に大切なのは、組織と戦略の両方に目を向けた、組織経営論という視点です。戦略と組織は車の両輪に当たり、両者がかみ合うことではじめて機能するといいます。つまり戦略論と組織論をバラバラに議論していても意味がないのです。

両利きの経営とは、既存事業を維持しながら新規事業を生み出すという戦略論であるだけでなく、「それを可能にするために組織はどうあるべきか」という組織論としての面も併せ持つ組織経営論です。その核心は、組織能力の形成を可能とする「組織カルチャー」のマネジメントにあります。本書における組織カルチャーとは、いわゆる社風や組織のDNA、組織風土といった抽象的な概念ではなく、組織で期待される「仕事のやり方」のことをさします。この組織カルチャーこそが、最も真似されにくい競争力の源泉となるといいます。

しかし組織カルチャーを変えるのは、途方もなく難しいことだともいいます。多くの日本企業経営者は、組織カルチャーを変えるにはボトムアップでなければならないと口を揃えます。一方で外資系を経験した経営者は、トップダウンでなければ変えられないと考えることが多いようです。だが本書で提案されるアプローチは、そのどちらでもありません。

「変革は経営者によるトップダウンとミドル・若手からのボトムアップがミートするところで起こる」というのが著者たちの主張です。オライリー氏の前著『両利きの経営』では、リーダーシップに最も重きが置かれていたのに対し、本書では「トップダウンとボトムアップの両方が必要である」という視点が重視されています。

■コングルエンス・モデル

両利きの経営とは、「既存事業を深堀りする能力」と「新規事業を探索する能力」、そしてこれら相矛盾する能力を併存させる組織能力の獲得を目指すものです。しかしそもそも組織能力とはいったい何でしょうか。著者たちはこの組織能力を読み解く視点として、「コングルエンス・モデル」を紹介しています。

コングルエンス・モデルは、ダイナミックな活動体である組織を「KSF」「人材」「公式の組織」「組織カルチャー」という4つの基本要素から捉えます。

KSFとはKey Success Factorのことで、「現在の戦略を実行するうえでの鍵」を意味します。戦略と組織は車の両輪の関係にあり、戦略を実行するのが組織です。したがって戦略の鍵であるKSFは、戦略論と組織論の連結点となります。

1)「人材」とは、ここでは「どういう知識・経験・スキルをもった人材がいるのか」を意味します。一般的に「組織能力」という言葉を聞いたとき、イメージしやすいのはこの要素かもしれません。

2)「公式の組織」とは、「組織体制・評価制度・仕事上の仕組み・手順」などを含む「構造(Structure)」と表現されるものです。

3)「組織カルチャー」とは、その組織で観察される特有の「行動パターン」すなわち「仕事のやり方」のことです。組織を構成する要素のなかで、著者たちが最も重要視しているものです。

コングルエンス・モデルでは、4要素を含む「組織」の上位に「戦略」を、さらにその上位に「経営のリーダーシップ」を配置する構造となっています。つまり経営者による意思表示を起点として戦略(目標)が定められ、その戦略を実行するために組織(4要素)があるという全体構造となるといいます。

■アラインメントと慣性の力

コングルエンス・モデルの原則は、「基本要素間のアラインメントが取れて、初めて組織は機能する」ということです。このアラインメント(Alignment:結合)という言葉は、きわめて重要な概念だといいます。

では「アラインメントが取れている」とはどういう状況なのか。それはコングルエンス・モデルにおいて、KSF・人材・公式の組織・組織カルチャーの4要素が、互いに矛盾なくフィット(適合)している状況を指します。適切なアラインメントが形成されている場合、組織はその能力を十分に発揮し、繁栄することができます。

両利きの経営論に照らすと、「異なる組織能力を併存させる」というのは、「事業ごとに異なるアラインメントを併存させる」ことだと言い換えられます。すなわち「それぞれの事業に適したアラインメントの形成ができるかどうか」が鍵となります。

では、かつて機能していた組織が衰退してしまうのはなぜか? その原因は「慣性の力」にあるといいます。組織の4要素がフィットしてアラインメントが取れると、強力な力となって組織を推進します。ところが強力であるが故に、今度はそのアラインメントを変えることが難しくなるのだといいます。慣性の力の正体は、「これまで慣れ親しんだやり方を変えたくない」という組織カルチャーであり、「成功の罠」とも呼ばれている大企業病であります。

SCチームでも、それぞれのチームでの固定概念の違いでかみ合わないこともありこれを変える勇気が今後必要なのかもしれません。

■分離しつつ統合する

「深堀り」と「探索」という異なる組織をデザインする際、組織を分離させてしまうと、かえって孤立してしまうことがあります。ただ分離するだけでなく、統合(融合)もするというのが、組織経営上の重要なポイントです。

統合とは、探索事業が既存(深堀り)事業の資産や能力を活用できるようにする仕掛けのことです。成熟企業の最大の強みは、既存事業の資産(ブランド、顧客ベース、流通チャネル、生産設備、組織能力、人材など)を保有していることにあります。新興企業によるディスラプションに応じていくには、既存事業の資産をフルに活用しない手はない。そこにこそ成熟企業の強みがあるといいます。つまり、営業の際にWebマーケティングの導入をする際に特に大手企業であれば、いままでの方法論や組織論を知ったうえで統合できるような提案をすることで、「分離しつつ、統合する」がじつげんできるのです。

■基本トライアングルの構築

経営者となった島村氏がまず始めたことは、組織経営論における基本トライアングルの構築でした。

1)企業の存在目的(WHY)

「私たちは何のために存在するのか?」という、企業の原点とも言える問いです。島村氏はCEO就任後、真っ先に既存の経営方針を見直し、「AGC Plus」という新しいコンセプトを提示しました。素材メーカーとして、すべてのステークホルダーに価値をプラスすることにより、持続的な成長を目指すものです。トップが率先して意思表示することを体現したかたちです。

2)戦略(WHAT)

「目的のために何をやるか?」です。ここで島村氏は過去にない手を打ちました。今後10年間の成長戦略を、20人のミドルに託したのだといいます。そしてミドルが提言した戦略をもとに、「コア事業が確固たる収益基盤となり、戦略事業が成長エンジンとして一層の収益拡大を牽引する」という結論に至ったのです。つまり既存(コア)事業と新規(戦略)事業を切り分けた格好となったのです。SCとCSの関係がまさしく新規戦略と既存事業になっているため、SCでの取り組みでは先ほども述べたように、既存事業の考えから離れ新しいものを探求する必要があるとかんがえられます。

3)組織(HOW)

「策定された戦略を実現するためにどうやるか?」です。島村氏は「既存コア事業の資産や組織能力をどれだけ活用できるか」が重要だと考えました。両利きの経営における、「分離しつつ、統合する」概念の本質を捉えた格好です。

またCEO、CTO、CFOを「トップ3」という経営チームとしてデザインし直した点も、組織の重要性を訴える意思表示としてうまく機能したと言えるといいます。こうすることで、トップダウン型のリーダーシップではないことを、仕事のやり方・進め方のレベルに落として、具体的な形として示したのだといいます。

■アラインメント再構築に向けた施策

企業カルチャーの変革に重点を置いた経営チームは、さまざまな取り組みを打ち出していった。

たとえば既存事業と新規事業を切り分けるとともに、それぞれの施策を事業ごとに切り分けて考えました。つまり事業ごとに、組織アラインメントを変えたということです。既存事業に求められる仕事のやり方が「我慢強い・言われたことをきちんとこなす」ならば、新規事業に求められる仕事のやり方として「スピード重視・柔軟に対応する」ことを求めるといった具合だといいます。

■今後やること

1)新規事業の在り方を再度考える

現状、SCでやっていることで大きな変化はみられません。それは、固定概念にまだまだとらわれているため、大きな変化を避けていることが原因だと思います。したがって、いままでのアプローチとまだまだ変わりがない、解約の理由が一緒など、満足いく結果がでていないのでこれでは戦略さずかっているのに体現できていない状況になります。

したがって、再度SCの目的とは何かをチームで把握すること。そしてそれを成し遂げるための優先順位が何で、足りてない部分の補充、無駄になっているものを削除する動きを進めていきます。

2)新規提案方法

自社の組織サービスのことだけではなく、提案でいえば相手企業、特に売上があがっていない企業に関しては、同じような問題が考えられます。

したがって、その会社の売上を上げるための情報特に、これまでやってきたこと、強味、組織体制を把握したうえで提案できれば他社に負けない提案ができると考えます。